緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十二章・『六天の担い手達』 海風に揺られながら (配点:百合花)~

 甲板に出ると辺りを包む黒煙に思わず咳き込む。

 黒煙を抜け、視界が明けると佐々・成政が待ち構えていた。

 彼は気だる気に此方を睨むと歩き始める。

「随分と派手にやってくれたわね」

 口元に笑みを浮かべ皮肉を言うが内心は冷や汗を掻いている。

 ある程度は覚悟していたがこう易々と敵に乗り込まれるとは……。

「青い髪に、赤目。お前が比那名居天子か?」

「ええ、そうだけど?」

 後ろに居る衣玖に目配せをし、回り込ませようとする。

「止めとけ」

 成政の鋭い視線に衣玖が思わず足を止める。

「わざわざ乗り込んできて何か用かしら? 私、どっかの馬鹿共のせいで忙しいんだけど?」

 挑発しながら敵の出方を伺う。

 敵の情報は事前に知っている。

 佐々・成政。

 六天魔五大頂の一人で百合花という能力で身体強化を施し、その破壊力はアデーレの機動殻を砕くほどだという。

━━当たったら終わりってわけね。

 やってやろうじゃん。

 緋想の剣を引き抜き、気質刃を展開させ構える。

 それに対し成政は僅かに口元に笑みを浮かべた。

「ハ! いい顔じゃねえか!」

 互いに間合いを詰め、構える。

 そして踏み込もうとした瞬間、船体が大きく揺れた。

「なに!?」

 横を見れば二隻の鉄鋼船が此方を挟むように移動し牽引帯を放ってきた。

 牽引帯は両舷を貫き橋が掛けられた。

━━乗り込んでくる気ね!?

「何処を見てやがる!!」

 気を取られた隙に成政がいつの間にか踏み込んできた。

「っ!!」

 顎を狙ったアッパーを寸前の所で顔を引き、後方へ跳躍する。

 左足で着地すると同時に再び踏み込み、今度はこっちが距離を詰める。

 緋想の剣を右から左に薙ぐが成政は更に距離を詰め肘打ちを放ってくる。

━━まず!!

 肘打ちは此方の胸を穿つかに思われたが寸前の所で後ろへ引っ張られた。

 そしてやわらかいクッションのようなものに受け止められる。

━━く!? でかい!?

「大丈夫ですか!? 総領娘様!!」

「え、ええ。別のところでダメージ受けたけど……」

 首を傾げる衣玖を横目で見ると成政と向かい合う。

 互いに無言で、だが視線は外さず歩き始めた。

 歩幅は徐々に早くなっていき、そして同時に踏み込んだ。

 間合いは剣を持っている此方が僅かに上だ。

敵の攻撃よりも早く剣を振り下ろすと成政は体を逸らし、右腕を放ってくる。

それを此方も体を逸らして避けると互いに交差した。

 体を回転させ、敵の姿を追いかける。

 視界に敵が入った瞬間、成政の足裏が迫る。

 蹴りを緋想の剣の石突で受け止めると体が後ろへ大きくスライドする。

「馬鹿力!!」

 此方が体勢を崩した隙を突き敵が来る。

「させません!!」

 背後から放たれた衣玖の雷撃を成政は振り返り、右腕で払った。

「しゃらくせえ!!」

 そこへ気質弾を叩き込むが敵は舌打ちをし跳躍を行い、挟撃を逃れる。

 此方も衣玖と合流すると三度目の対面となった。

「あら、大した事ないのね。五大頂って」

 挑発を行うが成政は眉一つ動かさない。

 そしてゆっくりと脱力するように息を吐くと構える。

━━来る!!

 そう思った瞬間、眼前に敵の拳が現れた。

「咲け! 百合花ァ!!」

 緋想の剣で拳を受け止める。

 直後、凄まじい衝撃が甲板上で生じた。

 

***

 

 点蔵たちは甲板に出ると艦内に控えていた兵と共に乗り込んでくる敵の迎撃に向かった。

 自分とメアリは左舷から来る敵を、ミトツダイラと元忠は右舷から来る敵を、そしてアマテラスは艦の中央で遊撃要員として待機だ。

 敵の三番目の船がまだ生き残っていた此方の航空艦に止めを刺すと上空を通過し、後方に回り込んでくる。

━━囲まれたで御座るか!

