緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第六章・『宴会場の話し手』 食べるの? 飲むの? 話すの? (配点:日記)~

 筒井城で開かれた宴会は上から下への大騒ぎとなり。

城では将兵が飲み交わし、近隣の村もそれに釣られ宴会を行っていた。

 城の各所で酒や祭の雰囲気に酔った者たちが歌を歌い、踊り、笑い声が耐えない。

 そんな天守前の広場では焼肉用の鉄板が並べられ、肉や野菜が焼かれ白い煙を上げていた。

「えー、互いの親交を深める為……乾杯!!」

 上座の徳川秀忠が酒の入った器を掲げると皆一斉に「乾杯!!」と声を上げた。

 天子も手に持っていた杯を掲げると口をつける。

 冬の寒さの下、酒を飲みアルコールが体に染み渡る。

その温かさを心地よく感じていると隣で座っていたネイトが鉄板を挟んで反対側に座っていた鈴仙に訊ねた。

「こんなに食料を使って大丈夫ですの?」

「残った食料の在庫処理みたいな物だから大丈夫よ。冬越え用の食料は今朝運び入れたし」

 「成程」とネイトは頷くと皿を持ち箸で鉄板の上にある野菜を次々と取って行く。

 皿の上には野菜の山が出来上がり彼女は「いただきます」と言うとあっと言う間に平らげてい行く。

 そして皿から野菜が消失すると彼女は焼けた肉を次々と取っていった。

━━ああ、好きな物を最後に食べるタイプか。

 そう思いながら肉を一つ摘み、タレにつけると口に入れる。

「……あ、美味しい」

 肉を噛むと同時に口内に肉汁とタレの香りが広がり絶妙な味となる。

「臭みを消すために肉を日本酒に漬けて、それから焼いたの」

 鈴仙が肉を裏返しながらそう言うと衣玖が感心したように彼女を見る。

「貴女が作ったのですか? とても美味しいです」

「ええ、永遠亭にいた時は基本的に私が家事をしていたからね」

 鈴仙は気恥ずかし気に頬を掻くと新しく野菜を鉄板の上に乗せ始めた。

「でも天界の食べ物のほうが美味しいんじゃないの?」

「そうでもないわよ。天界の料理は基本的に薄味だから飽きるのよね。桃は美味しいけど食べ過ぎれば……ね」

 天界の桃は絶品で地上人の誰もが羨む物だ。

だがどんなに良いものでもそればっかりを食べ続ければ飽きる。

 その点、地上の食べのものは種類が豊富で面白い。

辛いもの、甘いもの、酸っぱいものに何だか良く分からないもの。

これ等を堪能できるのだから食事という面では地上人の方が裕福だろう。

「まあそういった食欲などの欲望から離れるのも天人修行ですからね」

「では天界とは欲とは隔絶された世界と言う事で御座るか?」

 そう訊いてきたのは追加の肉を載せた皿を持ってきた点蔵だ。

彼は皿を鈴仙の横に置くと此方を見る。

「どうかしらね? 理想郷といわれてるけど実際は欺瞞と傲慢に塗れた世界よ」

 「どういう事で御座るか?」と首を傾げる点蔵に頷きを返すと故郷の事を思い出す。

「天人たちは地上人を見下しているし、他界に対して興味を持っていない。その上土地が余っているのに地上に住みたがる。

どっかの妖怪がキレるわけよね」

 彼女がキレたのは半分以上自分のせいでもあるのだがまあ、そこは置いておこう。

「あんたの所は? 月から来たんでしょ?」

 人参を頬張りながら訊くと鈴仙は「うーん」と小さく唸る。

「私たちにとって地上ってのは罪人の住まう土地で降りるだけで穢れると言われていたわ。

私もそれを信じていたわけだけど、今は姫様たちに拾われて地上も悪くないと思っているわ」

 高いところに住む連中の考えは同じか。

そう天子は思う。

 どういう訳かは知らないが人は高いところに住むと自分が偉くなったように錯覚する。

その上で他者より優れた技術や力を持てばますます自分達の存在が特別であると思い込むだろう。

 だが特別な存在なんていない。

天人だって地上人と争いになれば数の差から負けるだろうし、月の民も何れは技術的に追いつかれる。

 神も信仰が無ければ存在できないし妖怪も同じだ。

 つまりはバランスだ。

 全ての生き物が互いに干渉し合い、影響し合う。

それによって世界は存続するのだ。

「ま、皆で切磋琢磨するのが重要って事ね。出来るかどうかは知らないけど」

 そう言い杯に残っていた酒を飲み干すのであった。

 

