緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第五章・『王道を望む者達』 意思は前を向いた さあ行こう (配点:王道)~

 追撃を行う今川軍が最初に感じたものは僅かな揺れだった。しかしあまりにも些細な揺れであったので誰もが戦場の揺れと思い気にしない。

しかし暫くすると揺れは徐々に大きくなり、ついには立つ事すらままならなくなった。

誰もが膝をついたり武器を杖代わりにして転倒しないようにする。

誰かが叫んだ。

「じ、地震か!?」

その瞬間、大地から轟音が鳴り亀裂が入る。

そして地が天に突き上がった。先程まで平坦であった土地に次々と大地が隆起して出来た柱が突き上がり、その上にいた今川軍を吹き飛ばす。

そして地震が終わった頃には今川軍追撃部隊は壊滅していた。

 

***

 

 今川義元と太原雪斎は前線部隊が壊滅する様子を駿河艦橋の大型表示枠から見ていた。

艦橋は皆表示枠を見たまま動かず静まり返っていた。

そんな中雪斎が声を出す。

「被害状況を報告しろ」

通神を行っていた兵士がハッとし、状況を確認し始める。

「あ、朝比奈殿の部隊は壊滅。鵜殿殿の部隊も半壊状態です。幸い朝比奈殿、鵜殿殿はご無事です」

そうか。と雪斎は言うと義元を見る。義元は雪斎に頷きを返した。

やられたな……。

と雪斎は思う。追撃部隊を潰されたのも勿論だが、何よりも進軍経路を大きく制限された。

すでに開戦してからだいぶ経っている。このままでは徳川の援軍が到着するだろう。

ならば。

「朝比奈、鵜殿両名は後退せよ! 両翼の部隊を前進させろ! 艦隊も前進させ一挙に浜松を陥落させろ!」

 

***

 

 砲撃を行っていた地摺朱雀から今川軍が壊滅する様子を見ていた直政は思わず口から煙管を落しそうになった。

とんでもないさね。

事を行った当人の方を見ると倒れていた。

「おい! 倒れてるさね!」

直政の声で永江衣玖が気が付き、駆け寄る。衣玖は天子を膝枕するとこちらに一礼した。

「あれ、大丈夫さね?」

と言うと浅間が表示枠で映る。

『天子は地脈を切断したんです。彼女の持つ緋想の剣は気質を見極め、絶つ事ができます。そのために最初に剣を地面に刺しながらこの周辺の地脈の流れを解析、そして部分的に絶つ事によって局地的な地震を起こしました』

「地脈を絶つって……そんな事して大丈夫なんさね?」

浅間は首を横に振る。

『大地を流れる地脈を絶つには多大な排気が必要です。それに地脈を傷つければ地脈神からの何らかの報復を受けます。こちらでも最大限の防御術式を使っていましたが、彼女にかかった負荷は相当な物の筈です』

まったく無茶をする。と思うが彼女のおかげでこちらが一気に有利になった。

前方を見れば今川軍の追撃部隊が後退し残りの全軍が突撃してくる。

迎撃のため長砲を構え直すとネシンバラからの通神が入った。

『直政君━━ちょっといいかい?』

 

***

 

 ネシンバラは直政との通神を終えると再び戦場を見る。今川軍全軍は既に柱の森の半ばを抜けており、徳川軍に迫っていた。

すると後ろのホライゾンが質問する。

「ネシンバラ様、敵が迫ってきてますがどうするので?」

「フフ、いままで僕が考えてなかった事なんてあるかい?」

・● 画:『割とあるわね』

・金マル:『バラやん、けっこーノリで行ってるからね━━うわひゃあ!』

・● 画:『マルゴット!?』

・金マル:『大丈夫、大丈夫。ちょっとお尻焼けてタイツ破けただけだから』

・ウキー:『ナルゼよ。戦闘しながら鼻血はやめたほうがいいぞ。位置がバレる』

・● 画:『う、うるさいわねー』

・銀 狼:『というか、敵がだいぶ近づいてきて来てますのよ!』

・天人様:『人をぶっ倒れさせてこの後の事考えてないって言ったらその眼鏡ぶち割るわよ』

ネシンバラは表示枠をチョップで割る。

そして、一回わざとらしく席をすると戦場に手を向け叫んだ。

「さあ、出番だよ! 槍本多君! 立花嫁君!」

 

