緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第十章・『幼き吸血鬼』 血で赤く染めて (配点:紅魔)~

 流体の鎖が振り下ろされ機鳳空母の甲板が砕かれる。

そのまま鎖は横に薙がれ甲板上で待機していた機鳳が砕かれ落とされて行く。

 その様子をスカーレットデビル号の甲板からレミリアは見ると止めを刺すように指示をした。

 残りの流体鎖が敵空母側面に突き刺さりまるで内臓を抉るように内部の装甲を引きずり出す。

━━そろそろ引き時かしら………?

 敵艦隊は混乱を収束させ始め此方を囲み始めた。

更にやたら足の速い飛空挺が機鳳隊をつれて攻撃してくる。

 左舷、白い飛空挺が来た。

飛空挺は此方の対空火砲を避けると艦首に装備された砲で攻撃を行う。

攻撃を障壁で防ぐとその間に敵は艦上方を抜けていった。

それに続き三機の三征西班牙製機鳳、赤鷲(ロジョ・アゾゥル)が来る。

「これ、持ってて」

 咲夜の変わりに自分の世話をしていた妖精メイドに日傘を渡すと右手を掲げた。

 右掌に吸血鬼である自分の血を混ぜた流体の塊を作り、それを棒状に伸ばして行く。

そして流体の塊は高密度の流体槍へとその姿を変える。

「墜ちなさい! 神槍「スピアー・ザ・グングニル」!!」

 紅の一閃が放たれる。

高速で放たれた流体槍を中央の機鳳は避ける事ができず機体の中心を貫かれ爆散した。

 残りの機鳳は直ぐに旋回し、此方との距離を離す。

「急速旋回! 咲夜たちを回収してこの空域を離れるよ!!」

 命令と共にスカーレットデビル号が旋回して行く。

 もう少し敵艦を削りたかったが仕方ない。

下手に深追いして無駄な被害を受けるよりはマシだ。

 そう頷くとまだ残っていたトマトジュースを飲み干した。

 

***

 

 後方の武神空母で緊急整備を受けながら敵の新型艦の様子を見ていた。

 敵艦は此方の混乱に乗じて近隣の艦に手当たり次第襲い掛かり沈めている。

迎撃の為機鳳隊が飛び立つが敵の激しい対空砲火を前に近づけないでいる。

『おい、まだか?』

 自分の肩に乗り修復作業を行っている整備兵に聞くと彼は顔を顰めた。

「五度目だぞ! 少しは黙ってろ! 武神ってのはなあ、見た目に反して繊細なんだぞ!」

 最初の交戦で何とか生き延びたものの急な回避行動を取ったせいで関節がイカレた。

だが自分はまだいい方だ。

 残りの二機の内一機は飛翔器を砕かれ飛べず、もう一機は機体の破棄が決まった。

━━………クソ。

 己の歯がゆさに舌打つ。

 二人の部下を失い隊は壊滅。

 そして敵は現在進行中で味方を沈めている。

 もう一度敵艦の方を見れば攻撃を加える機鳳隊に白い飛空挺━━アルセイユが加わっていた。

更に体勢を立て直した味方艦が包囲を始めている。

『なんだ、終わっちまいそうだな』

 飛翔器の取り外しをされていた部下の言葉に頷くと敵艦が急速旋回をし始める。

━━逃げる気か。

 包囲は不完全で敵艦を追撃するアルセイユたちの攻撃力は不足している。

『行くか』

「は?」と眉を顰めた整備兵を掴み、甲板に下ろすと立ち上がる。

「おい! なにをする気だ!?」

『少し脅かしてくる!!』

「だったらミサイルポッドは外して行けー! 重くなるだけだからな!! それから長銃のスペアはねーぞ!!」

 整備兵の言葉に頷く。

『隊長、やっちまって下さい!』

『Tes.!!』

 甲板から飛び立ち飛翔器を展開する。

そして一気に加速すると敵艦進行方向に大きな雲を発見する。

━━やってみるか!!

