緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第十二章・『筒井の相対者』 日が沈むよ (配点:ツクヨミ)~

 

 筒井城の正門前には多くの兵士達が集まり、皆長銃や弓を装備していた。

 一人が単眼鏡を覗き込み小声で呟く。

「……来ないな」

 それに隣の兵士が頷きを返した。

「このまま来なきゃいいんだがな……」

 既に作戦は聞いている。

術の発動まで城門を死守する。

 此方の兵力は二千人弱。これだけ減った理由は篭城時に兵が多いと直ぐに食料が枯渇するからだ。

 一方敵の兵力は一万五千近く。

どうやっても覆す事の出来ない戦力差だ。

 頭上を見れば流体の膜が波打っているのが見える。

━━破られる事は無いって言ってもなぁ……。

 八意永琳と筒井順慶がそう言っていたがやはり不安だ。

時刻は既に四時を過ぎた。

 術の発動まであと二時間ほどだが……。

「う、動いたぞ!!」

 誰かの叫びで前を見れば徳川軍が一斉に前進を始めた。

「来るぞー!! 総員、備えろー!!」

 皆が一斉に構えると同時に上空で爆発が生じた。

徳川艦隊が陸上戦士団の援護の為艦砲射撃を始めたのだ。

 それと共に陥落した支城からも砲撃が始まる。

「よしよし! お前ら、敵が近づいて来たら銃撃を浴びせろ! この障壁があれば敵さん何も出来ないが少しでも被害を与えたいからなぁ!!」

 甲冑を着た島清興と松倉重信が来ると皆「応!!」と鬨を上げた。

清興は城門上から身を乗り出すと単眼鏡を受け取り覗き込む。

「ほう? 今前進してきてるのは徳川秀忠公の軍ですかい」

「……大将自ら?」

 そう重信が眉を顰めると清興は頷く。

「強攻に城を攻め落とす気か、それとも何かの策か……。まあお手並み拝見といきましょうじゃないの」

 

***

 

 徳川軍は三列に隊列を組み進軍を行っていた。

前列には術式盾を構えた重装備の歩兵が、中列には長銃を持った兵士が、そして後列には弓や近接武器を装備した兵士達が居た。

 筒井城から400M程の位置まで来ると城側から銃撃が始まり術式盾が銃弾を弾く。

「応戦開始!!」

 その号令と共に徳川軍の射撃部隊が銃撃を行うが弾は全て障壁に遮られていた。

「……やはり効かんか」

 後列で指揮を取っていた徳川秀忠はそう呟くと近くの兵に「攻撃続行」の指示を出す。

「秀忠様! ここは危険です。もう少しお下がりを!」

 馬廻にそう言われると秀忠は首を横に振った。

「敵の目を引き付けなければならん! それにこの程度の銃撃、どうってことは無いぞ!」

 彼は自分の旗を持つと掲げる。

「皆! 旗を掲げよ! そして思い知らせてやれ! 徳川秀忠、ここに在りとな!!」

 「「応!」」と言う鬨に満足そうに頷くと秀忠は表示枠を開いた。

「元忠、もう少し砲撃支援を頼めんか?」

『砲弾が直ぐに無くなりますが……?』

「構わん! 直ぐに天子たちの策が成る」

 『御意』と元忠が頷き表示枠が消えると頭上を多くの砲弾が一斉に通過した。

砲弾は障壁に当たると爆発を起こし、その都度障壁の表面が波打つ。

 その様子を見ていると一発の銃弾が頭の近くを通る。

「おおっと! 今のは危なかったな!」

「ひ、秀忠様!? やはりお下がりを!!」

 そう馬廻が叫ぶと同時に表示枠が開いた。

そこには比那名意天子が映っており、彼女は青い髪を靡かせている。

『準備ができたわ』

「うむ。頼んだぞ」

 そう短くやり取りすると天子は頷き、表示枠を閉じた。

「さて、皆、来るぞ!! 空の見過ぎで撃たれるなよ!!」

 

***

 

 戦場の様子を八意永琳は筒井城の天守前の広場で確認していた。

表示枠には三列になっている徳川軍や城内に配置された味方が記されており、各所からの報告も送られてきている。

━━妙ね。

 徳川軍が進軍してきたのは分かる。

 恐らくだが此方が何か策を立てているのは気がついているだろう。

その為速攻戦を仕掛けてきた。

 では何が妙なのか?

