緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第二十八章・『鐘鳴りの会談者』 乱入上等!! (配点:次世代)~

 出雲・クロスベル行政区にある市庁舎。

 そこでは六護式仏蘭西から来た人狼女王テュレンヌとの会談が行われており厳重な警備が敷かれていた。

 そんな市庁舎近くの木の上に一人の女性が座っていた。

 マミゾウだ。

 彼女は猪口を片手に行政区の様子を見て時折、鼻を鳴らす。

「やれやれ、噂に聞きし人狼女王。いったいどれほどの化け物やら」

 ここからでも分かる圧倒的な気配。

 これほどの存在、幻想郷でも中々お目にかかれないだろう。

 行政区を巡回していた警備員が自分が座っている木の下まで来ると此方を見上げる。

彼は少し目を細め暫く此方を見るがやがて「異常なし」と呟き離れて行く。

━━おお、少しだけ見所のありそうな奴じゃ。

 気配を完全に遮断しているため普通の人間に自分のことは見えない。

流石に人狼女王や<<風の剣聖>>クラスになると隠し切れないが多少武術が出来る程度では違和感を感じるのがやっとだろう。

「……それにしても、物騒な奴が増えたのう」

 ここ数ヶ月で出雲・クロスベルも雰囲気が変わった。

 他国のスパイが入り込み日夜情報収集を行っており、ちょっとした小競り合いも多発している。

 そして此処最近一番増えたのが……。

 行政区のベンチで先ほどから新聞を読み座っている男性を見る。

 何てこと無い平凡な男性だが、平凡すぎるのだ。

 自分ですら注意しないと視界から消える程の気配の男。

そんな事が普通の人間に出来るはずが無い。

━━…………七耀教会。随分と入り込んでおる。

 一体何が目的かは分からないが注意しておくべきだろう。

 そう思っていると市庁舎の玄関が騒がしくなった。

 何かと見てみれば白い商人服の女性と警備員が揉めているらしく、商人の女性が先ほどから何か喚いている。

 警備員が全く取り合わないためか商人は諦めの溜息を吐き、彼女の背後の小柄な少女に合図した。

 直後、二人の警備員が倒れる。

「何?」

 何が起きたのかは分かる。

 小柄な少女が槍を取り出し、あっと言う間に二人の警備員を制圧したのだ。

 あまりにも鮮やかな手際。

あの小柄な少女、相当な使い手だろう。

━━それにあの制服……。

 さて、厄介なことになりそうだ。

 人狼女王と彼女たちが会えば最悪市庁舎内で戦闘が発生するかもしれない。

 いざという時は特務支援課の救援に入ろうと思うと小柄の少女が此方を見ていることに気がつく。

 気のせいか? と思ったが彼女は一点、此方を見ている。

そして笑顔になり頭を下げた。

「……こりゃ参った。バレておったか」

 商人が市庁舎に入ったのに気がつくと少女は慌てて追いかけ市庁舎内に消える。

 その様子を見届けると顎に指を添え唸った。

「これは本当に少し面倒なことになるやもな」

 

***

 

━━P.A.Odaだって……!?

 突然の乱入者の名乗りにロイドは内心驚愕の声を上げた。

 P.A.Odaといえば今近畿で勢力を急速に拡大している大国であり、六護式仏蘭西とは敵対している国家だ。

それに先ほど彼女は羽柴の代理として来たと言った。

つまり彼女は今、P.A.OdaでありながらM.H.R.R.であるのだ。

「さて、落ち着いたところでもう一度自己紹介させてもらうで?

私は小西・行長、P.A.Oda所属で今日はM.H.R.R.としてこの会談に乱入させてらもうわ。

で、こっちの小さいんが……」

「可児・才蔵です!! 皆さん! よろしくお願いします!!」

 二人が自己紹介を終えるとアリオスが警戒しながら訊く。

「M.H.R.R.との会談予定は無かったはずだが?」

「ああ、それな。こっちも急なことでついさっきこっちに来たんやわ。

事前連絡出来なかったことは申し訳ない」

「……警備員がいた筈だが?」

 警戒を強めるアリオスに「ああ、それか?」と笑みを送ると行長は才蔵を指差す。

「そこの可児君が気絶させた。安心しい、ちゃんと怪我させないようにしたから。

なあ、かに……」

 才蔵が固まっていた。

 いや、固まっていたというよりも釘付けにされていた。

 口を開き、目を輝かせお菓子の山を見ていると突然ハッとしたように行長の方を向く。

「T、tes!! 手加減しましたアップルパイ!!」

「…………」

「あ………」

 二人見詰め合って固まると人狼女王は小さく笑いヘンリーの方を向く。

「とりあえず、お二人にも座っていただきましょう? 私、彼女たちがどんな話を持ってきたか気になりますわ」

 その言葉に皆とりあえず頷くのであった。

 

