緋想戦記   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第七章・『月下の乱入者』 敵? 味方? (配点:第三者)~

「武田と真田だって!?」

浜松艦橋からネシンバラは叫んだ。他の兵士達も息を呑み、大型表示枠を見ていた。

すると大型表示枠の前に新しく表示枠が開かれた。

表示枠には着物を着込んだ初老の男性が映る。男性はニタリと笑うと一礼した。

『武田家家臣、馬場信房だ。我等甲斐連合、徳川と今川の戦いを仲裁したい』

家康が立ち上がり、ネシンバラに目配せをする。ネシンバラは軽く頷き表示枠を開く。

・未熟者:『本多君、交渉頼めるかい? 可能なら彼等に帰ってもらい、それが出来ないようであればなるべく引き伸ばして欲しい』

・副会長:『Jud.、 そちらは?』

・未熟者:『地上部隊になるべく早く駿府城攻略をするように伝える。武田は仲裁したいといったけど停戦しろとは言ってないからね』

ネシンバラの言葉に正純は頷き表示枠を開いた。

『こちらは武蔵アリアダスト教導院副会長、本多・正純だ。徳川の代理として武田との交渉を行いたい』

 

***

 

 駿河と甲斐の国境にある関所の茶屋に表示枠を開いた馬場信房と緑髪の巫女が座っていた。

巫女は茶を飲みながら信房の表示枠を覗き込んでいた。

信房は表示枠に武蔵の副会長が現れると一礼し、着物の裾を正し表示枠越しに頷いた。

『まず、先ほどの攻撃を行った理由を聞きたい。此方は先方の攻撃によって犠牲者が出た。これは武田が徳川との開戦を望んでいるという事でいいか?』

やれやれ。と信房は思った。先ほどの攻撃は此方としても予想外の事だった。

本来であれば少し脅かして名乗りを上げるだけの筈だったのだが……。

・東風谷:『お二人とも何か言い訳は……?』

・風神様:『いやぁ、箔つけようとしたらつい……』

・邪神様:『私は止めたよ! 多分!』

隣の巫女が眉間に皺を寄せるのを苦笑しながら見て信房は武蔵の副会長に向かい合った。

「先ほどの件は戦場でよくある事故だ。だが此方にも不手際はあった。故に謝罪はしよう」

『非を認めると?』

「ああ、認めるとも。そちらはこの事で交渉を有利にしようと思っているだろうが諸君等の非に比べればこの程度童の悪ふざけよ。我々は聖連の要請で動いているのだからな」

信房は相手の表情が消えるのを見た。

・東風谷:『あっちの非ってなんですか?』

・鬼美濃:『彼奴等は臨時惣無事令を無視して戦っているんのだから、あまり強くは出れないという事だよ』

・風神様:『つまり私は悪くないな!』

・鬼美濃:『お前さんが攻撃しなければもっと有利だったんだがのぅ……』

『Jud.、 そちらの謝罪を聞き入れよう。その上で交渉を行いたい』

「了解した。では、交渉を開始しよう」

さて、と信房は一息入れた。ここからが本番だ。此方の有利性は薄れたが、それでも此方のほうに大義がある。

相手は世界制服をしようという連中だ。

相手のペースに飲まれないようにしなければな。

 

***

 

『では、先ほども言ったが我々武田は徳川・今川間の紛争を仲裁したい。現在両家は臨時惣無事令を無視した戦いを行っている。

このままでは双方にとって世界的に不利になるだけであろう』

アリアダスト教導院の屋上から正純は相手の話を聞いていた。

「Jud.、 確かに我々は臨時惣無事令を無視しているように見えるが、この戦いは正当なものだということを言っておく」

『ほう? どの様な正当性が?』

「Jud.」と正純は一度頷くと

「先方も知っているだろうが先に仕掛けてきたのは今川家だ。我々はそのための迎撃を、そして東海道の平和を守るために動いているだけに過ぎない。

よって我々は大義の元に戦っているため、他国の干渉を受ける必要は無い」

これは本当の事だ。先に仕掛けたのは今川家であり、自分達は受動的に動いているだけに過ぎない。

『成程、浜松における戦いは諸君等の言うとおりであろう。では、今の戦いは?

迎撃するだけならば駿府まで攻め上がる必要は無いと思うが?