それは……。

「徳川秀忠が前線に居る事、そして敵大将の比那名居天子が居ない事」

 前線と言う危険地帯に徳川家康の子息である秀忠が居るのはおかしい。

そもそも彼は後詰だ。

だが現状を見るに全軍の指揮は彼が取っている。

 指揮権が移ったか、もしくは別の何かか?

それにしても指揮官があんな危険な場所に居るのは変だ。

ならば考えられる事は……。

「……奇襲?」

 現在筒井軍の注目は眼前の徳川軍に集まっているが城の各所には兵を置き、全方向を監視している。

 今のところ敵の別働隊は確認されていないが……。

「敵の注目を引き付け奇襲をしようにも此方は全方位を見ている。なら敵はどこから来る……?」

 気付いた。

此方の死角。

全く警戒していない場所。

それは……。

「━━空!!」

 その瞬間筒井城を影が覆った。

頭上を見上げれば沈む太陽を背に落下してくるのもがある。

 それは六角錘の形をした岩であり。その大きさは飛空挺とほぼ同等であった。

その巨大な岩の正体は……。

「要石か!!」

 

***

 

「落下するってのがこんなに怖い物だとわね!」

 藤原妹紅は要石にしがみ付きながらそう叫んだ。

「あら! 慣れると結構楽しいわよ!」

 それに比那名居天子が笑いながら叫び返すと皆苦笑する。

初め作戦を聞いたときはどうかしていると思ったが実際にやってみてやっぱりどうかしている。

 要石を空中で巨大化させる彼女の術式、“要石「天地開闢プレス」”で上空から襲い掛かり障壁を突破しようと言うのだ。

「おおおおおおおおお! 竜宮ネーちゃん! ちゃんと捕まえててくれよォ!!」

 衣玖の羽衣に包まれたアマテラスの頭上でイッスンがそう叫んだ。

 突如近くで爆発が生じた。

爆発は次々と起き、それが此方を狙う物であると分かる。

「対空砲を撃って来たで御座るよ!!」

 筒井城に接近するにつれその攻撃の精度は上がり何発かが要石を掠った。

「あんたたち! 覚悟決めなさい!!」

 天子がそう叫ぶと皆が頷く。

突如要石が砕けた。

 中央から割れた要石は六つの塊となり分かれる。

その間を天子が行った。

 彼女は砕けた要石を蹴り落下の速度を速める。

そして緋想の剣を突き出すと障壁に激突した。

 

***

 

━━当たった!!

 天子は手に伝わってきた感触に頷く。

 緋想の剣はその刃を輝かし、障壁と押し合いを行っていた。

「貫きなさい! 緋想の剣!!」

 刃がついに障壁を貫く。

しかし緋想の剣は障壁に突き刺さり傷を入れたが障壁自体は破壊できない。

「アマテラス!!」

 上方を振り返り叫ぶと砕けた要石にしがみ付いていた衣玖がアマテラスを投げた。

白い大神は空中で回転しながら叫ぶと体から白く輝く神気を放ち、それは霧状となって緋想の剣によって傷つけられた障壁に入り込む。

 その直後波打つ水面に異変が起きた。

 アマテラスの神気は障壁を蝕むように広がり、水面に皹が走った。

そしてガラスが砕けるように音を立て、障壁が砕けた。

━━よし!!