***

 

 新たに二人の人物を加えた会談の場は先ほどまでと打って変わって緊張に包まれていた。

 そんな中、笑顔でいるのは小西・行長と人狼女王。そしてイチゴのタルトを頬張って幸せそうにしている可児・才蔵だ。

「さて、ではM.H.R.R.がどういう意図で此処に来たのか教えてくださいな」

「Tes、tes.、 まあ、簡単に言えば私らとしては六護式仏蘭西が出雲・クロスベルを掌握するのを防ぎたいっつー事や。

ここは金が沢山あるからねー、商人としても六護式仏蘭西に独占されるのは美味しくない」

「あら? お金なんですの? 私、てっきり織田を守るためだと思ってましたわ」

 そう訊くと行長は「ちっちっち」と笑った。

「正直六護式仏蘭西が織田と戦おうが私らには関係ないんやわ。確かにP.A.OdaとM.H.R.R.は神州では同盟を結んでいたけど、こっちではつい最近まで織田と羽柴は対立してたんや。

だから私が此処に来たのはM.H.R.R.重視というわけや。

もともと私はどちらかというと羽柴側やしね」

 行長の言葉に人狼女王は頷きも答えもしない、ただ目を細め真意を探るように彼女の事を見つめていた。

「では、羽柴の襲名者が織田の武将として参加しているのはどういう事ですかな?」

 アリオスの言葉に行長は苦笑すると「そこは堪忍してや」と言う。

「M.H.R.R.にはP.A.Odaの武将と二重襲名している人も多いし、招集されたら断れんしなあ。

それにな、私らP.A.Odaの計画についてよく知らんのや。“破界計画”、その全貌を知ってるのは織田信長と八雲紫、そして外部協力者の数人で五大頂ですら良く知らんらしい。

━━まあそこを疑うのはしゃあない。

だから信頼の証として……こっちが持っててそっちが欲しい情報を一つ渡すわ」

 さて、どうでるか?

 今話した事の八割は真実で二割は嘘だ。相手に信じてもらうにはまず自分の誠意を証明する必要がある。

だが全てを話すわけにはいかない。それでは商売にならない。

故に本当に隠したい事は二割の嘘として語るのだ。

 自分が織田側では無くは羽柴側である事、これは事実だ。

 大半の人間が計画の全貌を知らない事も事実。

 残り二割の嘘は……。

━━羽柴・藤吉郎は知ってるやろなあ。

 以前藤吉郎からM.H.R.R.は計画の保険であると聞いた。

その為極力戦力を温存し、“破界計画”が万が一失敗したときは“彼ら”と合流し別の手を打つ。

 相手は人狼女王、下手な嘘は直ぐに見抜かれるだろう。

 笑みを浮かべたまま金の大ボリュームと目を合わせると彼女は暫く思案し、頷いた。

「いいでしょう。そちらの要求とどの様な情報を此方に提示するのか、教えてくださいな」

「先に情報を訊かんの?」

「Tes.、 先に情報を訊かされてはどんな要求でも呑まなくてはいけなくなりますから。

お話を聞いてからその要求が六護式仏蘭西に害をなすのか判断し、それから情報を提示してもらうかどうか決めまわすわ」

 基本だ。相手は交渉の基本を知っている。

ならば自分も少し真面目にやるべきだろう。

 笑みを商売用の笑みに変えると姿勢を正す。

「さて、M.H.R.R.の要求は簡単や。六護式仏蘭西が如何なる手段でも出雲・クロスベル領内に入る事を中止するや。

これは国境上を移動するのも駄目という事や」

「M.H.R.R.は私達を上洛させたくないのですわね?」

「ま、そういうことやな。一つ訊くけど上洛後、足利幕府はどうする気だったん?」

「そうですわねぇ……、うちの方針からしてやはり倒幕でしょうか?」

 やれやれ、凄い事を平然と言う人やな……。

 いくら幕府がその力を失い、聖連の傀儡になっているとはいえ足利家は極東人にとっては最上位の権威なのだ。

それをまるで“ちょっと便利雑貨屋(コンビニ)行って来る”みたいな軽さで潰すといっているのだから恐ろしい。

「そう、それや! 私らが止めたいのは足利家が潰れる事や!

