緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第四章・『緋想の御者』 天を統べ、地を統べ、人を統べる (配点:非想天)~

 浜松港より東部1kmの位置で徳川軍と今川軍は対峙していた。

徳川軍総勢2900名は前方に3列の方陣を組み、その後方に一列部隊を配置していた。その中には対艦用の長砲を装備した朱色の女性型武神”地摺朱雀”と実弾砲を装備した軽武神隊も存在した。

徳川軍の上空には3隻の航空艦が滞空し、さらにその後方浜松上空には残りの2隻が浜松港を守るように配置されている。

 一方今川軍は総勢1万7500人で鶴翼の陣形を組み、その上空にドラゴン級戦闘艦を一列に配備し、艦と艦の間にはワイバーン級護衛艦が配備されていた。

そしてその今川艦隊の後方に2隻のクラーケン級戦艦に守られる形で駿河が滞空していた。

 その駿河の艦橋から今川義元が浜松港を見ていた。

彼は少し興奮気味に

「あれが噂の武蔵か! 映像では見たことがあったが実際に見ると圧巻されるなあ!」

と隣の雪斎に言う。

「聞けば全長約2里ほどで、彼らのいた世界では世界征服を行っていたとの事です」

義元はますますみ興味深そうに武蔵を見る。

「世界征服! それは良いな! 浪漫があるというものよ!!」

そう言い彼は艦橋後部の席に座り、雪斎を見る。

「雪斎、我は決めたぞ。浜松を制圧した暁にはあの武蔵に入って我が世界征服してやる!」

そんな彼の言に雪斎は苦笑した。

「ではまずは勝利しなくてはいけませんな」

「おう」と義元は頷き、表示枠に映されている配置図を見る。

「まず状況は我らが圧倒的有利か。敵は方陣組んでいるがどう思う? 雪斎よ」

「おそらく相手は岡崎の援軍を待っているでしょう。その為守備に適した方陣を組むは必定。ただ……」

「ただ? この後方の一部隊気にかかると?」

「左用」と雪斎は頷いた。

「有事の際の遊撃隊か、もしくは何らかの策があるのか……」

と雪斎は顎に指を添えた。義元はそんな雪斎を微笑しながら見、

「まあ何にせよあまり時間を掛けられないのは確かだ。ここはまず少し突いてみようか」

 

***

 

 夏の日差しが最も強い1時頃、徳川軍が浜松側において方陣を組んでいた。

兵士たちは皆、夏用の装甲服を着ており前列の兵士は大型の術式盾を支え、その後方に長槍を構えた兵士たちと長銃を構えた兵士たちがいた。

兵士たちは皆額から汗を掻き、不安と緊張が混じった表情をしている。

 そんな彼らの後方に大型の表示枠が表示されトゥーサン・ネシンバラが映る。

『戦いが始まる前にみんなに言いたいことがある。

みんな、この戦いを自分たちが不利だと思っていないかい?

だとしたらそれは大きな間違いだ』

ネシンバラがそう言うと兵士たちはざわめき始めた。そんな彼等にネシンバラは一回頷き。

『だってそうだろう? 僕たちはあと一時間、一時間耐えれば岡崎から徳川家康公が援軍に駆けつけてくれる。援軍さえ来れば僕たちの勝ちさ。そうすれば僕たちは世界中にこう語られるだろう「寡兵で大軍を押し返した」ってね。

そう、僕たちが歴史を動かすんだ! だからみんな━━勝とう!』

「「Jud.!!」」

兵士たちは自分たちの武器を掲げ叫んだ。皆、先ほどの不安そうな表情は無くその瞳には強い意思が灯っていた。

 

***

 