***

 

 藤原妹紅は焼き鳥を焼きながら満たされた気持ちであった。

 その理由は多くある。

酒を飲んでほろ酔いしているのもあるし、自分の作った焼き鳥を皆が美味しそうに食べているのもそうだ。

だが一番の理由といえば……。

「あっちの方、お酒が減っているみたいだからそこの瓶を持って行って」

 そう横目で言うと紺色のミニスカメイド服を着た輝夜が眉を上げていた。

「く、屈辱だわ……!」

 午前中のじゃんけんで負けた彼女は約束通りメイド服を着用した。

だがそれだけじゃつまらないと思ったのでもう一度じゃんけんをし、負けた方がメイド服を着て更に一日いう事を聞くという話を出してみた。

 意外と負けず嫌いな輝夜は食いつき勝負になった。

その結果がこれで……。

「何か文句あるのかしら? 輝夜ちゃん?」

 語尾を思いっきり強調して言うと輝夜は苦虫を噛み潰したような顔になる。

そのまま酒瓶をトレーの上に乗せると踵を返すが呼び止める。

「何よ!!」

 そう言う彼女に笑みを見せると自分の口を指差した。

「笑顔よ。メイドさん?」

 輝夜が眉を顰めながらぎこちない笑みを浮かべると思わず吹き出す。

輝夜が掴みかかって来そうになると筒井順慶が間に入ってきた。

「まあまあ、そこまでにしておけ。折角の宴なのだからな」

 順慶に言われるとばつが悪くなったのか輝夜はトレーを持ち永琳たちの方に向かった。

その様子を見届けると順慶は焼き鳥を一串取る。

「いつもあんな感じなのか?」

「腐れ縁みたいなものだからね」

 順慶は「ふ」と苦笑すると遠くを見た。

そこでは酒に酔って“曳馬”に絡んだ大久保長安と松倉重信が彼女に張り倒されている所であった。

「武蔵は……いや、徳川はいつもこんな感じなのか?」

「そうねえ、あっちはこの二、三倍騒がしいわよ。それでやる事はやっているんだから変な奴等よね」

 筒井に来てから静かだと感じたのは自分もすっかり武蔵の一員だという事だろうか?

━━慧音はどうしているのかしら?

 向こうで元気にしているだろうか?

まあ彼女は自分よりもずっとしっかりしているから心配はいらないか。

「はは、さぞかし楽しいのだろうな。向こうの生活は」

「順慶さんは武蔵に行く予定は?」

「今はまだな……。だが徳川が更に勢力を拡大し筒井の地が安全になれば武蔵を訪ねてみたいものだ」

 「きっと気に入るわよ」と言うとまだ焼けていない鶏肉を鉄板の上に乗せる。

そして順慶の方を見ると「私も結構気に入ったからね」と笑うのであった。

 

***

 

