濃霧がかかった山岳地帯に赤の軍団が布陣していた。
赤の軍団は風林火山の旗と六文銭の旗を掲げ、山道の各所に陣を張りその上空には航空艦を待機させている。
山道の奥には僅かな平地が広がっており、そこには兵六千からなる主力部隊が布陣していた。
その部隊に真田昌幸はいた。
彼は前線の陣から送られてくる情報を表示枠で見ながら煙管をふかす。
━━妙だ。
飛騨に布陣してから一ヶ月。
怪魔を一掃し、北上してきたP.A.Odaとにらみ合いを続けてきたが敵軍は全くと言って良いほど動かない。
最初の頃は互いの偵察隊が遭遇し、小規模な遭遇戦を行っていたがここ数日になって敵は偵察隊すら出さなくなった。
━━何を企んでいる?
敵は織田家だ。
油断してはいけない。
このままにらみ合いを続けるべきか、思い切って突いてみるか?
そう悩んでいると陣幕の中から赤い甲冑を身に纏った青年が出てきた。
「敵は動きませんね。父上」
「信繁か。今、山県殿に偵察に向かってもらったがそろそろ動こうと思う」
その言葉に息子━━真田信繁は表情を改める。
「ではいよいよ織田と会戦に?」
「いや、それはまだだ。前線を押し上げ、敵の出方を窺う。桜洞城の勝頼様と神奈子殿に後詰を頼もう」
山を下り、麓に布陣する。
今いる場所には武田勝頼に布陣してもらい緊急時に備える。
「信繁よ。お前は前線の信之に合流し前進の準備をしろ」
そう伝えるとほぼ同時に霧の中から真紅の四足機動殻が現れた。
『昌幸! 妙だ!』
「何事だ?」
四足機動殻━━山県昌景は手に持った西洋槍を山の麓の方角に向けると表示枠に情報を送ってくる。
『織田が引いている! この霧を利用し、陣払いを行ったようだ!』
それは確かに……妙だ。
何故織田は引いた?
戦力は彼らの方が上回っており、此方は地の利があるものの有利度では相手のほうが上だ。
『赤備えは直ぐに動けるがどうする?』
罠か?
いや、釣り野伏せをするにはこの濃霧は危険すぎる。
同士討ちをする可能性があるのだ。
織田が撤退を始めた理由。
家中で何かあったか?
もしくは何かが始まるかか……。
「赤備えは敵の追跡を。交戦はするなよ」
『応!』と昌景は踵を返すと蹄を鳴らし、駆け出した。
「信繁、我等も直ぐに出るぞ!」
「御意!」
信繁が配下に進軍の命令を伝え、陣中が一気に騒がしくなる。
煙管を大きくふかし煙が霧と混じるのを見ながらなんとも言えない不気味さを感じる。
このタイミングでの織田の撤退。
何か大きな事が始まる気がしたのだ。
「……さて、どうなるか?」
答えのない質問を空に向かってするのであった。
***
不変世界西端にある九州。
そこは冬が来ない地であり、一年は春と夏と秋で繰り返されていた。
そんな温暖な大地のほぼ中央にある肥後国。
そこは阿蘇家が治めており以前までは英国と良好な関係を保っていた。
しかし英国が聖連から脱退すると関係は悪化、聖連と敵対する事を恐れた阿蘇家は隣国三征西班牙と同盟を結んだ。
英国はこれを裏切りと糾弾し軍を派遣、三征西班牙も阿蘇家救援のため軍を派遣した。
今、晴れ渡った肥後の空に二つの艦隊が向かい合っていた。
一つは白を基調とした英国艦隊であり横列に並んでおり、対するもう一つの艦隊は赤と十字マークを基調とした三征西班牙艦隊だ。
英国艦隊の中央に白と金のガレオン船が存在した。
「三征西班牙の奴等、随分とやる気じゃねーか」
ガレオン船の甲板上で双眼鏡を覗いた半狼の男━━フランシス・ドレイクがそう言い、口元に笑みを浮かべる。
「戦力差は三倍。向こうは所有艦隊の大半を持ってきたようですね」
隣で同じく双眼鏡を覗いていたチャールズ・ハワードの言葉に頷く。
赤の大艦隊は数の有利を使い鶴翼陣を取っている。
