緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十章・『解放される簒奪者』 動く世界 (配点:梟雄)~

 午後四時。

 伊勢湾沿いにある九鬼水軍の隠れ港に連れてこられた森近霖之助は興味深げに辺りを見渡していた。

 隠れ港では九鬼水軍の男達が慌しく駆け回り櫓や小屋を取り壊している。

 更に奥の方では倉庫から取り出したと思われる弾薬や食料を入れた箱を奥の港に運んでいる。

「……随分と慌しいですね」

 そう此処まで連れて来てくれた霧雨の親父さんに訊くと彼とは別の声が返ってきた。

「直に此処に織田が来るだろうからな。その前に引き上げようってわけだ」

 声の方を見れば髭を生やした男が立っており、彼は腰に手を当てながら煙管を加えている。

「えっと?」

「ああ、わりぃ。俺は九鬼嘉隆。九鬼水軍の頭領だ」

 彼が……。

差し出された手を取り、握手を交わすと笑みを浮かべる。

「お噂はかねがね伺っております。森近霖之助です」

 挨拶を終えると嘉隆は興味深げに此方を見、顎鬚を摩る。

「なかなか良い目をしてるじゃねーか。流石は霧雨殿の弟子と言ったところかな?」

「無愛想なのが玉に瑕だがな」

 霧雨の親父さんがそう言うと嘉隆は「ハッハ!! 軽薄な奴よりは良い」と大笑いした。

何となく気恥ずかしく話を変える事にする。

「ええっと、お二人はどういったご関係で?」

「ああ、彼はウチのお得意さまでな」

「お得意様?」と訊くと霧雨の親父さんは「そうだ」と頷く。

「俺たちの物資調達元でな、色々と世話になってんだ」

 昔から顔の広い人だったがまさか水軍とも知り合いとは。

九鬼水軍は独自に航空艦を所有しており前から何処からその素材や機材を取り寄せているのか不思議だったが……。

「そっち方面の商売もしていたんですね」

「まあこのご時勢雑貨屋だけじゃやってられんからな。だが売る相手は選んでるつもりだ」

 つまり九鬼水軍は信頼できるという事だろう。

「へへ、そういわれると何かこそばゆいな。ところで、その荷物は何だ?」

 嘉隆が指差す先には木製のコンテナがあり、その上には布に巻かれた長い棒状の物がある。

「箱は機殻箒、その上のは刀です。この二つを浜松に居る奴に届けようと思いまして」

 「成程」と彼は頷くと部下に荷物を運ぶように命令した。

「運ぶのは荷物だけか?」

その質問に答えたのは霧雨の親父さんだ。

「いや、運ぶのはその荷物と俺とこいつだ」

「え、親父さんもですか?」

「ああ、今は伊勢に戻れないからな。店は気になるがまずは自分の安全確保だ。

で? 何時飛べる?」

 撤収作業の状況を見るに後二時間ほど言ったところか?

 そう思っていると嘉隆は首を横に振った。

「ちと分かんねーな。今うちの居候が要人の救助に向かっててな」

 「要人?」と首を傾げた瞬間、表示枠が開いた。

『大将! 無事、北畠さんたちを拾ったよ!』

 表示枠に映った赤毛の少女に見覚えが有った。

確か彼女は幻想郷で三途の川の船頭をしてた筈だ。

「おう、後どのくらいで合流できそうだ?」

『いやあ、途中で織田の連中と小競り合いになってね。ちょーっと時間掛かるかな』

「……大丈夫なのか?」

『大丈夫だよ。特務級ならまだしも追ってきてるのは普通の兵士だからね。何とかする』

 赤毛の少女が頷くと表示枠が閉じられ嘉隆は「やれやれ」と溜息を吐く。

 そして此方を見ると腰に手を当てる。

「少し時間がかかりそうだがいいか?」

「ええ、元々無理を言っているのは此方ですから」

 「そうかい」と嘉隆は笑うと彼は撤収作業を急ぐように指示を飛ばす。

それから艦を案内すると言った瞬間、再び表示枠が開いた。

 今度のは通神文であったらしく彼は文に目を通すと顎鬚をゆっくりと摩る。

 そして横目で此方を見ると溜息を吐いた。

「出発が更に遅れそうだ」

「どうかしたのか?」

「ああ、筒井のほうから通信文が来てな。ちょいと寄り道する事になった」

 そう言うと彼は口元に笑みを浮かべるのであった。

 

