TS転生セシリアが『原初』のリンクスになるようです   作:相川翔太

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お疲れ様です。

最近、歳のせいか身体が疲れやすく中々時間が取れずまた投稿に間が開いてしまいました。
申し訳ありません

大型連休も終わり、私もまとまった休みが貰えそうなので体調を整えて少しでも早く投稿できるように頑張っていきます!


一夏の初日『終了』

「セシリア?そんな念入りに調べなくても俺は大丈夫なんだけど・・・」

 

「本当ですか?我慢してません?痛かったら痛いって言って良いんですよ?」

 

「いや、本当に大丈夫だから。我慢してないから」

 

「なら・・・」

 

そう言ってセシリアは一夏の右手から手を離す。

 

そんなセシリアに“心配しすぎだなぁ”と思いながらも一夏は悪い気はしなかった。

 

だが、ここで一夏は気付く。

 

「あ、ごめん、セシリア。カップ、割っちゃったし、テーブルクロスも汚しちゃったから弁償するよ」

 

そう。一夏の目の前には原形をとどめていないカップと入っていた紅茶が飛散し、汚れたテーブルクロスがあった。

 

そしてそれをやったのは一夏自身である。一夏の申し出は当然と言えた。

 

「いえ、弁償は大丈夫ですよ一夏さん?カップも含めた茶器類は割ってしまうかもと思って数セット用意していますし、クロスは洗えば良いですしね?」

 

一夏の申し出にセシリアはそう言うが、一夏はそんな無責任なことは出来ないと食い下がろうとする。

 

「いや、でも・・・」

 

「いえいえ、本当に大丈夫ですよ?責任を取ろうとする一夏さんの姿勢は好きですが、取る必要の無い責任まで取らなくていいんですよ?今回はそのお気持ちだけで十分です。

それにお金は大切ですからね?使うためにお金はありますが必要な時に使えなければ意味がありません。

そのお金は一夏さんが本当に必要な時に使って下さいね?」

 

「うっ、わ、分かった。その、すまん・・・」

 

セシリアが言うと説得力のすごいその言葉に一夏は大人しく引き下がった。

 

するとセシリアが元気に口を開く。

 

「では、一夏さん。早速ですが模擬戦に向けて行動開始しますよ?」

 

「お、おう」

 

セシリアの行動開始という言葉に身構える一夏。

 

(何をするんだ?アリーナを使えるのは明日からだから・・・、とりあえず座学か何かか?

・・・こんなことなら姉貴の言った通りに授業、真面目に受けてりゃ良かったかなぁ・・・・・・)

 

そんな風に若干後悔していた一夏だが次のセシリアの言葉に驚愕した。

 

「はい、まずは・・・、

 

――織斑先生のところへ行きましょう」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

 

 

「さ、一夏さん、入りますよ?」

 

「あ、あぁ、うん・・・」

 

一夏はセシリアと職員室の前にいた。

 

なぜ二人がここにいるかというと千冬にセシリアの提案の許可を貰うためだ。

 

 

遡ること十数分前。

 

 

――織斑先生のところへ行きましょう

 

 

そのセシリアの言葉に驚きつつも一夏は理由を聞く。

 

曰く、セシリアが一夏に行った提案は秋二が専用機を使用することが前提なためその確認を行いたいこと。

使用するにしても武装の貸与や教導の件はIS学園側に話を通したわけではないため、自分達で勝手に行動して学園側のサポート(教導を行う予定のセシリアのアリーナの優先使用権など)が得られなかったり、詳しい事情を知らない他の生徒達から不公平であると言う声が発生した際に学園側に説明してもらった方が良いため許可を取る必要があるとのことだった。

 

理由を聞き、納得した一夏だったが同時に不安も抱いた。

 

今日のことや今までの一夏の経験から千冬があっさりとセシリアの提案を許可するとは思えなかったからだ。

 

そんな一夏の不安も露知らず、すでに千冬の元へ向かう気マンマンのセシリアに気付いた一夏は慌てて声を掛けた。

 

「あの、セシリア。あね、いや、織斑先生は今、会議中だかなんだかで職員室にいないみたいなんだけど・・・」

 

「あ、そうなんですか?そういえば一夏さんは一回職員室に行かれたんでしたね。う~ん、それでしたらだいぶ時間も経っていますし、どちらにせよ一回職員室に行ってみましょうか?

