緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第十一章・『町外れの蒐集家』 久しぶりの再開 (配点:幼馴染)~

 朝露が肌に痛くなってくる駿河の秋。

 駿府城の近くにある丘に派手な着物を着ている男が胡坐を組みながら前方に広がる航空艦用の陸港を眺めていた。

 陸港では大規模な拡張工事が行われており、日夜工事の音が成り続けている。

一隻の輸送艦が陸港に着陸し、工事の資材を下ろし始める。

「直政殿。ここで何をしておるのだ?」

 派手な男━━井伊直政が振り返ればそこには僧服を着た男が立っていた。

「雪斎殿ですかい? いや、こうも暇だと工事の様子を見るぐらいしかなくてねぇ……」

 自分達は対北条軍として駿府城に詰めたが北条家は全くと言うほど動かず、寧ろ国境を封鎖して引きこもってしまった。

 その為駿府の徳川軍は連日訓練をするのみでいたって平和である。

「いや、戦争したいって訳じゃないんですがね? でもこうも平和だと退屈で……」

「西は色々と忙しい様であるがな」

 国境に怪魔が現れた事や、筒井で攻略部隊が奇襲を受けたという話しは此方にも来ている。

━━忠勝も康政もいい空気吸ってんだろうなぁ……。

「それに、我々も気を抜ける状況とは言えぬ。北条は鎖国したがその真意は分からず、武田とも国境を接しておる。それにこの地にも怪魔が現れるかもしれぬ」

「まあ、俺たちは何時でも動けるようにしとけって事ですな。それにしても……」

 と陸港を指差す。

「港の拡張も備えって奴ですかい?」

 先月の伊勢海戦後、駿府の港を拡張するように指示を受けた。

そのため駿府の人員の半数を動員して工事しているのだが……。

「……武蔵専用の港を造れってのはどういう事でしょうかねぇ? 武蔵用の港なら浜松にあるっつーに」

そう言うと雪斎は「ふむ……」と思案顔になる。

「拙僧が聞くところによれば浜松の予備との事だが……」

「予備って……まるで浜松港に何か起きるかもしれないみたいな感じですな」

 雪斎はそのまま黙っていると「よもや」と呟いた。

しかし彼は首を横に振ると此方を見る。

「まあ、家康公なりの“用心”という事であろう。その用心が必要にならなければいいがな……」

 そう言って彼は踵を返し駿府城に戻って行く。

その後姿を暫く見ると自分も立ち上がり背筋を伸ばした。

「じゃあ、俺たちも“用心”の為の訓練しておくか!」

 そう言って彼は大股で駿府城に戻るのであった。

 

***

 