ええか? 今足利家はM.H.R.R.とP.A.Odaに挟まれる形になってる。“私たち”としては足利家という緩衝国を失いたくないんや。

M.H.R.R.現国主羽柴秀吉はP.A.Odaと簡易的な同盟を結ぶことにしているが従属するつもりは無い。

また織田も羽柴という大国を見逃すはずが無いし足利家が緩衝国になっていることは理解している。

せやから現状、周囲を敵に囲まれた織田は京になかなか手を出さないんや」

 織田が京都に攻め込めば不変世界の中枢を織田に掌握される事を恐れた羽柴も動かざるおえず、京都を巡って二国が争うことになる。

そうなると面倒なのは先ほども言った二重襲名者がどちらにつくのかという事だ。

━━私も織田やからなあ……。

 計画が控えている以上、織田は面倒事を避けるだろうし羽柴は織田との戦争で失う戦力の事を考え出来る限り対決を避けるだろう。

「私らはな表向きは織田と同盟関係だけど裏では足利家に武器の提供などを行ってる。

バランスや、いま近畿は絶妙なバランスで保たれとる」

「そこに六護式仏蘭西という大勢力が加われば大きな争いになると……そう言うことですな?」

 ヘンリーの言葉に頷くと人狼女王の方を向く。

「ま、そう言う事で六護式仏蘭西の上洛を私らとしては止めたい訳や」

 人狼女王は暫く沈黙しているとカップに入った紅茶を一口飲み、それから微笑む。

「では、情報の方ですけどどのような情報なのか詳しい内容は語らず概要だけ教えてくださいな」

「Tes.、 私が持ってる情報は“真の敵”についてや」

 「真の敵?」と首を傾げる全員に頷くと表示枠を開く。

「いまこの世界での敵はなんや? 勢力を拡大する織田か? 世界征服掲げた徳川か?

それとも裏で暗躍している<<結社>>か?」

 最後の言葉にクロスベル側の連中が反応した。

「ちゃう、これらは全部ある敵に比べたら大した事無い。私らが一番気をつけなければいけないのは……」

「怪魔……か」

 ロイドの言葉に皆頷く。

「そや、怪魔。今から四年前に現れた謎の怪物ども、目的も生息もハッキリしていないがただ人間に対して害意を持っていることだけは判明している。

私らはこいつらの情報を他の国よりも多く持っている。首領が居る事もな。

どや? この情報、喉から手が出るほど欲しいやろ?」

 といっても自分が知っている事はM.H.R.R.やP.A.Odaで広く知られている事よりちょっと詳しいぐらいで上層部の連中ほど詳しいわけでは無い。

だがそれでも他国の専門家よりも多くの事を知っている。

情報を知るという事はそれだけ敵に対して有利に戦えるということだ。

“これから”の事を考えると知っておくべきだろう。

「さあ、どないする?」

 しかし気がついた。人狼女王の瞳に映る強い意志の力を。

 これは良くない。

今の情報提示は間違いだった。そう思った瞬間彼女は「そうですわね」と頷く。

「確かに面白そうな情報ですけど…………いりませんわ」

 その返答に全員が一斉に息を呑んだ。

 

***

 

・コニ子:『あーこりゃ、しくじったかもなー』

・カニ玉:『え!? そうなんですか!?』

・コニ子:『大したポーカーフェイスやわー。あのバインバイン。さいしょっから要求呑む気なんて無かったんだわ。ただこっちがどんな情報持ってるか確かめる。

で、こっちはまんまと話してしまったわけや』

・しとお:『商売で例えると冷やかしを受けたので御座るな』

・コニ子:『そう言われると滅茶苦茶腹たった!