更に敵には武神隊や機鳳隊も存在しており戦況は此方が圧倒的に不利だ。
「俺たちが敵の注意を引き付け、その間に義弘の地上軍が敵を突き崩すだったか?」
「Tes.、 そして日が沈んだ後にスカーレット卿が率いる吸血系異族の部隊で夜襲を仕掛けます」
この戦い、空はあくまで囮と言う事だ。
だが……。
━━ただの囮で終わるのも面白くねぇなあ……。
「敵はこっちが動かないと思っているだろうな」
「それはそうでしょう。此方は船の数が少なく、不用意に前進すれば集中砲火を受けます」
「Tes.、 だからこそ例の作戦をやれば奴等ビビるだろうぜ」
「本当にやるつもりですか?」とハワードに訊かれ頷く。
後の事を考えるとここで少しでも三征西班牙の戦力を削っておくべきだろう。
表示枠で“例の船”に連絡すると正面を見る。
遥か遠く。
赤い艦群から閃光が生じた。
「仕掛けてきやがったか!!」
直ぐに障壁が展開され、数十もの流体砲撃が空中で弾ける。
「全艦、反撃だ! 前には出るなよ!!」
その指示と共に英国艦隊も一斉に反撃に出る。
空では流体砲撃と実体弾が交差し空中で激突した弾丸が爆発を生じさせる。
激しく揺れる甲板の上をしっかりと踏み、体を安定させる。
「さて! 大勝負だ!!」
***
英国艦隊の右翼に異様さを放っている一隻の航空艦が存在した。
外装を赤一色に染めた航空艦は先端を槍の様に尖らせ、三角錐に近い形をしていた。
そんな船の甲板にビーチパラソルが建てられている。
その下ではサングラスを掛けた幼い少女がビーチチェアに寝そべっている。
「始まったわねえ」
少女はそう愉快そうに言うと背中から生えている蝙蝠の様な羽を僅かに動かす。
「やはり数の差で押されていますね」
隣に立っていたメイド━━十六夜咲夜がそう言うと少女が楽しそうに笑う。
「そうでなきゃつまらないわ。このレミリア・スカーレットと対峙するならね!」
『余裕そうにしてるけどそっちヤバめだぜ?』
表示枠に映った赤毛の青年の言葉に頷く。
「これも作戦の内よ。敵の注意を私たちに引き付け本隊の損害を減らす。
フフ、敵もこのスカーレットデビル号の素晴らしさに目を惹かれているのね!」
『いやあ……悪目立ちしてるだけじゃあ……』
青年の言葉に顔を顰め「そんなこと無いわよ。ね? 咲夜?」と自分の従者に訊くと彼女は首を縦に振った。
「はい、お嬢様。御味方から『ぶっちゃけ悪趣味』『敵と間違えるから何とかしろ』『つーか、カリスマって何よ(笑)』と大好評で御座います」
「そうそう…………え?」
聞き間違いだろうか?
思いっきり誹謗中傷的な内容だった気がするのだが?
だが咲夜は平然としているのでやはり聞き間違いだろう。
そう心の中で納得していると敵艦隊からの砲撃が来る。
砲撃は障壁によって空中で弾かれるているがいちいち破砕音が五月蝿い。
「さくやー、五月蝿いからあいつ等黙らせて」
「お嬢様、いくら私でもここからではどうしようもありません」
『近けりゃ出来んのかよ』と赤毛の青年が呆れるとメイドが思いつく。
「そうだ! お嬢様! アレ使いましょう!」
「アレ?」と咲夜が指差す方を見れば、そこには長身の大砲があった。
それを見て「ああ、アレね」と口元に笑みを浮かべる。
***
さて困った。
特にやる事も無く艦内で昼寝をしていたら咲夜さんに拘束され、甲板まで連行された。
最初は主であるレミリア・スカーレットに説教されるのかと思ったが、彼女は満面の笑みで「貴女にしかできない事があるの」と言ってきた。
正直嬉しかった。
英国に来てからどうにも影が薄く。
やる仕事も宮殿の庭の整備だ。
そのせいで先日グレイス・オマリに「庭師の仕事頑張れよー」と言われつい「はい! 頑張ります」と答えてしまったが自分は庭師ではなく門番だ!