 伊勢の町では早朝の朝市を終え時計の針が十時を過ぎれば商店が開き、通りは人で賑わい始めていた。

 そんな町の上空を霧雨魔理沙は飛んでいた。

 この時間帯は運搬業に従事している有翼系種族や魔女達が多く飛び交い、すれ違う都度に挨拶を交わす。

 そうやっていると町の端まで辿り着き地上は建造物の密集地から林へと変わり始める。

「えーっと、華扇の話じゃここら辺なんだが……」

 何かを探すように下を見ていると一軒の家屋が目に入る。

それは伊勢の町に続く街道から少し離れた所にある商店で外には色々なものが置かれていた。

「お! 見つけた、見つけた!」

 魔理沙はそう言うと降下を始め、商店の前に着地する。

「よいしょっと……」

 着地し周囲を見渡せば人の気配は無く、はっきり言って商売に向かない場所のように思える。

━━まあ、あいつらしいと言えばらしいか。

 そう苦笑すると箒を地面に置き、風で乱れた髪を指で梳かす。

更にスカートの埃を払い、帽子を被り直すともう一度苦笑した。

「気がつかないよなー」

 基本的に他者に興味を持たない人だ。

いつも一人でおり、それに満足している。

それでいて珍しい物には人一倍興味を持つ。

 全く変な幼馴染だ。

店のドアノブに手を掛けると二、三度小さく咳をし深呼吸をした。

そして思いっきりドアを開くと入る。

「よお! こーりん! 元気にしてたかー!!」

 ほの暗い店の中に見慣れた顔が居た。

白く短い髪を持ち、眼鏡を掛けた彼は幻想郷にいた時と変わらずに椅子に座り古本を読んでおり気だるげに此方を見た。

「……なんだ、魔理沙か」

 その様子に小さく笑うとカウンター席の前に向かい寄りかかる。

「“なんだ”とは失礼だな。相変わらず」

 そう言うと森近霖之助は「ツケを払わない奴に敬意を払う必要は無いからね」と返し古本を閉じる。

「それで? 何か用かな?」

「ああ、それなんだがこれ、修理できるか……?」

 とミニ八卦炉をカウンターに置くと彼は眉を顰めた。

「また随分と派手に壊してくれたね……。いったい何してたんだ?」

「ああ、こっちの世界に来てから姉小路家で世話になっててな」

 霖之助は「姉小路……」と僅かに眉を動かすと言葉を選ぶように口を開いた。

「……色々大変だったみたいだな」

「…………まあな」

 二人の会話が途切れると霖之助は暫くミニ八卦炉を弄り、立ち上がった。

「まあ七年ぶりの再会だ。茶でも入れてあげるよ」

 

***

 

 店の奥に行くと日本間があり、そこで魔理沙は座っていた。

 店を見渡してみればその光景は幻想郷の時と変わらず懐かしさを感じる。

「粗茶しかないけど文句は言うなよ。…………どうした?」

「いや、幻想郷の香霖堂にそっくりだなーって」

 そう言うと霖之助は「ああその事か」と頷き盆に載せた湯飲みを机の上に置く。

「新しく作り変えてもよかったんだけどね。でも、やっぱり馴染みある見た目のほうが落ち着く」

「一人で建てたのか?」

「いや、霧雨の親父さんに協力してもらってね」

 と言うと魔理沙は「え?」と固まった。

そして冷や汗を掻きながら言う。

「…………こっちに居るのか?」

「ああ、伊勢の町で商店を開いているよ。いい加減仲直りしたらどうだい?」

 「あー! あー! 聞えないぜー!」と耳を塞ぐ魔理沙に苦笑すると霖之助は向かい合うように座る。

そしてミニ八卦炉を取り出すと机に置いた。

「さて、ちょっと真面目な話しだがこの八卦炉、元に戻すのは難しい」

「…………そんなに壊れたのか?」

 そう言うと彼は首を横に振る。

「いや、損傷自体は直せる範囲だ。素材が有れば、だが」

 「いいかい?」と一言入れると彼は表示枠を開く。

「この八卦炉には緋々色金が使われている。で、今回損傷したのは術を発動する回路と発射口付近の装甲。普通ならこんな事にならないがまあ、事が事だけに酷使したのも仕方ないか。