***

 

 午後五時。

 九州東部にある府内城。

そこは統合事変後以降三征西班牙の本拠地となっており府内城は極東式の城であり、その城下は石畳の町が広がっている。

 また上空には航空艦用の港があり、その内部では現在も新型の航空艦の建造が行われている。

 三征西班牙は元々半寿族に対する風当たりが強い国家であった。

だが統合争乱後、大友家と合併した事もあり半寿族に対する偏見と差別は大分薄まった。

それでも彼らは町の一番外側に住んでおり、町並みも府内城周辺に比べて整備されていない。

 そんな外郭街の裏通りに一軒の移動式のラーメン屋が存在した。

「へい、お待ち!」

 店主が豚骨ラーメンを出し、カウンター席に座っている中年の男性に渡す。

 男性はラーメンから出る湯気で眼鏡を曇らせ、カウンター席に置いてある割り箸入れから割り箸を取り出すとそっと割った。

「……あ」

 割り箸は途中まで綺麗に割れたものの上半分でズレ、不均等に割れる。

その様子に苦笑すると男はラーメンを食べ始めた。

「うん、やっぱりここのラーメンは美味しいね」

「へへ、ありがとうございやす」

 気恥ずかしそうに鼻の下を指で擦する店主に笑みを送るとラーメンに浮いていたナルトを箸で摘み、口に含む。

 そして湯飲みに入っている茶を啜ろうとしようとした瞬間、暖簾を潜り一人の男がカウンター席に座った。

「店主、豚骨を一つ。メンマ多めで」

「はいよ……と、おや? 大友の大将、珍しいですな。こんな所に」

「ああ、こいつを探しててな」

 そう言い男は此方を指差す。

そんな彼の方を見れば店の湯気越しに坊主頭が見えた。

 男は洋式の服を着、首からは十字架のネックレスをかけている。

「やあ、大友宗麟。僕に何かようかい?」

「おいおい、ようかいってお前は三征西班牙のトップだろうが。フェリペ・セグンド」

 宗麟の言葉に苦笑すると湯飲みの茶を啜った。

「最近は君の方が三征西班牙の当主っぽいけどね」

「そりゃお前、教導院の掃除なんて事をしていたら清掃要員と間違えられるだろうよ」

「いやあ、何時もの癖で……」

 そう苦笑すると宗麟は「やれやれ」と首を振り、割り箸入れから割り箸を取り出した。

そして力を入れて一気に割ると箸が綺麗に割れる。

「…………怒っているか?」

「何をだい?」

「阿蘇救援を押し通した事だ」

 今回の軍の派遣は彼の強い押しによる所が大きい。

「いや、結果として君が正しかった」

 軍を派遣しなければ阿蘇家は今頃英国のものになっていただろう。

「正しい……か、どうだろうな? 俺は国を衰退に導いた男だ。そんな男が正しいとは思えんがね」

 店主がメンマ大盛りの豚骨ラーメンを出し、宗麟がメンマを一つ摘み口に含む。

「それを言ったら僕だって国を衰退させた男さ」

「いや、お前は凄いよ。聞いたぞ? アルマダ海戦の事。あんな事、俺には出来ない」

