戦いはいつも突然だアライアンスから「資源基地建設の為に周囲の安全を確保しろ」との依頼を受けてやってきたら、他にもここに目星をつけてやってきた連中がいるわいるわで当然、戦闘開始。
敵は軍需複合体MCMSの私兵とその雇われの傭兵どもが多数、戦力比は1:3といった所か。全然問題の無い程度だと即座に指揮系統を破壊すべく強襲を開始。プラズマキャノンの爆風が雑兵どもを吹き飛ばし焼き尽くしていく。強大な力による一方的な蹂躙は楽でいい、なんせすぐに片付くからだ。
私が正面の敵を消し飛ばし戦線は即座にアライアンス側優勢に傾くが問題発生、吹雪で通信障害が発生して味方側との連絡が取れなくなる。こうなるともはや連携もクソもないがそれは敵も同じだ。空中から戦車を廃品にしつつも前進し続けるとその先には建設途中の前哨基地。さすがに一人で突っ込むのは無理か?と分析するが、幸いにも対空砲なんかの姿が見えないし、この吹雪が私の姿を隠してくれる。ならば決行しかあるまいと高速で降下して施設天井を破壊して侵入。
突然の乱入者に作業員どももびっくりだろう、正直皆殺しにしてもいいが報酬には入らないだろう。無駄な殺生は無駄な消耗に繋がるので無視。おっとり刀で駆けつけてくる警備隊を撲殺しながら基地制圧を開始。司令塔を探して駆けずり回っているとセンサーに反応、フルチャージされたレールガンの弾体が壁を吹き飛ばして通り過ぎる。
「アライアンスの犬が……お前はここで終わりだ」
目の前に現れたのはMCMSの魔法少女だ、厄介な事にそれなり以上にはやるようでプラズマキャノンの爆風を上手く避けやがる。ここは敵地だ、味方の増援などは期待できない……ならば同時に巻き込む恐れもないなと判断、カートリッジを入れ替えて出力値を弄ると奴にめがけて発砲すると見せかけて狙うは燃料タンク。勿体ない気もするが大爆発を起こして奴は予想外の衝撃に吹っ飛び墜落。もう一発プラズマキャノンをぶち込んでやると直撃して大爆発が起こる。センサーの反応が消えて跡形もなく消し飛んだなと確認すると同時に通信が回復。どうやら周囲の掃討も終わって作戦は終了との事だ。
随分と暴れたおかげで残弾がスッカラカンだ、予備のカートリッジも全部使い切ってしまった上に最大出力で銃身とジェネレーターにダメージが入ってしまっている。これは全交換しなきゃならないが幸いにも暴れた分のボーナスは出る模様、これで足が出る事はない……筈だった。
「私のボーナスはどこだ?」
「今回の依頼に敵基地の破壊はない」
なんということだ、追加報酬がでないとはどういうことだとアライアンスにクレーム。すると帰ってきた答えは今回破壊した基地は別口の依頼となっていて悪天候で作戦開始が遅れた結果、私がそれを横取りした形となってしまったという。しかし脅威を排除したのは確かだろうと噛みつくがこれ以上は大本の依頼主である「キリーメタル」と話し合えとの事で、イライラしながらもドローンでメッセージを送る。
その間に貯蓄していた分と今回の報酬を使い武装を補給、きちんと次の戦いに備えつつ体を休めながらに勉強していた所に呼び出し、キリーメタルが報酬を払うとのことで取りに来て欲しいとの事。
なんか怪しいなと思いながら最低限度の武装を整えて取引場所の所有倉庫へ移動するとそこには魔法少女が居た、案の定取引には不要な重武装であり、アタッシュケースみたいなものもない。
「騙したか?」
「悪いネ!ワタシは来た奴を殺せって依頼されただけアル」
クソが、ハメられた。武装してきてよかったなと思いつつ戦闘開始、殺し合いの時間だ。相手は両手に大型のブレードを持ちつつもサブアームに二基のキャノン、遠近両方に対応した装備でなおかつ戦場は閉所、中々に不利な戦いになるなと即座に分析して私はレールガンをチャージしつつ中距離を前後上下にウロウロすることで近接にも遠距離にも即座に対応できる間合いを保ちながら考える。
レールガンは魔法少女の防御をある程度突破できる強力な威力を持つ一方でプラズマキャノンと違い爆風が無くてその分当てにくい、おまけに相手は随分と機動性が高くチャージを見て銃口を向けられてから射線から抜け出すなど容易い事だろう。だからこそ閉所に誘い込んだ事を後悔させてやる。
遮蔽物にしていたコンテナを思い切り蹴飛ばして目つぶし、ブレードでそれを切り裂いて防御した隙を狙って射撃。さすがに直撃しなかったがサブアームとキャノンを一本吹き飛ばす、続けてハンドグレネードを投擲して防御を誘発させて目くらまし。その間にチャージを行いながらも接近、エネルギー放出量を増やしてバリアを厚くして突貫。