 宴も酣になると皆自分の席を離れ、それぞれ友人や上司の下に向かい話しに花を咲かせていた。

 そんな中鳥居元忠は胡坐を組み、手帳のようなものに万年筆で何かを書いていた。

━━ふむ、酔う前に書くべきだったか……。

 酔ったせいで手が震え文字が歪む。

今日は書かなくても良いかと思ったがこういうのは続けるから意味がある。

 酔いを少し醒まそうと空を見れば雲ひとつ無い空に月が輝いていた。

「何しているの?」

 後ろから声を掛けられ振り返れば皿を持った天子が立っていた。

「日記を書こうと思ったのだが酔って書けなくてな。月を見て酔いを醒まそうと思ったのだ」

「へえ、日記なんて書いてんだ」

 彼女はそう言うと此方の横に座り空の皿を地面に置いた。

「意外か?」

「ええ、意外ね。そういうことはしないタイプだと思っていたから」

「自分でもそう思う」と言うと互いに笑った。

「何で日記を書こうと思ったの?」

 そう訊かれ少し悩む。

暇であったため何となく日記を書こうと思った。

だがそれ以外に理由があるとすれば……。

「まずは技術の向上でこういったことがし易くなったというのがあるな」

 手帳にペン。

墨をすらずに文字を書けるというのは便利で良い。

それに手帳は小さく運びやすく何処でも書けるというのは自分みたいな各地を転戦する人間には便利だ。

「後は自分の存在を証明したいのだろうな」

 「証明?」と天子が首を傾げるのに頷く。

「正直に言うと私は自分自身が本当に鳥居元忠なのか分からないのだ。嘗て私は伏見城で死にそしてこの世界に蘇った。

だが蘇った私は本当に私か? 実は同姓同名の別人なのではないか? 幽鬼のように希薄な存在なのではないか?

そう思ってしまうのだ」

「だから日記を?」

「うむ。日記を書き、自分が今存在している事を記す。そうすればこの世で私が死したとしてもこの日記があれば存在した事を証明できる」

 何故第二の生を受けたのか?

それは誰もが知りたく、そして知らぬ事。

もしそれを知る事が出来れば己の存在に自信を持てるのだろうか?

「自分が誰か……哲学的な問いね」

 「確かに」と首を縦に振る。

「天子は自分が何者なのか分かるか?」

 そう訊くと彼女は不敵な笑みを浮かべた。

「勿論。この肉体や魂が紛い物だとしても“今此処で意識を持って存在している私”が私よ。

私がある限りこの世界での比那名居天子は存在している。そう信じているわ」

 堂々と言い切る彼女に感心する。

流石は天人と言った所か。

自分ではここまで言い切れない。

「で? 気になっていたんだけど、どんな内容なの? その日記」

 そう言って覗き込んできたので慌ててしまうと彼女は「ケチ」と言ってきた。

「日記は他人に見せる物ではない。だがそうだな……」

 天子を見る。

彼女は月明かりに照らされまだ幼さの残る彼女の姿は天人と言うよりは御伽噺に出てくる天女のように見える。

「もし私が死んだらお前に譲ろう。さっきも言ったがこれは私の存在証明の様なものだ。

誰かに持ってもらいたい」

 その言葉に天子は眉を僅かに顰める。

「縁起でもない。でもその時は貰ってあげるわ」

 そう言い前を見た。

そこでは何故かアマテラスとネイトが大食い競争になっており物凄い量の肉が積み重なっていた。

 天子はその様子に小さく笑うと空を見る。

「向こうも楽しんでるかしらね?」

 

***

 

 岡崎城での食事会は大広間を使った立食パーティーとなり、インド料理と英国料理、そして日本料理が並んでいた。

 一番奥のテーブルには家康と正純、北条の使者二人に英国大使として来たシェイクスピアとオリビエ、そして遊撃士協会支部長の幽々子と元姉小路家の姉小路頼綱が集まっていた。

 その他のテーブルには梅組みの連中や遊撃士達に英国からの客人たちと何故か呼んでないのに来ているオリオトライがおり、皆と会話を楽しんでいた。

 その様子を見ると正純は頷く。

「では我々も食事会を始める━━━━前に会談を終わらしてしまおう」

 

***

 

━━なんですって?

 武蔵の副会長の言葉に先代は軽く目を見開いた。

 昼は移動中という事も有り軽食で済ましその後相対戦を行った為、非常に空腹であった。

それ故この食事会を非常に楽しみにしていたのだ。

 神社での食事は質素であるため目の前に並んだ食事に完全に心を奪われていた。

そしてまだかまだかと待っていたら突然武蔵の副会長が食事の延期を宣言したのだ。

 思わずこの男装の少女を睨みつける。

━━いけないわ。落ち着きなさい私。

 巫女たるもの常に冷静でなければ。

 だがこのまま延期されるわけにはいかない。

「……皆食事を楽しみにしていたみたいだし先に食事にしては?」

 よし、なるべく自然に言えた筈だ。

「それもそうだな」

 副会長がそう頷くと他の席の連中を見た。

「よし、お前たち先に食べていいぞ。私たちは会議をしているから」

━━なんですって!?