『アルセイユ、敵を前方の雲に追い込め!』

『どうする気ですか?』

 その問いに内心笑みを浮かべる。

『驚かしてやる!』

 

***

 

 銀のナイフと鋼鉄の剣が火花を散らす。

咲夜とユリアは一進一退の攻防を繰り返し互いに疲弊していた。

 戦いの流れはパターン化されており、咲夜が時間遅延を使用中はユリアは回避に専念しクールタイムに入り時間遅延が解除されると今度は咲夜が回避に専念する。

 それを何度も繰り返し、ついに咲夜の内燃排気が尽きた。

━━………やっとか。

 敵は酷く消耗しており大粒の汗を流し、息を荒げている。

対して自分も全身に傷を受け、先ほど内燃排気が尽きた。

 ここから先は純粋に己の力が勝負をつける。

「引く気は?」

「御座いません。お嬢様の命令があるまでは」

 見事な忠誠心だ。

そう心の中で賞賛を送った。

この敵は己の主の為に命を賭けれる。それだけの忠誠心を持っている。

だがそれは自分とて同じだ。

自分も己の主の為に命を賭けて戦う。

 次で勝負が決まる。

敵も分かっているのだろう。

 消耗しているが今までで一番研ぎ澄まされた闘気。

それを全身に纏って構えている。

━━行くぞ!!

 そう踏み込もうとした瞬間、船体が大きく揺れた。

『敵艦接近!! 回避行動のため高度を上げます!!』

 突如の揺れに体勢を崩すと剣を甲板に突き刺し耐えた。

そして敵の方を見れば敵の横に表示枠が開かれている。

『はい! そこまでー。咲夜帰るよ。あと美鈴も』

 表示枠に映った幼い少女の言葉に咲夜は直ぐに頷くと甲板の端まで駆け出した。

「美鈴! 急ぎなさい!」

 「あ、はい!」と赤い髪の少女も掛けだすと敵の新型艦が此方の艦の下方を背後から通過しようとしていた。

「咲夜殿!」

 甲板の手すりに足を掛けていた咲夜に声を掛けると彼女は振り返る。

「良い勝負でした! 何れまた!」

「ええ! 貴女もそれまでお元気で!」

 そしてメイドと中華少女が艦から飛び降りる。

 追いかけ手すりから身を乗り出してみれば二人は新型艦の甲板に着地し、艦はそのまま通過して行く。

「ふう、逃げられちまったか」

 隣に立った隆包に頷く。

それに僅かに遅れてアルセイユと機鳳隊が通過した。

『左翼艦隊から報告です。英国艦隊左翼は後退し、味方が中央の包囲を開始しました』

 これでこの戦いの大勢は決まった。

 此方の被害は少なくないが英国はこれ以上の艦隊戦を続けられないだろう。

━━後は地上部隊を追い払えばいいだけか……。

 そう思い、一息を吐くのであった。

 

***

 

「お嬢様、申し訳ありません」

 そう頭を下げる咲夜に目が点になる。

「え? なんで謝ってるの?」

「敵の副長を討ち取る事が出来ませんでした」

 ああ、そんな事か。

「いいよ、いいよ。本来の作戦は成功だし副長討伐はサブ目標みたいなもんだから」

そう言うが咲夜はまだ眉を下げたままだ。

 その姿に内心苦笑する。

 このメイドは私の命令にいつも忠実で完璧だ。

だが私は知っているのだ。

その裏で彼女が常に無理をし、自分を押し殺している事を。

 彼女は自分が唯一心を開けるメイドである。

彼女には伸び伸びと仕事をし、幸せになってほしい。

そう思っているのだ。

「そうねえ、じゃあ罰として普段の家事に加えて紅魔館の庭整備もしなさい」

「え? 私はどうなるんですか?」

 美鈴の問いに笑みを浮かべる。

「あんたも連帯責任で宮殿の壁掃除ね、一日で」

「酷い!?」

  涙目になる美鈴に笑うと艦の後方を見た。

そこには一機の飛空挺と二機の機鳳が追いかけてきており飛空挺から砲撃が放たれる。

空中で障壁に遮られ爆発する砲弾を見ながら顔を顰めた。

「しつこいわね。前の雲の中突っ切って振り切るわよ!」

 そう指示をした直後警報が鳴り響く。

『前方! 雲の中より大型の駆動音を確認! これは……武神です!!』

「何ですって!?」

 慌てて正面を見れば雲の中から赤と白の武神が姿を現した。

 

***

 

━━貰った……!!