 そんなネシンバラの演説を最前列で聞いている二人がいる。

ネイト・ミトツダイラと本多忠勝だ。

「まったく、うちの書記はこういうのが好きですわね」

と苦笑しながら言った。すると忠勝が微笑む。

「だが、士気は上がった。よい軍師を持ったものよ」

「少々トビ過ぎているところもありますけどね」

忠勝は眼前の今川軍を見た。

「ミトツダイラ殿、浜松の様子は?」

「Jud.、 現在も退避作業を続けていますわ。避難しきれない人間は武蔵の方で収容しいますわ。そのせいで武蔵は航行できませんが、障壁で援護してくれるそうですのよ」

そうか。と忠勝は言うと右手に持つ蜻蛉切を構え直し、ミトツダイラを見ると厳しい表情をする。

「とは言えこの戦、厳しいものになろう。ご覚悟は?」

ネイトはその膨大な髪を靡かせ一歩前に出る。

「私、武蔵の騎士ですのよ? 王に危険が差し迫るならその危険を抑え、打ち倒すのが騎士の務めですわ」

そう言い眼前の今川軍を睨みつけた。

 

***

 

 武蔵アリアダスト教導院。その屋上にトゥーサン・ネシンバラが居た。

彼の後ろでは全裸とその姉とホライゾンがテーブルを囲んで茶を飲んでいる。

ネシンバラは右肩の上に走狗”ミチザネ”を浮かばせており、彼の目の前には表示枠が開かれていた。

彼は表示枠に映された戦場の概略図を見ながら言う。

「いいかい、みんな? これからプロットを示そう。

さっきも言ったが僕たちの勝利条件は今川軍を倒す事ではなく時間を稼ぐことだ。そのためにまず前線部隊には時間を稼いでもらいたい」

すると後方部隊にいる天子から通神が入る。

『15分よ。あとそれだけあれば終わるわ』

「━━ということだ。

前線部隊は15分間耐えてくれ。そして比那名居君の準備が完了しだい後方部隊まで撤退し、例の作戦を行う。作戦成功後はそこを最終防衛ラインとして反撃に転じるよ。

魔女隊には今川軍の両翼にいる射撃部隊を叩いて欲しい。

両翼の銃撃が無くなるだけでこの戦い、ずっと楽になるはずだ。その後は前線部隊の援護を続けてくれ。

どうだい? 簡単だろ?」

 

***

 

簡単に言ってくれるさね。

と後方部隊で地摺朱雀の調整を行っていた直政は思う。

今川軍の数はこちらを圧倒しており、しかも多数の航空艦まで所有している。

こちらも武蔵の障壁や航空艦の砲撃と朱雀の長砲で援護するがそれでも限度がある。

横を見れば先程から比那名居天子と永江衣玖が陣の中央で立っている。天子の手には緋色の剣が握られておりその剣先を地面に刺しており、その横の衣玖は多数の表示枠を開き、忙しそうにしていた。

書記の話ではあの天人が鍵を握っているそうだが……。

ま、あっちは任せるさね。

そう思い朱雀の腰元で作業をしている少女を見る。

「大!! そろそろ下がりな!」

すると顔を整備用の油で汚した少女━━三科・大が振り返った。

「Jud! ちょうど終わったところだから━━━━」

直後、空中に障壁が展開され爆発する。

『今のは測距の為の砲撃です。続いて今川艦隊より流体砲来ます━━以上』

 

***

 

