TS転生セシリアが『原初』のリンクスになるようです   作:相川翔太

42 / 47
お疲れさまです。

リアルが確定申告やらなにやらで忙しく投稿が伸びに伸びました。
本当に申し訳ありませんっ!!


一夏の『選択』

――『好き』に生き、『理不尽』に死ぬ。

 

 

セシリアとの初めてのお茶会で俺が口にしたこの言葉・・・。

 

あの『英雄』やレイレナードの『断頭台』、BFFの『女帝』。イクバールの『魔術師』にレオーネの『騎士』、GAの『切り札』。

 

・・・そして、オーメルの『天才』やセシリアとの邂逅を経てからずいぶん経った今ならいざ知らす、理不尽な『現実』と戦わず、逃避したいだけのガキが口にして良い言葉ではなかった。

 

それに気付いたからこそ、セシリアは口にしたんだろう。

 

――負けるのが嫌なんじゃないんですか?

 

そして続けてこう言った。

 

――あなたは今回の模擬戦を戦わなければいけません。

 

これらのセシリアの言葉に当時の俺は激昂して、セシリアに対して酷いことを沢山言った。言ってしまった。

 

あの時の俺があそこまで感情を爆発させたのは図星だったのもあるが、それだけではなかったんだ。

 

要は俺はセシリアのことを・・・・・・。

 

 

・・・・・・・・・・・・。

 

 

そして俺の罵倒の言葉に反論しないセシリアに俺は言った。

 

 

『自分だって戦ったこともないクセにッ!!』

 

 

・・・俺は馬鹿だった。自分が賢いと思い込んでいた、ただのガキだった。

 

 

だって、セシリアを初めとした『企業』側の人間はもちろんだが、姉も、かつての幼なじみや転入してきた留学生達も、最後まで好きになれなかった生徒会長など『国家』側の人間も・・・・・・。

 

 

 

 

 

――『誰もが生きるために戦っている』という、この世の当たり前の事実にさえ気付いていなかったのだから・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

――負けるのが嫌なんじゃないんですか?

 

 

セシリアが発したその言葉を理解した瞬間、一夏の中でナニカが『ビキリ!!』と今までの比にならない程の音を立てて軋み、一瞬で頭に血が上る。

 

 

ナンデソンナコトヲイウ?ソンナヒドイコトヲキケル?オレハオマエニイロイロキキタカッタケドアエテキカナカッタンダゾ?ヒドクナイカ?オレヲヒテイシナインジャナカッタノカ?オレデヨカッタンジャナイノカ?オレノホウガヨカッタンジャナイノカ?オマエモケッキョクホカノヤツラトオンナジナノカ?オレヲミクダスノカ?オマエニソンナシカクガアルノカ?オマエナンテ――

 

 

頭の中を様々な考えが巡り、心の中に負の感情が沸々と溢れ出す。

 

そんな一夏の内面を察したのかセシリアの表情が固まったのを認識した一夏はこれまでのセシリアとのやり取りを思い出し、爆発しそうになる感情を抑え、口を開いた。

 

「は、ははは・・・。セシリアは面白いことを言うなぁ。俺は負けるのが嫌なんじゃないんだ。俺はただ好きに・・・、『自由』に・・・」

 

声は震え、自分が今どんな表情をしているかさえも分からなかったが、気力を振り絞り、なんとか言葉を紡ぐ。

 

そんな必死な一夏の『言葉』にセシリアが今までとは違い、ぎこちなく笑いながら答える。

 

「あ、あはは、そうでしたか。すみません、一夏さん。どうやら私の勘違いだったみたいで・・・「!?、そう、そう!勘違い、勘違いなんだよっ!!」きゃっ!?」

 

自分の勘違いだったと言うセシリアに一夏はセシリアが喋り終わる前にそう言葉を畳み掛ける。

 

あまりの一夏の勢いにセシリアが驚き悲鳴を上げるが、直ぐさま真面目な顔になり、数秒一夏を見つめたかと思うと口を開いた。

 

「・・・一夏さん、私の話を聞いて貰っても良いですか?」

 

「!?あ、あぁ・・・」

 

今までとは違う真剣な口調のセシリアに驚きつつも返事をする一夏。

 

すると、

 

「一夏さん、正直に言いますと、専用機ですとか、研究所ですとか一夏さんの置かれている正確な状況を私は分かりませんが、これだけは言えます。一夏さん、あなたは今回の模擬戦を・・・、

 

 

 

 

 

――戦わなければいけません。

 

 

 

 

 

セシリアはそんな残酷な言葉を口にした。

 

 

 

 

 

――ビキリッ!!