 予想外だ。

何とかしなくてはと思い隣の幻庵を見た。

彼と目が合うと“何とかしなさい!”と伝え、ついでに“しくじったら潰すわよ”と睨みつけた。

「こ、此方も食事をしながらというのはどうかね?」

「済ますべきことはさっさと終わらせようと思ったんだが……他の人たちの意見は?」

 家康は「後でもいい」と答え、頼綱も「後でも構わないぞ?」と答えた。

次にシェイクスピアが「僕はもともと小食だからね」と言い、オリビエは「僕は女性の意見を尊重するよ」と答えた。

 終わった!

 八人中五人が“後でも良い派”。

残っているのは自分と幻庵とあの桃色食欲大怪獣だ。

「北条はどうする?」

 一応此方の意見を聞いてくれるのか……。

 幻庵が“やれやれ”と言うように首を振ると「ちょっとお腹がすいたねえ」と言う。

そして副会長の視線が此方に向く。

「先代は?」

 皆の視線が此方に注目する。

 既に決着の着いた戦い。

だが人生には退けない時がある。

そう思い口を開こうとした瞬間目の前を何かが高速で横切った。

 高速の何かは皿の上に乗っていたパンを掴み消える。

 誰も気がついていない。

 パンは消えたのではない桃色の怪獣の中に消えたのだ。

「…………」

「何かしら?」

 幽々子は人にばれない様に咀嚼しながら此方を見る。

「…………挨拶してなかったわね」

「ええ、お久しぶりね」

 幽々子が右手を動かし、此方はそれに応じて右手を動かす。

「何だ? 二人とも知り合いだったのか?」

 副会長の質問に幽々子は頷く。

「古い友人よ」

 幽々子が摺り足で前に出る。

「古い言うな」

 此方も前進する。

互いに笑顔を浮かべ合うと不穏な空気を察知したのかシェイクスピアが「ん?」と首を傾げた。

━━来る!

 右手が伸びてきた。

それを迎撃するために此方も右手を伸ばす。

互いに伸びた高速の手はテーブルの中央で激突し、火花を散らした。

 

***

 

 幽々子は直ぐに手を引くと左手を貫手で伸ばす。

狙うは手前の皿だ。

 敵の右手が使えない間にフルーツの乗った皿を掬い上げ奪う。

 だが敵はそれを察知していた。

敵は隠し持っていたフォークを投げつけ此方の手の進路を遮る。

 その隙に体勢を立て直した彼女の右腕がチキンを狙う。

━━流石ね!

 彼女を容易く突破できるとは思っていない。

 だがあのチキンを取られるわけにはいかない。

あれはさっきから自分が食べたいと狙っていたものだ。

 胸元から扇子を取り出すと開く。

すると扇子から薄紫色に光る蝶が現れ先代に向かった。

 この蝶は流体で出来たものであり、殺傷力は無いが触れると僅かな電流と怖気が走るようにしている。

 いくら食事の為とはいえこの蝶に触れようとは思わないはずだ。

筈だった。

 だが先代は腕を伸ばす速度を衰えさせず、そのまま蝶を握りつぶした。

握りつぶされた蝶は先代の手の中で光を散らし、流体光が彼女の手を伝播し拡散する。

━━手に防御術式を!?

「そこまでする!?」

「そっちこそ!」

 こうなれば早い者勝ちだ。

ほぼ同時に身を乗り出しチキンに手を伸ばす。

 二人の手がチキンに触れようとした瞬間、視界から消えた。

「え?」

「な!」

 視線の先でチキンが動いていた。

否、チキンが動いているのではなくチキンを持った腕が這っていたのだ。

「おや、どこに言ったかと思えばこんな所に」

 近づいてきた武蔵の姫がそう言うと這っている腕を右腕で掴み、自分の左肩に接続する。

そして彼女は持っていたチキンを齧った。

「ほんのりカレーの味がしますね。ハッサン様が作ったチキンですか…………どうかしましたか?」

「いえ、その、なんでもないわ」

 そう言うと先代と顔を見合わせ、互いに苦笑するのであった。

 

***

 

━━あーっと? 初めていいんだよな?