 一発目の砲撃の後、今川艦隊より流体砲と実弾砲による一斉射撃が行われた。

7つの流体光は一直線に徳川艦隊に向かうがその前面に武蔵の障壁が何層にも展開され、激突する。

障壁は流体砲を受け止めた事によって砕け散る。その砕けた障壁の合間を縫って実体弾が徳川軍に降り注ぐ。

それに対して徳川は弓道部による迎撃を行い、上空の三隻と朱雀を中心とした武神隊が反撃を始める。

 今川の陸上部隊は艦隊による一斉射撃が失敗に終わると動き始めた。

今川軍は両翼の部隊が徳川の前線部隊に対して射撃を始め、中央の朝比奈泰能、鵜殿氏長の部隊が突撃を始める。

 一方徳川軍は両翼から射撃を術式盾で防ぎながら突撃してくる部隊に射撃をした。

銃撃を潜り抜けた今川軍が前線部隊と接触した直後、最前列で突撃を敢行していた兵士が宙を舞った。

「━━━!!」

先程まで兵士が居た場所に一人の男が立っている。

本多忠勝だ。

忠勝は手に持っている蜻蛉切を大きく振り上げ叫ぶ。

「我が名は本多平八郎忠勝!! 勇ある者よ、我に挑むといい!!」

東国無双とされる忠勝の登場に今川兵は大きく動揺するが。再び突撃を開始する。

そしてなぎ払われた。

「━━━!?」

今川兵は円弧状に薙ぎ払われており、その中心には青い騎士服を着た少女が両肩から鎖を出しながら立っている。

「徳川家、武蔵アリアダスト教導院第五特務。ネイト・銀狼・ミトツダイラ、参りますわよ!」

その声と共に徳川・今川両軍が激突する。

 

***

 

 徳川・今川両軍が激突を始めた頃、その上空を60人ほどの魔女隊が飛行していた。

先頭を飛ぶ双嬢の内、ナルゼが地上の様子を見る。

「第五特務と人間チートが張り切っているお陰で何とか持ち堪えているわね」

その声にマルゴットが応じる。

「じゃあ、その間に右翼で銃撃している部隊を叩かないとね、ガッちゃん!」

ええ。とナルゼが応じると魔女隊が今川軍右翼に対して急降下を開始する。

今川軍は急降下してくる魔女隊に気がつき銃撃で応戦を開始した。

魔女隊は直ぐに散開し、銃弾をすり抜けていく。

銃弾を避けながらマルゴットは叫んだ。

「流石に気づかれたみたいだね!!」

「敵も馬鹿じゃないって事ね。━━だけど甘いわ!」

銃撃をすり抜けた魔女達は今川軍の頭上に投下型爆弾を落としていくと射撃のために密集していた今川軍の射撃部隊が吹き飛び右翼全体が動揺する。

魔女隊はその爆風を利用して急上昇をし、今川軍の射程から外れると旋回を開始した。

マルゴットは後続の魔女達を確認するとナルゼに近づく。

「全員無事! 今度は左翼行こっか?」

そうね。とナルゼが言うと今川艦隊より二度目の一斉射撃が行われ、武蔵の障壁とぶつかるのが見える。

「こっちで船を叩ければいいんだけどね」

「まあその事はアサマチに任せてこっちはこっちのお仕事、片付けよう」

ナルゼとマルゴットは頷き合い、今川軍左翼に向かって加速した。

 

***

 

 浜松の高台に一人の戦闘用の巫女服を着た浅間・智がいた。

浅間は二つの弓を連結させた大弓「梅椿」を構えており、彼女の近くには射撃補助を行うために彼女の走狗“ハナミ”が浮遊している。

浅間は左目の義眼「木葉」の前に表示される仮想照準で遥か前方を飛ぶ今川艦隊を狙っていた。

本来、巫女は戦闘行動に加担してはいけないが無力な民を守るためなら応戦可能だ。

そう、あくまで仕方なくだ。

最近撃ってなかったからちょっと嬉しいとか思ってません━━ええ、思ってませんとも。

するとトーリから通神が入る。

『オメエ、いまチョー充実してね?』

「そ、そんなことありませんよーーぅ! 全然楽しんでなんかいませんよーー! 本当ですよーー!」

「撃ちたかったのかよ……」と皆が言う。

浅間が冷や汗を掻いていると全裸の背後にいる狂人が身を乗りだす。

『それはそうよ、だってこの娘最近あまりにもズドンしてないせいで無意識のうちに愚弟を狙ってたんだもの!』

「な、何言ってるんですか!? 別にトーリ君だけを狙ってたわけじゃないですよ!!」

・約全員:『余計に悪いわっ!』

ホライゾンは頷くと全裸を見る。

『なんと、今川軍はトーリ様他数名の命を救ったわけですね。ほら、トーリ様、今川軍にちゃんとお礼を言いなさい』

 

***

 

駿河艦橋で通神を管理していた兵士が雪斎の方に振り返る。

「せ、雪斎様。武蔵の総長が全裸でセクシーポーズしながら感謝してきました!! どうすればいいでしょう!?」

「馬鹿者! 敵の詭計に惑わされる出ない!」

 

***

 