奴も当然ながらセンサーでこちらが魔力という形で見えている、パワーアシストの出力を強化して剣を振るうその瞬間、真後ろに瞬間的にブーストをかけて分厚くなったバリアの正面層を剥離させて「センサーに映る残像」を作り出す。この技の弱点として一瞬の間バリア層が極めて薄くなる事と、通常視界では簡単に捉えられてしまうという点があるが、こういった煙の中では非常に有効だ。奴がバリアの塊に剣を突き立てた瞬間に今度は中心を狙ってトリガーを引く。
バンと破裂音が響き、壁を貫く破砕音。煙が吹き飛び視界が開けるとそこには胴体に大穴があけられて上下に分断された敵の姿があった。さすがにフルチャージレールガンを至近距離で受ければ魔法少女であっても即死する、これで死なない奴が居たら逃げるしかない。
さてここで刺客を始末したならアライアンスに戦闘記録と共にメッセージを送りつつ武器を補給、返事として送られてくるのはキリーメタルの本社の所在地と報復の「許可証」。まずはご挨拶とビルに向かってレールガンを一発ぶち込んでから壁を破壊して侵入。普通に仕事をしていた連中にとっては気の毒だが今日でこの会社は終わりだ。即座に社長室に乗り込むとそこには不適にも落ち着いた男が居た。
「なんで報酬を渋って刺客まで送り付けて来た」
「我が社には強力な戦力が足りない、故に君を試させて貰った」
「なんだと?」
こいつが言うには他の企業に様に強力な私兵が欲しいそうだ、それも態々こうやって襲撃に来るほどのバイタリティのある奴、なによりも契約に忠実な奴。なるほどな、それでこうやって眼鏡に叶った私を勧誘しているのか。
「報酬は約束しよう」
「答えはこいつだ」
レールガンを奴に向けてぶっ放す、魔法少女もだが生身の人間なら跡形もなく消し飛ぶ威力で撃ったつもりだった。だが奴は避けなかった、避ける必要すらなかった。吹き飛ぶスーツの下から見えるのは鋼鉄の体、こいつ機械の体をしてやがる。
「ほう……これでは不満かね?では戦士らしく強さで納得してもらう他ないな」
マジかよ、レールガンを正面から食らって壊れない機体。奴は椅子の残骸から腰を上げて動き出す、ステップの一歩が突進に化ける、当然ながら回避すると奴は壁を突き破り破片が飛び散る。その威力も信じられないものだ、なんでこんな奴が社長をしているんだと内心毒づきながらも考える。
奴はサイボーグなのかロボなのか、サイボーグであれば生身の脳ぐらいは残っている筈だ。なればそれを破壊すればいい、ロボであったなら人工知能を破壊すればいいがその場所がどこなのかさっぱりわからない。そしてもう一つ、いくら機械でも制御装置にレールガンの衝撃を受ければただでは済まない。
奴はレールガンを受ける寸前にシールドを貼ったのだろう、魔法少女と同じように。ならばそのシールド無しならば流石に効く筈だ。煙の向こうから歩いてくる奴の姿を確認。
吹き飛んだのは服と人工皮膚だけで、中のメタルボディは傷一つないがよく見れば流動する光が見える、なるほどな流体バリアコーティングが施されているのか。瞬時に衝撃箇所に装甲層を形成して防御力を高めるタイプだ。ならば二発同時にあてればいいのだが使える手持ち武器はレールガンとハンドガンだけ。
これはピンチだ、と冷静に分析しながらも勝つための手段を探す。
続けて奴はまたしても突進、今度はさっき以上のスピードで紙一重で避ける、だが加えてラリアットが飛び出して私は壁に叩きつけられる。視界が回る程の威力、やっぱりこいつおかしいだろと思いながら床をレールガンでぶち抜いて下の階へ退避して体勢を立て直す。
さすがに今の一瞬のやり取りでも異変を探知したのか社員の姿はなく作業ドローンが黙々と仕事をしている中を走り抜けるとポーンと場違いなエレベーターの音がする。そこから現れたのは社長だ。
「何、もう少しゆっくりしていきたまえ」
「そんな体があるんだから魔法少女はいらないだろう!」
「君は永遠の命に興味はないか」
その言葉を聞いて脳裏に浮かんだのはカルト組織の「マキナ教団」の名、意識を電子データに変換して機械の体を得て、この終末の世界を乗り切ろうというヤバい奴らだ。確かにサイボーグになる奴も肉体改造を受ける奴もアライアンスじゃ日常茶飯事だが……脳まで捨てて完全にデータとなるのは法でも禁止されている。ならこいつはアライアンスに潜り込んだ教団のスパイかなんかか!最悪だぜ。