そんな自分の役職と仕事の差異に葛藤していた時にお嬢様から自分だけの仕事があると言われたのだ。
嬉しいに決まっている。
二つ返事で引き受けてしまったが、何故あの時仕事の内容を聞かなかったのだろうか?
そんな後悔をしながら身動きの取れない身でトマトジュースを飲み寛いでいる主を見る。
「なんで私、大砲の中に入ってるんですかぁー!?」
「なんでって? 仕事?」
「だから仕事って何ですか! 大砲に入る意味は!?」
そう訊くと主は「五月蝿いわねー」と眉を顰める。
「私から説明するわ」
「咲夜さん……」
咲夜は慈愛の表情を浮かべるとしゃがみ、視線を合わせる。
「お嬢様は敵艦隊の砲撃が五月蝿いから止めたいの。敵艦隊の砲撃が止まれば味方の損害も減るし、お嬢様がストレスを感じる事も無いわ」
まあ……それは分かる。
「だからね? 貴女には向こうまで飛んで行ってもらって撹乱してもらうわ」
━━……………………は?
待て? いま飛ぶといったか?
「あのぉ……まさか……」
「ええ、大砲で射出されて、敵艦に行って貰うわ。名付けて『スカーレット人間砲台』!」
いやいやいや!?
何を得意げな顔をしているんだ!? この人は!?
「し、死にますよ!?」
「大丈夫よ。衝撃吸収の術式加護をするから狙いが外れて地面に落ちても死なないわ。多分」
多分と言ったか!? 多分と!?
「ほ、砲撃が当たったらどうするんですか!? ちゃんと守られるんですか!?」
咲夜は沈黙する。
彼女は主の方を見るとレミリアも視線を逸らす。
そして頷き、「頑張りなさい!」とガッツポーズをした。
「無理ですよぉ!?」
いかん。直ぐに脱出しないと射出される。
この人たちは本気でやる!
大砲の中でもがいていると咲夜が下がり笑みを浮かべる。
「美鈴、もう発射するから」
は?
頭上を見ればカウントダウンを表す表示枠が浮いていた。
そこに書かれた数字はゼロと書かれており、それはつまり……。
「紅美鈴! 行ってきまーす!?」
その瞬間、風景が加速した。
***
━━おー、飛んだねー。
点になった美鈴を見て感心する。
このスカーレット人間砲台。
作ってから一度も使った事が無い為、ちゃんと飛ぶかどうか不安だったが大丈夫だったようだ。
『何と言うか……ドンマイだな』
赤毛の青年が本気で同情の表情を浮かべる。
確かに悪ふざけが過ぎた気がするが、彼女なら大丈夫だという信頼もある。
━━なんだかんだで頼りになるしねえ。
紅魔館で門番をしていた時はしょっちゅう昼寝をし、ザル警備であったが本気で敵と相対する時の彼女は凄い。
格闘戦のみであれば夜の私に匹敵するぐらいだ。
向こうに着けば直ぐに自分の仕事を理解し、果たしてくれるだろう。
そう思っていると突然艦内放送が鳴り響く。
『大型の駆動音を五つ確認! 照合したところ三征西班牙製重武神、猛鷲(エル・アゾゥル)です!!』
テーブルに置いてある双眼鏡を持ち除けば、遥か遠方。
雲を切り分け、赤と白の航空武神が接近していた。
「来たわね。歓迎してあげなさい!」
「分かりました。全搭乗員に告ぎます。本艦はこれより敵武神隊を迎撃します。
艦首鎖型流体砲開け、指示を待ちなさい」
咲夜の指示を受け船首の装甲が展開されて行く。
そして内部から六つの砲台が表れた。
***
青い空を五つの赤い影が通過する。
武神隊は対空・対艦戦闘用の装備をしており対艦用の長銃を持ち脚部には大型のミサイルコンテナを装備している。
隊の先頭を飛ぶ武神が後方を振り向く。