で、話を戻すが緋々色金なら数は少ないがまだ在庫は有る。問題は回路の方だ。

これには幻想郷特有の錬金素材が使われていてこっちで手に入るかは怪しい」

「じゃ、じゃあ、直らないのか!?」

 霖之助は暫く思案顔で黙っていると「少し待っててくれ」と店のほうに向かった。

そして五分ぐらいすると小さな箱を持ち帰り机に置く。

「これは?」

 箱を開けてみるとそこには輝く水晶のような物が入れられており僅かにだが流体の力を感じる。

「“結晶石”。君も知っていると思うがこの鉱石には流体を封じる力が有り、クオーツの代わりを果たしている。

そして、こっちが……」

 とポケットから取り出したのは懐中時計のような物体だ。

「これは、エニグマじゃないか! なんでこんなもんを?」

「伊勢の商工会で売り出されていたやつでね。以前から気になっていたから買ったというわけさ。

まあそれは置いておいて、この戦術オーブメントは改良を受けて結晶石を利用できるようにしてある。

そこで僕はこの技術を流よ……いや! 借りてミニ八卦炉を改造しようと思うんだ」

 ミニ八卦炉の改造か……。

願っても無い事だが……。

「……どれくらい掛かる? 今私は武蔵で世話になってて何時戦いに借り出されるか分からないんだ」

 霖之助はミニ八卦炉とエニグマを交互に見ると頷く。

「二ヶ月……いや、一ヶ月で何とかする。それで支払いだが……まあ、今回は無事な顔を見せに来たことで帳消しにするか」

「お? 何時に無く太っ腹だな」と笑うと彼は「やっぱり金取るぞ」と言ってきた。

「い、いや、冗談! よ! イケ面! 天才店主!」

「そこまで露骨だといっそ清清しいね」

 そう霖之助が言うと互いに苦笑した。

話を終え、茶を飲み終えると立ち上がり腰を伸ばす。

これで八卦炉の修理は目処が付いた。

後は何事も起こらないことを祈るのみだが。

━━まあ、無理だろうなー。武蔵だし。

 ふと倉庫の方を見れば黒い金属製の何かが見えた。

何かと近づいてみればそれは……。

「機殻箒?」

「ああ、中古の奴だけどね」

 そう言うとは突然何かを閃く様に目を見開いた。

そして口元に笑みを浮かべると機殻箒を取り出す。

「いい改造計画が思いついたよ」

 彼は子供のような笑みを浮かべるのであった。

 

***

 

伊勢の町の大通りから少し離れた場所に一軒の商店が有った。

商店としてはやや大きなその建物には「霧雨店」と書かれており、店の前には様々な道具が入ったショーケースが置かれており道行く人がそれを眺めていた。

 そんな店の中に有る応接間に三人の男が居た。

一人は背の高い白髪の混じった髪を持つ男で背筋を伸ばし、椅子に腰掛けていた。

 その隣には小柄で恰幅の良い男が座っており茶を啜っている。

 その二人と向かい合うように体格の良い金髪で初老の男が座っており彼は小包を出すと二人の前に置いた。

「先日、頼まれていた物だ。確認してくれ」

 背の高い男が頷き、包みを開けると箱が出てきた。

それを開け二人が覗くと「おお!」と言う感嘆の声を上げる。

 恰幅の良い男が「ノブたん! ノブたん! これはいい物ですなぁ!」と言うと背の高い男が頷く。

「“マジ刈るメイド☆さくやちゃん”西側で放送された魔法少女アニメで好評だったがスッタフが全員行方不明になり打ち切りと言う不遇の名作!」

「主人公であるさくやちゃんにはモデルが存在すると聞いていますがきっとアニメと同じく天使の様な性格なのでしょうなぁ!」

 二人が盛り上がっていると金髪の男がやや引き気味に「喜んで貰えた様だな」と言う。

「それにしても堺から取り寄せたが伊勢の商工会に頼んだほうが速かったのではないか?」

 と尋ねると恰幅の良い男が首を横に振った。

「伊勢の商工会と浜松の商工会は折り合いが悪くてですな、そこで商工会に属してない霧雨殿に頼んだと言うわけですよ」

「伊勢は堺とも関係が深いと聞いていますからな」

 二人の言葉に「成程」と霧雨と呼ばれた金髪の男が頷いた。

「それにしても魔法少女か……」

「おや! 霧雨殿も興味がお有りですかな!」

 「い、いや。違う」と彼は言うと苦笑した。

「娘が魔女をやっているのでな……」

「ほう? 娘さんがいらっしゃるので?」

「ああ。突然魔女に成りたいとか言い出し家を飛び出したきりだ。半ば勘当した関係だがやはり気になってしまう」

 そう言うと浜松の二人は顔を見合わせる。

そして背の高い男が霧雨を見る。

「私も娘がいますがあまり親子としての時間を過ごした事は有りません」

 「ですが」と背の高い男が続ける。

「私は娘を信じております。子を信じ、見守るのは親の務めでしょう」

 その言葉に霧雨は頷く。

「まあそう簡単にくたばる奴ではない。今もどこかで楽しくやっているだろう」

 霧雨はそう言うと窓の外を見て目を細めると小さく溜息を吐くように呟いた。

「まったく、あの馬鹿娘は何処で何をやっているんだか……」

 

***

 