 上手く敵を待ち伏せ場所まで追い込めた。

 敵艦を見れば慌てて艦首の装甲を展開しており例の流体砲を撃とうとしている。

『させん!!』

 腰に装備していたハンドグレネードを手に持ち加速する。

 赤の艦から対空火砲による迎撃が始まった。

 実体砲台から放たれる弾は避け、機銃による攻撃は武神の装甲で防ぐ。

そして一気に敵との距離を詰めるとハンドグレネードを装甲展開中の艦首に投げ込んだ。

 その数秒後、爆発が生じ敵艦艦首に亀裂が走った。

亀裂は艦の艦首を覆い、黒煙と炎を吹き出す。

そして爆発した。

 装甲が内部から砕かれ地に落ちてゆく。

 その様子を確認すると同時に流体剣を引き抜き敵艦上方に出る。

狙うは敵の艦橋。

そこを叩けばこの艦は落ちる。

 そう思い急降下をすると甲板に紅の光を見た。

それは槍であり、甲板に立っていた幼い少女から放たれる。

『く!?』

 急ぎ体を捻るが槍は此方の右肩を貫き、破砕した。

 右肩から下を失いバランスを失った体は落下し敵艦の右舷側を落ちて行くが咄嗟に残っていたもう一つのハンドグレネードを取る。

『まだだ!!』

 左手に持ったハンドグレネードを上方の敵艦に投げつけるが飛距離が足りず敵艦右舷後方近くで爆発する。

 その熱と衝撃で敵艦の装甲が赤熱し歪むが破壊するには至らない。

━━ここまでか!!

 敵艦は落とせなかったが大きな損害を与えた。

これ以上の戦闘は不可能だろう。

 そう判断すると飛翔器を展開させ一気に離脱する。

その際にアルセイユとすれ違い、彼らに『後は頼んだ』と通神を送る。

『……さて、後は中央次第か』

 そう呟き、武神空母に向かった。

 

***

 

「被害状況は!?」

 冷や汗をかきながら咲夜は被害状況の確認を行う。

『艦首大破! 艦内に火災発生中!! 消火活動を急ぎます!!』

━━油断した!

