浜松から岡崎城に向かう街道で多数の警護艦が清洲に向けて移動するのを茨木華扇は見た。
━━ただ事じゃないわね……。
この艦隊が伊勢に向かうのであれば筒井家攻略のためだと分かる。
だがあの艦隊が向かった先は同盟国であるP.A.Odaの方だ。
暫く空を見上げていると地面が揺れている事に気がつく。
揺れは徐々に大きくなり、馬の嘶きも聞えてきた。
何かと背後を振り返れば騎馬隊が駆けており慌てて脇に移動する。
数十人の騎馬武者たちが眼前を通過し遠のいて行く。
そしてその直後突然辺りが暗くなった。
否、暗くなったのでは無い。
影が移動してきたのだ。
上空を八隻の航空艦が通過する。
「武蔵まで動くとなると本当にただ事じゃないわね」
武蔵が遠のいていくのを見ながら暫く思案し、ともかく岡崎に行ってみることにするのであった。
***
「……姉小路の船か」
岡崎城の天守で警護艦が次々に離陸するのを見ながら徳川家康はそう呟いた。
「現在榊原康政様と本多忠勝様が国境沿いに配置されました。武蔵も間もなく警護艦隊と合流する予定です」
背後で正座している“曳馬”がそう言うと家康は頷く。
「姉小路が来た理由は分かる。おそらく国を逃れ、我が国に亡命したいのであろう」
「…………織田は受け入れ拒否したという事でしょうか?」
“曳馬”の言葉に無言で頷きを返す。
「どうなさるおつもりですか?」
「受け入れてやりたいが我が国にもそこまでの余裕は無い。まずは国境沿いで停船させ、近くの港に着陸させる…………だが」
「だが?」と“曳馬”が首を傾げると家康は西の空を見た。
「どうにも嫌な予感がするのだ……」
姉小路艦隊が来ていると聞いたときから何故か妙に胸騒ぎを感じた。
「私にはその予感というものが分かりませんが常に最悪の状況を予想し対策を練るのは必要な事と判断します」
「そして」と彼女は立ち上がった。
「“念のため”の準備を致しましょう」
そう言って彼女は表示枠を呼び出し、家康に見せた。
そこには一隻の航空艦が映し出されていた。
***
警護艦隊は国境近くに到着すると艦を横に並べ、姉小路艦隊の進路を妨害するように配置された。
中央の航空艦には榊原康政が搭乗し、彼は他の艦に指示を出していた。
「全艦配置完了! 武蔵も後方に配置しました」
甲板の様子を映す表示枠には武蔵の双嬢と半竜が降り立つ様子が映し出されており金天使の後ろには武蔵の副長も乗っていたようだ。
「姉小路艦隊、さらに接近! 間もなく国境に到着します!」
最大望遠で映し出される映像には六隻の航空艦が航行していた。
「姉小路艦隊はヨルムンガンド級が一、ドラゴン級が一、輸送艦が六です!」
━━随分と少ないですな……。
あれだけしか残ってないとすると相当にやられたようだ。
中には黒煙を噴出している船もいる。
彼らを受け入れてやりたいのは山々だが今の徳川にあれを全部受け入れる余裕は無い。
取りあえず一部を受け入れて残りは他国にという形になるだろうか?
それにしても……。
「なんというか、あのヨルムンガンド級妙な形をしておりますなぁ?」
横に膨れているというか何というか……。
『康政! 妙だ!』
忠勝が表示枠に映る。
「妙とは?」
『中央の船、わずかに高度が落ちているぞ!』
高度が落ちている?
重力制御エンジンにトラブルか?
そう思っていると通神兵が振り向いた。
「ノイズが酷いですが通神、開きます!」
『こちら…………姉小路……現在我々は……の襲撃を受け…………至急救援を……!』
その直後、ヨルムンガンド級の後方に居たドラゴン級が爆発した。
***
ドラゴン級が爆発し墜落するのを忠勝は甲板から見た。
「なに!? エンジントラブル!?」
「いや違うぞ……あれは……」
煙の中から無数の影が現れた。
それは空を埋め尽くすように広がり、白い雲が出来上がった。
「…………怪魔か!」
『総員、対空戦闘用意! 敵怪魔の個数は300を超えます!』
ナルゼが双眼鏡を取り出し姉小路艦を見た。
「ちょっと! ヨルムンガンド級の側面の白い奴! 全部怪魔よ!」
彼女から双眼鏡を受け取り見れば航空艦の側面を埋めつくように怪魔がへばり付いてた。
━━逃げ切れなかったか!?