 

 

 

 

 

空気が軋む、心が軋む。

 

「は、はは・・・。戦えって・・・・・・。俺は・・・」

 

うわごとの様になにか言葉を口にしようとする一夏にセシリアが追撃をする。

 

「嫌、なのでしょう?ですが一夏さん、『ヒト(人間)』は戦わなければいけない時が・・・」

 

 

――ぶちッ!!

 

 

「――せぇよ・・・」

 

 

――ガチャンッ!!!

 

 

セシリアのその言葉で遂に一夏はキレ、右手をカップを持ったまま机に叩きつけた。

 

当然、カップは割れ、破片や中に残っていた紅茶が白いテーブルクロスに飛び散るが一夏は構わず激情のままに立ち上がり怒声を上げる。

 

「うるせぇんだよッ!何が戦わなきゃいけないだよッ!!巫山戯んなッ!!!」

 

「一夏さ・・・」

 

そんな一夏にセシリアは怯まず声を掛けようとするがそれは一夏がさらに怒鳴って遮った。

 

「黙れよッ!お前が俺の何を知ってんだよッ!!えぇッ!!」

 

「・・・名前とか、家族構成ですとか、一般公開されて・・・・・・」

 

「!?、それは知ってるって言わないんだよッ!!」

 

別に一夏自身、セシリアからのしっかりとした回答を求めた訳ではなかったが、真面目に答えられ一瞬驚くもののすぐにそれは怒りに変わる。

 

理由は簡単。

 

 

――セシリアは一夏のことを何も知らないのだ。

 

 

いや、正確に言えばニュースや新聞などで公表されていることは知っている様だが、今まで一夏がどのような人生を生きてきたのかは知らないのだ。

 

 

――だから『戦え』などと巫山戯たことが言えるのだ。

 

 

そう思ってからは早かった。

 

 

「お前に分かるか?ずっと『お姉さんは天才なのにね?』とか『弟くんはすごいのに』とか『比較』される人間の気持ちが分かんのかよッ!」

 

部屋に一夏の怒声が響く。

 

「・・・いえ、分からないですね・・・・・・」

 

「ああ、そうだろうなッ!お前は貴族のお嬢さまだもんなッ!!戦え?何にも知らねぇくせに、しれっと言ってんじゃねぇよッ!!!」

 

そう言い切った後、一夏は自分の過去について怒鳴りながら語り出す。

 

「お前に分かるか?俺がガキの時にあっちこっちすり傷作りながらやっと自転車に乗れる様になった時には秋二のヤツが皆の前で曲芸を披露してて“すごい、すごい”って言われているのを見る気持ちがッ!!」

 

「・・・・・・」

 

セシリアは答えない。

 

「俺が何ページもノートをびっしり埋めて英単語を覚えている隣で教科書をパラパラ読んでただけの弟が全部覚えてて、挙げ句“一個覚えるのにどんだけ時間かけてんだよ?”って煽られる気持ちがッ!!」

 

「・・・・・・」

 

セシリアは答えない。

 

「野球部がスタメンに欠員が出て“試合が出来ない”って言うから困ってるって思って助っ人に行ってやったのに“助っ人って一夏かよ。秋二を呼んでこいよ”って目の前で落胆される気持ちがッ!」

 

「・・・・・・」

 

セシリアは答えない。

 

「俺が自分で作ったタッパーに適当に白米と晩飯の残り物の弁当を一人で貪り食ってる時にアイツは他の女子に作って貰った弁当をにやけながら喰ってるのを眺める惨めな気持ちがッ!」

 

 

 

 

 

――お前に分かるのか?

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

セシリアは何も答えない。

 

ただ悲しげに、一夏を見ながら黙って一夏の話を聞いていた。

 

 

 

 

 

――それが一夏の逆鱗に触れた。

 

 

 

 

 

「そういや、お前は貴族のお嬢さまだったもんな?生まれつきの勝ち組だもんな?俺みたいな苦労してる平民の気持ちなんか貴族さまには分かんないよな?

 

あ、というか、よく考えたらごめんな?

 

 

 

――お前、腕も足もないもんな?