 目の前で高速の何かが行われたようだが、よく分からないうちに決着がついたようだ。

 他の皆を見れば、皆苦笑し此方を見ていた。

「さて!」

 場の空気を変えるために手を叩く。

「これから徳川家で会談を行うがいいな?」

 

***

 

 榊原康政はフィッシュアンドチップスを齧りながら感心する。

 武蔵の副会長は最初の一言でこの会談の主役が徳川であることを宣言した。

これにより今回の会談は徳川が主体で動く事になる。

━━まあ北条や英国も最初からそのつもりのようですからな。

 これが国家間の会議であればまず誰が会議の主役であるのかを証明することから始めなければならない。

 そうするには様々な方法がある。

 相対戦や舌戦、自国の大義の主張などを行い少しでも会議を有利に進めれるようにしなければいけないのだ。

━━武蔵の副会長なら必須能力ですな。

 他国と衝突する事の多い武蔵では舌戦も多かっただろう。

 葡萄酒を飲みながら横目で会議を見る。

━━さてさて、北条はどんな爆弾を出してきますかな?

 

***

 

「まずはこの場に居る皆に知ってもらいたい事がある。頼綱公」

 武蔵の副会長に促され頼綱が表示枠を開く。

そこに映されたのは以前見せてもらった黒い少女の写真だ。

「ほう……」

「……これは」

 北条の二人が反応し、シェイクスピアも僅かに頭を動かした。

「飛騨が襲撃された際、怪魔を従えていると思われる人物を撮ったものだ」

「撮ったのは私だぜー」とナンを齧っていた魔理沙が手を振る。

「これは驚いた。奴等に頭が居たとは」

「この少女の行方は?」

 先代の質問に頼綱は首を横に振る。

「この情報を提供したのは今、この世界に起きている事態が一国家で対応すべきでないと判断したからだ。

これは我々の北条に対する信頼の証だと思って欲しい。

それでそちらの提供したい情報だが……ある程度予測がついている」

 「それは?」と先代に促されるとオリビエと目を合わせる。

「概念核だな?」

 その言葉に北条の使者達は沈黙する。

そしてシェイクスピアがやや呆れたようにオリビエを見た。

「勝手に教えて……女王陛下に怒られても知らないよ?」

「フフ、麗しき女王陛下ならこの程度許してくれるさ」

「北条は結構その情報に注意を払っていたつもりなんだけどね」

 先代がそう言うとオリビエは「此方にも優秀な諜報員がいるという事さ」と笑みを浮かべた。

「小太郎に警備を厳重にしろと言っておくかね」

「そうね。あの助平爺、最近サボり気味みたいだからね」

 そう苦笑すると二人は真剣な表情になる。

「その通り、我等が隠している事は概念核についてだ」

 幻庵が先代に目配せし、先代が浅間を見る。

「浅間神社の巫女、ここのセキュリティは万全?」

「J、Jud.、 岡崎城周辺の情報は完全に遮断されています」

 焼酎を飲んでいた浅間の答えに頷きを返すと先代が此方を見た。

「私たちは概念核を所有しているわ」

 やはりそうか……。

「崩落富士だな?」

「Tes.、 富士山が崩落し怪魔と交戦した後、我々は調査隊を崩落富士に派遣した。

そして遺跡を発見したのだ」

「そこで概念核とやらを発見したと?」

 家康の言葉に「Tes.」と幻庵が頷く。

彼らが概念核を所有している事はハッキリした。

だが彼らが徳川に来た理由が分からない。

 何故徳川に来た? 何を徳川に求める?

そう問うと先代が目を伏せる。

そしてゆっくりと口を開いた。

「私たちは徳川に向かうように指示されたのよ。

━━━━“概念核の主”によってね」

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