もしかしたら織斑先生も戻られているかもしれませんし、まだでしたら最悪、出待ちをするために何処の会議室か聞くのもいいですし・・・」

 

「あ、そうか、そうだな。じゃあ、片付けたらしょくい・・・、あ!?」

 

「!?、ど、どうしたんですか、一夏さん!?」

 

セシリアの言葉を聞き、確かにその通りだと思った一夏だったが、とある出来事を思い出し、思わず声を上げてしまった。

 

突然のことに驚くセシリアに一夏は気まずそうに答える。

 

「いや、その、ちょっと・・・」

 

「ちょっと?」

 

「・・・ちょっと、職員室で先生の一人と揉めちゃって、気まずいというか、なんというか・・・・・・」

 

そう言葉を濁しながら答える一夏。

 

すると、そんな一夏の言葉を聞いたセシリアは少し考える素振りを見せると口を開いた。

 

「そうですか。・・・ないとは思いますが一応確認します。暴力沙汰とかではありませんよね?」

 

「!?、違う、違うよ!!」

 

セシリアの確認の問いに一夏は慌てて否定する。

 

一夏の必死の否定の言葉を聞くとセシリアは満足そうに頷く。

 

「その様子だと問題なさそうですね。どのようなことがあったかは分かりませんが、私も一緒ですし、一夏さんが悪いと思っているなら素直に謝罪すれば教職に就いている以上、その先生も分かってくれるでしょうから大丈夫だと思いますよ?」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうですよ」

 

(・・・本当にそうなのか?)

 

一夏の疑問の言葉に「そうですよ」と断言するセシリアに不安を覚えつつも、一夏はセシリアと共に職員室へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

そんなやり取りがあり、職員室までセシリアと一緒にやって来たわけだが一夏の不安な気持ちは晴れていなかった。いや、晴れるどころかジワジワと大きくなっていた。

 

(セシリアはああ言ってたけど・・・。いや、今さら悩んでも仕方ない。覚悟を決めな・・・、って、あッ!?)

 

扉の前で覚悟を決めようとしていた一夏だったが完全に決めきる前にセシリアがノックをしてしまい心の中で驚きの声を上げてしまった。

 

そうこうしている内にセシリアが職員室に入っていってしまい、一夏もその後に慌てて続く。

 

「失礼します」

 

「・・・失礼します」

 

「あら、どうし・・・、あ!?い、一夏くんと、お、オルコットさん!?ど、どうしたのかな~?な、何か問題とか・・・」

 

(予想はしてたんだけど、俺の場合、こういう風に予想って大体悪い方に当るんだよなぁ・・・)

 

そんなことを考える一夏。

 

実は寮から職員室までの移動の間に職員室で起こることであろうことを良い、悪い含めていくつか予想していたのだが、今回は悪い方の予想である「一夏が揉めた教師が自分達に対応かつ相手が先ほどの件を気にしている」が当たってしまっていたのだ。

 

(・・・まぁ、もっと悪いのも予想してたからそれよりは全然・・・・・・)

 

そう考えている途中ででセシリアがチラリと自分を見たことに気付き、思わず一夏は目を逸らしてしまった。

 

するとセシリアはそんな一夏を特に何か言うことも無く、話を進め出す。

 

そんなセシリアの姿に安堵するのと同時に“このままではいけない”と思い直す。

 

(馬っ鹿!ほっとしてる場合じゃないだろっ!!俺もやんなきゃいけないことがあるだろうがっ!!)

