TS転生セシリアが『原初』のリンクスになるようです 作:相川翔太
◎月×日 くもり
ラーメンを食べに行った日から親父とお袋の仲はすごく良くなった。
前まではお袋と話す時におっかなびっくりだった親父は堂々と話す様になり、今では冗談を飛ばしたり、一緒に晩酌をしたりするようになった。
何があったか本当に分からないが本当の夫婦って感じがして俺は嬉しくなった。
今日は久しぶりにお袋が休みを取って親父の運転で二人でドライブに出かけた。
帰りが遅い気がするけど、良いムードになって二人でよろしくヤッてるのかな?(ゲス顔
もし親父とお袋が新しく子供を作るなら俺は弟がいいなぁ・・・。
×月×日 雨
親父とお袋が・・・、死んだ・・・・・・。
何故だ?何故だ?何故だ?何故だ?何故だ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?
ナゼナンダ?
(後は意味不明な文字が書き殴られていて読めない・・・・・・。
×月△日 雨
親父とお袋の葬儀も終わって、ひとまず俺の精神も落ち着いたので久しぶりに日記を書く。
まず、親父とお袋の死因は交通事故だった。相手は飲酒運転のトラックで親父とお袋の車に猛スピードで突っ込んだらしい。
俺は怒り狂い、犯人をぶっ殺してやりたかったが、そんな事をしても親父とお袋は戻ってこない・・・。戻ってこないのだ・・・・・・。
俺は前世を含めて一番泣いた。ただ、泣いた・・・・・・。
ひたすら泣いて、涙を出し尽くした後、俺はオルコット家の新当主として親父とお袋の葬儀を執り行った。
だが、その葬儀で俺は人の悪意と欲望を垣間見せられた。
――親族共は親父とお袋の遺産や利権、権利のことしか話していなかったのだ。
言葉では「お悔やみ申し上げます」などと俺に言い、二人の死を偲んで見せたが、俺の見ていないところで集まってひたすら金の話をしていた。
中にはストレートに、「養子にならないか?」とか「私が後継人になりましょう」などと言ってくるヤツもいた。
――巫山戯るな!!!
誰がお前らなどに1ポンドでもくれてやる物か!!!
俺がッ!セシリアがッ!!この『
俺はそう親父とお袋の眠る墓の前で誓った。
△月◎日 晴れ
俺は誓いを立ててから直ぐさま行動に移った。
イギリスでも有数の弁護士を雇ったり、比較的良心的な親族のところへ行き協力を要請したり、取れる手段はひたすら取った。
しかし悲しいかな、俺は当主と言っても成人もしてなければ後ろ盾も、権威も無い小娘であり状況は厳しかった。
日に日に悪化していく状況に焦燥感に襲われる。
何か、何か手はないか・・・。
そう悩んでいると、幼なじみであり、専属メイドのチェルシーが「ISの適正試験を受けたらどうか?」と提案してきた。
「そんなもん受けてどうすんの?」と言う俺の疑問にチェルシーは「適正試験で高ランクを叩き出して遺産の保護を条件に国家代表候補生になればいい!!」と言ってきた。
――チェルシーの提案は無茶苦茶だった。
まず大前提として俺に高ランクのIS適正がなければならない。さらにそれをクリアし、国と交渉を行い、こちらの条件を飲ませなければならないのだ。
しかし、現状これしか手がないのも事実だった・・・。
――やってやる、やってやるぞ!!!
俺は親父とお袋がくれたこの『身体』を信じることにした。
そして気合いを入れてIS適正試験の応募書類を記入し、郵送した。
後は神に祈るのみである。
×月△日 雨
結果から書く。
――駄目でした。
適性試験を受けて結果をドキドキしながら待っていたのだが今日、結果が郵送で届いた。
結果は『
終わった・・・。終わってしまった・・・・・・。
結果を見た瞬間、一気に無力感に包まれた。
そうか、これが絶望か・・・・・・。
○月○日 晴れ
IS適正試験作戦失敗を受けていよいよ追い詰められた俺は、それでもなんとかしようと他の道を探していると家に男が訪ねてきた。
今日は誰ともアポはなかったので不審に思いながら対応すると、男は『レイレナード社』の者だと名乗った。
――レイレナード社
確かカナダに拠点を置く新興のエネルギー産業企業だった気がする。
そんな俺と全く関係のない企業が何の用だと思っていると男は俺に人払いをさせ、部屋に二人きりになると開口一番に「いやぁ、今回のIS適正試験は残念でしたね」と言ってきた。
――嫌みか、貴様!!!