『敵艦隊を突っ切って敵を混乱させるぞ!』
『攻撃命令は?』
『必要最低限だ! 一隻沈めたら離脱するぞ!!』
『Tes!!』
三征西班牙としてはこの戦い、損害を抑えて終わらしたい。
この戦いの様子は龍造寺家も見ているだろう。
ここで消耗すれば奴等につけ込まれる危険性がある。
それは英国とて同じだ。
だからやつらも損害が大きくなれば引き上げるだろう。
『敵艦十二! どれを狙う!?』
部下に聞かれ視覚素子に映る映像を拡大する。
英国艦隊右翼は鶴翼陣を組んでおり此方を迎え撃つようだ。
━━常套だな。
あの中に飛び込めば集中砲火を受ける事になる。
普通なら中央突破をしないだろう。
だがこの陣は突破されやすいと言う弱点がある。
一度崩してしまえば後は脆いものだ。
『中央! あの悪趣味な船を落とす!!』
『おいおい、あの中に突っ込むのかよ』
『遣り甲斐はあるな!!』
部下達の言葉に頷くと飛翔器を展開する。
『行くぞ!!』
『『Tes!!』』
五機の武神が加速した。
敵の中央を抜ける突撃に対して英国艦隊が砲撃を開始する。
流体弾と実体弾の混ざった弾幕は此方を砕かんと迫ってくるが武神にとってこれ等を避けるのは容易だ。
長銃を右最前列の船に向ける。
狙うのは敵の流体砲。
そこを穿った。
流体砲を貫通された艦は甲板が炎上し、高度を下げて行く。
残りの船は此方を迎撃しようと機銃でも応戦してくるがもう遅い。
眼前に迫る赤い船。
その艦橋を狙い長銃を構えると敵艦の艦首が展開し、赤い流体砲撃が放たれた。
━━艦首砲か!!
『全機散開!』
指示と共に五機の武神が散開する。
見たところ敵の艦主砲は固定式の物。
射線上から逃れれば当たらない……当たらないはずだった。
『何だと!?』
六つの砲撃は空中で曲がったのだ。
曲がっただけではない。
先端をパイク状に変えた流体光はこちらを追尾し、迫った。
『これは……鎖か……!?』
一機が胴を貫かれ墜落した。
その近くに居た一機も上空に逃れようとするが流体の鎖に巻きつかれ全身を破砕される。
━━いかん!!
『全機後退しろ!』
正面から鎖が来た。
それを流体の横噴射で避けると鎖は直角に曲がった。
そんなことも出来るのか!?
と心の中で舌を打ち、長銃を投げつけた。
鎖は長銃を砕くが、その際に僅かに減速する。
その間に上体を逸らすと鎖の先端は此方の肩部装甲を掠り、空振る。
そのまま身を翻し、飛翔器を展開すると加速を行い撤退を行う。
敵の鎖が追ってこなくなったのを確認すると近くの雲に入り、身を隠した。
『僅か数秒で二機落とされるとは……』
生き残った機体も損傷が酷く、これ以上の戦闘は無理だ。
『後退し、補給を受けるぞ』
その言葉に皆無言で頷き、味方の方へ向かう。
***
敵の武神隊が撤退するのを見てレミリアは拍手する。
「凄いじゃないあいつ等。こっちの予定じゃ全部落とす筈だったのに」
その言葉に咲夜は頷く。
「引き際が見事ですね。必ず戻ってきますよ?」
「望むところよ。今度こそ全部叩き落してあげるわ」
咲夜は主の言葉に頷きながら内心溜息を吐く。
先ほどの攻撃は不意打ちだからこそ効く攻撃だ。
鎖型流体砲は変幻自在に敵を追尾する砲撃だが射程が短いという弱点と艦前方にしか撃てないという弱点がある。
敵に此方の情報を知られた以上、次は必ず対処をしてくるだろう。
━━この船、鎖型流体砲とアレを装備したせいで通常火砲が少ないんですよね……。
このスカーレットデビル号は高速戦艦であるため装甲も薄く、航空艦同士の砲撃戦では不利だ。