 

そしてタイミングを見計らい、その時が来た。

 

「分かりました、ありがとうございます。では、一夏さん行きましょうか。一夏さん?」

 

話が終わり、そう一夏に話しかけるセシリアを無視し、一夏はセシリアに対応していた教師に話しかける。

 

「・・・あの、先生・・・・・・」

 

「!?、な、何かな、一夏くん?あ、もしかして私、またまた何かやっちゃったかな~?あは、あはは、はは・・・」

 

「いえ、そうじゃないんです」

 

また一夏の気に障ることをしてしまったのかと怯える教師に「違う」と言った後に無意識にセシリアの方をチラリと見ると一夏は・・・、

 

 

「あの、さっきはすいませんでした」

 

 

――頭を下げ、謝罪をした。

 

 

「い、一夏くん、頭上げて!?大丈夫、気にしてないから、私、全然気にしてないから!!私の方こそごめんね?私、気付かないで一夏くんが嫌なこと言っちゃったんだよね?本当にごめんね?」

 

すると、一夏の謝罪を受けた教師は早口でそう喋り出した。

 

(・・・そうだよなぁ・・・・・・。よく考えりゃ、いくらIS学園のと言っても、ただの教師がそこまで俺のことを知っているわけないよなぁ・・・・・・)

 

教師の言葉を聞いた一夏はそう冷静に考えた。

 

 

――そうなのだ。

 

 

いくら一夏が世界に二人しかいない男の装者だとしても自分の受け持つクラスの生徒ではない以上、セシリアがそうであった様に公表されている情報しか知らないと言うこともあるだろうし、もう少し踏み込んだ内容であったとしてもそれが書類上であったり人伝だったりすれば差異があって当然である。

 

それに、よくよく考えればこの教師はこの教師なりで一夏のことを心配してくれていたんだろうということが特に自分は悪くないのに謝罪する教師の姿を見て一夏は理解することが出来た。

 

悪かったとすればそれを理解出来ず、いろいろあったとはいえ過剰反応した一夏自身。

 

「いや、俺が・・・」 

 

そう思い、反省した一夏がそう言えば、

 

「ううん、私の方が・・・」

 

教師の方もそう言い、まるで堂々巡りのようになってしまったが気分は悪くなかった・・・。

 

 

その後、本来の目的である千冬に会うために教えてもらった会議室にセシリアと共に向かった一夏だったが、目前というところで一夏の足が思わず止まる。

 

なぜなら目的地の会議室から千冬を初めとして、副担任の真耶や名前は覚えていなかったが入学式の壇上で挨拶をしていた生徒会長など複数名の教師や生徒が出てきて気圧されてしまったのだ。

 

(・・・別に悪いことするわけでもしたわけでもないに、こんなんで何ビビってるんだよ・・・・・・)

 

一週間後には『弟』と戦わなければいけないというのにこの程度のことで足を止めてしまった自分に対して情けなさを感じているとセシリアに動きがあった。

 

「え、ちょ、せ、セシリア?」

 

 

――セシリアが一夏の手を取ったのだ。

 

 

「私が一緒だから大丈夫ですよ、一夏さん。さ、行きましょう」

 

そう言って歩き出すセシリア。

 

「い!?あ、ちょっ!?」

 

義足で、さらに杖をついているにも関わらず力強さを感じるセシリアの歩みに驚きの声を出す一夏だったが、セシリアはそんな一夏の声を気にせずに千冬達の前に進み臆することなく話しかける。

 

「織斑先生、お忙しいところ申し訳ありませんが、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「オルコットに、・・・織斑兄、か。構わんが、なんだ?お前達が同室なことについてか?」

 

(・・・姉貴も同じことを考えるんだなぁ・・・・・・)

 

この状況に似つかわしくない、そんなことを考える一夏。

 

もしかしたら一夏の脳が無意識に緊張状態を緩和しようとしていたのかもしれない。

 

すると横から楽しげな声が掛かった。

 