視線を上に上げ甲板を見るとそこには大きな影と幾つもの人間の影が集まり、怪魔と交戦していた。
「甲板の上! 人が居るぞ! 康政、どうする!」
『怪魔を徳川に入れる訳にはいきませんぞ! 全艦戦闘準備! 怪魔を倒しつつ姉小路艦隊の救助を行います!』
「既に武蔵には連絡しておいたで御座る」
甲板に居た皆が顔を見合わせると頷いた。
双嬢が駆け出し飛翔し、半竜もそれに続いた。
『敵の一部が接近! 迎撃を開始します!』
その報告とともに警護艦全艦が一斉に攻撃を始めた。
***
「姉小路艦隊は怪魔に襲撃されていた模様です。現在、警護艦隊が応戦に当たっています」
サポート用の自動人形の報告に“曳馬”は頷くと表示枠で地図を映し出した。
「家康様の予感は的中しましたね」
地図には警護艦から敵の様子が送られて来ており、国境沿いが赤い点で埋まっていた。
「“曳馬”様、出航許可が出ました」
「Jud.、 今回は前回と違い敵との直接戦闘になります。皆様その事を念頭に置いて動いてください」
「Judgment」と自動人形達がそれぞれの配置に着く。
全員が配置に着いた事を確認すると“曳馬”は中央に立った。
「重力制御エンジン起動。各部チェックを開始」
「重力障壁起動確認」
「ステルス障壁起動確認」
「主砲起動確認」
「対空システム起動確認。全システム正常に起動しました」
送られてきた各部の状況を確認し終えると“曳馬”は艦との最終リンクを開始した。
船のあらゆる情報が高速思考回路に流れ込み、それを自分と同化させる。
「艦とのリンクを完了。仮想海、展開します」
船体の揺れと共に流体による仮想海が展開された。
「前方、ハッチ開きます」
艦前方のハッチが開かれ始め、格納庫に光が差し込む。
そして完全に開き終わり、発信許可が出ると自動人形たちが此方を見た。
━━晴れ舞台というには慌しいですね……。
だがそんなものかとも思える。
今は自分の役割を果たす。
ただそれだけだ。
「特務護衛艦曳馬、発進します!」
岡崎城の地下ドックから葵色の船体が飛び出した。
葵紋を掲げたその船は天高く上り、ステルス障壁の中へと消えていった。
***
姉小路艦隊救助の為に飛び立ったナルゼは敵の姿を見た。
今正面から来ている怪魔は細い胴体を持ち巨大な翼を持ったタイプで報告では敵空中戦力の主力にあたる連中だ。
「ワイバーン型って奴ね! マルゴット! 初めての怪魔戦だけどいける!?」
「Jud.、 あの気持ち悪い頭無しをとっちめてやろうよ! ガッちゃん!」
敵群が動いた。
ざっと見ても百以上。
それらが一直線に向かってきた。
「拙僧が穴を開ける! その後を行け!」
半竜が加速した。
翼を前に出し槍のごとく突き進む。
「拙・僧・発・進!!」
半竜は怪魔の群れに入り次々と敵を引きちぎる。
彼が群れを突破すると群れに大きな穴が出来ていた。
そこを加速し抜ける。
怪魔は此方を追いかけようと振り返るがその直後次々と打ち落とされた。
『こいつ等は私が引き付けるわ』
警護艦から朱の機動殻が飛び立った。
機動殻は顎剣を引き抜くと次々と怪魔に投げつける。
背後から攻撃された怪魔は再び振り返ろうとするがそれを竜砲が薙ぎ払った。
「異端通り越して悪魔どもが! 拙僧の裁きを受けるがよい!」
反転した半竜が再び怪魔の群れに突っ込む。
それを横目で見ると一気に加速を行った。
航空艦に接近し、甲板を見る。
そこでは兵たちが円陣を組み、近寄ってくる怪魔と戦っていた。
一匹の怪魔が上空から襲い掛かる。
だがそれは大剣によって叩き潰された。
「━━武神!?」
否、それは金の長い髪を持った少女の姿だ。
巨大な少女は二対の大剣を振り回し近づいてくる怪魔を次々に薙ぎ払う。
「あれ! 人形だよ、ガッちゃん! 肩に人が乗ってる!」
━━人形使いってわけね。
あの人形が居るおかげで持ち堪えているようだがそれもいつまで続くか分からない。
旋回し、甲板上空を通過すると側面に張り付いていた一部の怪魔たちが動き出す。
数にして三十を超える怪魔たちは翼を広げると不気味な声で嘶き、一斉に襲い掛かってきた。
━━来たわね!