 ツクヨミと相反するアマテラスの神気を障壁に流し込み相殺する。

それでも砕けるのは一部のみだが六人と一匹が通るには十分だ。

 既に穴の修復が始まっているがその間に砕けた要石ごと皆が通過する。

「やりましたわね!」

 自分の上方で要石の破片につかまっているミトツダイラがそう言うと「それで」と続けた。

「……これからどうしますの?」

「………………あ」

 そうだ、約一名を除いて飛べないんだった。

冷や汗を掻き皆を見れば、皆同じような顔をしていた。

「…………気合で?」

「む、無理で御座るよ! 流石にそれは!!」

 だ、だよねー。

 既に地面が迫ってきている。

「も、妹紅!!」

 と妹紅の方を見れば彼女の姿は無かった。

「あいつ何処に行ったぁー!?」

 対空砲の砲弾が近くで爆発し忍者と英国王女を運んでいた要石が爆風で離れる。

地面との距離は地上の人が見えるぐらいになっており思わず目を瞑る。

 だが体は何時まで経っても地面に激突することは無かった。

「?」

 何事かと目を開けてみれば自分は風を身に纏っていた。

自分だけではない衣玖やミトツダイラ、そしてアマテラスも風を身に纏う。

「ふゥ……間一髪だぜ!」

 イッスンの手には小さな筆が握られており空中には何かが描かれていた。

 四人と一匹は大地にゆっくりと着地すると互いを見合う。

「た、助かりました。アマテラス様、イッスン様」

「ええ、流石に肝が冷えましたのよ」

 確かに。

もう駄目かと思った。

 少し遅れて要石が降り注ぎ始め筒井城各所で轟音と共に地響きが鳴った。

「ま、まあ。作戦成功?」

 そう言うと衣玖が半目を送ってくるが目を逸らしてごまかす。

前を見ればそこには天守が有り、自分達が敵の中枢に落ちたことが分かる。

「まさかいきなりラスダンとはね」

「これは好機ですわね。一気に天守を落としてしまいますの?」

「でも結界はどっから来てんだァ?」

「…………あの、皆さん?」

 確かに、天守を落としても障壁が無くならなければ逆に窮地に追いやられる。

浅間に連絡し、術の発生場所を探ってもらうとミトツダイラを見る。

「ともかく身を隠しましょう。犠牲になった忍者達のためにも……」

「ええ、そうですわね。第一特務もそれを望んでいるはずですわ……」

 忍者はともかく英国王女には悪い事をした。

うん、まあ二人とも生きてるんだろうけど。

「あの……だから、皆さん?」

「隠れるったてどこにするんだ?」

 イッスンの言葉に皆思案すると衣玖が「皆さん!!」と叫んだ。

「どうしたの? 衣玖?」

 そう問うと彼女は前方を指差した。

「その、ラスダンとかじゃなくて私たちラスボスの前に居るのですが……」

「…………は?」

 彼女の言葉に振り返ればそこには銀の長い髪を編んだ女性が立っていた。

 彼女はゆっくりと微笑みかけると弓を構える。

「敵将を前に随分と余裕ね? どうするつもりかしら?」

 どうするか?

そんなの決まってる。

「作戦ターイムっ!!」

 そう手を上げた。

 

***

 

 筒井城近くの山の山頂。

そこから一人の青年が筒井城を見ていた。

 ウシワカだ。

彼は目を細め筒井城天守の方を見る。

「さて、天子君。今のユーたちじゃ彼女には勝てない。これからどうするか期待させてもらうよ」

 そう言って彼は口元に笑みを浮かべた。

 

***

 

「……………」

 唖然としている永琳にもう一度「作戦タイム!!」と言うと彼女は「あ、はい」と頷いた。

 よし、これで時間を得た。

 皆で輪になると表示枠を開く。

・天人様:『で、ぶっちゃけあいつに勝てそうなのいる?』

・あさま:『幻想郷ではどの位の実力だったのですか?』

・魚雷娘:『彼女自身が表立って戦った事は少ないためなんとも……。ですが月の都の賢人で都の創設に関わったとか年齢は億を超えるとかツクヨミの親戚だとか。まあ全て噂の域ですが……』

・銀 狼:『なんですの、そのチート設定は……』

・俺  :『ところでよおー。ツクヨミとかって何なんだ?』

・未熟者:『聞きたい! 聞きたいよね!?』

・あさま:『ツクヨミは月を神格化した神で、伊弉諾尊によって生み出されたと言われています。また天照大神の弟神とも言われていますが全体的に表舞台に出る事は少なく、謎の多い神ですね』

・貧従師:『はあー、なんだか凄そうですね。あれ、書記、どうしたんですか?』

・未熟者:『ああ、うん。なんかもう慣れたなーって』

 ともかくそんなチートの塊の様な存在だ。

どう戦うのか慎重に考えなくては……。

・焼き鳥:『ごめん、軌道がずれて城の外に落ちてた。直ぐにそっちに合流する』

・天人様:『いや、ちょっと待って。浅間? 障壁の出所は?』

・あさま:『はい、障壁は天守から発生している様です。それにこの障壁少しヤバめです』

・ホラ子:『ヤバめとはいったいどう言う事でしょうか?』

・あさま:『障壁に組み込まれている術式ですが空間遮断系の物があります』

・魚雷娘:『空間遮断……ですか……?』

 空間遮断の術式を何故障壁に?