「うふふ、どうやら違うみたいですよ、織斑先生?ほら、二人で仲良く手を繋いでいますもの。まだ初日なのにこんなに仲良くなれちゃうなんて、おねーさん妬けちゃう~」

 

そうイタズラっぽく笑みを浮かべる生徒会長『更識楯無』に一夏は妙な感覚を覚えた。

 

楯無の見た目は間違いなく美少女。全体的な雰囲気も悪くない。

 

なんと言えばいいのか、どこか余裕?な態度なのにその言動からあまり嫌みを感じさせないという不思議な感覚であった。

 

しかし同時に向こう側が見えないという不透明性も一夏はこの少女に感じた。

 

神秘的、と言えば聞こえはいいのだろうが、悪く言えば胡散臭かった。

 

その感覚から若干警戒する一夏だったが同時に気付く。

 

「あぁ、すみません、一夏さん。手を繋ぎっぱなしでした」

 

 

――セシリアと手を繋いだままだったのだ。

 

 

「・・・いや、いいよ、別に・・・・・・」

 

この状況でセシリアと手を繋いだままだったということに気恥ずかしさを感じ、それを誤魔化すために素っ気なく返す。

 

「あら、離しちゃうの?そのままでもいいのに・・・」

 

(いや、良くないだろ・・・)

 

残念そうに言う楯無に心の中でそうツッコミを入れる一夏。

 

そうしている内にセシリアが千冬と本題に入り出した。

 

そのやり取りの中で現在の一夏の正確な状況が明らかになる

 

秋二の専用機の受領が確定していること。逆に一夏は検討段階で確約されていないこと。

 

そして、今回の模擬戦で秋二のみがその専用機を使用するという事実。

 

 

――なんだそれ?

 

 

それが一夏の抱いた感想だった。

 

秋二のみの専用機の受領。百歩譲ってこれは理解も納得も出来た。

 

千冬が言っていたようにコアの数には限りがあるのだ。

 

その限りあるコアを使用するなら適正Sの秋二とBの一夏なら秋二のために使用した方が良いと判断されるのはまぁ、仕方ないのだろう。

 

問題は模擬戦で秋二のみがその専用機を使用するということの方だった。

 

正確に言えば、その秋二のみが専用機を使用するという前提を今、この時まで一夏は千冬から一切聞かされていなかったと言うことだ。

 

今日一日、千冬と一夏が話すタイミングがまったく無かったわけではない。

 

ならば、最低でもその時に一夏に話すべきではなかったのか?

 

たまたまセシリアが居たからから直接聞きに来たのだが、もし聞きに来なかったら千冬は一体、いつ一夏に話すつもりだったのだろうか?

 

いや、それ以前に専用機なんてホイホイ用意出来るわけがない。だいぶ前から決まっていたはずである。

 

であれば、今日の代表選出云々の際に秋二のみが専用機を受領するという事実を千冬が話せば、癪ではあるがクラスメート達も「じゃあ秋二くんでいいね」とあっさり同意し模擬戦の必要性すらなかったでのはないのか。

 

 

そこから考えるに――

 

 

その考えに至ると知らず知らずの内に一夏は拳を握りしめていた。

 

もしもセシリアがこの場に居なかったら一夏はそのまま口汚く千冬を罵っていたかも知れない。

 

そしてセシリアの提案(途中、楯無の茶々もあったが)が終わり、回答は明日ということであとはセシリアと二人で寮へ戻るというところ事件が起きた。

 

「分かりました。織斑先生、申し訳ありませんがよろしくお願いします。では、一夏さん、戻りましょうか」

 

「え、あぁ、うん・・・」

 

「いや、待て。・・・織斑兄は少し残れ」

 

 

――千冬からの居残り命令だった。

 

 

「・・・なんでだ、いや、なんでですか?」

 

既に千冬に対して不信感しかない一夏は言い直したモノの不満感は隠さなかった。

 