マルゴットに目で合図を送り一気に機殻箒の先端を上に向けた。
急加速を行いながらの宙返り。
それにより敵群の背後を取った。
「Herrlich!!」
弾丸が放たれ、怪魔たちが次々と撃ち落されていった。
***
「魔女隊は船に近づいてくる怪魔の迎撃に専念してくれ! 武神隊は長距離攻撃用の砲で援護砲撃だ」
武蔵野艦橋前で各所に指示を出したネシンバラは深呼吸した。
状況は緊迫したものだ。
怪魔の突然の襲来に徳川は準備が出来ておらず、一匹でも後ろに通すわけにはいけない。
その上、姉小路艦隊を救わなければならない。
『地摺朱雀、前の艦隊に合流するよ!』
上空を地摺朱雀が通過し前線へ向かう。
「ネシンバラ、どうやって救出する?」
隣に居る正純に問われ顎に手そえる。
「まずは民間人が乗っている輸送艦を援護しながら後方へ移動させる。どういうわけか怪魔はあのヨルムンガンド級に殺到しているみたいだからね。これは何とかなる。
だけど問題は……」
「あの船をどう助けるか……か?」
「Jud.、 怪魔の数が余りにも多すぎるから救助部隊を送れない。せめて敵が散ってくれればいいんだけど……」
そこまで言って思いつく。
「浅間君! ちょっといいかい?」
表示枠を開くと巫女服に着替えた浅間が映った。
「君の射撃で左舷側の怪魔を薙ぎ払えるかい? なるべく船体にダメージを与えずに」
『……出来ると思います。でもどうする気ですか?』
「ああ、やつらを攻撃で側面から追い払い、輸送艦を強行接舷させる」
「おい、ネシンバラ! それは危険だ。輸送艦は接近するまでに怪魔の猛攻を受ける。それに接舷できたとしても反対側の怪魔たちがなだれ込んでくるぞ!」
そう、それが問題だ。
この策をするには少なくとも浅間と同等の火力と正確性が必要になる。
それが出来る人員は…………。
『では私にお任せください』
表示枠に“曳馬”が映ると同時に武蔵の情報に葵色の船が現れた。
『こちら特務護衛艦曳馬。これより武蔵、及び警護艦隊の援護を開始します』
曳馬は先鋭な船体をしており、その上部には長大な砲が設置されていた。
「出来るかい?」
『Jud.、 当艦はもともと武蔵の護衛及び支援をするために建造されました。その為長距離戦に特化しており主砲の狙撃用流体砲ならば可能と判断します』
これで策は可能となった。
後の問題は誰が輸送艦に乗るかだが。
『輸送艦に私たちを乗せてちょうだい』
と幽々子が映った。
「…………いいのかい?」
『ええ、人命救助は遊撃士の職務。ましてや怪魔が相手ならなおの事よ』
「感謝する。こちらも立花夫婦に乗ってもらうけど頼めるかい?」
『Jud.』
『任せてください』
立花夫妻の了承を得るとネシンバラは輸送艦に指示を出した。
「よし! じゃあ、行くよ! みんな!」
***
警護艦の甲板で戦いを見ていた本多・二代はふと思った。
━━うーむ、ここでは活躍できないで御座るなー。
既に何度か近づいてきた怪魔を忠勝と共に倒したが空で戦っている双嬢や半竜たちに比べたら微々たる物だ。
「どうした? 戦闘中に悩み事はやめておけ」
「いや、どうにも拙者たちは此処では活躍できないと思いまして。なんとかあの船に乗れないかなーと」
「ふむ?」と忠勝は言うと姉小路艦を見る。
すると後方に“不転百足”が体勢を整えるため着地した。
その様子を見ると忠勝は此方を見る。
「では行ってみるか。あの船に」
***
『あなた達、命知らずね。…………人の事言えないけど』
“不転百足”に背負って貰う形になった二代と忠勝は顔を見合わせる。
「なに、命知らずで無ければ戦場に立てんさ」
『そうね。でもどうする気? 着地は出来ないわよ』
「構わん! 上空を通過してくれ!」
「忠勝殿! 後ろに御座る!」
背後を振り返れば三匹の怪魔が追って来ていた。
二代は蜻蛉スペアの刃を後ろに向けると敵の体を映す。