ふとウシワカの言葉を思い出した。

 月の雲隠れ。それに空間遮断の術式。

━━まさか!!

・天人様:『敵は筒井城を隠す気ね!!』

・ウキー:『ふむ? どういう事であるか?』

・天人様:『永遠亭の連中は幻想郷に居たとき自分達の根城を結界で隠したの。それを筒井城にやる気だわ!』

・副会長:『筒井城が隠れてしまえば此方は手出し出来なくなる。敵は持久戦を狙って来たという事か……!!』

・煙草女:『じゃあどうするんさね? あんまり悠長には出来ないよ』

・天人様:『…………私たちが八意永琳の注意を引付けるわ。その間に藤原妹紅、貴女は天守を攻撃して』

・焼き鳥:『了解』

 さて話しは纏まった。

後はどう注意を引くかだが。

 皆で振り返れば永琳が暇そうにしていた。

「あら? 作戦会議は終わったのかしら?」

「ええ、ばっちりと」

 そう言って一歩前に出れば永琳は構えた。

「あんたの策は見抜いた!! この城を異空間に隠す気ね!」

 その言葉に彼女は口元に笑みを浮かべ、頷いた。

「浅間神社の巫女ね。流石に専門家には隠し切れないか」

 彼女は目を鋭くし此方を睨む。

「それで? どうする気かしら?」

「あんたに相対戦を申し込む!」

「嫌よ」

 

***

 

・ホラ子:『あ、詰みましたね。これ』

・天人様:『ま、まだよ!!』

 

***

 

「だって当然じゃない。火中に飛び込んできた虫のいう事を聞くわけ無いでしょう?」

 そう言って彼女が片手を挙げると兵士達が現れ、取り囲まれた。

「総領娘様!!」

「何とかする!!」

 と言った物のどうするか?

思い切って暴れても良いがそれはかなり危険だ。

 皆が構えていると突然表示枠が開いた。

『武蔵アリアダスト教導院副会長、本多・正純だ! 筒井家に一つ提案がある!!』

 

***

 

━━提案? この状況で何を?

 そう思うがその提案が気になるのも事実。

 自分達は時間を稼げればそれでいい。

ならば敵の交渉に乗るのも一興だろう。

「一応聞きましょう」

 そう返すと武蔵の副会長は頷いた。

『徳川は筒井家の八意永琳と相対戦を望む。この勝負そちらが勝てば我々は軍を引き、今後一切筒井の地には侵攻しない!』

 なんですって……?

「……それを信じろと?」

『Jud.、 これは徳川からの正式な交渉であり、そちらも記録をとってくれてかまわない』

━━正気?

 筒井の地を今後一切侵攻をしないという事は徳川は西進を諦めるという事だ。

 正直言えば食いつきたくなるほどいい話である。

だがこういった事の裏には必ず何かある。

 さてどう返すかと考えていると表示枠が開き、筒井順慶が映った。

『永琳よ。受けてはどうだ?』

「順慶様?」

 彼は腕を組み頷く。

『兵を苦しませずに済むならそれで良い。それに相対戦に勝たなくとも我々には“勝機”がある』

 確かに。

相対戦に勝とうとしなくても戦いを引き延ばせば術が発動するのだ。

そうなれば我々の勝ちだ。

「そちらが勝利した場合は? なにか目的があるのでしょう?」

『ああ、此方が勝利した場合。障壁の解除を要求する』

 博打だ。

この相対戦が筒井の勝敗を決することになる。

『永琳、やりなさい』

「姫様…………」

『貴女なら勝てるわ。そうでしょう?』

 主にそう言われ目を閉じる。

 勝算は有る。

久々に本気を出すことになるが構わないだろう。

「いいでしょう。相対戦のルールは? 一対四かしら?」

『試合形式にする。一人十五分、二戦目と三戦目の間に五分間の休憩時間を入れる。そちらは此方を全滅させれば勝ち、此方はそちらを無力化できれば勝ちだ。

相対中に逃亡した場合は此方は敗北。そちらが逃亡した場合は此方の全員で戦いに掛かる』

 試合を最大まで引き伸ばして六十五分。術の発動には十分間に合う。

それにそれより早く終わらしてしまってもいいのだ。

 正純に了承の頷きを返すと正純は『少し時間をくれ』と言った。

 