 此方を直ぐに沈めてこないのは恐らく天子を捕縛するためだ。

 敵から砲撃を受けないのであればまだ勝ち目はある。

「点蔵様! 前から来ます!!」

 迫ってくる織田兵に対して短刀を引き抜くと後方の部隊に指示を出す。

「皆は敵を此処で食い止めるで御座る! 自分は牽引帯を外しに向かうで御座るよ!!」

 メアリに目配せをし、彼女が頷くのを確認すると駆ける速度を上げた。

 前方、一人の織田兵が槍を突き出して来る。

 その柄を掴むと引き寄せ、腹に膝蹴りを食らわす。

 蹴りを喰らった兵は後ろへ吹き飛び、後続の兵と激突した。

 敵が一瞬動揺した隙を突き、跳躍を行うと敵の中列位にいる兵の肩を踏み、最跳躍。

 一気に敵の後方へ移動すると振り返らず駆け出した。

牽引帯さえ外せれば敵の増援が現れる事は無い。

 敵艦の甲板上にいた兵士達が此方に向け銃撃を行うが身を低くし、かわして行く。

 そして牽引帯まであと僅かというところで進路を一人の男に塞がれた。

「やあやあ、随分と急いでいるねー。武蔵の第一特務君」

「……前田・利家!」

 「Shaja.」と利家は笑うと両腕を広げる。

「残念だったねー。来てたのが柴田先輩やナッちゃんだけだと思った?

僕は羽柴に所属しているのと同時に織田にも所属しているんだよ?」

 利家が一歩前に出ると此方は一歩下がる。

 この場に五大頂が二人も居るとは!!

いや、柴田も居ると言ったか?

「……最初から本命はこっちで御座ったか!!」

「Shaja.、 緋想の剣だっけ? 僕達の目的はそれとその使い手の少女でね。

正直徳川秀忠なんて、いや、徳川家そのものなんてどうでも良かったんだ。

どうだい? 彼女さえ引き渡せば見逃してあげるというのは?」

「お断り申す! 自分達は誰かを犠牲にするなんてことは決して認めぬで御座るよ!!」

「相変わらず甘いねえ」と利家が目を細める。

 状況は限りなく最悪に近いが諦めるわけにはいかない。

 ゆっくりと短刀を構えると利家がわざとらしく跳ねた。

「わあ、怖い! でもね? 今回はカレーもないし君に僕を止められるかな?

僕の“加賀百万G”を!」

利家が裾の中から硬貨を取り出しばら撒く。

そしてあっと言う間に周囲に亡者の軍団が現れた。

「船の上だから一度に召喚できる数は少ないが、無尽蔵の軍勢━━━━凌ぎきれるかな!!」

利家の指示と共に亡者の群れが一斉に襲い掛かってきた。

 

***

 

ミトツダイラは銀鎖を横に薙ぎ、乗り込んできた織田の兵を纏めて吹き飛ばした。

その隙を突いて元忠率いる徳川兵が術式盾を展開しながら前進し、崩れた敵軍を押し出す。

 だが敵も直ぐに体勢を立て直し、此方を押し返す。

 そんな行為を先ほどから繰り返していた。

 一件此方の方が優勢のように見えるが敵の数は此方を圧倒しており、徳川の兵たちは徐々に疲労していた。

「このままでは押し崩されますわね! 元を断たなければ!」

「とは言え、牽引帯周辺は敵がしっかりと固めているぞ!」

 右舷に居る敵艦を見る。

 曳馬と敵艦の間には四メートルほどの間があるが自分の脚力と銀鎖なら向こうまで跳躍できるかもしれない。

「私、あっちまでちょっと跳んできますわ!」

「できるのか……いや、分かった! だがお前さんがこっちに居ないと少し厳しいぞ?

アマテラス殿をこっちに呼ぶか?」

「でしたら私が入りましょう」

 突然の声に振り返ればそこには二律空間から三丁の長銃を取り出し浮遊させている“曳馬”が居た。

「船の方、大丈夫ですの?」

「現在船のシステムはダウン中です。おそらく電磁網による物だと判断します。

よってアレを何とかしないとどうしようもありません」

 “曳馬”が指差す先には紫色の電磁網を放っている空中機雷が存在していた。

「あれを止めるにはどうすればいい?」

「空中機雷は全て北ノ圧からの信号で制御されています。どうにかしてあの艦に攻撃を加えれれば信号が途絶えた隙に離脱可能です」

「そうするためにもまずは此方を繋いでいる船をどうにかすると、そう言うことですわね」

 「Jud.」と“曳馬”が頷いた。

「ではここを頼みますわ」

「Jud.、 先ほどから主砲を殴り壊したり土足で踏み入ったり、人間的な感情表現をするならば不愉快です。

P.A.Odaの皆様にはお帰りいただきましょう」

 そう言った直後、“曳馬”が銃撃を放ち、牽引帯を渡っていた三人の兵が落下した。

 