「結べ! 蜻蛉スペア!」
一匹が胴を縦に割断され落ちる。
残りの二匹は左右に別れ挟み撃ちをしようとしていた。
「二代、右の奴は任せるぞ!」
「Jud!!」
左側、忠勝側の怪魔が体当たりをしようと近づいてきた。
『もう直ぐ姉小路艦の上を通過するわよ!』
「あい分かった! 二代よ、先に行ってるぞ!」
『は? 何を…………』
と成実が言う前に忠勝は近づいてくる怪魔に飛び乗った。
蜻蛉切を体に深く突き刺すと怪魔は断末魔の声をあげ墜落する。
すると彼は怪魔の胴を蹴り、別の怪魔の背に乗った。
蜻蛉切でその怪魔の翼を裂きながら再び跳躍し別の怪魔へ。
それを何度も繰り返し彼は姉小路艦の甲板に着地した。
『……あれ本当に人間よね?』
「流石は忠勝殿! では拙者も!」
今度は二代が飛んだ。
右側の怪魔の首に刃を突き刺し体を捻ると“翔翼”を展開する。
そして飛んだ。
何度も敵を踏みつけ甲板に降り立つ。
『…………まあ無茶苦茶なのは最初から分かっていたわよね』
忠勝と二代が姉小路の部隊に駆けて行くの見ると旋回する。
そして顎剣を引き抜くと近くに居た怪魔の翼を両断した。
***
━━━━は?
アリス・マーガトロイドは巨大人形の肩の上で眼前で起きた事に目を疑った。
空から男が怪魔を伝って降ってきたのだ。
「あれは……本多忠勝殿か!!」
足元にいた男がそう叫ぶ。
「本多忠勝って、あの東国無双の?」
「そうだ、相変わらず凄まじい方だ」
忠勝に続いて少女も降りてきた。
彼女は忠勝に頷くと此方に向け駆け出した。
その途中怪魔が襲い掛かるが次々に薙ぎ払って行く。
━━あれが徳川の主力……。
背後から近づいてくる二匹の怪魔に気がつき人形に命令を出す。
「ゴリアテ、横に薙ぎなさい!」
右手の大剣を横に振り怪魔たちを叩き切る。
彼らが来たのなら持ち堪えられるかもしれない。
そう思った瞬間、眼前の甲板が盛り上がった。
鉄が軋み、甲板が砕ける。
「!!」
そして穴から巨大な影が現れる。
「ドラゴンタイプ!?」
竜の形をした怪魔は腕を伸ばしゴリアテの胸部を殴りけた。
ゴリアテが体勢を崩し倒れる。
腕に痛みが走り起き上がろうとするが動けない。
「ッ!!」
腕はゴリアテの下敷きとなりまわりの兵士達が慌てて此方を救助しようとするが竜の怪魔が突撃を仕掛けてきた。
━━殺られる!!
だが竜の体は吹き飛んだ。
竜は甲板を転がり、船から落ちて行く。
「あんた! 大丈夫かい!」
眼前に朱の武神が着地しゴリアテを起こし上げた。
兵士達に起こされると下敷きになった右腕を動かそうとするが激痛が走る。
━━折れてはいないわね……。
起こされたごゴリアテの肩に乗ると同じく武神の肩に乗っていた義腕の女を見る。
「まだやれるわ」
「そうかい、なら来るさね!」
竜の怪魔が船の左舷を登り現れる。
竜は怒りを露にし咆哮を上げた。
朱の武神が二対の巨大レンチを取り出し、此方も大剣を構えさせる。
竜が駆ける。
地響きを上げ、船を揺らしながら。
そして竜と武神が衝突した。
***
忠勝は眼前にいた怪魔を叩き切ると姉小路の部隊と合流する。
「ご無事か!」
「おお! 忠勝殿!」
と現れたのは甲冑来た人の良さそうな男だ。
「本多忠勝平八郎、主君の命によりお助けに参った。頼綱殿、この怪魔殿は?」
男━━姉小路頼綱は額の汗を拭う。
「国を脱出した後、国境の砦で補給をしておったのだがそこを襲撃された。織田領には入れず織田と真田の国境上を移動しながら徳川を目指していたのだが徳川に着く直前で追いつかれたのだ」
「多くの者が死んだ……」と彼は唇を噛み締める。
「そうだ! 輸送艦は!? あれには民が乗っているのだ!」
「安心めされい。輸送艦はほぼ全てが救助され、残りの船も直ぐに救助されるであろう。
後は貴公たちのみ」
「だがどうする! 船は囲まれ、逃げ位置などないぞ!」
「忠勝殿!」と後ろの二代の声に振り返ると彼女は表示枠を開いていた。