そんな一夏を気にすることなく千冬は理由を話す。

 

「当事者であるお前の口からも話を聞きたい。オルコットが居ては話しづらいこともあるだろうからお前は居残りだということだ」

 

――どの口が・・・

 

千冬の言葉に一夏は怒りを覚えた。

 

理由は簡単。

 

千冬は、いや、千冬達はセシリアに「一夏を利用しようとしているのではないのか?」という不信感を持っているのだ。

 

よく考えれば、セシリアが千冬に提案を行っている際に楯無がセシリアに質問をしていたときからその兆候はあった。

 

「一夏くんを『利用』して――」

 

「一夏くんを『利用』したいということは否定しないのね?」

 

そう失礼とも言える確認をする楯無に対してセシリアは一切動じず受け答えを行い、最初からセシリアに「利用したい」と言われていた一夏も「嫌な聞き方をする人だな」と若干不快に思いつつも特に反応はしなかった。

 

 

――どうやら、それが良くなかったらしい。

 

 

確かに目の前で「利用する」と堂々と言われているにも関わらず特に反応もしなければ口止めなりなんなりがあったのではないか?と、疑うのは千冬達IS学園側の人間からからすれば当然かもしれない。

 

だが、一夏からしてみれば最初から一夏、セシリア(レイレナード)双方のメリットを説明した上で利用すると言ってくれたセシリアの方が誠実だと思えたし信用できた。

 

信用できない存在(千冬)信用できる存在(セシリア)に対して不審に思っているというのだ。

 

一夏の怒りはもっともだった。

 

堪らず一夏が声を出そうとしたところでセシリアが口を開く。

 

「分かりました。そういうことらしいので一夏さん、私は先に部屋に戻っていますね?」

 

「でも・・・」

 

「大丈夫ですよ。ではまたあとで」

 

自身が疑われているにも関わらず、あっさりと引き下がるセシリアに抗議をしようとしたがセシリアに背中を数度叩かれたあとそう言われ、一夏は我に返る。

 

(――そうだった。俺達の目的は、でも・・・)

 

自分達の本来の目的を思い出し、昂ぶった感情を鎮める一夏だったが同時に不安を覚える。

 

(セシリアが近くに居てもこのザマなのに、これから俺一人で本当に大丈夫なのか?)

 

そう。これから一夏は一人で千冬達に説明を行わなければいけないのである。

 

これから千冬達にどのようなことを聞かれるかは分からないが、もし一夏が感情的になり爆発しようものなら今回の話はご破算になる可能性も大いにあるのだ。

 

一夏の責任は重大である。

 

本音を言えば、一歩間違えば全て自分の『せい』になるような大きな責任を一夏は負いたくなどなかった。

 

 

――だが、やるしかなかった。

 

 

寮への道を戻りながら何度か振り返り一夏を見るセシリアの姿を糧に己の心を奮い立たせる。

 

「じゃあ、一夏くん、中に入りしょう?あ、大丈夫よ、ちょっとお話をきかせてもらうだけだから、ね?」

 

そして一夏はそう話しかけてくる楯無に促されながら会議室の中に入っていたのだった・・・。

 

 

「・・・失礼しました」

 

千冬達に説明を終え、会議室から退出した一夏は廊下を少し歩いたところで一夏は大きく息を吐いた。

 

「はあぁああ~。つ、疲れた・・・・・・」

 

一夏は疲弊していた。

 

会議室に入る際、一夏の緊張をほぐすためなのか知らないが、「()()()()()()」とセクハラ、いや逆セクハラとも言えるスキンシップを測ってきた楯無から始まった千冬達への説明・・・、いや、千冬達からの尋問と言うべきものは一夏の精神をゴリゴリと削った。

 

千冬達の質問の中には腹が立つ問いもあったが、一夏はなんとか感情を抑え(不機嫌さは出てしまったが)受け答えを行いようやく解放されたのだった。

 