「僕も……前は“僕には出来ない”って思っていたけど、人は変われるって信じることにしたんだ」

 今の自分にはついて来てくれる仲間がいる。

そして彼女━━フアナも。

「宗麟、君にもついて来てくれる仲間がいるはずだ」

「ふ、だといいが」

 暫く互いに無言でラーメンを食べていると宗麟が横目で此方を見る。

「肥後の件、どう思う?」

「……途中までは良かったけど最後、阿蘇家の兵が壊滅したのが不味いね」

 「不味い」と言う言葉に一瞬店主の眉が反応する。

「ありゃあ、予想外だったな。おかげで弱った阿蘇家をそのまま吸収できなくなった」

 今回の戦い、阿蘇家が無傷では困るが壊滅されても困るのだった。

 阿蘇家を英国と争わせ消耗させる。

その後傷ついた彼らを吸収し熊本城の守備隊とする。

それが目的であった。

 だが阿蘇家が壊滅したため今熊本城を手に入れても領土を守備する戦力が足りない。

 この状況で龍造寺までも動いたら守りきれないだろう。

━━いや、待てよ?

「熊本城、あげるのもいいかもしれない」

 そう言うと宗麟が思わず箸を落とす。

「おいおい、正気か? 確かに守るのは難しいが、英国にあげちまうってのは……」

「いや、違うよ。あげる相手は英国じゃなくて龍造寺だ」

「龍造寺? そりゃどういう……そうか! 熊本城を条件に龍造寺との同盟を結ぼうってのか!」

「Tes.、 僕たちは敵同士だが何も常に敵対していなければいけないわけじゃない。

まずは一番危険な奴を潰して、その間に龍造寺への対策を練って最後に彼らを倒せばいい」

 話し終えレンゲでスープを掬うと飲む。

 それから宗麟を見ると彼は口を開け、此方を見ていた。

「お前、見た目に反して結構腹黒いよな……」

「これでも総長やってるからね」

 そう言い互いに苦笑すると突然表示枠が開いた。

『た、大変です!!』

「どうした?」

 表示枠に映った兵士に訊くと彼は額に汗を浮かべながら頷く。

『佐土原が襲撃され、連絡が途絶えました!』

「佐土原が!?」

 佐土原城は英国領と隣接する城であり三征西班牙は要塞として大規模な改修を行った城だ。

 その為そう簡単に陥落する城では無いが……。

━━どうにも妙だ。

「英国め、肥後のほうは囮か。直ぐに援軍を出せ、あそこが落ちたらやばいぞ!」

 『Tes!!』と表示枠が閉じられると宗麟は神妙な表情で此方を見る。

「━━どう思う?」

「英国は戦力の半数を肥後に布陣させている。守りを捨てて残りの半分を連れてきたとしても佐土原が落ちるとは思えないけど……」

「奴等には切り札が有るって事か」

 「Tes.」と頷くとポケットから金を取り出し、カウンターに置く。

 それに倣って宗麟も金を置くと店主に「すまんな」とラーメンを残した事を謝る。

 暖簾を潜り、外に出れば既に日は沈んでいた。

 見慣れた赤と黒の混じる様子に何時もとは違う、得体の知れない不安を感じるのであった。

 

***

 