***

 

 今川軍を待ち構える徳川軍の後方から二人の人物が飛び立てきた。一人は蜻蛉スペアを構えた本多・二代でもう一人は2つの“十字砲火”を展開した立花・誾だ。

二代は今川軍の近くの柱を蜻蛉スペアに映す。

「結べ、蜻蛉スペア!」

柱は切断され倒れ始める。その柱に対して誾は狙いを定めていた。

「十字砲火!!」

砲撃により柱が破砕し、岩の雨となって今川軍の頭上に降り注いだ。

二代と誾は次々と柱を崩し破砕させた。

 

***

 

 柱の森を双嬢と不死鳥が飛んでいた。現在は不死鳥が双嬢を追う形となっており二人の魔女が前方の柱を射撃によって砕き、不死鳥はそれを避ける。この一連の動作を繰り返していた。

不死鳥の中にいる藤原妹紅は舌打ちする。

 最初の戦闘で前方を飛ぶ黒白の飛行能力は分かった。加速力かあちらのほうが上であるため障害物の多い柱の間に追い込んで接近戦に持ち込もうとしたが、それが仇となった。

あの魔女達は自分の進行方向の柱を攻撃し、こちらに当ててくる。

避けるのは簡単だけど時間稼ぎされてるわね!

飛行路が狭い為魔女を抜くには一気に加速し上空か下方を通るかもしくは体当たりするしかないが破砕した岩によってそれは阻まれる。かといって反転すればそこを討たれるだろう。

━━ならば!

妹紅は魔女の前方、次に破壊されるであろう柱のさらに一つ先に狙いを定める。

自分達の戦法でやられなさい!

炎弾を発射しようとしたその瞬間、白魔女が叫ぶ。

「伊達・成実! 後は任せたわよ!」

「!?」

その瞬間双嬢は二手に別れ、柱の影から朱色の百足型機動殻が現れた。

柱に張り付かせていたのっ!?

機動殻の主腕には二つの顎剣が握られておりそれを振り下ろす。

不死鳥は翼を畳み、身を逸らすことで避けようとするが剣の振り下ろされる速度のほうが上だった。顎剣は不死鳥の両翼を根元から断ち切り、そのまま不死鳥内の妹紅の両腕を切り落とした。

そして不死鳥は叫びを上げながら墜落する。

 

***

 

 “不転百足”の中から成実は不死鳥が翼と腕を断たれて墜落するのを見た。

悪いわね━━。

と墜ちて行く少女に心の中で言い、柱に張り付いた。もう一度下を確認すると墜落する不死鳥に異変が起きた。

不死鳥の少女は空中で身を丸めるといきなり体を炎上させた。火達磨となった少女は近くの二代達によって切断された柱の上に落ちる。

自殺?

成実は視覚素子から送られてくるその状況に僅かに驚く。すると少女を包んでいた炎が一際強く燃え上がると消えた。

そして炎の中から先ほどの少女が一糸纏わぬ姿で現れる。だが成実が驚愕したのはその姿では無かった。少女の腕には切断されたはずの腕が付いていたのである。

『不死系種族ってわけ……!』

成実はすぐさま顎剣を射出する。高速で射出された顎剣は妹紅の右肩上部と左足の付け根を裂き柱に突き刺さるが妹紅は気に留めず飛翔し、右足に炎を付加させ回し蹴りを行った。

装甲を所有する不転百足を蹴ったため右足が砕けるが妹紅は再生させながら回転を入れた。

不転百足の視覚素子には『外部装甲過剰加熱。危険』という文字が映される。

『!!』

成実は炎から逃れるために四肢を反対側の柱に設置し、体を牽引した。炎から逃れた直後主腕を柱から離し、顎剣を再び射出する。

顎剣は妹紅が放った炎弾によってその表面を溶かされ衝撃によって地に落ちるが構わない、成実は新たに顎剣を取り妹紅に向かって加速する。それに対して妹紅が翼をしまい落下を行った。