 

 

 

自転車とか擦り傷とか野球とかの話をされても分かるわけないもんな?

 

あ~あ、良いよなお前は。そんな身体でも、親に愛されて、周りにもチヤホヤされて、そんで苦労せずに大企業に所属も出来んだもんなッ!

 

ああ、本当に羨ましいよッ!生き易そうでッ!!」

 

そう一気に暴言、煽り、羨望、嫉妬、皮肉など様々なモノが混ざった言葉を吐き出した。

 

・・・『本来』の一夏だったら決してこんな言葉は言わなかっただろう。

 

しかし、『今』の一夏にそれを求めるのは酷というものだった。

 

幼いころから姉と弟と比較され続けたこれまでの人生。

 

一夏としても、現在の女尊男卑の世の中の価値観や年齢差などで姉である千冬は仕方ないと言えたかもしれないが弟の秋二は問題だった。

 

一夏と秋二は同じ遺伝子を分けた『双子』の『兄弟』で一夏は『兄』だった。

 

一夏にだって『誇り(プライド)』がある。

 

――『兄』として、そして『男』としての誇りがある。

 

同じ男である弟に対して『仕方がない』などと言いたくなかった。言える訳がなかった。

 

だから耐えた。

 

耐えて、耐えて、耐えて、限界を迎え、今日、この瞬間決壊した。

 

そして決壊した結果がこれだった。

 

一夏のこれらの言葉をセシリアは目を閉じ、先程と同じように黙って聞いていた。

 

そのセシリアの余裕がある様な態度に一夏はイラつき、追撃を行う。

 

「おい、聞いているのかよッ!!」

 

「・・・聞いていますよ?」

 

一夏の言葉にそう返すセシリアを馬鹿にするように一夏は口を開く。

 

「はっ、どうだか!どうせお前も俺のことを心の中で馬鹿にしてるんだろ?自分だって戦ったことなんてないクセ・・・「戦いましたよ?」・・・は?」

 

一夏の戦ったことなんてないクセにと言う言葉に対して「戦った」と言うセシリア。

 

思わず間抜けな声を出す一夏にセシリアは再び同じ言葉を口にする。

 

「戦いましたよ?」

 

そう言い切るセシリアの目を見て思わず一夏は息を呑んだ。

 

 

――『力』のある目だった。

 

――そして()()()()()()()()()()()()が混じった目だった。

 

 

(なんだ、この目?こんな目をした人間、見たこと・・・。いや、一度ある。昔、たば・・・)

 

 

セシリアの目を見て昔のことを思いだそうとする一夏にセシリアが口を開いた。

 

「一夏さん、少し、昔話を聞いて貰えますか?」

 

そう口にするセシリアの目は楽しくお茶を飲んでいた時のモノに戻っていた。

 

「・・・昔話?」

 

「はい、私がレイレナードに所属するまでの話です」

 

そして、セシリアは自身の過去を語り出すのだった。

 

 

一夏さんも知っての通り、私はイギリスの貴族として生を受けました。

 

IS登場前から女性で当主の強く、厳しい母と、婿養子という立場もあったのでしょうが情けなかったりかっこ悪かったり、なのに時々頼もしかったりする不思議な父。

 

二人とも私のことを愛してくれましたし、私もそんな二人が大好きでした。

 

自慢?

 

ええ、私の自慢の両親ですよ?そりゃ自慢しますよ。しますとも。

 

話を続けますね?

 

まぁ、そうして幸せに生きてたんですが、私が十歳の時に起こった出来事が良くも悪くも私の人生を変えました。

 

 

――両親が事故で亡くなったんです。

 

 

一夏さんのおっしゃる通り、世の中って本当に『理不尽』ですね?

 

さて、両親の死により私は十歳にしてオルコット家の当主となったのですが前途は多難でした。

 

当面の問題は両親が私に残してくれた家をどうやって存続させるかでした。

 

え、私が生きてるし、遺産なんかもあったのだろうから問題無いんじゃないかって?

 

普通ならそうですね。ふふ、でも一夏さん、よ~く考えてみてください。

 

今のご時世、僅か十歳の『子供』が大金を持っているという状況を・・・、

 

 

――周囲の『大人』が放っておくと思います?

 

 

はい、放っておくわけがありません。

 

彼、彼女達はあの手、この手で遺産を奪いに来ました。

 

もちろん、私も手をこまねいていた訳じゃないんですよ?