彼女に頷きを返し、頼綱を見る。
「念のため姿勢を低くしておくとよかろう」
「それはどういう……」と頼綱が眉を顰めた瞬間、艦の両側から衝撃が生じた。
衝撃は側面に張り付いた怪魔たちを引きちぎり、吹き飛ばす。
そして一隻の輸送艦が突っ込んできた。
***
「おお! 凄いな、武蔵の巫女は!」
加速のため揺れる輸送艦の甲板上でオリビエは手すりに掴まりながらそう楽しげに言った。
「…………まったく! 何で私まで!」
同じく手すりに掴まっていたパチュリーが文句を言うオリビエは懐から銃を取り出す。
「徳川と姉小路に媚を売っておくのも大切だよパチュリー君」
「だったら、勝手にやってなさいよ! 皆で人助けなんて私のキャラじゃないわ」
「とかいってー、ちゃっかり魔術書だしちゃってるんだからー」
取りあえず本の角でオリビエを叩くと船の後方を見る。
━━来たわね。
後方では怪魔たちが追ってきており、このままでは追いつかれる。
船に乗っているメンバーを見るに対空戦闘ができるのは隣で蹲っている馬鹿とあの両手義腕の女だ。
━━…………本当に私、何やってるんだろ。
ちょっとした旅行のつもりが怪魔のど真ん中。
とんだ土産話が出来たものだ。
だがその土産話を持ち帰るには生きて帰らなければいけない。
━━死ぬ気はないわ……!
右手で魔術書を開き前に出る。
「そこの遊撃士ども! 頭下げてないと丸焦げになるわよ!」
手を掲げ、火と金の属性を合わせ高密度の熱の塊を作り出す。
そういえば昔見た外の世界の漫画にこういう時の台詞は描いてあった気がする。
たしかあれは…………。
「汚物は消毒よ! 火金符『セントエルモピラー(対空版)』!!」
熱の塊が放たれ、空中で爆発した。
***
マルゴット・ナイトは上空から熱の塊が爆発するのを見た。
爆発による衝撃派と熱波により怪魔たちが次々と焼かれ、砕け散る。
「わお! 凄い威力!」
「ああいうの魔法使いって言うのよね」
機殻箒を装備し、媒介を介して攻撃を行う自分達は違い精霊の力を借り術を使う魔法使い。
その中でも彼女は上位の存在だろう。
爆発を逃れた何匹かの怪魔が輸送艦に接近するが立花・誾が“十字砲火”で打ち落とす。
━━あれなら輸送艦は大丈夫そう。
ならば自分達がするべきことは少しでも怪魔の数を減らす事だ。
「ガッちゃん! まだ燃料もつ?」
「Jud.、 まだいけるわ!」
正面十匹近い怪魔が接近してくる。
じゃあまずあいつらから!
と狙いをつけた瞬間、怪魔の後方から爆発が生じた。
「なに!?」
墜落して行く怪魔たちの間を抜け、黒白が現れる。
「魔女!?」
魔女の少女は此方の上方を通過すると旋回し、横に並んだ。
「お前たち! 徳川の魔女か!」
「Jud!! 私はマルゴット・ナイト!」
「マルガ・ナルゼよ! あんたは!」
「私は霧雨魔理沙! 姉小路家所属の魔女だ!」
姉小路家に魔女隊が存在している事は知っている。
ならば他の魔女達は?
「…………他の奴等はみんなやられた。残ってるのは私だけだ…………」
悔しそうに表情を歪める魔理沙に掛ける言葉は見つからない。
彼女は少し帽子の位置を直すと、此方を見る。
「…………私の事はいい。それよりも気を付けろ! やばいのが来るぞ!」
「やばいのって!?」
「私たちの部隊が全滅させられた奴だ! そいつは…………」
『“武蔵”より皆様へ、姉小路艦隊の後方に空間の歪みを確認。歪みより巨大な質量体が出現します━━以上』
風景が裂けた。
空が歪み、光が消える。
そしてその空間の亀裂から巨大な物体が現れた。
物体は航空艦とほぼ同等の体を持ち、頭部に六つの目を持つ白い蛸のような生き物であった。
蛸は咆哮を上げ、空気が振動する。
「クラーケンタイプ、あいつに皆やられた…………!」
クラーケンの六つの目が光り、光線が放たれた。
六つの巨大な流体の光が岡崎の上空を貫く。