そして疲れた身体で一夏はセシリアの待つ寮へと足を進める。

 

途中、退室する際に千冬に職員室に寄り参考書を受け取るように言われていたので職員室に寄り参考書を受け取った。

 

「・・・遅く、なっちまったな・・・・・・。早く戻らなきゃ・・・」

 

職員室から出たあと、そう呟き、足を速める。

 

実は事前にセシリアと寮に戻ってきたら二人でお茶会の際に汚したテーブルクロスなどの後始末をしようという話をしていたのである。

 

事情が事情なので遅くなってもセシリアが怒るということは無いだろうが、とにかく一夏は急いだ。

 

そうして寮の部屋へ到着し、中でセシリアが着替え中の可能性もあるので一夏はノックを行う。

 

すると、ノックから若干の間のあと、セシリアが部屋から出てきた。

 

「お帰りなさい、一夏さん。あの、かなり遅かったですけど大丈夫でしたか?」

 

 

――お帰りなさい。

 

 

何でもない、普通の言葉のはずなのに一夏の胸が温かくなる。

 

 

「あ、あぁ、うん。・・・ただいま、セシリア。話が終わった後に参考書を取りに行ったりしてたから遅くなったんだ。心配させてごめん」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ?とりあえず、中に入ってゆっくり休んで下さい」

 

セシリアにそう言われ中に入る。すると、何かに気付いたセシリアが口を開いた。

 

「そう言えば、一夏さんは夕飯はどうしますか?」

 

「うん?あぁ、それは大丈夫。お茶会の前に購買でパンとか買ってたから」

 

セシリアの問いに対して一夏はそう返す。

 

(あ、俺は良くてもセシリアはどうするんだろう?)

 

そう一夏が考えたのも束の間、一夏の返答にすぐさまセシリアが続ける。

 

「あ、そうでしたか。なら、食べながら明日以降のことについて少し話しましょうか?」

 

「お、おう・・・」

 

相変わらずの勢いのセシリアに一夏はそう返事をするのだった。

 

 

シャアアアアアアアアアァ・・・

 

一夏は熱めに温度を設定したシャワーを浴びていた。

 

そして先ほどのセシリアとのやり取り思い返す。

 

 

 

 

 

まず、今後の話をする前にお茶会の片付けが終わっていることに気が付いた一夏はセシリアに謝罪した。

 

その後、一夏が購買で買ったカレーパンや焼きそばパンなどを食べながらセシリアと提案が受け入られることを前提で今後の方針を決めた。

 

と、言ってもそんなに難しいことではない。

 

 

――最初は分からなくても良いから授業は真面目に受ける。

 

 

それだけだった。

 

それだけで良いのか?と内心疑問に思った一夏にセシリアは笑いながら答える。

 

曰く、

 

当日の戦術などを決めるために、明日は現時点での一夏がISをどれくらい乗れるのかを確かめる日にするらしく、その際にIS関連の用語を使用することもあるので、意味が分からなくても聞いたことがあるくらいの知識があればセシリアも指示などしやすいからとのことだった。

 

もちろん、分からないところをそのままだといけないので授業の合間でも良いし、他の生徒の目が気になるなら放課後に寮でまとめてセシリアに聞いて欲しいとのこと。

 

それを聞いた一夏は“やっぱり真面目に授業を受けておけば良かった”と後悔し、少しでも遅れを取り戻そうと恥を忍んでセシリアに今日の授業の復習と明日の予習を頼んだのだが、「一夏が疲れているだろうから今日はもう休んで明日に備えよう」とセシリアに言われれシャワー室に送り出されたのだった。

 

「ふぅ・・・」

 

シャワーを浴び終え、身体を拭き、寝間着代わりの身軽な服装に着替えた一夏。

 

「・・・明日。明日から、始まるんだな・・・。頑張らないと・・・・・・」

 

いろいろあった一日であったがシャワーを浴びてだいぶすっきりとした一夏は明日から始まる生活にそう気合いを入れる。

 