 まさか武神がこんなに早く復帰するとは……。

 艦首は炎に包まれており砕かれた装甲から熱で歪んだ鉄骨がむき出しになっている。

「全く……これじゃあ戦えないわね……」

 レミリアの言葉に頷く。

 先ほどの攻撃で艦首流体砲を全て失い、残りの側面流体砲にも異常が発生している。

これ以上の戦闘は不可能だろう。

「お嬢様……左翼の艦隊を後退させるべきだと思います。スカーレットデビル号が戦闘不能になった以上、これ以上の戦線維持は不可能です」

 そう伝えると主は苛立たしげに爪をかんだ。

「ベスになんて言えばいいのよ……」

『呼んだか?』

 突如表示枠が開き、英国女王が映る。

「ベ、ベス!?」

『フフ、見てたぞレミリア。随分と派手にやられたようだな』

 そう笑うエリザベスに対してレミリアは眉を吊り上げる。

「馬鹿にしに来たのかしら?」

『Tes.、 お前がベソを掻いてないか確認しに来たのだ』

 レミリアがチョップで表示枠を割る。

だが直ぐに新しい表示枠が開いた。

『冗談だ』

 エリザベスの言葉にレミリアは深く溜息を吐くと半目になる。

「で? 何の用?」

『ああ、全艦撤退しろと伝えにな。それと一つ頼みがある』

 「撤退?」とレミリアが眉を顰めるとエリザベスは『Tes.』と答える。

『三征西班牙の艦隊を肥後に引き付ける事に成功した。我々は次の作戦に移る』

「肥後に引き付けるって………まさか、この戦いその物が囮!?」

 『Tes.』と頷くエリザベスにレミリアはますます眉を顰める。

「どうして言わなかったのさ? この戦いが囮って知ってたら損害出さないようにしたのに? 敵を欺くには味方から、ってやつ?」

 そう訊くと妖精女王は沈黙し、目を逸らした。

「あんた! 単純に伝え忘れてたな!?」

『まあ、落ち着けロリババア。私とて全知全能ではないのだ。間違いもある。うん』

 レミリアは怒り通り越して呆れたようで大きくため息を吐くと脱力した。

「地上にいる義弘達が怒るわよ。あいつ等久々の戦だって意気込んでいたし……」

『まあ、何とかする。ハワードが』

 そう言うエリザベスにレミリアは半目になると頭を掻いた。

「で? 頼みって?」

『ああ、お前の妹を借りたい』

 「妹」と言う言葉にレミリアは表情を改める。

 先ほどまでの砕けた雰囲気ではなく相手の意思を探る慎重な雰囲気だ。

「……あの子をどうする気?」

『九州の均衡を崩すため私は大きな勝負を挑みたい。その為に彼女が必要だ』

 英国女王が真剣な視線をレミリアに送る。

『助力を願う』

 そう言われるとレミリアはゆっくりと目蓋を閉じるのであった。

 

***

 

「英国艦隊後退して行きます!」

 通神兵からの報告を受けフアナはほっと一息を吐く。

 左翼を崩し、右翼の新型艦を退けたため英国は後退を余儀なくされた。

『お疲れ様』

 隣の表示枠に映っている中年の男性に頷くと指示を出す。

「艦隊は地上に対する砲撃準備を! 敵の陸上戦士団を追い払います!」

 これで決着は着く。

 被害は決して少なくはないがそれ以上に英国艦隊に被害を与えた。

当分は英国も大人しくなるだろう。

そう思っていると通神兵が慌てて振り返った。

「阿蘇家の軍が突撃を開始しました!!」

「何ですって!?」

 眼前に表示される戦況図では阿蘇家の陸上戦士団が英国の陸上戦士団に向かって突撃を開始している。

『……敵の航空艦隊が引いて強気になったようだね。だけどこれは……よくないな』

 彼の言うとおりだ。

阿蘇家の陸上戦士団が英国の陸上戦士団と接触すれば此方から砲撃を行えなくなる。

いくら敵の航空戦力がなくなったとはいえ、地上には約三千の英国島津兵がいるのだ。

 ぶつかればただでは済まない。

「直ぐに阿蘇家の指揮官に連絡を! 艦隊は砲撃準備を急ぎなさい!!」

 指示を受け慌しくなる艦橋の中で冷や汗を掻く。

ここで阿蘇家に壊滅されては三征西班牙は困るのだ。

直ぐに止めなければ。

 そう心の中で思い眼鏡を押し上げた。

 

***

 

 頭上で後退して行く航空艦隊を見ながら島津義弘は首を回す。

島津兵三千は魚鱗の陣をひき展開し迫ってくる阿蘇軍を待ち構えていた。

「兄上! 敵が来るぞ!」

 隣で乗馬した自分の弟━━家久に頷くと刀を抜く。

「兄者や歳久は悔しがるだろうな。この様な戦に参加できず」

「後退しろとの命令ですが?」

 弟の言葉に笑う。

「この戦全てが囮とは英国女王も思い切ったことをするものよ。

我等は囮。三征西班牙を引き付けれれば良い」

 「ならば」と馬を駆り立て、皆の前に出る。

「聞け!! 島津の荒武者どもよ!! どういうわけか敵は強気になっているらしい。

異界人の力を借り、此方の航空戦力を退ければ我等が引くと思っているのだ。

舐められたものよ!!

長き停滞の中でやつらは忘れたらしい!! 何故、我等が鬼島津と呼ばれたのかを!!」

 馬を反転させ、敵軍の方に向き刀を掲げた。

「全軍! 武器を構えよ!! 撫で斬りだ!!

一人残らず首を刈り取ってやれい!! 全軍、突撃!!」

 号令と共に兵たちは怒声をあげ、突撃を開始した。

 阿蘇軍は予想していなかった島津兵の突撃に動揺し足を止め、そして崩された。

僅か数分で阿蘇軍は壊滅し熊本城に逃げ込み、島津兵は悠々と後退するのであった。

 

***

 