「ねーちゃん、ねーちゃん。いま、今川から返答あったんだけど短く「死ね」だってさ」

「まったく今川は芸がなってないわねー、もう一回送ってみなさい。今度はアップで!」

 

***

 

「せ、雪斎様! 今度は股間のドアップで送られてきました!! もう撃っていいですよね!!」

雪斎は頭を抱えた。

 

***

 

━━まったく何やっているんですか……。

と浅間は苦笑しながら照準を合わせ直す。見れば今川艦隊は三度目の一斉射撃のための準備を行っていた。

弓の狙いを定めると武蔵からの通神が入る。

『浅間様、よろしくお願いします━━以上』

「浅間神社は浜松と武蔵を守るためにその力を行使します」

今川艦隊の主砲が発射準備に入る。

「義眼・木葉、会いましたっ!!」

術式加護を受けた矢が梅椿から射出された。

 

***

 

今川艦隊のドラゴン級二番艦は三度目の射撃のための最終調整に入っていた。照準を浜松港近くに停泊する武蔵に定め、撃とうとしたその瞬間砲身が爆発した。

二番艦は主砲の爆発によって外部装甲を砕かれ、甲板を炎上させながら高度を落としていく。

 その二番艦の様子を三番艦が見ていた。

三番艦の艦橋は騒然としており、通神兵が二番艦と交信を行っていたり他艦との情報交換を行っていた。

三番艦の指揮官が索敵班を行っていた兵士に叫ぶ。

「索敵班! 何処からの攻撃だ!」

すると大型表示枠に大弓を構えた巫女の姿が映し出される。

「敵は武蔵の射殺巫女ですっ!!」

直後二度目の射撃が行われ三番艦の主砲が破砕した。

 

***

 

 今川の艦隊が損傷した艦を守るように後退していくのをマルゴットとナルゼは見ていた。

「あの射撃巫女……相変わらずとんでもないわね」

「いやぁ、ナイちゃん久々にアサマチのズドン見たよ」

とマルゴットが苦笑する。

 今川艦隊が後退したことによって今川全軍に動揺が走り始めている事が上空からでも分かった。

この好機、逃せないよね!

とマルゴットは今川の左翼部隊に爆撃を仕掛けようとすると後方を飛行していたナルゼが叫んだ。

「マルゴット!! 下よ!!」

マルゴットは咄嗟に身を逸らし回避行動を取る。その直後、先程までマルゴットがいた位置を巨大な火球が高速で通過する。

回避し切れなかった二人の魔女が機動殻を焼かれ墜落するが後方を飛んでいた味方が回収した。

 マルゴットはその様子を見て安心した後、火球が飛来した方を見る。

「━━不死鳥!?」

 魔女隊の下方、今川軍から炎の巨鳥が飛来する。不死鳥はナルゼを見ると速度を上げ、彼女に突撃した。

ナルゼは飛来してくる不死鳥に対して正面から行き、急降下を行った。不死鳥は目標を見失った為一瞬動きを止める。その隙を突き双嬢は不死鳥の背後を取り射撃した。

それに対し不死鳥は双嬢の攻撃を回避ながら炎の翼を大きく開き、羽根を散らす。

羽根はそのまま炎弾になり炎の雨が双嬢に降り注ぐ。

マルゴットは退避のために急上昇し、ナルゼは急降下し炎弾を抜け合流すると不死鳥は既に旋回を終えており、こちらに対して再び突撃を仕掛けてきた。

「やるよガッちゃん!」

マルゴットとナルゼは速度を急激に落とし、機動殻を垂直近くに傾ける。

急減速したためGが加わりマルゴット達は機動殻に押し付けられる形になったが構わない。

「投下用の炸裂弾よ! 喰らいなさいっ!」

そう言い二人は機動殻の側面に付けていた爆弾の留め金を外すと爆弾は宙に舞い、向かってきた不死鳥に激突し爆発した。

 

***

 

 爆風によって揺れる白嬢をナルゼは制御しながら爆心地を見る。

━━やったの!?