そうして髪をタオルで拭きながらシャワールームを出るとセシリアが一夏に声を掛ける。

 

「どうです、一夏さん?すっきり出来ましたか?」

 

「あぁ、だいぶ・・・、うぉ!?」

 

その声に返事をしながらセシリアの姿を見た一夏は驚愕の声を上げた。

 

なぜ一夏がそんな声を上げたかというとセシリアの姿に理由があった。

 

一夏が寝るために着替えたようにセシリアも一夏がシャワーを浴びている内に着替えたようで黒いネグリジェを着てベッドに腰掛けていた。

 

 

――それは別に良かった。

 

 

全体的に白いセシリアに黒いネグリジェはむしろ良く似合っていると一夏は思った。

 

問題はセシリアが・・・、

 

 

 

 

 

――右腕以外の義手と義足を外した状態だったということだった。

 

 

 

 

 

一夏はセシリアの四肢が義手、義足ということは知っていたし、普通に考えれば普段義手や義足を使用しているといっても寝るときは外すだろうということは分かっていたつもりだった。

 

だったのだが、実際に外した姿を見れば驚いても仕方がないと言えるだろう。

 

 

――ドキリ・・・

 

 

そんなセシリアの姿を見て驚きつつも、ナゼか一夏の心臓が鳴る。

 

(・・・は?なんで・・・・・・)

 

そんな自分に困惑する一夏。

 

今日一日、セシリアに「ありがとう」などの感謝の言葉を言われ同じようにドキリとしたことはあった。

 

しかし、今はそれまでとまったく状況が違う。

 

違うにも関わらず胸がドキドキする。

 

そんな自分に困惑しつつ、悪いと思いながらも一夏はセシリアから目が離せなかった。

 

一夏の視線に気付いたのかセシリアが申し訳なさそうに口を開く。

 

「あはは、驚かせて申し訳ありません、一夏さん。ご不快かも知れませんが今、私はこの寝間着しか持っていなくて・・・。後日、別のモノを用意しますのでそれまでは・・・」

 

「!?、い、いや、いや、いいよ!?そのままで良いって!?俺は気にしないから、全然気にしないから!!」

 

そのセシリアの言葉に一夏は咄嗟にそう答える。

 

(なに言ってんだよ・・・。なにやってんだよ俺はっ!!これじゃ・・・・・・)

 

セシリアに答えつつ心の中で一夏は焦りを覚える。

 

するとそんな一夏を見たセシリアは驚きの言葉を発した。

 

「そ、そうですか。あ、一夏さん、私があんまりにも魅力的だからって手を出しちゃ駄目ですよ?文字通り手も足も、いえ、私の場合は義手も義足も出せないんですからね?」

 

その特大な()()()()()()()()を聞いた一夏は先ほどの焦りはどこへやら、一気に冷静になった。

 

「・・・ごめん、セシリア。それ、ジョークのつもりかもしれないけど全然笑えないんだけど・・・・・・」

 

そうはっきりとセシリアに笑えないと言う一夏。

 

実を言うと、一夏はセシリアのそれはジョークではなく、一夏自身に対する皮肉だと思った。

 

しかし、セシリアの様子を見てそうではないということを一夏は理解させられた。

 

ジョークを言ったセシリアは一夏の様子を見て不思議そうな反応をしたのだ。

 

 

――なんで一夏は笑わないのか?と・・・・・・。

 

 

セシリアにジョークセンスが無いだけならまだ良かった。だがセシリアの反応から察するにそれだけではないようだった。

 

要は内容に多少の差異はあれどセシリアのさっきのようなジョークを披露して・・・・・・。

 

 

 

 

 

――笑われたことがあるのだ。

 

 

 

 

 

誰に、どういう状況でセシリアがソレ披露したのかは一夏は知らないし、分からなかったがそれは良くないことだと思った。

 

 

――気に入らなかった。

 

 