すぐさま落下した獲物を逃すまいと顎剣を下方に射出するが、当たるよりも早く妹紅は不死鳥の姿となり今川艦隊の方に飛び去り、放たれた顎剣は落下していった。

 成実は飛び去る不死鳥を見ながら言う。

『御免なさい、逃したわ』

すると視覚素子越しの表示枠に見慣れた半竜が映る。

『仕方あるまい、敵の航空戦力を撃退しただけでも大戦果であろう』

そうね。と言うと不転百足を先ほどまで不死鳥の少女がいた柱の上に着陸させる。

『キヨナリ、今日の晩御飯だけど私が当番だったわよね? 何が食べたい?』

 

***

 

 義元は厳しい顔をしながら戦場を見ていた。

「これは、撤退すべきかな?」

駿河の艦橋が静まり返る。そんな様子に苦笑し、雪斎の方を見た。

「お前はどう思う?」

「拙僧も同意見です。このままでは徒に戦力を失うだけでしょう。徳川本隊が到着前に撤退すべきかと」

そうだな。と言うと艦内放送が入る。

『藤原妹紅様が戻られました。女子班は着替えを持って甲板に急行してください━━あ、こらそこの男共は動くな! あと、甲板の映像は暫く切ります!』

甲板の様子を見ようとしていた艦橋の男共が崩れ落ちた。

「随分と頑張ってくれたようだ。後で労わんとな」

と義元は笑い、立ち上がると警報が鳴った。

『艦隊前方、ステルス障壁を解除し輸送艦来ます!』

その放送とともに艦隊の前方に輸送艦が出現した。

「特攻か! 全艦、迎撃せよ!」

前列のドラゴン級が砲撃を一斉に行った。輸送艦は集中砲火を受け、外壁を砕かれ炎上しながら墜落する。

その輸送艦の様子に義元は違和感を感じた。

━━おかしい。先ほどの手ごたえ、爆発物を積んでいたとは思えない。ならば、敵の目的は……。

「まさか!?」

『輸送艦後方より武神、来ます!!』

 

***

 

 炎上し墜落する輸送艦の後方から地摺朱雀が飛び出した。朱雀は輸送艦後方と連結していた連結帯を切断すると飛翔器を展開し、一気に加速する。

朱雀の両腕で巨大な杭を抱えておりその杭にはこう書かれていた。

“試作型対艦用爆砕杭”

急接近してくる朱雀に対して今川艦隊が砲撃を始めると朱雀の肩に乗っている直政が叫んだ。

「もう遅いさね!!」

朱雀はドラゴン級4番艦の右側面に体当たりする様に杭を叩き込むと空中で一回転し、回し蹴りを杭の後部に叩き込む。

「砕け! 地摺朱雀!!」

杭は更に深く4番艦に突き刺さり、杭内の爆発術式が起爆する事によって大爆発する。爆発によって右外部装甲から中枢を砕かれ、急激な圧力を受けた4番艦は体勢を崩し右側に傾きながら墜落する。

4番艦の右側面にいた護衛艦は、左方から迫ってくる4番艦に衝突し砕かれながら爆発した。

さらにその両艦による爆発によって5番艦の右舷装甲が破砕し、黒煙を上げた。

 

***

 

 義元は4番艦と護衛艦が共に墜落していくのを艦橋から見ていた。攻撃を行った武神は爆発で右足の膝から下を失っていたが、爆風を利用し艦隊から距離を離したため既にこちらの射程圏内から外れいている。

 雪斎が額から汗を流し、指示を出す。

「全艦を直ちに後退させろ! 輸送艦は本陣後方に着陸させ撤退の準備をしろ!」

そう言うとこちらを見た。

「これは負け戦です。被害が拡大しないうちに撤退しますが宜しいか?」

「ああ、徳川本隊が来る前に撤退を━━」

 駿河艦橋に警報が鳴る。

『浜松後方より砲撃来ます! 着弾まで10秒!』

 今川艦隊は各艦防御障壁を展開したが先ほど損傷を受けた5番艦が遅れた。

そしてその遅れが致命傷となった。

浜松後方より飛来した砲撃は全て対艦用の高速実体弾であり5番艦には3つの砲弾が向かっていた。1発目は艦首の外部装甲に当たり、弾かれるが2発目が続けさまに直撃し破砕した。そして3発目の砲弾が破砕した艦首を砕き、艦内部で爆発した。

