「朝野太陽よ。お前には今から試練を与えよう」
「その前に、ちょっといいですか?」
「ん? どうした?」
「なんで縛られてるんですか俺!!」
俺、朝野太陽はただ今絶賛(?)義理の兄の凶一郎兄さんに拘束されていた。
「あぁ、いつもならなんとなく縛るのだが今回は悲しいが理由があって縛っているのだ」
「……その理由ってほんとにちゃんとした理由なんですよね?」
「あぁもちろんだとも。ところで今の日時はわかるか? 朝野太陽」
「日付は12月25日、時間は1時くらいですか?」
「ふむ、まぁ及第点だな」
凶一郎兄さんはそう言いながらどこからともなく7個のプレゼントボックスを取り出す。
「これは見たらわかると思うがプレゼントボックスだ。そして12月25日はクリスマス! これだけ情報が有ればいくらお前でもわかるだろう?」
「つまりみんなの部屋に忍び込んでプレゼントを置いてあげようドッキリってことですか?」
「正確に言うと毎年恒例の伝統行事だがまぁいい。そして俺はお前にプレゼントはあげたくない!」
「随分とはっきり言いますね」
「だが行事ごとからお前をハブると六美に嫌われる! だからお前にも
「なるほど、それは理解しました……」
だけど、俺はこの解説を書いた上でひとつ疑問が浮かび上がってきた。
「なら俺縛る必要なく無いですか!?」
「はっはっは、お前を縛るのに理由がいるのか?」
こうして俺たちのサンタ大作戦が決行されることになったのだった。
◇◇◇◇◇
——二刃姉さんの部屋前
「まずは俺が手本を見せよう」
そう言いながら凶一郎兄さんは赤とピンクのサンタ帽をかぶる。
「ルール1、送られる側は部屋の1番奥にベットを置き、そこで絶対に寝ること。ルール2、サンタ側の怪我は自己責任。ルール3、サンタ側はプレゼントを手渡しで送ること。つまりドローンなどによった遠隔プレゼントは禁止だ。そしてルール4、送り主を起こすな。これで以上だが質問はあるか?」
俺への説明と同時進行で部屋中のトラップを発動前に停止させ、まるでただ歩道を歩くかのように歩み、一切の音なくプレゼントを置く凶一郎兄さん。
俺もこの家に鍛えられているから引っかかることはないと思うがそれでも異常としか言いようがないくらいの効率で任務を遂行していくのを見ていると、力の差を思い知らされる。
「よし、次は辛三の部屋だ。次はお前だけでやってみろ」
「は、はい!」
◇◇◇◇◇
——数十分後
「よし、あとは六美の部屋で終わりだな」
「ぜーーっ、はーーっ、ぜーーっ、はーーっ」
辛三兄さんの部屋を皮切りに四怨姉さん、嫌五、七悪、ゴリアテへのプレゼントを送ったのだがそれはもう地獄だった。
辛三兄さんの部屋はところどころに様々なスイッチが仕掛けてあり、発動させると銃弾が大量に飛んできた。しかも踏んで無いのに凶一郎兄さんが勝手に発動させてしかも自分の方に銃弾を全部逸すのだからなおさらたちが悪い。
四怨姉さんの部屋は大量のドローンが徘徊しており、見つかると攻撃+大量の援軍が飛んできてとにかくしつこかった……。しかもあの人自分に向かってきたドローン全て拘束して俺に押し付けてきたし……。
嫌五の部屋は良くも悪くもいつもどおりだった。散らかってるせいでいくつの手榴弾を踏んだことか……。
七悪の部屋は睡眠薬が常に撒かれ、その上不定期に酸の雨まで降ってきた。しかも凶一郎兄さんがガスマスクを壊してきたせいで途中から強制RTAになった……。
ゴリアテは罠とか一切なくサクッと終わった。ありがとう、ほんとに。
「よし、いくら鍛錬を積んだお前でもここまで体力は持たなかったな。それでは、六美へのプレゼントは俺が送らせてもらおう」
そうしてドアノブに手をかけた瞬間、俺は懐にある八重を抜き凶一郎兄さんに攻撃した。
「ふむ、まだ立ち上がる気力があったか。だがもうまともに動けまい」
「くっ!!」
これは、賭けだった。分が悪いなんてもんじゃないくらいの賭けだ。それでも、六美の夫として、自分の手でプレゼントを渡したいという執念から出た言葉だった。
「……賭けを……しませんか」
「ん? 賭け、だと?」
「はい、六美の部屋にもおそらく罠があるでしょう。その罠を一切避けず、走らず、ただ真っ直ぐ六美のところまで行きます。それでたどり着いた人がプレゼントを渡すんです。六美への愛があれば余裕ですよね?」
正直、一切凶一郎兄さんにはメリットがない。無理だと、俺は思っていた。
「ふむ、良いだろう。その挑戦、長男として受けてたとう」
「マジですか、凶一郎兄さんにメリットなく無いですか?」
「メリットデメリットで受ける
「ははっ、流石ですね」
「それじゃあいくぞ、太陽」
そう言って俺たちはドアを開く。
するとそこには、ふたつのスイッチが置いてあるだけだった。
「あのスイッチだけ、ですよね?」
「ふむ、どうやらそのようだな」
見ると、スイッチには看板が貼ってありそこにはそれぞれ『お兄ちゃんへ』と『太陽へ♡』と書いてあった。
「これ、六美からのプレゼント……?」
「そのようだな。これを押したら何かが起きるのだろうがどうする?」
「……凶一郎兄さんからで良いですか?」
「ふむ、いいだろう」
そう言ってスイッチを押す。すると音声が流れ出した。
『はい、六美。これ今回の任務の報告書』
『ありがとう、太陽。もう夜遅いしおやすみ』
『おやすみ。六美も夜ふかしのしすぎはダメだからな』
『うん。……よし、業務に戻りますか! ってうわ、また離婚届け混ざってるし。どうせお兄ちゃんが入れたやつだろうなぁ。はぁ、ほんっとお兄ちゃんキモいし大っ嫌い』
「かはっ!!」
「凶一郎兄さーん!!」
凶一郎兄さんは六美プレゼントによってマジで血を吐き倒れてしまった。それでも、膝とかガクガク震えているのに凶一郎兄さんは立ち上がる。
「はぁはぁ、さぁ太陽よ、次はお前が苦しむ番だ……!!」
「は、はい」
そうしてスイッチを押す。すると、先程と同じく音声が流れ始める。
『やっほー太陽。聞こえてるかな? 今日はクリスマス! ということであなたの妻として、この言葉を送ります。世界で一番愛してるよ、太陽♡』
「かはっ!!」
「うぐぁ!!」
六美の愛の言葉によってふたりの男がダウンした。
「俺の妻が、最高すぎる……!!」
「六美……なんでだ、なんでそんな男に愛の言葉……を……」
凶一郎兄さんがダウンした。どうやら、シスコン的に今の2連撃は銃弾よりもきつかったようだ。
そんな凶一郎兄さんから六美へのプレゼントボックスを勝ち取った俺は八重を杖代わりに前に進む。
スヤスヤと寝ている六美にプレゼントを渡し、せめてものお礼に一言添える。
「プレゼントありがとうな。愛してるよ、六美」
完
ハーメルンでは初投稿です。
今回は『夜桜さんちの大作戦』の二次創作ですがいかがでしたか?
口調などに違和感が無いよう頑張ってみましたが治すべきところがあれば感想などで教えてくれると助かります