紀伊半島の西側。

大阪湾に接した大都市大阪の空では数多くの輸送艦が連日飛び交い、地上は貨物用の導力車が走り常に馬が走り回っている。

 その大阪の都から少し離れた所に巨大な城が建築されておりその規模は小田原に匹敵、否、それ以上であると言われている。

 そんな巨城━━大阪城の本丸にある天守には四人の男達が居た。

一人は金の派手な着物を見に纏い苛立たしげに歩き回る男で、その男の前に立つように扇を持つ美男子に神経質そうな男、そして厳めしい顔の男が正座していた。

「秀吉様、そろそろ落ち着かれては?」

 そう扇を持つ男が言うと派手な男━━羽柴秀吉が振り返った。

「わかっとるわぁ! でも不安でしょうがないんじゃあ!」

 そう言うと彼は胡坐を掻きため息を吐く。

「完全に出遅れた……。信長様は都に迫っておるし家康殿も快進撃じゃ。一方ワシらは未だにこの大阪のみ。どうすりゃー良いと思う? 半兵衛?」

 扇の男━━竹中重治は「そうですね」と頷くと微笑んだ。

「もうどうしようも無いんじゃないですか?」

 その言葉に秀吉は引っくり返ると唸り始めた。

「━━半兵衛殿。御巫山戯はそれ位にして頂きたい」

「おや、官兵衛殿。私は割りと本気で言ってますよ? 急ぎ京を押さえれば信長様の顰蹙を買うは必至。かといって南の三好を落とせば徳川と領土が接する。

国力に差が出来た現状で両国を相手にするのは至難ですな」

「先月私が徳川に言ったときは家康殿は友好的でした。いっそ同盟を結ぶのは?

まああの糞狸が難癖つけてくるやも知れませんが」

 そう二人が言うと秀吉は起き上がる。

そして頭を掻くと胸元から煙管を取り出し吹かし始めた。

「三成の言うとおり手ぇー組むのが一番現実的か。家康殿もワシがおれば難癖つけんだろうしのぅ。

信長様と家康殿と手を組み、ワシらは四国を落とす。まずは国力を着けんとな」

 すると重治が思案顔になり「少しお待ちを」と言った。

「徳川との同盟の件、少々お待ちいただけないでしょうか?」

「ふむ? なにか不安事が?」

 そう問うと重治は暫く思案し。

「ちょっと気になることが有りましてね。まあ胸騒ぎ程度の事ですが……」

 秀吉達は顔を見合わせると頷きあう。

「半兵衛の胸騒ぎは当たるからのう。取り敢えずは同盟の件、見送っておくか」

 「さて」と秀吉が自分の膝を叩くと半兵衛の方を見る。

「織田との外交官は……?」

「襲名者の藤吉郎殿とマティアス殿に」

 次に官半衛を見る。

「国人衆との協定は?」

「拙者がやりましょう」

 そして最後に三成を見た。

「兵糧や物資の管理は?」

「全て記載し、纏めて有ります」

 秀吉は口元に笑みを浮かべると「お前らはワシに過ぎたる者だな」と頭を掻く。

そして立ち上がった。

「家臣どもに伝えい! 戦の準備ぞ! 天下人羽柴秀吉、少々乗り遅れたが天下盗りに参加するぞ!!」

 その宣言に三者は平伏した。

 天下人秀吉の宣言は国内外にあっと言う間に広がるのであった。

 

***

 

 深夜に出撃した徳川軍は夜明け前には筒井城の前に陣を張り、筒井城を守る支城の攻略を始めた。

 敵の抵抗は激しく7つある支城の内6つ目を落とす頃には昼の三時となった。

 比那名居天子は本陣にて最後の支城が落ちたという知らせを受け取ると大きく溜息を吐く。

「かなり時間を取られたわね……」

「はい、敵も必死でしょうがこの粘り方。やはり何か企んでいますね」

 衣玖の言葉に頷くと筒井城の方を見る。

 筒井城には城全体を覆う障壁が張られており、この障壁は物理的な侵入を完全に遮断している。

 まずはあの障壁を何とかしなくては始まらないだろう。

「……浅間、何か分かった?」

 表示枠に映る浅間に訊くと彼女は頷いた。

『筒井城を覆っている障壁はあらゆる物を遮断する高度な結界です。通常障壁は壁状、つまり目に見えない装甲みたいな物ですがあれは幾つもの術式を組み生物の様になっています』

「生物って……どういう事?」

『障壁は破壊されると普通砕けます。ですがあの障壁は流体の水面の様になっていて一箇所が壊れても周りの流体が直ぐに穴を塞ぐようになっています』

 それは……突破できないのでは?