***

 

 筒井城の天守で筒井順慶と蓬莱山輝夜は表示枠を見ていた。

そこには話し合う武蔵の連中が映っておりなにやら揉めている様だ。

「どうして相対戦に賛同したの?」

 輝夜にそう言われると順慶は頷いた。

「先ほども言ったが兵を苦しませたくないからだ」

 「それだけ?」と聞くと彼は苦笑する。

そして頬を掻くと此方を見る。

「……実は言うとな、武蔵の力を見てみたかったのだ。前を見据え進む者たちの覚悟と力を。輝夜殿もそうでは無いのか?」

 輝夜は楽しそうに目を細めると首から提げた懐中時計のような物を摩り、頷いた。

「ええ、私も見極めたいのよ。彼等こそがこの世界を変える者たちなのかどうかを」

 永琳には悪い事をした。

だが彼女に勝つことが出来なければ徳川はこの先を生き残れないだろう。

「さて、私を失望させて引きこもらせるか、それともここまで来るか。お手並み拝見だわ」

 

***

 

・副会長:『で、相対戦になるわけだが』

・銀 狼:『これ、家康公の許可、本当にとってますの?』

・副会長:『…………』

・約全員:『とってないのかよ!!』

・魚雷娘:『ですがこれで注意を引きつけることに成功しました』

・あさま:『後は勝てるか? ですね』

・副会長:『ああ、引きつける事が出来ても相対戦で負けてしまっては意味が無い。この相対戦、必ず勝たなければいけないが出来るか?』

・天人様:『正直、あの月人が噂通りならかなりきついわね。アマテラスは切り札になるから最後まで温存しておきましょう』

・銀 狼:『なら一番手は私が』

・魚雷娘:『いいえ、一番手は私が行きます。皆さんに比べ戦闘能力の低い私が出来るだけ戦いを引き延ばして敵の手の内を曝させます』

・天人様:『ならこうするわ。

一番手:永江 衣玖

二番手:ネイト・ミトツダイラ

三番手:比那名居 天子

四番手:アマテラス&イッスン

これでいいかしら?』

・銀 狼:『異論は有りませんわ』

・魚雷娘:『私もそれで構いません』

 

***

 

 話を終え、皆顔を見合わせる。

「さあ、行くわよ」

 総領娘様がそう言い頷く。

「では、行って参ります」

 皆が一歩下がり、自分は一歩前に出る。

 敵は先ほどと変わらず悠然と構えており此方を歯牙にもかけない雰囲気だ。

 自分は総領娘様や他の戦闘系の皆と違い戦いに執着はしないが成程、こう余裕でいられるとその表情を崩したくなる。

「あら? 貴女が一番手かしら?」

「はい。荒事は苦手なほうですが、全力で当たらせていただきます」

 永琳は「ふ」と笑うと表情を改める。

その瞬間、重圧が来た。

 圧倒的な力の差。それは体を押しつぶすような重みとなり、此方に掛かる。

━━これが月人の力!!

 あの八雲紫ですら敗れたという月人の力。

自分ごときの力がどこまで通用するかは分からないが……。

 後ろを振り返れば総領娘様が力強く頷いた。

 彼女の瞳は此方を信頼するように力強く。それに頷きを返す。

「……総領娘様に信頼されては本気を出すしか有りませんね」

 自然と緩む頬を叩き、足腰に力を入れる。

さて、行きましょう!

 腕に羽衣を巻きつかせ全身に雷を纏う。

そして構えると相手を見据えた。

「永江衣玖。一番手、参ります!!」

 そして駆けた。

 日の沈み始める筒井城にて相対戦が始まった。


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