だから一夏はセシリアにはっきりと笑えないと言ったのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

少しの間セシリアと見つめ合う。

 

「・・・とりあえず、明日から忙しくなりますし、もう寝ましょうか?」

 

すると無言に耐えられなくなったのかセシリアがそう切り出した。

 

「・・・そうだな、寝るか・・・・・・」

 

これ以上続けても良くないと思った一夏も同意し、お互いにベッドに横になる。

 

「おやすみなさい、一夏さん。また明日・・・」

 

「・・・ああ、おやすみ、セシリア」

 

 

――本当に、今日は疲れた・・・。

 

 

明日からのこと、セシリアのことなどいろいろなことを考え一夏の頭はぐるぐる回るがその内に眠りについた。

 

 

 

 

 

――そうして一夏は夢を見た。

 

 

 

 

 

 

それは昼間に見た夢の続きだった。

 

鳥になった一夏は真っ直ぐに『塔』へと向かっていた。

 

その途中で一夏は自身の他に空を飛んでいる別の存在に気付く。

 

 

――それは一機のヘリだった。

 

 

鳥に詳しくないので何の鳥かは分からなかったが、太った白い鳥のエンブレムが描かれた無骨なヘリは市街地戦で見た同じく無骨な機体を吊り下げて何処かへ向かって飛んでいた。

 

別に無視しても良かったのだが、なんとなく気になった一夏はそのヘリに着いていく。

 

しばらく飛んだ後、目的の場所に到着したのかそのヘリは吊り下げていた機体を降ろした。

 

その様子を見た一夏は疑問を抱いた。

 

てっきり途中で見た戦場へ向かうかと思っていたのだが戦場から遠く離れた場所で機体を降ろしたからだ。

 

 

一夏が疑問に思っているとその『答え』がやって来た。

 

 

ジェットの音を響かせながら高速で飛んできたソレは外付けだったらしいブースターや外装をそれぞれパージしながら舞い降りた。

 

そして地面に土煙をあげながら着地すると淡い緑の光を放出したのだ。

 

その光を『綺麗だな』などと思いつつ、一夏はこれから何が行われるのか分かった。

 

 

――これからこの二機は『決闘(殺し合い)』を行うのだ。

 

 

そう一夏は納得し、あとからやって来た機体を見る。

 

実は土煙やら緑の光やらでちゃんと機体を確認出来ていなかったのである。

 

そして土煙が晴れ、地上に降り立った『黒い機体』を見て一夏は・・・、

 

 

 

 

 

――『恐怖』した。

 

 

 

 

 

 

独特な赤く発光する複眼を持つ頭部、無骨さとスマートさを合わせた体躯、ぶら下がった幾本ものケーブル、尾のようなパーツ、そして周囲に輝きを漂わせたその機体を見た一夏が抱いたのはそんな原始的な感情だった。

 

 

――特に緑の光が駄目だった。

 

 

最初は『綺麗だな』などとと思っていた一夏だったがそれは大きな間違いだった。

 

 

――あの光は駄目だ。

 

 

――あの光を生み出すこの『黒い機体』も駄目だ。

 

 

どちらも、この『世界』に、この『世の中』に在ってはならない存在だ。

 

 

 

 

 

――全てを『破滅』させてしまう(存在)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あぁ・・・、それなのに、そのはずなのに・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、俺は泣きそうになっているんだろう?

 

 

 

 

 

こんなに胸が熱くなっているのだろう?

 

 

 

 

 

初めて見るはずなのに、恐ろしい存在()のはずなのに、なんでこんなにも懐かしさのようなものを感じているのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ずっと・・・・・・、ずっと・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 




以上になります。

IS学園側と一夏のやり取りは多人数視点の練習のためにIS学園側視点の際にまとめて投稿しようと思います。

もし楽しみにしていた方がいましたら申し訳がありませんがもう少々お待ちください。

誤字・脱字報告、ご意見・ご感想よろしくお願いします。
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