敵の武神隊が戻ってくるまでに作戦を実行したい。
そう思っていると表示枠が開いた。
そこには敵艦隊の右翼が映っており、その中央には味方を示すシグナルが放たれている。
「お嬢様。美鈴が無事に乗り込んだようです」
そう伝えると主はサングラスを外す。
「じゃあ、作戦開始ね。スカーレットデビル号、最大戦速!!」
表示枠で搭乗員に伝えると船体が揺れた。
そして重力エンジンの駆動音が大きくなり、船が加速を始める。
「さて、ここからが勝負ですね」
はしゃぐ主を横目に咲夜は冷静に頷いた。
***
「あ、兄貴! 武神隊が!」
甲板から身を乗り出しそう叫ぶフローレス・バルデスにペデロ・バルテスは頷いた。
「敵もそれなりに準備をしていたという事だ」
此方は二機の武神を失ったがまだ三機残っている。
さらに敵の情報も得られたため、次は仕留める。
「隆包主将! 左翼と中央の戦況は?」
後ろで椅子に座りバットを磨いていた弘中・隆包に訊くと彼は表示枠を開いた。
「左翼はこっちが押してて、中央は互角だな。だから俺らがここで敵を崩せればこの試合、俺たちの勝ちだ」
空で勝てば敵の陸上戦士団を一方的に砲撃できる。
そうなれば我々の勝利だ。
上空を武神隊が通過した。
二機はそのまま後方の武神空母に向かい、一機は此方の側面で止まった。
「おう、お疲れさん!」
隆包がそう手を上げると武神が頷く。
『敵艦の詳細情報を送ります』
武神から情報を受け取ると隆包は頷き、立ち上がる。
「後は俺たちに任せてお前たちは休んどけ。選手交代だ」
そう親指を立てると武神が頭を下げ『御武運を』と下がった。
それを見届けると彼は受け取った情報を艦隊に伝え、甲板上に大型の表示枠が開かれる。
そこには敵艦隊の正確な配置と敵の新装備についてが記されていた。
「…………鎖型流体砲ですか。また、妙な物を……」
「射程が短いのが救いだな。艦隊を徐々に前進させ、砲撃密度を上げるか」
敵には新型艦が居るが数では此方が圧倒している。
敵の攻撃範囲に入らないように囲んでいけば敵は耐え切れず崩れて行くだろう。
「なんだか私たちの出番なさそうですね」
そう笑うフローレスに首を横に振る。
「妹よ。あまり敵を甘く見るな。慢心すれば勝てる試合も勝てなくなる。
勝利とは常日頃から鍛錬をし、決して油断しない心を……」
その瞬間、横から強烈な衝撃を受けた。
視界が二転三転し、自分が宙を舞っているのが理解できる。
そして「あ、兄貴!?」と言う妹の声を聞くころには甲板から転げ落ちていた。
***
「いたたたたた……」
酷い目にあった。
着地の際に体をぶつけた痛みもあるがそれ以上に酔った。
空中旅行は今までの人生を振り替えるのにちょうど良く、様々な事を思い出した。
例えばお嬢様のプリン食べちゃって殺されかけたなーとか、紅魔館のマンドラゴラを間違えて引っこ抜いて死に掛けたなーとか、妹様に何故か追いかけられて死にかけたなーとか。
思い出せば碌な思い出が無かった。
立ち上がると周りを確認する。
自分が今いるのは赤い船の甲板のようだ。
そして周りには赤い服を着た生徒たち。
これはつまり……。
━━敵のど真ん中!?
もう一度周りを見る。
ここは航空艦の上。逃げ道などない。
甲板の上には霊体種族の男が一人と金髪の女子生徒が一人、そして何故か甲板の端でぶら下がっている金髪の男子生徒が一人居る。
━━どうする!?
どうするか? そんなの決まっている。
拳を構え、腰を落とした。
「英国紅魔館所属、紅美鈴! 参ります!!」