となると思い浮かぶのは資源採掘場の確保だ、あれはもしかしてアライアンスの内部にこいつみたいな完全に機械化した連中を潜り込ませる為の第一歩か。ヤバいなんとしてもこの情報を持ち帰らねばいつの間にか上層部が全部機械に乗っ取られてるみたいな状況になっちまう。
「欲しいけどそんな体はゴメンだ」
しつこく勧誘を仕掛けてくる宗教団体にはNOを突きつけよ、古くから伝わる言葉だ。即座にレールガンを向けるが狙うべきは奴の足元だ。直撃させてもバリアで無効化されるが足元までは守れまい、奴は下の階へと落ちていく。対して私は壁を突き破って逃げを選ぼうとした……が踏みとどまる。奴をこのまま生かしておいていいのか?他の皮を被って逃げられてしまえばアライアンスにだって見分けはつかなくなる。全ての人間の皮を剥いで中身をあらためるなんて無理なのだから。
だったらここで殺すしかねえ、ふと見やるのは防災用の消火栓。中身は消化剤だがこいつは結構な勢いで泡となって膨らむ。目隠しとしては悪くないだろう。後は生身の労働者用なのかウォーターサーバーがある……思いつくのは感電だ。地形のスキャンを行えばそこには図太い通電ケーブル、機械であるならば……強烈な電気を流しこめばショートする筈だ。バリアコーティングであっても帯電したものは大きくダメージを受けかねないのだから。
ならば決まったと奴の位置を探知、真下からジャンプでこの階に上がってこようとしている。時間はない、消火栓を取り外して投げた後にハンドガンで撃ち抜いて破裂させる。噴出した液体が周囲の酸素を吸って膨張し、奴の視界を遮る。加えてウォーターサーバーを蹴り倒して水浸しにして壁に手を突っ込んで配線ケーブルを引っこ抜く。
「どうしても、引き受けてもらえないというのならば……君にはここで死んでもらう」
「悪いな、死ぬのはお前だよ」
泡の向こうから現れた機械の化け物、その足元は水浸しである事には気づいておらず、私が手放したケーブルが通電する。バチバチと音を立てて奴のシールドが反応する、その瞬間を決して見逃さない。レールガンのトリガーを引けば奴の胸部で炸裂する、足元の防御が優先された為にバリア層がさっきより薄く、金属の体に傷がついてよろめいた、そこを決して逃さない。バリアが消えた部分に拳銃の銃口を向ける。
こいつは対魔法少女にも使える対装甲弾頭だ、クソ高いお守りだが今使うしかない。レールガンよりも強烈な衝撃と共に銃口が火を噴いて奴の胸部に穴が空いた。そして遅れて弾頭が爆発する事で内部からの衝撃で奴の半身が吹き飛ぶ、だが油断せずにもう一発傷口にぶちこんでやる、完全に上半身と下半身が泣き別れとなり動かなくなった……かとおもいきや首だけで動きこちらを見つめる。
「やはり見込んだ通り、君は素晴らしい力の持ち主だ……もし気が変わったならばいつでも来るといい。優れたものこそが生き残る、それがこの世の真実なのだから」
「買ってくれるのは嬉しいけど、なんならちゃんとボーナスを払ってくれた方が私は嬉しかったよ」
最後にもう一発、頭へと撃ち込んで完全にトドメを刺す。しかしこいつはデータを機械の体に移した存在だ、きっとこれで死んだわけじゃないんだろうな……と憂鬱な気分になる。それはさておき復讐は果たしたし、この情報を持ち帰ってアライアンスに届ける事とした。
数日後、キリーメタルに新しい役員が送られて組織再編が行われる事となり、加えて私が得た情報や功績を鑑みて多額の報酬と魔法少女としての力が認められて大きな評価を得る事となった。評価が良くなるとどうなるか?当然、新しい仕事が舞い込んでくるわけだ。
『うちの社員が怪しいです、機械ではないか確かめてください』『裏切り者の粛清を行います、協力していただけませんか?』『護衛の仕事を依頼したい、成り変わられないか心配で夜も眠れない』
どれも結構な信用を求める仕事で、非常に高額……なのだが、私はそういうものには興味がない。というか本来ならば戦場で暴れる事の方が得意なのだ、こういう勘違いをされてしまうも困りごとだな……と思ってたらいつものアライアンスの仕事が。
『資源基地が何者かに占拠された様だ、奪還の為に脅威を排除して欲しい』
どうやらこの間の資源採掘所が奪われてしまったらしいとお得意様から指名依頼、となると断る訳にもいかないなと武装を整えて向かう。
そこで見たのは「マキナ教団」のシンボルマークの付いた機械軍団、マジかよ。こんな奴ら相手にしてたらマジで命が足りねえなと思いながらも正面から突破する以外の道はなかった。