東海道の和を保つというのであれば聖連に頼めば良いのではないかな?』

「無論、それが一番の解決策だろう。だが現状ではそれは出来ないと判断した」

・俺  :『そうなん?』

・未熟者:『ああ。通常時なら出来るが今の聖連は此方まで動けない。何故だか分かるかい?』

・立花夫:『織田ですね』

・未熟者:『Jud.、 織田が近畿地方に進出したため西日本を本拠地としている聖連は東日本には来れないんだ。だから聖連の代理で武田が来た。まぁ個人的な目的もあるんだろうけど』

正純は通神に頷きながら信房を見た。

「聖連の援軍が西より届くかどうか分からない以上、自らの身は自らで守らなければならない。

そのためには戦争を起こした今川家を抑えなければならないのは必定だと思うが?」

『ふむ……では徳川は今川征伐後駿河をどうするお積もりかな?』

「我々は駿河の民を虐げようとは思わない。今川義元を捕らえ、代理のものを統治に当たらせた後、聖連の判断を待つ」

正純の話を聞いた信房は顎鬚を摩りながら破顔した。

『それを聞いて安心した。その上で提案したい事がある』

提案?と正純は眉を顰めた。此方の正当性は確立された以上武田にはこの戦いに介入できる要素は無いはずだ。

なのに提案とは?

『諸君等が開戦する直前にな、今川の兵士が関所に来たのだよ。彼等は今川領の武田への譲渡を提案してきた』

軍港の兵士か!?

「まて、それはあくまで逃走した兵士達の願いであり今川家の総意では無い筈だ! 故にその事に今回の件に対する影響力は無い!」

『それがそうでもないのだよ。今川の民は以前から武田に従属したいと思っているものも多かった。関所に来たのは兵士だけではなく民もなのだよ。

民からの要望があったのならば無為には出来まい。

それとも徳川は民の気持ちを無視しろと、そうおっしゃるのかな?』

・未熟者:『おそらく以前から武田は今川領に対して懐柔策を行っていたんだろうね。今までは今川の勢いでみんな付いて来たけど、さっきの敗戦で大きく揺らいだんだろう』

厄介だ。と正純は思った。

徳川は王道を掲げる事を決めた。王道を敷くということは民を見捨てないという事だ。今川の民が武田に靡いている以上、あまり強行的なことは出来ないだろう。

正純が思案していると信房は笑顔で語りかけてきた。

『だが、だ。だが徳川の気持ちも分からんでは無い。

よってここに徳川と武田による今川領の分割統治を提案したい』

 

***

 

・未熟者:『まずいね……』

・銀 狼:『そうなんですの? 分割とはいえ今川領を得る事が出来て且つ武田と戦わなくて済むのならそれでいいのでは?』

・副会長:『たしかにこれが一番簡単な解決策だが分割する土地が問題だ。状況的に此方が不利な以上、武田は自分の正当性を押して分割統治の際に駿河東部を要求してくるだろう』

・未熟者:『武田からすれば駿府城とその港は喉から手が出るほど欲しいはずだ。聖連もおそらく武田に付くだろうから分割統治の交渉はなんとしてでも避けたいね』

・副会長:『それに戦争結果が分割統治となればこれから世界を征服する徳川の初戦に泥を塗る事になる。後々の事を考えるとそれは避けたい』

・銀 狼:『大丈夫なんですの……?』

・副会長:『ああ、なんとかする』

 

***

 

さて、どう出るか?

此方は徳川に対して優位性を見せた上で譲歩を行った。

この要求を徳川が呑めば後の交渉で今川領東部を得る事が出来るし、万が一この提案を蹴れば武田は徳川に対して宣戦布告の大義名分が出来る事になる。

どちらに転んでも此方が有利だ。

 表示枠越しに武蔵の副会長を見れば彼女は表情を隠し、己の表示枠に書き込んでいる。

おそらく作戦を練っているのだろうがどうあがいても此方の優位性は崩れないはずだ。

すると正純が此方を見た。その表情には不安げさは無かった。

『たしかに、貴公が提案する分割統治案は魅力的だ。だが、先ほどからこの会議には欠如しているものがあると思わないか?』

欠如しているもの? 交渉役の自分がおり、相手も正式な交渉役だ。ならば他に欠如しているといえば━━。

「まさか!」

正純が口元に笑みを浮かべる。

『先ほどからこの交渉は武田・徳川の二国間で行われている。だが今川家のことを決める場において今川の交渉役がいないのはフェアでは無いと私は思う。

よって我々は後の交渉のために今川義元公を“保護”する事に決めた!』

「馬鹿な! この戦争は今川が引き起こしたもの! その当事者を交渉の場に立たせるなど……!」

『無し、では無いはずだ。彼等にも言い分はあるだろうし今川領を得る以上彼等の声を聞く義務が我々にはある筈だ。それとも聖連を担ぐ武田が一方的に自分の都合を押し付けるというのか?』