 午後六時。

 九州南部。英国と三征西班牙の国境近くにある佐土原城は統合争乱後三征西班牙の傘下に入り大規模な改修を受けた。

 城壁は石と鉄で補強され、城壁上部の各所には対空砲撃用の流体砲が幾つも配備されている。

 また城内には巨大な航空艦用の港があり、三征西班牙の主力となる超祝福艦隊が待機できるようにしてある。

 誰もがこの城を突破するのは不可能だと思っていた。

だがその考えもたった一時間の戦闘で覆された。

 夜闇に沈む佐土原城は威圧的なその姿を変え、廃墟と化していた。

 兵を守る石と鉄の壁は崩され、壁の上に配備されていた流体砲はその砲身をねじ切られている。

 城内にあるありとあらゆる建造物からは火の手が上がり、港の方には離陸しようとした所を打ち落とされたのか航空艦が何隻も墜落している。

 また城のいたる所に三征西班牙の兵の屍骸があり、戦闘の凄惨さが伝わってくる。

 現在城内では抵抗を続ける三征西班牙軍の掃討作戦が行われており英国艦隊が敵の抵抗地点に向けて砲撃を行っている。

 その様子を見ながらベン・ジョンソンは嫌な汗を掻いていた。

━━まさかこれほどまでとは……。

 嫌な汗を掻く理由は敵によるものでは無い。

敵よりも恐ろしいものが身内にいたのだ。

 視線を上から下に下げた先、幾つもの封印術式に囲まれた少女がいた。

 少女は金の髪をサイドテールにしており、赤い服を着ている。

その背中からは色鮮やかなクリスタルの翼が生えており、その異様さは夜の暗闇の中で目立っていた。

「いやあ、妹様は危険だって聞いてたけどこりゃあ……確かにヤバイな」

 後ろから声を掛けられ振り返れば赤毛の青年が立っていた。

「確かに彼女は危うい。だがそれは君も承知の上でこの作戦を決行したのだろう? 英国諜報機関所属レクター・アランドール」

 レクターと呼ばれた青年はこちらの横に立つと頷く。

「まあ、勝負どころだったからな。博打を打ってみたが、これは何度も使える手じゃないな」

 今回の戦い、決着は一瞬で着いた。

 普段は力を封印されロンドン塔に幽閉されていた少女━━フランドール・スカーレットを開放し、佐土原城を攻撃させたのだ。

 彼女は一瞬で佐土原の城壁を打ち砕き、蹂躙した。

 離陸しようとする航空艦を炎の剣で砕き、逃げ回る兵を後ろから殺戮した。

 佐土原城は直ぐに降伏しようとしたが彼女は止まらず虐殺を行う。

その結果戦闘が予定よりも長引いた。

 更に問題だったのはその後だ。

 戦いの気に当てられ興奮した彼女を止める為最初は機動殻隊を向かわせたが彼女は機動殻隊を殲滅した。

 次に動白骨隊による物量作戦で抑えようとしたが彼女は彼らを散々破壊した挙句逃走しようとした。

 最終的には上空に逃げた彼女に術式による擬似太陽光線を照射し弱体化させ、取り押さえた。

「敵にやられた数より味方にやられた数のほうが多いってのは笑えないねえ」

「Tes.、 しかし彼女には驚かされる。ほぼ一人で城砦を陥落させ、まだ余力がある。いったいどれ程の内燃排気を所有しているのか……」

 明らかに吸血鬼が持てる内燃排気量では無い。

彼女には“制限”が無いのかまた別の何かなのか……。

『敵が降伏したよ』

 艦隊を率いていたグレイス・オマリからの報告に頷くと一息を吐く。

 我々はこのまま一挙に府内城に攻め込み三征西班牙に致命打を与える手はずだ。

「さて、そうなると彼女をどうするかだが……」

 今回の戦は電撃戦だ。

 即座に行動しなければいけないがフランドール・スカーレットという爆弾を抱えながら進軍するのは危険だ。

「彼女をまた閉じ込めるのは心苦しいが、戦いが終わるまではここに居てもらうことにしよう」

 レクターの言葉に頷き、フランドールを見ると目が合った。

 気だるげに、濁った瞳と目が合い思わず視線が外せなくなる。

 暫く彼女と目を合わせているとやがて彼女は此方への興味を失ったかのように視線を外し、虚空を見つめる。

 緊張が解け、大きく息を吐くといつの間にか掻いていた額の汗を拭う。

「ともかくまずは女王陛下に報告するとしよう」

 そう言うと踵を返し本隊に向かう。

 その途中、もう一度フランドールの方を向けば彼女は先ほどと変わらず虚空を見つめていた。

 

***

 

 佐土原城の上空。

 雲によって月明かりが隠され広がる闇の中に驪竜はいた。

 彼女は空中で寝そべりながら佐土原城を見下ろし楽しげに鼻歌を歌っている。

「うふふ、いい物見つけちゃった」

 視線の先に居るのは此処からでも死臭が臭う吸血鬼の少女だ。

 桜島に向かう途中佐土原で戦が起きたため何となく観戦したが想定外の発見をした。

━━あの子! いいわ!!