 

国内でも有数の弁護士を雇ったり、比較的良心的な親族に協力を要請したり、いろいろやりました。

 

でも結果は振るいませんでした。

 

え、なんでかって?

 

う~ん、いろいろあるんですが、大きく分けると二つになるんですかね?

 

一つは私の年齢、もう一つは私に協力してもメリットが少ない、でしょうか?

 

一応、法的には私が全ての遺産を相続することは問題がなかったのですが、常識的に考えると大人の後見人や保佐人、補助人を立てるべきで、このまま裁判を行っても勝てる可能性は低いということで弁護士からはその方向で和解を進められました。・・・負けが濃厚な裁判を担当して評判を落としたくなかったんでしょうね。

 

親族の方もまったく協力を得られなかった訳ではありませんでしたが、最終的には私から離れました。まぁ、貴族は縦にも横にも繋がりがありますから、下手に私に肩入れして私が敗北した際に周囲から睨まれたくなかったんだと思います。

 

さて、状況がどんどん悪化していくので流石の私も焦り始めたのですが、その時にチェルシー・・・、あぁ、私の専属メイドの名前です。そのチェルシーが私に“ISの適正試験を受けたらどうか?”と提案してくれたんです。

 

あ、“それ意味あるの?”って顔ですね?ふふ、私もそう思いました。

 

まぁ、簡単に言うと“適正試験で高ランクを叩き出して遺産の保護を条件に国家代表候補生になろう”作戦ですね。

 

え、無茶?はい、私も無茶苦茶だと思いましたね。ですが例え無茶でも・・・、

 

 

――他に手がないというのも事実でした。

 

 

それで適正試験を受けたのですが結果は・・・、まぁ、残念な結果に終わりました。

 

・・・終わったなと思いましたよ。本当に終わってしまったと思いました。

 

それでも、私は諦めたくありませんでした。

 

 

――そこで奇跡が起こりました。

 

 

私の元にレイレナード社からスカウトがやって来たんです。

 

実は適性試験の際にレイレナードと協力関係を結んでいる企業のBFFがオブザーバーとして参加していBFF経由で私をスカウトに来たそうなんです。

 

 

 

 

 

――私は『未来』を掴んだんです。

 

 

 

 

 

 

「――以上になります。運が良かった部分も勿論ありますが、戦ったからこそ、私はその運を引き寄せることが出来たと思っています」

 

「・・・・・・・・・」

 

一夏は椅子に力なく座り、俯いていた。

 

目の前の少女の顔を見ることが出来なかったからだ。

 

それだけ一夏は自分のことを大いに恥じたのだ。

 

セシリアが一夏の過去を知らなかったのと同様に一夏もセシリアのことを知らなかった。

 

だからあんなことが言えた。

 

まるで自分が世界で一番不幸なのだと思い込み、そんな不幸な自分にひどいことを言うセシリアは『敵』なのだと決めつけ、言った。言ってしまった。

 

目の前の、自分などとは比べるまでもないくらい壮絶な人生を送り、戦った少女に対して。

 

・・・恐らく、ただセシリアは自身の経験からチャンスを逃すべきではないと言いたかったのだろう。

 

なのに最後まで話を聞かずに自分が過剰反応してこのザマである。

 

 

――ただ、やらなければいけないことは分かる。

 

 

「・・・・・・ごめん」

 

 

――謝罪だった。

 

 

「ひどいこと言って、ごめん・・・。俺、俺の方こそ、何にも、セシリアのこと何にも知らないのに・・・、ごめん・・・・・・」

 

例え許されなかったとしても、罵倒されるのだとしても、一夏は謝罪をした。

 

言い訳をしようと思えば出来た。

 

お前が先に嫌なことを言ってきたから。お前が自分の過去を先にちゃんと話さなかったから。

 

だが、そんな恥の上塗りは一夏は出来なかったし、したくなかった。

 

だから言葉に詰まりながらも心から謝罪した。

 

すると、

 

「いえ、大丈夫ですよ?むしろ謝罪しなければならないのは安易に一夏さんの『傷』に触れてしまった私の方です。申し訳ありませんでした」

 

一夏の謝罪の言葉を受け、セシリアは許してくれた。いや、許すばかりかセシリアも一夏に謝罪したのだ。

 