そう訊けば浅間は首を横に振った。

『一応穴が塞がるまでの時間は有ります。ですが数秒で塞がりますし、その間に城壁を越えなければいけません。

それに障壁を破壊するのも難しいですね……。

あれはツクヨミ系の創作術式でかなりの強度を持っています。あの術を創った人はいったいどんな人なのか……』

 おそらくアレを創ったのは八意永琳だろう。

彼女ならばあのような障壁を容易に創ってしまうだろう。

しかしツクヨミの術か……。

緋想の剣でもあの障壁を断ち切るのは少々難しいだろう。

━━ん? ツクヨミは月の神よね?

 ウチには太陽神が居るわけだが……。

 衣玖も同じことを考えていたらしく欠伸をかいて寝そべっているアマテラスを見る。

「総領娘様」

「ええ、多分同じことを考えてる」

 顔を見合わせ頷くと衣玖がアマテラスのもとに向かい、こちらは浅間に「障壁はなんとかできそうよ」と伝えた。

 浅間との通神を終えると空から炎の翼を生やした妹紅が降下し、此方の前に着地した。

「何かわかったかしら?」

「ええ。障壁は何とかなりそう。あとはどう城に入るかだけど……」

 障壁が塞がるまでに城の壁を越える方法。

そんな物があるだろうか?

と考えていると一つ思いついた。

 だが、それはあまりにも大胆で危険な作戦だ。

「策は決まったか?」

 背後から声を掛けられ振り返れば徳川秀忠を先頭に点蔵とメアリ、そしてミトツダイラがやってきた。

「一つ、思いついたけどかなり危険よ」

 

***

 

「━━と、いう作戦なんだけど……」

 思いついた作戦を伝えると皆顔を見合わせた。

「たしかに危険な策ですわね」

とミトツダイラが言うとメアリが頷いた。

「ですが成れば敵の意表を突けるでしょう」

 「確かに」と点蔵が頷けば皆思案顔になる。

「正直成功する確証が無いわ。だから、その、無理だと思うなら……」

「やってみましょう」

 ミトツダイラの言葉に「え?」と声が出ると彼女は微笑んだ。

「“友人”が考えた策、信じますわ。それにこの策以外には思いつきませんし」

 次に点蔵が頷き。

「“友”と共であれば如何なる困難も乗り越えられるで御座るよ」

「私も“友人”として天子様の策に賛成します」

 そして最後に妹紅がにやにやと笑いながら。

「私も乗るわ。“ともだち”だものね?」

 あまりの気恥ずかしさに頭を抱え「うがー!!」と叫んだ。

「虐めか! 虐めね! これ、新手の虐めね!!」

 赤面しながら叫ぶと衣玖が「まあまあ」と宥めながらアマテラスと共にやって来た。

「アマテラス様たちと話したところ、可能だそうです」

 これで筒井城攻略の手段は揃った。

後は……。

「元忠、敵の支城に此方の野戦砲を置いて。そこから砲撃するわ」

 表示枠で元忠に連絡すると彼は頷く。

『一時間……いや、三十分くれ。その間に準備を済まそう』

 次に秀忠を見る。

「秀忠公の部隊には囮をやってもらいます。敵の正門近くまで前進。敵を引付けて下さい」

「任せよ」

 と彼が頷くと皆を見る。

「さあ、これで筒井家と決着を着けるわ! 皆、行くわよ!」

「「Jud!!」」

 夕方の四時頃、空が赤みが掛かる時間に徳川軍が筒井城攻略を開始した。


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