と、俺が内心怒り狂っていると男はそのまま言葉を続けた。
要点をまとめると以下の通りだった。
①現在レイレナード社はとある兵器とそれを運用する為のシステムを研究、開発している。
②俺にそのシステムの適正があるらしく、被験者兼テストパイロットになって欲しい。
③俺の現在の状況を把握しており、今回の話を了承した場合、財産の保証及びレイレナード社が俺の後ろ盾になる。
と言う物だった。
正直に言うと俺としては諸手を挙げて大歓迎したかったが、今日まで散々騙されそうになってきたことを思い出し、男を警戒した。
よくよく考えたらこの話、俺に都合が良すぎるからだ。
俺がその考えに至り、懐疑的な目を向けると男は真剣な顔で口を開いた。
曰く、スカウトしているのは俺だけではなく他にも適正のある者をスカウトしているのだが、俺はその中でも桁違いの適正を持っていること、レイレナードは今は言えないが、ある目的の為に社運を賭けてこの計画に取り組んでおり、俺がいれば一気に計画が進むのでこの条件を提示したとのことだった。
そう俺に語りかける男の目を見て俺は息を呑んだ。
――男の目は『
こんな目をした『大人』は・・・、いや『男』は今も昔も一度だって見たことがなかった。
いたのか!こんな『男』が!!この世界に!!!
俺はこんな男を擁し、交渉に派遣したレイレナードを信じることにした。
俺は男にお礼を言ってこの件を了承することを伝えた。
俺の了承の言葉を受けると男は立ち上がり、頭を下げると俺に手を差し出してきた。
俺も立ち上がり男の手を握った。
男の手は大きく、ゴツゴツしていたが嫌じゃなかった。
その後、部屋の外で心配していたチェルシーに今回の件とそれを了承したことを伝えて二人で男を見送った。
男が帰った後、チェルシーは今回の件について心配していたが、俺は「レイレナードは信じられる」とチェルシーに笑いかけた。
俺の言葉を受けてチェルシーは安心したらしく、「じゃあ今晩はお祝いですね」と他のメイド達と夕食の準備を始めた。
そして豪華な夕食を皆で食べた。美味しかったなぁ・・・。
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レイレナード社、交渉人side
幼い少女、セシリアとそのメイドに見送られ二人が見えなくなった後、交渉人の男は憂鬱な気分になり、ため息を吐いた。
それはそうだろう。レイレナードの目的の為に、両親から残された家を必死に守護ろうとする僅か十歳の少女の純粋な思いを利用するのだから・・・。
――現在、レイレナードで進められている“ネクスト開発計画”は行き詰まっていた。
プロトタイプは完成していたものの、まだ起動さえ出来ていなかったのだ。
なぜなら、プロトタイプ・ネクストを起動させようとした三人ものテストパイロットが起動させた瞬間、頭に流れ込んでくる情報量に耐えきれず一瞬で発狂死したからだ。
そのため、ネクストを起動させる為のAMSに問題があるのか、それともパイロットのAMS適正が低かったのか、あるいはその両方に問題があるのかさえ分からなかったのだ。
これ以上貴重なAMS適正を持つ人間を使い捨てにする訳にはいかず、開発チームは頭を悩ませていた。
そんな時に朗報が入った。
オーメルが確保した天才に匹敵しうるAMS適正を持つ少女、『セシリア・オルコット』を発見したのである。
それは偶然だった。
今年度イギリスで行われたIS適正試験にオブザーバーで参加していたレイレナードと協力関係を結んでいる企業『BFF』から、桁外れのAMS適正を持つ少女を発見したと言う情報が入ったのである。
レイレナードは歓喜し、直ぐさまその少女を確保しようとしたのだが問題が発生した。
なんとその少女、セシリアはIS適正も『
このままではISの国家代表候補として国にセシリアが確保されてしまう・・・・・・。
焦ったレイレナードはセシリアを被検体とした際に得られるネクスト関連技術、及びAMSの研究成果の一部をBFFへの優先提供を条件にBFFに工作を要請し、セシリアのIS適正値を改竄させ、試験から落選させた。
そしてセシリアの身辺調査を徹底的に行い、今回の交渉に臨んだのだった。
我ながらにあまりにも卑劣な手段だったと思う。
――しかし、もう『
「許しは乞わない・・・。むしろ恨んでくれ・・・・・・」
男の呟きは風の音にかき消された・・・。
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○月○日 晴れ
カナダにあるレイレナード本社に向かう飛行機の中で日記を書いている。
契約を交わしてからレイレナードの動きは早かった。
あっという間にクズ共を黙らせ、オルコット家は安泰になったのだ。
それを見た俺は正直、“今までの俺の努力ってなんだったんだ?”と思ったが、レイレナードがしっかり約束を果たしてくれたことに俺はただただ感謝した。
次は俺がレイレナードに義務を果たす番である。
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チェルシーの独白
「それじゃあ、行ってきます」
お嬢様はそう言って、綺麗な笑顔で家を出ました。
私はその姿を笑顔で見送りました。
しかし、数年後、私はその時のお嬢様の姿を、もっとしっかりと目に焼き付けておくべきだったと後悔しました。
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なぜなら、その時のお嬢様の姿が『
いかがだったでしょうか。
レイレナードの覚悟を見てセシリアも腹をくくりました。
原作ではセシリアの両親の死は数年前だったので恐らく十二~三歳のときだと思いますが、流石にレイレナードでも二、三年でアレサからアリーヤの開発は無理だと思ったので両親の死は原作から五年前ということにしました。
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