爆炎が消えるとその中から不死鳥が現れる。だが、不死鳥の姿は先程の姿とは違い翼のみとなっておりその根元には白髪の少女がいた。

少女は額から血を流しており、双嬢を睨み付けると再び炎を身に纏い不死鳥の姿となった。

「あれが本体ってわけ!」

「また来るよ! ガッちゃん!」

不死鳥は再び羽ばたき双嬢に襲い掛かる。

 

***

 

 徳川前線部隊は限界に達していた。

今川軍の猛攻を前に徳川兵は疲労困憊状態であり、戦闘による死傷者も着実に増えていた。

そんな中、ミトツダイラと忠勝は奮戦しいた。

 忠勝は長時間の戦闘にも関わらず傷を一切負っておらず、正面から迫る今川兵を蜻蛉切の石突で突き飛ばし回りこんで来た兵士をそのまま槍の先端で貫きそのまま槍を横に振り敵を纏めて吹き飛ばした。

一方ミトツダイラは銀鎖を横に薙ぎ、それをすり抜けてきた敵を手刀や蹴りで迎撃していた。

そろそろ限界ですのよ!

後ろを見れば徳川の兵は皆傷を負い、疲れていた。このまま戦い続ければ本当に壊滅するだろう。

そう思いながら飛び掛ってきた兵士を銀鎖で地面に叩きつける。

その瞬間表示枠が開いた。

『待たせたね諸君! 第二フェーズに移行してくれ!』

 

***

 

今川義元は駿河の艦橋から一つの動きを見た。

徳川軍の前線部隊が崩壊し、敗走を始めたのだ。駿河の艦橋が歓声に沸く中、義元は怪訝な表情をした。

「妙だな……」

すると同じ表情をしていた雪斎が頷く。

「義元公もそう思われるか」

「ああ、あっさりし過ぎだ。これは何か策があるな……」

そう言うと義元は立ち上がり通神兵に指示を出す。

「泰能と氏長の部隊はそのまま追撃せよ。両翼の部隊はそのまま動くなと伝えろ」

通神兵が指示を出し始めると義元は顎に指を添える。

「━━さて鬼が出るか蛇が出るか」

そう言い、義元は目を細めた。

 

***

 

 徳川軍後列にいた比那名居天子は瞑っていた目を開ける。眼前には一体の地脈を現す表示枠が開かれており、その後方には撤退する前線部隊と追撃を始めようとする今川軍がいた。

━━いい感じね。

と天子は思う。

元来自分は苦境に立たされるのが好きだ。だが、ただ苦境が好きなのでは無くそこから逆転するのが好きなのだ。

その性格が災いしてか幻想郷に居た頃に大異変を起こし、どっかの大妖怪にボコされたが些細な事だ。

 視線を横にすると自分の補助のために忙しそうにしている衣玖と目が合う。彼女はどこか緊張した趣でこちらに会釈したので苦笑する。

心配性ねぇ……。

すると武蔵の狙撃巫女が表示枠に映った。

『浅間神社のほうでも最大限のバックアップはしていますが、気をつけてください。いざと言う時はこちらで介入します』

「心配ないわ。この程度余裕よ」

巫女が何かを言いたそうにするが無視する。再び前方を見ればちょうど前線部隊がこちらに合流したところであった。

今川軍はこちらを警戒しているのか、追撃の速度はやや遅い。

天子は表示枠に語りかける。

「葵・トーリ。今からアンタに滅茶苦茶恩を売ってやるから感謝しなさい」

『うっひゃー、俺恩売られちまうのかー。こりゃ後でちょー感謝しないとな!』

馬鹿の反応に思わず頬が緩むが回りにバレ無い様に隠す。

そして衣玖をはじめとした周囲の人間を見た後、高らかに叫んだ。

「かつて偉人はこういったわね。天下を征するには天・地・人を征する必要があるって。

私は既に天と地を統べたわ。そして、これから人も統べてみせるわ!

だからこの一戦は“私”の“私”による“私”のための天下獲りの始まりよ!!」

地に突き刺さっていた緋想の剣が眩い光りを発した。

「いくわよ、大逆転! “乾坤「荒々しくも母なる大地よ」”!!」

その直後、周囲を緋い光りが包んだ。


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