5番艦は艦首方向を内部から砕かれ、前のめりに墜落していく。

 砲撃が終わり、今川艦隊が浜松後方を確認すると14の影が飛行していた。

徳川艦隊である。

 艦隊は5隻のドラゴン級戦艦と8隻のクラーケン級で構成されており、その中心には駿河より若干小型のヨルムンガンド級空母・浜松が存在した。

 浜松は本来武神空母用に設計開発されていたが徳川が武神戦力を確保できなかった為、急遽戦艦に改装したものである。

そのため浜松の甲板は平らになっており、中央に武神用カタパルトを一つ持ちそのカタパルトを囲むように4つの対艦高速砲と2つの流体砲を所有していた。

 徳川艦隊は今川艦隊に砲撃を行いながら前進し、後方では多数の輸送艦が浜松に着陸し戦士団を下ろしていた。

━━趨勢、極まったか!

 徳川本隊の登場によって陸上部隊の士気は大きく下がり、すでに撤退を始めていた。

その今川軍を逃がすまいと浜松の部隊が追撃を始めている。

「━━全軍撤退。艦隊は可能な限り陸上部隊を援護しながら後退しろ」

そう言い義元は艦長席に腰を掛け、目を瞑った。

 

***

 

 午後三時頃、徳川軍は既に今川軍の追撃を終え事後処理を行っていた。

そんな中、浜松港に寄港した浜松の甲板上に武蔵アリアダスト教導院の生徒と徳川家康とその四天王が集まっていた。

 家康が皆の前に立つ。

「武蔵の皆よ、今回の戦い心から感謝を述べたい。諸君等がいなければこの浜松港は陥落していたであろう」

そう言い、家康は頭を下げた。それに釣られ他の者も頭を下げる。

すると正純が一歩前に出る。

「家康公、今後の事を━━今後、我々徳川が世界を相手にどう動くべきかを決めるべきかと」

家康は正純の声に頷いた。

「岡崎の評定にて、と思ったがこれも何かの運命よ。━━葵殿」

すると梅組の皆の中心で全裸にウィッグを被ったトーリが答える。

「んあ?」

「葵殿は先日、誰もが笑って暮らせる世界を創ると言っていたな、それは今でも?」

女装全裸が親指を立てた。

「あったりめーよ! 俺は今でも目指しているし今後もその夢を捨てる気は無いぜ!」

そうか。と家康は頷き決意の篭った目で周りを見た。

「ワシは悩んでいた。大きな争いが無いのであれば『今のままでいいのではないか?』とな。

だが、今日多くの者が徳川を守るために戦い、傷ついた。

そんな彼らを見て思ったのだ。『今のままでいいのか?』と。

ワシは皆を守りたい。そして、皆と共に再び泰平の世を望む!」

家康は一息入れる。

「嘗ては泰平の世を到来させるためワシは多くの血を流した。そんなワシが言うのはおこがましいかも知れないが、今度こそ誰もが笑ってくらせる世界を創りたい。

その為に皆、どうか協力してくれまいか!」

家康はそう言い頭を深く下げた。

誰もが動きを止め、家康を見ていた。

すると全裸が前に出て家康の横に並ぶ。そしてそれに続いてホライゾンも前に出た。

「おいおい、オメエら。せっかく俺達の頭が前に進もうって言って手を差し伸べてくれたんだ。

だったらその手を取って一歩前に進もうぜ!」

「Jud.、 家康様の言うとおりホライゾンも皆様を守り、そして無為に傷つけられる全ての人を救いたいと思います。その為にもまず遠州の和を━━今川家と相対しましょう」

