緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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==注意==

 この話は最初は参戦するつもりだったが様々な事情により参戦中止となった作品をちょこっとだけ出す話です。
 ですので本筋とは全く関係ありません。
ええ、ありませんとも。



外伝
~外伝・『緑色の鬼畜勇者』 ガハハ、グッドだぁー!! (配点:ハイパー兵器)~


緑が広がっていた。

青空の下、緑の絨毯が一面に広がっており時折雲が絨毯に黒の斑点を作り上げる。

そんな喉かな平原をある一団が歩いていた。

一人は男だ。

茶色い髪に大きな口を持ち、緑色の服の上に鎧を着た男は何処か苛立たしげに大股に歩く。

一人は幼子だ。

青く美しく長い髪を揺らしながら幼子は男の周りを元気良く走り回っている。

幼子は少々異質であった。

彼女の額には紅いクリスタルが埋め込まれており、耳は細長く尖っていた。

 異質なのは彼女だけではない。

 男と幼子から少し後ろを歩いている女性も耳を細長く尖らせていたが額のクリスタルの色が青いといった違いがある。

 更に彼女の背後には三人の少女がおり、一人は赤髪の少女、一人は青髪に眼鏡の少女、そして緑髪の少女だ。

 六人は暫く黙りながら歩いているが突如男が立ち止まる。

「うがあー!! ここは、どこなのだあー!!」

 男はそう叫ぶとその場で地団駄を踏む。

「そもそも、何で俺様たちはこーんな、何にも無いところに居るのだ!!

せっかくのランス様ご出立パーティーが台無しではないか!!」

 「ないか!!」と幼子が言うと青髪の女性が「これ! 真似するではない!」と叱る。

「えーい!! かなみ! アイテムだ! それが駄目なら忍術で何とかしろ!!」

「無茶言わないでよ!!」とかなみと言われた赤髪の少女が言うと男は「ぐぬぬ」と唸る。

「と、いうか、ここ本当にダンジョンなのかしら?」

「む? どういうことだマリア?」

 青髪に眼鏡の少女━━マリア・カスタードは頷く。

「ランス、ここに来たときの事覚えている?」

「あ? それはまずこいつが俺様の城の庭に開いていた穴を見つけて飛び込みそうになってパステルが慌てて掴んで……」

 男━━ランスは暢気そうにしている幼子と青髪クリスタルの女性━━パステル・カラーを指差す。

「わらわが急ぎリセットを掴んで……」

「俺様がパステルに掴まれて……」

「ランスが私のスカート掴んで……」

「かなみさんが涙目で私の腕掴んで……」

「マリアが私に抱きついてきたのよね…………はぁ」

 原因が暢気そうに空を見上げているリセットだけに皆怒れない。

 なので……。

「とりあえずランスが悪いわね」

 皆が頷き「なんでだー!!」とランスが怒鳴る。

「まあまあ、ランス、落ち着いて。それでね? あの穴だけど私はダンジョンじゃないんじゃないかなって」

「……どういうことだ?」

「だってあの穴、前までは無かったんでしょ?」

「うむ。あんな穴があったらビスケッタさんが調査するぞ」

 ランスの言葉にマリアは頷く。

「うん。それにランス城の地下にはダンジョンなんて無かった。最初は私も空間転移系のダンジョンかと思ったけど……モンスターが全然出てこないよね」

「そういえば……」とかなみが周囲を見渡すがモンスターの姿は全く無い。

 ダンジョンなら今頃モンスターに出会っている筈だ。

「…………まさか」

 緑髪の少女の言葉にマリアは頷く。

「そう、志津香の思ってる通り。ここはもしかしたら本当に異世界なのかも」

「…………は? じゃあ、元の世界には…………?」

 全員が沈黙する。

 やがてランスが再び頭を抱えた。

「があー!! ふざけるなあー!! 俺様は直ぐにでも戻ってヘルマンに行かなくてはいけないというのに!!」

 そうだ。

 自分にはヘルマンに行くという目的がある。

 ヘルマンには多数のマジックアイテムが保管されているといい、自分はヘルマンに潜入しそれを入手ついでにヘルマン中の女の子とセックスして氷漬けのシィルを救出する予定だったというのに!!

━━いや、待てよ…………?

 異世界なら魔王の魔法を解除できるアイテムぐらいあるかもしれない。

 それにこの世界にも人が居るなら、それはつまり俺様の知らない女の子が世界にいっぱいいることになる!!

「グ、グフフ…………」

「あ、これ、悪い事考えている顔だわ」

 かなみが半目になり何か言っているが無視だ。

「いいぞー、新世界! シィルの奴を助けるのはちょっと先になるが未知の女の子達が俺様の事を待っている!!