やっぱ準備無しの土壇場交渉は難しいなあー、テンションだださがりやー……』

・カニ玉:『元気出してください! お菓子食べましょう!!』

・コニ子:『……。で、ちょっち相談なんだが、状況次第では人狼女王と戦う事になるんやけど、可児君盾にしたら何分時間稼げる?』

・カニ玉:『酷い!?』

・巨 正:『そうですね、直接人狼女王と相対したことが無いので正確には分かりませんが、十分はもちますか?』

・カニ玉:『はい! いざという時は全力で頑張ります!!』

・コニ子:『よし、いざという時は可児君盾にして逃げよう!』

・カニ玉:『酷いっ!?』

 

***

 

・元ヤン:『おう、そっち今どうなってる?』

・現役娘:『Tes.、 ベルガード門ぶっ飛ばして御菓子食べてこれからM.H.R.R.と戦争になりますわ』

・元ヤン:『…………………………はあっ!?』

 

***

 

 ロイドは人狼女王の一言で場の空気が一変した事に気がついた。

 行長は笑みのままだが沈黙し、対する人狼女王も笑みを絶やさずしかし威圧感を高める。

━━まずいな……。

 一触即発だ。

 行長の連れの才蔵も菓子を食べ続けてはいるものの場の空気を察し、槍を腕の中で抱えている。

 どちらかが動けば直ぐに此処は戦場になるだろう。

「アリオスさん」

「ああ……分かっている」

 アリオスに目配せすると彼は直ぐに市長を庇えるように準備する。

 戦いになれば自分達は両者を仲裁しなければならないが、どちらも達人級だ。

 ただでは済まないだろう。

「後学のために聞くけどなんで断ったん? 六護式仏蘭西にとっても重要な話しやと思ったんだけど?」

「Tes.、 確かに“普通の国”だったらその情報は絶大な価値を持つものですわ。ええ、“普通”なら。

ですが私達は六護式仏蘭西。覇を敷く者。

私達の道は他者に干渉されず、行く手を阻むのなら轢き潰す。それが例え正体不明の敵であったとしてもですわ」

 「それに」と続けると彼女は眼を細め、笑みのまま行長を睨みつける。

「M.H.R.R.には大きな借りがありますわ。マクデブルク、私達にとっての始点。その時のことを忘れてませんのよ?」

 そう言うと行長は初めて商売用の笑みを止め、普通の笑みとなった。

「じゃ、しゃあないわな。六護式仏蘭西の出雲・クロスベル通過、意地でも止めさせてもらうで?」

「あら? どの様にして私達を止めるつもりですの? M.H.R.R.は別所攻めの最中。山陰まで手を出すのは不可能ですわよ?」

 確かに今の戦力では山陰まで手を出せないだろうし、例え出せても分散した戦力では六護式仏蘭西の軍勢を止められないだろう。

 だが行長は「甘いな」と笑う。

「直接手を出さなくても止める方法はいくらでもあるんやで?

例えばそうやな……難民を使うなんてのはどうや?」

 なんだって……!?

 難民を使った六護式仏蘭西を止める方法。

そんなことで思いつくのは一つしかない。

「…………難民を傭兵に使う気かよ?」

 苦虫を噛み潰したような表情で言うランディに行長は頷く。

「今、出雲・クロスベルには生活が苦しい難民が五万とおる。彼らに傭兵という職場を用意してやるんや。

M.H.R.R.は傭兵の国でもあるしなぁ。そういった事は得意やで?

それに傭兵にしなくてもちょーっと対立を煽ってやればこの街はあっと言う間に炎上するやろな」

 「だけど!」と言うと彼女は立ち上がる。

「出雲・クロスベルがこっちにつくっていうなら話しは別や! さあ、どうする?」

 六護式仏蘭西とM.H.R.R.。

二つの大国の目が出雲・クロスベルに集まる。

まさに前門の虎、後門の狼だ。

 どちらについても戦争に巻き込まれるのは確実。

そんな中で自分達はどうすればいいのか……。

━━壁だ。

 大きな壁が再び前に聳え立った。

 だが自分達は知っている。

 その壁をどう越えれば良いのか。

 今の自分達に出来ること……それは。

「市長、いいですか?」

 ヘンリーに訊くと彼は強く頷く。

 アリオスを見、特務支援課のメンバーを見て立ち上がると行長と視線を合わす。

「俺達は確かに弱いかもしれない。大国から見れば此処は小国で、軍事力も何もかも全てそちらが上だ。

だけどそんな俺たちにも大国に負けない物がある。それは…………絆だ。

俺達は今まで何度も理不尽な目にあい、絶望した。でも、その都度屈せず、乗り越えてきたんだ。今回の難局も絶対に乗り越えてみせる!」

「ほほぉう? 立派な意見や。でもな? 実際どうする? 現実は残酷やで?