やられた。と信房は思った。

今までの交渉は今川のことを抜いた上での事だ。本来であれば徳川の言葉を一蹴りにして交渉を進めるが聖連を担ぐという一言が大きい。

徳川との交渉で此方が優位性を確保できたのは聖連という後ろ盾があったからこそであり、ここで強引な事をすれば武田の評判を落すだけではなく、聖連との関係をも悪くする。

それは此方としても望まない事だ。

ならば。

「成程、確かにこの交渉の場に今川は必要だろう。だが、貴国が義元公を保護するというのはいただけない。ここは第三国である我等が保護をするべきでは?」

『交渉の場に立つ以上貴国も第三国というわけではないだろう? 我々に保護する権限がないというならば貴国も同じはずだ』

 

***

 

正純は一息をついた。前半は押されていたが何とか盛り返せた。

あとは油断せずに詰めていかなければ。

そう思い正面を見ると信房が大声で笑った。

『カカッ! 一本獲られたわ! 義元公保護の件、このままでは平行線だ。故に一つ勝負をしようではないか』

「勝負?」

『左様。どちらが先に今川義元を保護できるかだ。この結果によって今後の対応を決めようではないか』

正純は眉を顰めた。

「その条件だと兵員も城の攻略度も此方が有利だが?」

『なに、先に戦いを始めていたのはお前さん達だ。それに何時から我々だけだと思っていた?』

なに、という前に信房はもう一つの表示枠を開いた。

『昌景、交渉は決裂だ。徳川より先に義元を保護しろ』

『信房よ、仕事が無いと思ったぞ! では行こう!』

通神越しに聞こえてくる威勢の良い声が消えると“武蔵野”から通神が入った。

『正純様、甲斐方面より駿府城に高速で接近する熱源を確認。照合したところ甲斐・武田家の機動殻部隊<赤備え>です━━以上』

信房が此方を睨みながら笑った。

『では勝負開始だ!』

 

***

 

 駿府城北部の草原を16の紅い影が走っていた。

その姿は上半身が武者の様であり、下半身は馬のようになっており側面や関節を強化装甲で覆っていた。

右腕には対人用の長槍が握られており、左腕は盾と合一していた。

そんな機動殻隊の中でも先頭を駆けていた3機の機動殻が一際異彩を放っていた。

 3機の内左右を走る2機は機動殻型の自動人形であり、右の機動殻は両腕を巨大な盾に変えており左の機動殻は長槍の変わりに長銃と右肩に対地攻撃用の小型砲台がついていた。

 そして先頭を駆ける機動殻は頭部に三日月形の飾りを着け、腰に太刀を備え右手に西洋式の槍を構えていた。

 赤備え隊が駿府城に近づくと駿府城から砲撃と射撃が始まった。それを受け、赤備え隊は更に加速し、先頭の機動殻が叫んだ。

『我々の目的が今川義元の保護だという事を忘れるな! 交戦は必要最小限にしろ!』

と言うと左の機動殻が言う。

『敵砲弾接近━━対処を』

先頭の機動殻が頷き、右の機動殻に叫んだ。

『信貞! 防げぃ!』

『Tes.!』

信貞と呼ばれた自動人形は加速と同時に跳躍し、集団の先頭に立ち両腕の大盾を展開した。砲弾が盾に当たり砕けると再び先ほどの機動殻が叫ぶ。

『信種! やれぃ!』

『━━Tes.』

今度は信種と呼ばれた自動人形が加速し右肩の小型砲を展開した。信種の眼前には照準用の表示枠が展開され、駿府城の櫓を捕らえると砲を放った。

加速術式を受けた高速砲弾は直線状に櫓に向かい衝突した。正面を砕かれた櫓はバランスを失い、崩れていった。

その様子を見届けると信種は元の隊列に戻る。

『昌景様、目標の沈黙を確認』

『よし、このまま駿府城に突撃を仕掛けるぞ!』

赤備え隊は喊声を上げ、加速した。

 

***

 