 筒井城の評定所に徳川の武将達と元筒井家の重臣が集まっていた。

 上座には徳川秀忠が座りその右隣には筒井順慶が、左隣には八意永琳が座っている。

「さて、皆も知っていると思うが北条からの報告で懸念が出てきた」

 秀忠の言葉に天子は頷く。

「織田が何かをしようとしているという事ね」

 「そうだ」と秀忠は頷くと表示枠を開き、拡大する。

「織田は概念核を所有している可能性があり、それを利用して何かを行おうとしている。

その何かが問題なのだが、私の勘では碌なことではないな……」

 永琳が首を縦に振る。

「そうですね。八雲紫との接触で織田が元の世界に帰ろうとしているわけでは無いと判明しました。

本気でこの世界を征服する気なのかどうか……、更に気がかりなのは“終末”という単語ですね」

 終末。

 具体的なことは分からないが言葉の響きから良くない事であろう。

「観音寺方面からの報告では織田が観音寺城に兵を集中させているとの事です」

 鳥居元忠はそう言うと表示枠を開き、情報を皆に送信する。

「……観音寺。京に攻め込む気か?」

「もしくは私たちを攻撃するかね」

 順慶の言葉に天子はそう続けると皆沈黙する。

「織田と徳川は同盟中ですが……?」

 隣の衣玖がそう言うと点蔵が首を横に振った。

「同盟と言っても形ばかりの物で御座る……もし織田が本気でこの世界を支配する気ならば自分達は織田にとって最大の障害で御座るよ」

 覇道を敷く織田と王道を行く徳川。

 両者が道を進み続けるのであればいずれぶつかるだろう。

━━現状じゃ厳しいか……。

 徳川の戦力は充実してきたとはいえ、まだ織田に対抗できるほどではない。

いま攻め込まれれば厳しいだろう。

「秀忠公、一ついいかしら?」

 そう訊くと彼は頷く。

「鈴木家との停戦が成り、三好攻略の準備は出来たわ。

本当は冬明け後に始めるつもりだったけど早めて正月明けに始めましょう」

「……織田が事を起こす前に三好を落とし磐石にするか」

 秀忠は思案顔になると横の永琳を見る。

永琳は秀忠に頷きを返すとこちらを見た。

「悪くない案だけど戦いをするなら物資補給をできる拠点が必要よ? 今から築城しても最低二ヶ月掛かるわ」

 冬の寒さの中戦うのならば寒さを凌げ、物資を補給できる拠点が必要だ。

 どうする?

 そう悩んでいると元忠が手を上げた。

「輸送艦を臨時の砦にしてはどうでしょうか? 輸送艦ならば最低限の防衛装備は整っている上、物資補給にも適しているのでは?」

 元忠の意見を聞くと永琳は直ぐに表示枠を操作しはじめた。

「此方の輸送艦は十二隻。三隻を補給基地として前線に着陸させ、後方では砦の築城を始める……。そうね、それで行きましょう」

 もう少しのんびり出来るかと思っていたが一月は忙しそうだ。

織田が動く前に三好家を降伏させなければいけない。

━━それに関東にも行かないとね……。

 概念核の主が私と緋想の剣を呼んでいるらしい。

何故自分が呼ばれたのかは分からないがこの剣のことを知っているというならば色々と訊くべきだろう。

 緋想の剣を使いこなす為にも。

 そう思っていると評定所の中央に大型の表示枠が開いた。

そこには“曳馬”が映っており、彼女は一礼をすると皆を見る。

『会議中失礼します。先ほど筒井・観音寺国境上を航行中の民間機より救難信号を受信しました。

民間機からの信号によりますと“現在当機は怪魔の集団に襲撃されている。至急、救援を求める”との事です』

 “曳馬”の報告に皆が響めいた。

「“曳馬”、直ぐに発進準備を」

『Jud.』

 秀忠の指示に頭を下げると表示枠が閉じられる。

「天子、お前は部隊を率いて曳馬に乗艦。直ぐに急行しろ」

「了解っと」

 頷き立ち上がると衣玖とミトツダイラも立ち上がる。

「点蔵、お前は観音寺方面の偵察を。織田が動いたら直ぐに教えてくれ」

「Jud.」

 点蔵は立ち上がりメアリに一瞥すると駆け出す。

「皆、突然の事だが落ち着いて対処するように。では、行け!」

 その声と共に皆が一斉に動き始めた。

 自分も衣玖やミトツダイラ共に駆け出し、天守の外に出る。

その途中衣玖が先月の怪魔との交戦記録を送ってくる。

 自分たちにとって初の怪魔との交戦だ。

慎重に行かなくては。

 そう思い、振り返った。

「行くわよ! 皆!!」

「Jud.!!」

「はい!!」

 そして向かった。

筒井城の外に停泊している曳馬に向かって。

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