***

 

 ミトツダイラはゆっくりと息を吐くと走路を定めた。

 向こうに跳躍するならなるべく風の力を得たい。

 今は向かい風。

 飛ぶべきでは無い。

 暫く待ち、気持ちを静める。

 周囲の戦闘の音を遮断し、肌に感じる風の感覚のみに注意する。

 風が止んだ。

 周りに何も無くなった感覚。

 動き出そうとする体を静止するとゆっくりとスタンディングスタートを取る。

 此方に気がついた織田兵が向かってくるが“曳馬”の銃撃に止められる。

━━………………………今ですわ!!

 駆けた。

 スタンディングスタートからの急発進。

 追い風を受け、体を加速させる。

そして甲板の端に近づくと右足を大きく踏み込んだ。

 跳んだ。

 半獣の筋力を最大限りようした跳躍。

 それにより手すりを越え、放たれた砲弾の様に敵艦に向かう。

「今ですわ!!」

 銀鎖を放ち敵艦の甲板にアンカーのように打ち込むと自分の体を引き寄せる。

 急停止により体に重圧が掛かり歯を食い縛る。

 そして両足で甲板に着地すると大きく息を吐いた。

━━大成功ですわ!

 さて、これからどうしようか?

 乗り込んだはいいもののどうすればこの艦を曳馬から引き剥がせる?

「やはり艦橋を潰すのが手っ取り早いですわね」

 そう判断し進もうとした瞬間、背後に気配を感じた。

 振り返り、鉄鋼船の主砲の方を見ればそこに一人の少女が座っていた。

「あはは! 凄いねー、今の! 半獣族の力って奴?」

 太陽を背に赤毛が靡いていた。

 赤い髪を後ろで結い靡かせる少女は立ち上がると右手で大型の剣のような武器を持ち上げる。

 そして此方に向かって無邪気な笑みを向けると跳躍した。

━━高い!?

 高く、そして華麗に跳躍した少女は此方の頭上を飛び越え正面に着地した。

 今の跳躍、術式を使ったものではなかった。

 つまり純粋な身体能力だけであれだけの跳躍したのだ。

「もう、そんな怖い顔しないでよー。これから殺し合うんだしさあ」

「……は?」

 あまりに無邪気に放たれた言葉に一瞬理解が遅れた。

「ずーっと退屈だったんだよねー。織田に行けば刺激的な戦いが出来ると思っていたのに、毎日待機ばっかりでさー。

でも、まあ今日のためだったと思えばオッケーかなって!!」

 一瞬だった。

 本能で危険を察知し、顔を引けば鼻先を蹴りが掠める。

「!!」

 直ぐに距離を離し構えると少女は嬉しそうに目を弓にする。

「いいよ! あんた! 凄くいい!!」

「何者ですの!!」

「私はシャーリィ・オルランド、<<赤い星座>>部隊長で<<血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)>>とか呼ばれてるよ」

 <<赤い星座>>!?

 こんな少女がか!?

 いや、先ほどの蹴りといいこの彼女は只者では無い。

「私はネイト・ミトツダイラ。武蔵の第六特務ですわ」

 そう名乗るとシャーリィははしゃぎ始めた。

「ヒャッホーゥ!! 一度特務級と殺りあってみたかったんだよねー!!」

「戦闘狂……ですわね」

「だって楽しいじゃん! 全力で力をぶつけ合って命の削ぎ合いをするのはさあ!!」

「生憎、私は貴女の考えには共感できませんわ。ですが、掛かる火の粉は振り払わさせていただきますわ!!」

 シャーリィが目を細め武器を構える。

「いいねえ! その闘気!! ここまで来たかいがあったよ!!

さあ、<<テスタ・ロッサ>>!! 食事の時間だ!!」

 直後、赤い影が襲い掛ってきた。

 

***

 

 ミトツダイラは咄嗟に二本の銀鎖を展開すると敵の攻撃を受け止めた。

 鎖と鎖のつなぎ目で敵の刃を受け止めると両者の間に火花が散る。

━━やはり素早いですわ!!