さっきも言ったが私らがちょっと煽動すれば争いの火はあっと言う間に……」

「広がらない! 市民側には市長や俺達そして遊撃士協会がいる! そして難民側も俺達が出来る限り抑えるし何よりもマミゾウさんが居る!!

決してお前たちの好きにはさせない!!」

 

***

 

 木の上から会談の様子を窺っていたマミゾウは苦笑し頬を掻いた。

━━やれやれ、随分と買われたものじゃ。

 特務支援課と出会ってまだ日が浅いがこうもはっきりと言われると小恥ずかしい。

 だがそれと同時に嬉しくもあった。

「そうじゃ、小僧。言ってやれ、自分達は決して屈しないと。お主らが誇りを持って立ち向かうというならば儂は最大限の協力をしよう。

狸は人を化かすが恩義には報いる動物なのじゃよ」

 そう言うと喉を鳴らし、マミゾウは笑みを浮かべた。

 

***

 

 ロイドが言葉を終えると場は沈黙した。

だが先ほどまで不安げであった出雲・クロスベル側の人間は皆強い意思をその瞳に宿し六護式仏蘭西とM.H.R.R.の代表を見る。

 そんな中、小西・行長は溜息を吐くと苦笑した。

「あー、負けや負け。こりゃいかん。完璧に私らが悪役や」

「フフ、そうですわね。でも分かってますの? 今の言葉の意味。貴方方は二大国を敵に回したのですわよ?」

「そんな事は問題あるまい」

 ヘンリーが立ち上がると笑みを浮かべる。

「クロスベルは昔から大国に挟まれてきた。それがカルバード・エレボニアから六護式仏蘭西・M.H.R.R.に変わっただけだ」

 誰もが頷く。

その様子を見て人狼女王はこの会談の決着を見た。

 小国はその誇りを貫く事にしたのだ。

その先がどんなに過酷であっても必ず再起し、乗り越えると。

━━やはり何処かの国に似てますわね。

 彼らも挫折をし再起した。

 この国からは再起したあの国と同じ匂いを感じるのだ。

━━意外と強敵になるかもしれませんわね。

「いいでしょう。私は報告の為、六護式仏蘭西に戻りますわ」

「私は一日こっちで宿泊してからM.H.R.R.に戻るわ。ほれ、可児君、立ちい」

「あ、はい!」と才蔵は立ち上がり行長の横に立つとヘンリー・人狼女王・行長の視線が交わる。

「次に会う時は敵ですわね」

「Tes.、 勝つのは私らや」

「守り切ってみせましょう。この国を」

 三者が力強く頷くとアリオスが立ち上がり、それに続いて特務支援課も立ち上がった。

 そしてアリオスが全員を見渡すと会談の終わりを告げるのであった。

「これにて三国の会談を終了する!」

 

***

 

 クロスベル行政区にある図書館の屋上。

 夕焼けの赤に染まるその場所に一人の男が立っていた。

 銀の髪を持つ彼は市庁舎から出てゆく人物達を見下ろすと眉を僅かに顰める。

「これでこの国は争いの渦に巻き込まれる」

 彼らが解散し行政区から離れて行くとそれと同時に動く影もあった。

 それぞれが己の役目を果たしに行くのだ。

これから起きるであろう大きな波に備えて。

「……やはり、“意志”はここに集まるか。ならば何れ東の“意志”もこの“運命の地”に来るかも知れんな」

 その時何が起きるのか? 自分には分からない。

 だが後手に回るつもりは無い。

 一度は死した身、未来を生きる彼らの為に使おう。

「………………カリン、もう少しこの死人の事を見守っててくれ」

 踵を返し着ていたコートが翻る。

 銀の髪を靡かせた彼はそのまま図書館の中に消えて行くのであった。

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