「だったら。今すぐ行きましょう」

と梅組の後ろから声が聞こえてきた。

皆が振り向くとそこには流体調整を行う回復術式を身に纏った比那名居天子がいた。

「あら、もういいのかしら?」

とナルゼが言うと天子は微笑した。

「体の中の流体を乱されたせいで当分大技使えなくなったけど、まあ平気よ。」

それよりも。と続ける。

「今川と決着つけるなら直ぐに追いかけたほうがいいわよ」

「Jud.、 時間を開ければ体勢を立て直されるし、北条の動きも気がかりだ」

ネシンバラが一歩前に出た。

「じゃあ機関部のほうに武蔵を飛ばす準備をするように連絡するさね」

と直政が

「ではこちらは周辺諸国と交渉を行うとしよう」

「商売! 商売!」

とシロジロとハイディが

「拙者、さっきはあまり活躍できなかったで御座るからな。エネルギーが溜まったままで御座る」

と二代が

「王と共に歩むのが騎士ですのよ」

とネイトが

「浅間神社は徳川が正道を歩む限り最大限の協力をします」

と浅間が

「家康公、武蔵はその力を徳川に貸与します。共に行きましょう」

と正純が前に出た。

見れば誰もが前に出て、強い意志を持った表情をしていた。

 

***

 

 家康は体の奥底から熱いものがこみ上げてくるのが分かった。

この感覚は久しく味わっていなかった物だ。家康は過去を思い出す。

あれは生前、桶狭間の後の事だった。雨の中今川義元の討ち死にの報を聞いた自分達は今川軍が放棄した岡崎城に入った。

 敗戦の失意を感じると同時に高揚感がこみ上げてもいた。織田信長という強大な存在によって天下が動くのだ、そして自分にも機会が巡ってきたと思った。

 だが実際は違った。若い頃は織田に振り回され、信長死後も豊臣の天下によって機会を失いそして最後に天下を獲った。

しかしその頃には最初の情熱は無かった。あったのは冷酷な計算と策謀の果ての天下だ。

 横の葵・トーリを見る。彼は普段こそ言動が色々と突飛だが芯には強い志がある。

彼は誰も失われない世界を創るといった。それは険しき道だが彼は決して諦めないだろうと思う。

……自分は今度こそ彼等と共に歩めるのか……?

 するとトーリがこちらの肩を突いて来た。

「どうなされた?」

「家康さん、今自分のこと疑ってただろ」

この御仁は……。

この男は人の感情の機微に非常に聡い。敵であれば厄介であろうなとも思う。

「少々、昔を思い出していた」

そっか。と彼は言うとこちらの腕を引っ張って浜松側に連れて行く。

「あ、葵殿? 何を━━」

「下、見てみろよ」

トーリに言われ浜松港を見ると大勢の人々がいた。皆こちらを見、手にした武器や物を掲げる。

誰かが叫んだ。

「徳川! 徳川!」

声は波のように広がり、重なっていく。そして最後には浜松中が喊声に包まれた。

「「徳川! 徳川! 徳川!」」

トーリが横に立ち言う。

「みんなアンタに夢を預けてついて行くって言ってるんだぜ。だったら連れてってやろうぜ!」

後ろを振り返れば武蔵の皆と徳川の家臣達が待っている。高揚感に思わず涙腺が緩みそうになるが我慢する。

「そうだな……。皆、これより徳川は険しき道を行くであろう! 

だが、ついて来てくれ! そして、共に泰平の世を目指そう!」

家康はトーリに頷き。トーリが続く。

「そうだぜっ! だから━━行こうぜみんなっ!!」

「「Judgment!!」」

浜松の空に喊声が轟いた。

 

***

 

 同刻今川義元は駿府城に帰還していた。

大評定所に入ると城に残った武将が平伏して待っていた。その中心にいた上白沢慧音が頭を上げる。

「よくぞ御無事で」

義元は少し疲れた笑みで応えると上座に座る。

「諸君、直ぐに戦いの準備をしろ」

家臣たちがざわめく。誰かが声を上げた。

「徳川が来ると……?」

「ああ、我ならそうするし、竹千代だってそうするだろう」

すると遅れて雪斎が来る。

「ならば北条に援護の要請を致しましょう」

見れば浜松の戦いに参加した武将達も揃っている。義元はそんな彼等を見ながら頭を下げた。

「次の戦が決戦となろう。皆、力を貸してくれ」

今川家臣達は再び平伏した。

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