 先ほどの突撃、初動が見えなかった。

 だが動きは直線的で力は人間が出せる範囲内。

 落ち着いて対処すれば何とか凌げる。

 突然シャーリィの口元に笑みが浮かんだ。

それと同時に危険を感じる。

 彼女は剣を銀鎖の上で滑らせ先端を此方に向けた。

 銃の先端には穴が開いており、暗い穴に螺旋状の溝が見える。

━━銃剣!?

 そう認識した直後、銃口より銃弾が放たれた。

咄嗟に顔を逸らし、至近距離で放たれた銃弾を避けるが、髪を数房持って行かれる。

 シャーリィは銃撃と共に後ろへ跳躍し、距離を離した。

「あはは! 今の、良く避けたねー!!」

「この!!」

 四本の銀鎖を時間差で放って行き、敵を包むように動かした。

しかし敵は跳躍すると一本目の銀鎖の上に乗り、それを足場に別の銀鎖へ。

僅かな足場を身軽に跳ねるその姿はまるで雌豹の様であった。

「鎖を使う奴の対策ってしてるんだよ、ね!!」

 四本目の銀鎖を蹴り、シャーリィが突撃を仕掛けてくる。

 銃剣を振り下ろしながら近づいてくる彼女を後方への跳躍で回避するが敵は着地と同時に此方を追跡してくる。

「銀鎖!!」

 呼び戻した銀鎖で敵の攻撃を受け止めるがシャーリィは押し進もうとする。

「無駄ですわ!!」

「それは……どうかなあ!!」

 銃剣が唸り声を上げた。

 鋸状の刃が回転を始め、銀鎖を削る。

「チェーンソー!?」

 敵の武器に気を取られた隙を突き、赤の雌豹が銀鎖を潜り抜ける。

そして唸り声を上げる銃剣を水平に構えると此方を胴を断つように薙ぎ払ってきた。

「さあ、唸れ<<テスタ・ロッサ>>!!」

 

***

 

 佐々・成政は敵が吹き飛んだのを視認した。

 敵は術式で強化した此方の拳を剣で受け止めようとしたのだ。

 無謀である。

 自分の拳は城壁であろうと砕く代物だ。

たかが女の筋力で受け止められるはずが無い。

 敵は容易く後方へ吹き飛び、曳馬のブリッジ下の壁に叩きつけられた。

 どう考えても無事ではない。

 軽症でも背骨が折れ、下手をすれば死んでいるだろう。

だが……。

━━最後の感覚に違和感があった。

 拳で相手を殴りつけた時、最後に踏み込む瞬間に一瞬だけ手ごたえが無くなったのだ。

「……自分から後ろに飛んで威力を減衰しやがったか」

 眼前、青髪の少女が剣を杖にし立ち上がる。

「痛覚……遮断……しわすれた!」

 凄まじい衝撃を体に受けたにも関わらずこの敵は戦意を微塵も失っていなかった。

それどころか先程よりも闘気が澄んで来ている。

━━不利になればなる程強くなるタイプか……。

 だとするなら長期戦は避けるべきだろう。

「生きてさえ居れば後はどうでも良いって言われてんでな……悪いが潰れてもらうぜ!!」

 百合花を展開し駆けた。

 敵は強がっているものの先ほどの衝撃が足腰に来ているらしく、ふら付いている。

 動けないように足を潰す。

 そう判断し、拳を構えると眼前にもう一人の女が入って来た。

「やらせません!!」

 女は羽衣を展開し目の前で壁上に編む。

それで此方を止めようと言うのか?

「馬鹿がっ!! 咲け!! 百合花ァ!!」

 羽衣を穿ち、閃光が生じる。

 桃色の壁はいとも容易く千切れと飛ぶかと思えたが……。

「!!」

 耐えた。

 羽衣は此方の拳を受け止め無傷である。

━━なんだと?

 電流によって強化されていたようだがそれだけで“百合花”を受け止められるはずが無い。

 ならば何故?

 そして気がついた。羽衣が揺れている事に。

「衝撃を伝導させて、衝撃を軽減しやがったか!!」

 敵は攻撃の衝撃を羽衣上で波とし、揺らすことによって力を減衰、吸収したのだ。

 攻撃が不発に終わった事を認識すると同時に次の行動へ映る。

 今、この敵は自分の武器を防御に使っている。

 その為この羽衣の展開を解かない限り次の攻撃に移れないのだ。

 その前に羽衣を潜り抜けた。

 敵もその事を承知しており、後ろへ下がる。

 女が下がり、男が追う。

 此方の攻撃を止める為敵の掌から雷撃が放たれるが僅かに体を逸らし避ける。

「逃すか!!」

「総領娘様!!」

 女の背後から少女が現れる。

 彼女は緋想の剣を上段に構え振り下ろした。

「チィ!!」

 左足で体を急停止させ、そのまま後ろへ跳躍する。

 それから仕切りなおすため息を整えると前方で少女と女が互いを庇い合うように並んだ。

 

***

 

━━いける!!