武田が動き始めてから軍港に居た成実は動けずにいた。

その理由は正面の少女だ。麦藁帽子を被った少女━━洩矢諏訪子は退屈そうにしながら右へ左へと動いていた。

本来であれば直ぐに本隊の援護に駆けつけたいのだがこの少女がそれをさせない。

正面の少女は一見退屈そうにしているが実際は

まったく隙が無いわね。

此方が何かしようとすれば向こうはそれに合わせて動いてくる。長年戦っている者なら分かるがこういう存在は危険だ。普段は力を隠し、隙を見せれば一気に噛み付いてくるタイプだ。

 横目で武蔵の副長を見ると彼女も動けていなかった。

彼女と相対している存在は圧倒的な威圧感を放ち、離れているこっちまで息苦しくなるような相手だ。それを正面から受けている彼女の重圧は計り知れない。

「さて、と」

と正面の諏訪子が立ち止まり此方を見た。

「昌景たちは始めたようだけど、こっちも始める?」

一瞬だけ放った鋭い目に身構えると諏訪子は破顔した。

「まあまあ、そう硬くならないでよ。私としても面倒なのは嫌なわけ。だからね、見逃してあげようか?」

そう諏訪子が言うと成実は顎剣を取り出し構えた。

『見逃してあげるって、随分と上から目線ね』

「だって私神様だからねぇ。あんたたち人間とは格が違うわけ」

『そう。でも知ってるかしら? 多くの物語で神様は人によって倒されるって』

「へぇ」と諏訪子は目を鋭くし一歩前に出ようとした。その瞬間、成実はドッグのほうに叫んだ。

『キヨナリ! 今よ!』

「拙・僧・発・進!」

ドッグの方から爆音と共に白の半竜が突撃を仕掛けてきた。その存在に気が付いた諏訪子が回避のために後ろに跳躍しようとするがそれよりも早く顎剣を放つ。

顎剣は諏訪子の跳躍先に刺さり、その為諏訪子は空中で方向転換をしようとした瞬間二発目の顎剣が飛んできた。

諏訪子は舌打ちすると飛んできた顎剣の先端を蹴り、地面に着地したがそれと同時に横から加速した半竜の体当たりを受けた。

 体当たりの衝撃で爆煙が上がり、視界が遮られる。

成実は警戒のため顎剣を構え、煙の中の半竜に声をかけた。

『仕留めたの?』

「いや、逃げられた」

そう半竜が言い、煙が消えると先ほどまで諏訪子が居た場所には砕けた岩石があった。

ウルキアガが確認のために近づいた瞬間足元が歪み、諏訪子が現れた。

「!」

ウルキアガが身構えるよりも早く諏訪子は飛び込み手に持っていた鉄の輪で半竜の胸部を切断した。

 

***

 

厄介に御座る。

と本田・二代は夜の軍港を駆けながら思った。

伊達の副長が戦闘を始めたと同時に此方も戦闘が始まった。先手は向こうだ。

正純達がよく分からない難しい話をしていたので「夜空が綺麗で御座るなー」と思っていたのだが急に正面から御柱が飛んできた。

 急いで“翔翼”を展開し回避を行ったため無事だったがさっきのは完全な不意打ちだった。

二代は駆けながら叫ぶ。

「不意打ちとは卑怯に御座るよ!」

と言うと神奈子が

「敵を前にしてボーっとしているあんたが悪いわ!」

「たしかに」と二代は頷くと跳躍し正面の倉庫の外壁に足を着けた後、蜻蛉スペアの先端を敵に向けた。

「結べ! 蜻蛉スペア!」

それに対して敵は自分の正面に御柱を落とした。蜻蛉スペアによって御柱が割断され、左右に分かれて倒れていく。

そして御柱が倒れた直後、正面から別の御柱が高速で飛んできた。

 二代は再び跳躍し、倉庫の正面左に建てられた外灯を掴むとそれを支点にして更に跳躍し別の倉庫の屋根に着地した。

蜻蛉スペアを構え振り向くと、月を背に神奈子が滞空していた。

彼女の周りには彼女を囲うように7つの御柱が浮遊しており、神奈子は先ほど割断された御柱を見るとやれやれと首を振った。

「まったく神聖な御柱を壊しやがって。あんた、罰が当たるよ?」

「御柱を武器に使うのは良いので御座るか?」

神奈子は暫く思案し

「いや、あたしは神だし」

「成程、拙者は侍に御座る」

「は?」と神奈子が眉を顰めると二代は頷き、蜻蛉スペアを構えなおしす。

「拙者は侍故、敵を倒すのが仕事に御座る。つまり、敵であるのであれば神もまた同様ということで御座るよ」

二代がそう言い終えると神奈子は大笑いした。

「まったく人間ってのは面白いねぇ! じゃあそこの女侍、神すら倒すって言うならあたしを倒してみな!」

そう言うと同時に7つの御柱が二代目掛けて射出された。

夜の軍港に轟音が鳴り響く。

 