 敵に対する容赦の無さ。

純粋な殺戮。

 そこに善悪は無かった。あるのはただ殺す側と殺される側という線引き。

 あれほどの喜劇はそうそう見れるものではない。

 彼女こそ自分の欲していた同胞ではないだろうか?

「でもちょーっと繋がれているかなあ?」

 繋がれているのは物理的にでは無い。

 そんなもの彼女なら直ぐに引き千切れるだろう。

 彼女はもっと厄介なものに繋がれていた。

それは絆だ。

 この世でもっともくだらなく、不確かなものだ。

 生物は絆によって結ばれている。

それは家族愛、男女の愛、友情……。

「……くだらないわ」

 そんなもの簡単に崩れる。

 そんなものに繋がれ、生きるなど愚かだ。

 もし彼女が自分と同類ならば今も苦しんでいるだろう。

その鎖の窮屈さに。

「やっぱり自由に生きるべきよねー」

 そう言うと目を弓にし、立ち上がると漆黒の翼を背中から生やした。

「さて、そろそろ行かないとね。また今度会いましょう? 可愛いお人形さん?」

 驪竜の体が闇に飲まれてゆく。

その形を崩し、やがて完全に消え去った。

後に残ったのは冬の冷たい風だけであった。

 

***

 

 午後九時。

 松永久秀が幽閉されている屋敷から死臭が漂っていた。

 むせ返るような血の匂い、赤の色はいたる所にあり屋敷は静寂に包まれている。

 そんな屋敷を松永久秀は歩いていた。

 彼の着物は返り血で染められており右手には同じく赤に染まった刀が握られている。

 彼は壁にもたれ掛かり絶命している兵士を横目で見ると庭に出た。

 それなりに美しかった庭も今では戦場跡のようになっており池には何人かの屍骸が浮いている。

「ケケ、コイツノ体ハオレガクオウ」

 声の先を見れば天邪鬼達が殺した兵の屍骸集まっておりその体を喰らっている。

 あまり気分の良くない光景に思わず眉を顰める。

「品がないわねー」

 後ろから声をかけられ振り返れば青娥が月明かりに照らされ立っている。

「ふん、所詮は下等な妖怪という事だ」

「あら、聞かれたら怖いわよ?」

「わしがあの程度の雑魚にやられるとでも?」

 そう言うと青娥は楽しそうに目を細める。

「でも随分とあっさり行ったわね?」

「誰も突然屋敷の中から妖怪が現れるとは思わんだろうよ」

 まず妖怪達を正門から襲撃させた。

その間に青娥が能力で壁に穴を開け妖怪を屋敷の中に入れる。

 気がついたときには守備隊は挟撃され全滅した。

「しかし彼女も随分と気前が良い。これだけの妖怪を此方に遣すのだからな」

「あいつにも何か考えがあるんでしょうね。それでこれからどうするの?」

 これから……か。

 屋敷が襲撃された事は直ぐに岸和田に伝わるだろう。

 行動するなら早めがいいが……。

「岸和田に向かう」

「あら? 信貴山じゃないのかしら?」

「フ、少しばかり長慶の顔を見たくなった」

 「意地悪ねー」と笑う青娥を無視し空を見上げる。

 以前までは忌々しかったこの月明かりも今日に限っては自分を祝福しているように思える。

 この先どうなるかは分からない。

だが折角手に入れた二度目の生、存分に堪能するとしよう。

━━上手く行けば真実にたどり着けるやも知れぬしな。

 世界の秘密を知ったらどうするのか?

 それが希望なのか絶望なのか?

 何時の世も未知との遭遇には心躍る。

 手を掲げ月を手の平に収めた。

そして勢い良く拳を握ると笑みを浮かべる。

「さて、天下を簒奪してやるか!!」

 青娥は静かに、そして妖艶に微笑む。

 松永久秀が脱走したという報はあっと今に岸和田城に伝わり、三好家を大きく動揺させるのであった。


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