 そう比那名居天子は思った。

 悔しいが自分一人ではこの男に勝てない。

だが衣玖と共になら勝てるかもしれない。

 自分でも驚くほど衣玖と息が合うようになっており、戦闘中に彼女が何も言わなくても自然に連携が出来た。

━━あの馬鹿風に言うと絆って奴かしら?

 絆。

なんとも陳腐な言葉だ。

昔の自分なら馬鹿にしていただろう。

だが最近はそんな陳腐に染まるのも良いと思い始めている。

 昔、父に言われた。

 真の強さとは心の強さであると。

当時の自分には良く分からなかったが、今なら少し分かるかもしれない。

「負けられないわよね! 信じてくれる奴がいるなら!!」

 自分が負ければ皆に迷惑が掛かるし、死んだらあの馬鹿を道連れにするかもしれない。

━━私が死んだらあの馬鹿、悲しむかしら?

 悲しむだろうなぁ……お人好しだし。

・天人様:『ねえ、私が死んだら死ぬ?』

・俺  :『おうおう、しんじまうぜ』

・ホラ子:『ちなみにトーリ様が昇天するとついて来そうなのが三人ほどおりますので天子様は事実上四人の命を預かっています』

・天人様:『あんたは? ホライゾン? やっぱ馬鹿が死んだら死ぬの?』

・ホラ子:『…………』

・俺  :『黙るなYO!!』

・ホラ子:『ご安心を、トーリ様がおっちぬ事は無いとホライゾンは信じてますので』

 これは結構な重荷だなぁ。

 だが私は追い込まれれば追い込まれるほど燃えるタイプなのだ。

 笑みを浮かべ、緋想の剣を構える。

━━さて、勝つわよ。

 成政も最早余力を残す雰囲気が無く、静かに構える。

 どちらが先に踏み込むか。

そのタイミングを計りあっていると突然艦首の方から紅い飛空挺が現れた。

『おいおい、ナルナルくぅーん? もしかして苦戦ですかー!? 苦戦ですかーーーーーーーぁ!? ざぁぁぁぁぁぁぁこっ!!』

 成政が額に青筋を浮かばせ表示枠を叩き割った。

 だが直ぐに再び表示枠が開かれる。

『んん? 図星かなぁ!? 図星なのかなぁぁぁぁぁぁぁ!?』

「……ウゼェ」

 表示枠が閉じられると成政はやれやれと首を横に振り、此方を見た。

「お前も運が無いな。本来なら俺だけで終わる筈だったのに」

「……どういう」

 言いかけた途中で飛空挺から影が降り立った。

 それは鬼であった。

 引き締まった筋肉の固まりはP.A.Odaの制服を靡かせながら仁王立ちをする。

 その極太の手には槍が握られており、男は成政を見る。

「なんでこっち来たんすか……」

「お前があまりにももたついているからなぁ。気になってきたんだぞ。

べ、別にお前のためなんかじゃないんだからな!! ぶあぁぁぁぁぁぁぁぁぁかぁぁ!!」

「ウゼェ!!」

 成政の視線がいよいよ不味くなり、今にも殴りかかりそうだが男は無視する。

 それから此方を見ると頭から指先まで、此方を測るように見た。

「ちっせえなあ! ちゃんと飯食ってんのか!? 飯!!

俺は今朝、愛妻弁当食べたねぇ!! ナルナルくんのも俺が全部喰っちまったぞ!!」

「あれ喰ったのはやっぱあんたか!!」

 な、なんなのだこの男。

 戦場にいきなり降り立ったかと思えば、成政をからかい始めている。

 そして無防備なのだ。

 此方から攻撃を受けるかもしれないのにこの男は全く警戒していない。

いや、もしかしたら警戒が必要ないのかもしれない。

何故なら……。

「総領娘様」

 衣玖の言葉に頷く。

 そして武器を構えると冷や汗を掻きながら言葉を発した。

「この男がP.A.Oda六天魔五大頂筆頭、柴田・勝家!!」

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