***

 

 駿府城の戦いは徳川軍が第4層をほぼ制圧し、第3層の門を攻略しようとしていた。

第3層の門前には30機ほどの大盾と長槍を装備した拠点防衛用の重機動殻が密集しており、迫る徳川軍を押し返していた。

 徳川軍は長槍を持ち集団で突撃を仕掛けるが機動殻の大盾に押し返させられ、動きが止まったところを第3層の兵士達が射撃を加えていた。

 徳川軍が引き始めるとその中から一人の少女が飛び出して来た。青く長い髪を靡かせた少女━━比那名居天子は身を低くし銃撃をすり抜けると機動殻隊の前まで来た。

機動殻隊の指揮官が天子を指差し

『あいつを食い止めろ!』

と叫ぶと、残りの機動殻は大盾を前に突き出した。

 天子はその様子を見ると跳躍を行った。最前列の大盾に足を掛け、再び跳躍すると機動殻隊の後ろに回りこむ。

後列の機動殻達が長槍を構え、天子に対して突撃を開始すると天子は緋想の剣を地面に突き刺し、自分の正面に岩の壁を呼び出した。

『━━!』

そして天子は不意を突かれ立ち止まった機動殻達の中に飛び込み、緋想の剣で一人目の機動殻の右膝関節を断った。

右膝を断たれた機動殻はバランスを失い隣の機動殻に激突し転んだ。

天子の背面に回りこんだ機動殻が長槍を突き出すと天子は左足を軸に回し蹴りを行い、槍の先端を蹴る。

槍は左側に大きく反れ、天子のわき腹を掠めていく。そして天子は回転したまま緋想の剣を機動殻の首関節に叩き込んだ。機動殻は篭った音と共に膝から崩れ落ちる。

残った機動殻達は天子を囲むように長槍を構え距離を詰めると天子は長い髪を手で靡かせ挑発的な笑みを浮かべた。

「せっかく注目してくれているところ悪いんだけど……私だけに注目していていいのかしら?」

『!?』

その瞬間機動殻達の間を一陣の風が吹き数機の機動殻が膝を断たれ倒れる。一体の機動殻が向かって来る風を横なぎにすると槍の先端に重みを感じた。

『!!』

槍の上には極東の制服を着た金髪の男が立っており手には長槍を携えていた。

「失礼!」

男はそう言うと槍の上を駆け機動殻の頭頂部に足を掛けると跳躍し天子の横に立った。

そして誰かが叫んだ。

『西国無双か!』

「Jud.、 元・西国無双、立花・宗茂です」

そう言うと宗茂は創作術式“駆爪”を展開し機動殻隊に飛び込んだ。宗茂は最初の一体の首関節を瓶貫で貫いた。そのまま倒れる機動殻の横をすり抜け二体目の機動殻に飛び込んだ。

二体目の機動殻は既に長槍を突き出しており宗茂は回避のために身を低くしながら機動殻の左肘関節を貫いく。

そしてそのままの姿勢のまま盾を構えている機動殻の右膝を断った。

 わずか数秒の間に三体の機動殻が倒れ、彼が通った場所に直線状に道が出来た。

「誾さん、今です!」

そう宗茂が叫ぶと徳川軍から立花・誾が飛び出して来た。彼女は空中に“四つ角十字”を展開しており砲身を第3層の城門に向けた。

「穿ちなさい“四つ角十字”」

“四つ角十字”より砲弾が放たれ、先ほど宗茂が開けた道を通過したのち城門に当たった。

城門が爆音と共に崩れ落ちると徳川軍は再度突撃を始め、動揺した機動殻隊を押しつぶしていった。

 

***

 

城門が崩れたことによって今川軍は総崩れとなり第3層に撤退していった。

それを追う形で徳川軍は第3層に流れ込み始めると今川軍が第2層の門前に集結していた。

今川軍の部隊には岡部元信をはじめとした今川軍の精鋭部隊が集結していた。

それに対して徳川軍も集結し、対峙していた。

暫くのにらみ合いの後、今川軍から一人の女性が出てきた。女性は徳川軍に一礼すると

「私の名前は上白沢慧音。わざわざここまで来てもらって何だが、徳川の御客人方よお帰り願おう」

そういい終えると今川軍が突撃を開始した。

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