「・・・なんで?いや、でも、でも・・・・・・」

 

流石にこれは一夏も困惑した。

 

許されないと思っていた。罵倒されても仕方ないと思っていた。

 

――見放されてしまうと思っていた。

 

なのにセシリアは一夏のことを許してくれたばかりか、自分も悪いのだと言ってくれたのだ。

 

 

――その言葉に安堵すると同時に一夏は安堵する自分に嫌悪した。

 

 

するとセシリアは若干困ったな顔をした後、真面目な顔になり口を開いた。

 

「・・・とりあえず、今回の私達のことは後日、ということにして・・・。一夏さん、何度も言うようですが今回の模擬戦、あなたは戦わなければいけません」

 

「・・・・・・・・・」

 

「一夏さんの今までの経験からそれが苦痛なのかもしれませんが、もし、ここで逃げれば、間違いなく一夏さんは戦って負けるよりも辛い状況になります。

・・・そして、一度逃げた者に手を差し伸べる人間はそう多くはありません。悲しい話ですが・・・」

 

セシリアの言うことは正しかった。

 

それは一夏も分かっていた。分かっていたが、しかし・・・、

 

「・・・でも、相手は『天才』で、『専用機』で・・・・・・」

 

そうなのだ。

 

相手は適正『S』の秋二で専用機を使用するのだ。

 

いくら一週間のアドバンテージがあるとはいえ、そんな相手と戦えばどのような結果になるかは想像に難くない。

 

なにより自分のそんな姿を・・・。

 

するとそんな一夏を見かねたのかセシリアが真剣な口調で言った。

 

「一夏さん、いくつか『提案』があります」

 

「・・・提案?」

 

「はい。しかし、これはルームメイトのセシリアからの提案ではありません」

 

 

 

 

 

――『レイレナード社』所属の『セシリア・オルコット』からの提案です。

 

 

 

 

 

「?、『レイレナード』のセシリアとして?それってどういう・・・」

 

セシリアの言葉の意味が分からずそう返す一夏にセシリアは説明を始める。

 

「言葉を飾っても仕方がないので単刀直入に言いますね、一夏さん。要は一夏さんを『企業』のために『利用』したい。

そして、そのために今回の模擬戦において一夏さんを『支援』したいと言うことです」

 

「利用、支援・・・」

 

ますます意味が分からなかった。が、かろうじて分かった単語を口にする。

 

セシリアの説明は続く。

 

「支援の内容を具体的に説明しますと、私は試作ISと共に同じく、いくつかの試作武装を持ち込んでいます。

試作ではありますがその性能は既存の武装よりも上です。その武装を一夏さんに貸与したいと考えています。

仮に秋二さんが専用機だとしても見劣りはしないでしょう」

 

「貸与・・・」

 

「もちろん、ただ武装を貸与するだけではありません。明日から模擬戦当日までの訓練期間に私が一夏さんに対して教導を行います」

 

「・・・セシリアが?」

 

 

――セシリアが教導を行う。

 

 

その言葉に思わず一夏が聞き返す。

 

セシリアの身体のことや、セシリアの話の限り、セシリアはIS適正試験に落ちている。そしてなにより、一夏はセシリアに負い目があるのだ。

 

聞き返すのも無理は無かった。

 

「はい。自慢ではありませんが、私はこう見えても『首席』なんですよ?それにIS学園に入学にあたって『その道』のプロに教育を受けていますから、より実戦的な戦術を一夏さんに教えることも出来ます」

 

自信満々そう言うセシリアに頼もしさと眩しさの様なものも一夏は感じた。

 

しかし、一夏は不安だった。自信が持てなかった。

 

セシリアの言うように武器を借り、教導を行ってもらったとして、散々な結果になったとしたら、今度こそセシリアに・・・・・・。

 

「・・・でも、それで負けたら・・・・・・」

 

その不安から口にでた一夏の言葉にセシリアは最後の提案を行う。

 

「ではこうしましょう、一夏さん。私からの最後の提案です。

――『敗戦処理』をしましょう」

 

「敗戦処理?」

 

セシリアから出た敗戦処理というまさかの言葉に思わず一夏は聞き返す。

 

てっきり今までの話の流れからセシリアは「勝て」と言うと思っていたからだ。

 

するとセシリアは一夏に質問をしてきた。

 

「はい、敗戦処理です。一夏さん、今回の模擬戦で一夏さんにとって『最悪』の負け方とは何だと思いますか?」

 

最悪?そんなの決まっている。

 

「・・・そりゃあ、始まってすぐに瞬殺されるとか・・・・・・」

 

「はい、そうなりますね?なので、その最悪の負けを回避して評価される負け方をしよう、と言うことです」

 

「?、評価される負け方?」

 

――負けて評価されることなどあるのだろうか?