ガハハ! グッドだあー!!」

 そう笑うとリセットも「ガハハ!」と笑い、慌ててパステルが止める。

「はあ!? ちょっと待て!! 貴様と違ってわらわには国があるのだ!! 直ぐにでも戻らなければならん!!」

「大丈夫大丈夫、パステルはヘッポコだから居なくても何とかなる」

「ヘ、ヘッポコ!?」

「かなみ、お前は勿論俺様と来るよな?」

「…………どうせ断っても聞かないくせに」

「うむ、ではマリアも来るであろう!」

「うーん、確かに一人で行動するよりもみんなで行動したほうが安心ね。こっちの世界の技術とか気になるし」

「相変わらず技術馬鹿だなー。で、志津香、勿論貴様も……」

「いやよ」

 志津香はそっぽを向く。

「例え異世界だろうとあんたと一緒に行動するのは嫌」

「相変わらず素直じゃないなー。だがマリアは俺様と一緒に来ると言ったぞ?

ん? どうするんだ? ぼっちか? ボッチになるのか!?」

 煽ってくるランスに志津香は心底うんざりした表情を浮かべると半目でマリアを見る。

「ほら、志津香も一緒に来たほうがいいよ? 何が起きるのか分からないし」

 友人にそう諭され彼女は大きな溜息と共に「しかたないわね」と呟く。

「よし! これで全員の賛同を得たようなので、行くぞ! 新世界探索!!」

 その号令にリセット以外だれも加わらなかったのであった。

 

***

 

 再び歩き出して三十分。

一同はなだらかな丘を幾つも越えて進んでいた。

だが一向に町どころか人にも会えずひたすらに緑が続いている。

「おとーさん」

 最初は元気だったリセットに袖を掴まれランスは止まる。

「どうした、疲れたか?」

「ううん。おなかすいた」

 その言葉に皆頷いた。

「そういえば、今日パーティーだからお昼抜いてたんだわ」

「わたしも」

「わらわもじゃ」

「…………」

「え、ええい、暗いぞ貴様ら!」

 そうランスが怒鳴った瞬間、彼のお腹の中から音が鳴った。

「…………うん、腹が減るのは良くないな。よし、かなみ、何か狩って来い。それまで帰って来なくていいぞ?」

「む、無茶言わないで! さっきから獣一匹も居ないのに!」

「……おかしいわね?」

 志津香がそう言うと皆が一斉に注目する。

「これだけ平原が広がっていて動物一匹見当たらないなんてちょっと異常よ」

「確かに、動物が居ないのは何かを恐れているからとか?」

「だが、何をだ?」

 そう皆で首を傾げているとかなみが慌てて立ち上がった。

「み、皆、あれ!!」

「あん? なんだかなみ、女の子モンスターでも見つけた……か……?」

 かなみが指差す先、青い空を船が航行していた。

 黒を基調とした船はゆっくりと此方に向かって来て、そして頭上を通過した。

「そ、空飛ぶ船だと!? ここは闘神都市か何かか!?」

「凄い……アレだけのものが飛ぶなんて……」

 皆絶句していると船が飛んできた方向、岡の上に登っていたかなみが此方に手を振る。

「町があったわ!! それも大きな!!」

 一同慌てて丘を駆け上ると平野に広大な町が広がっていた。

 町は壁で覆われており、五キロメートル先まで続いている。

 そして町の中央には見慣れた形の城が建っている。

「む? JAPANの城か? ここはJAPANなのか?」

 疑問に答える者は居ない。

 皆、ここが何処だか分からないのだから当然だ。

だが……。

「町があるって事は人が居るって事だ。それはつまり、女の子が居るって事だ!!」

 「よし! 行くぞ!!」とランスが叫んだ瞬間、天から少女の声が鳴り響く。

『ぶっぶー! ここまででーす!!』

「な、なんだあ!?」

『まったく勝手に入ってくるなんて、何て奴かしら。貴方達はここには呼ばれていない存在です。というか、出てけ』

「何だ貴様は!! ええい、姿を見せんか!! というか、この声の感じ、美少女だな!!

なら俺様にヤらせろー!!」

『うわあ……下品すぎ。久々にドン引きしたわー。

と、言うわけでお帰りくださーい』

 ランスたちの体が突如薄く、透明になって行く。

 皆慌てる中でランスだけはひたすら空に向かって叫び続けた。

「ぬがー!! 俺様の新世界美少女ヤり放題旅があー!!」

 そして消えた。

 最後までなんだか下品な事を叫びながら、鬼畜勇者御一行はこの世界からつまみ出された。

 

***

 

「ふう」

 空間から闇が噴出し、一人の少女が平原に降り立った。

 驪龍だ。

 彼女はやれやれと首を横に振ると溜息を吐く。

「まだ塞いでない楔の穴があったなんてね。あの世界には今はまだちょっとちょっかい出したくないのよ。

あの鯨に気付かれたくないし」

 「それにしても」と彼女は半目になる。

「あんな下品な勇者って居るものなのねー」

 ともかく不純物は排除した。

 後は“白”の行動を待つとしよう。

 そう頷き彼女は再び闇の中に消える。

 そして再び平野に静けさが戻った。

 

 

 

~外伝・完~


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