 

少なくとも自分は今までそんなことはされたことがない。

 

「具体的に説明しますと、一夏さんの適正は『B』で秋二さんは『S』ですよね?

ここからさらに秋二さんが専用機を使用するとなれば、一夏さんが思ったような結果になるだろうと大半の人間が思うでしょう。ですがここで一夏さんが奮闘し、例えば、秋二さんの機体のシールドエネルギーを半分ほど削ることが出来れば敗北したとしても一夏さんに対して一定の評価を行うと思いませんか?」

 

「・・・まぁ、多少は・・・・・・」

 

今までの経験上、そう上手くいくのか?という疑問はあったがセシリアの説明は確かに説得力があり、一夏は同意する。

 

「以上が私からの提案です。一夏さん、

 

 

 

――どうしますか?

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

――どうするか?

 

このセシリアの問いに一夏は即答出来なかった。

 

普通に考えればこのセシリアの提案は『破格』で二つ返事で了承すべきなのだろ。

 

ただ、一夏には疑問があった。

 

「・・・セシリア、一つ、聞きたいんだけど、いいか?」

 

その疑問を解消するために一夏はセシリアに質問する。

 

「はい、なんでしょう?」

 

「なんで、俺のためにそこまでしてくれるんだ?俺、セシリアにあんなひどいこと言ったのに・・・」

 

そうなのだ。

 

仮に自分がセシリアの立場だったらここまでしない。する訳がない。

 

なのに、なぜセシリアはこんな自分にここまでしてくれるのだろうか?

 

するとセシリアはどこか申し訳なさそうに答える。

 

「一夏さん。こう言ってはなんですが、今回の私の提案は一夏さんのためでありません」

 

「・・・俺のためじゃない?」

 

「はい、最初にも言った通り、あくまで私の提案はレイレナードの利益ため・・・。

具体的に言うと適正で劣る一夏さんが秋二さんに健闘することで我が社の製品の宣伝をするためで、結果的に一夏さんも利益を得ることが出来ると言うものなんです。

なので、決して一夏さんのために今回の提案を行ったわけではないんです。

・・・ご不快に思うかもしれませんが・・・・・・」

 

――セシリアはハッキリと一夏のためではなくレイレナードのためと言い切った。

 

「ハッキリ言うなぁ・・・」

 

そう苦笑しながらも一夏は不快には思わなかった。

 

むしろストンと納得できたし、安心した。

 

確かにセシリアの言うことは事実なのだろう。しかし、それを告げるセシリアの表情からそれだけではないのだということが分かったからだ。

 

よしんばそれが勘違いだったのだとしても、この提案を受ければ少なくともその間セシリアは一夏のことを・・・。

 

だから一夏は選択した。

 

「なぁ、セシリア。俺はどうすればいい?」

 

「それは一夏さんが決め・・・「いや、そうじゃないんだ」と、言うと?」

 

勘違いしたセシリアの言葉を遮り、一夏は『答え』を言う。

 

「セシリアの『提案』、俺、受けるよ。

 

 

 

 

 

――()()戦うよ。

 

 

 

 

 

セシリア、今から俺はどうすればいい?」

 

一夏の『答え』を聞いたセシリアは笑顔になり満足げに頷くと口を開く。

 

「私の提案を聞き入れてくれてありがとうございます、一夏さん。では、まず・・・」

 

さあ、なんだ?と身構える一夏に対してセシリアは・・・

 

 

 

 

 

「右手、怪我してませんか?」

 

 

 

 

 

そう心配そうに一夏の右手を手に取った。

 

その言葉に思わず椅子から転げ落ちそうになる一夏だったが、大人しくされるがままになるのだった・・・・・・。

 




活動報告で今話でひとまとめにすると書いていたんですが、リアルの状況や書いていてこっちの方がきりが良いかなと思いこんな感じになりました。

楽しみにしていた方がおりましたら申し訳ありません

誤字・脱字報告、ご意見・ご感想よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。