TS転生セシリアが『原初』のリンクスになるようです 作:相川翔太
多忙、暑さでグロッキーなど執筆ペースが上がらない、登場人物が多く書き直すことが多数などでこんなに時間がかかってしまいましたort
本ッ当に申し訳ありませんでしたッ!!!
「さ、一夏くん、入って入って♪」
去っていくセシリアの後ろ姿を不安そうに見つめていた一夏に楯無は明るい声で入室を促す。
それだけだったら良かったのだが、なんと楯無は何食わぬ顔で一夏の右腕に自身の腕を組んできたのだ。
―むに…
追撃とばかりに一夏の二の腕に楯無の柔らかいモノが当たる。
(!?、何なんだよ、こいつッ!!?)
当然、一夏は驚き、咄嗟に楯無を振り払いそうになるがぐっと堪えなんとか口を開く。
「…すみません、胸、当たってるんですけど……」
「当ててるのよ♪」
一夏の指摘にそう返す楯無。
(頭おかしいのか?いや、落ち着け。冷静に、冷静に…)
楯無に対してそんな失礼なことを考えながらも一夏は言葉を選びながら抗議する。
「…すみません、勘弁してくれませんか?」
「あら?うふふ、
しかし、そんな一夏の抗議にも楯無はどこ吹く風であった。
そんな楯無に一夏は怒りを覚え、強い言葉で抗議しようとしたところで助けが入った。
「更識、ふざけるのもそこまでにしておけ」
「そ、そうですよッ!先生達の前でそ、そんな…」
そう、千冬と真耶である。
千冬はどこか不機嫌そうに、真耶は顔を赤らめて楯無に注意すると「軽い冗談ですよ」とあっさりと楯無は一夏から離れた。
「い、一夏くん?気を悪くしないでね?更識さんもきっと一夏くんの緊張を…」
「…いえ、大丈夫です」
「…時間も時間だ。手短に済ませるぞ」
一夏と楯無、両方をフォローするための真耶の言葉を一夏は途中でそっけなく返し、千冬に先導されて一夏は会議室に入った。
そしてその後に真耶、楯無が続く。
(う~ん、一夏くんの反応からして女の子なら誰でもいいというわけではなくて、セシリアちゃんだからいいってことね…)
一夏の背中を見ながら楯無は頭を巡らせる。
先の楯無の行動は別に伊達や酔狂で行ったわけではない。
事情を聴く前に一夏とセシリアの関係を大まかにでも確かめるためだ。
最初、楯無達の前に先ほどまで議題になっていた一夏とセシリアが現れたとき楯無は驚きはしなかった。
こちらの都合とはいえ、今日まで特に接点のない赤の他人である男女が同室なのだ。
そのことについて理由を聞くなり抗議するなりなんらかのアクションを起こすと予想はしていた。
だから二人がやって来ても問題はなかった。
問題があったとすれば、一夏とセシリアが手を繋いで現れたことだ。
まぁ、手を繋いで仲良く並んで現れたというよりはセシリアが一夏を引っ張るようなカタチではあったのだがその二人、特に一夏の様子を見て楯無は疑問を覚えた。
―織斑一夏とはこんな男だったか?
入学前の資料や今日一日の一夏の行動や様子の報告を受けていた楯無はそう思った。
楯無としては当初、一夏の過去や現在の境遇に関しては同情はしつつも、自暴自棄になり問題を起こすのではないかと心配していた。
実際、今日の一夏の荒れた様子の報告を受けたときにただでさえ多忙なのにどうフォローするかと頭を悩ませていたのだ。
それがどうだ?
昼間の態度はどこへやら。目の前の一夏はセシリアの行動に困惑すれど嫌がっているような様子はない。年相応の、ごく一般的な男子学生のような態度である。
―これはおかしい。
千冬が一夏に寮のカギを渡してからこの時間までの短い間に間違いなく二人にナニカがあったのだ。
そう楯無が考えてからは早かった。
千冬に話があると言うセシリアに警戒されないよう、茶化すような形で二人が手を繋いでいることを指摘し反応をうかがう。
するとセシリアは一夏に謝罪しながらすぐに手を離し、そんなセシリアに一夏はそっけなく「いいよ」と返事をした。
一見、一夏の態度は愛想がないように見えるが楯無はそれが照れ隠しのようなものであることを見抜いていた。
その様子を見て楯無は確信をする。
一夏は間違いなく、セシリアに対してなんらかの好意を抱いている、と…。
単純に考えれば一夏のセシリアに対する好意は異性間で発生するものなのだろうが、楯無がなんらかの、と曖昧な評価にした理由はセシリアという少女が極めて複雑な存在だったからだ。
セシリアの容姿は間違いなく美少女と言えるし、胸部は豊満である。
免疫のない男子ならセシリアのその姿を見てあっさり一目惚れ、ということもあるかもしれない。
さらにセシリアは英国の名門貴族で六企業の一つであるレイレナード社に所属している資産家でもある。
計算高い人間ならばそんなセシリアに取り入ろうとする者もいるだろう。
では、一夏の場合はどうだろうか?
一夏も人間である以上、どちらも可能性はゼロではなかった。
しかし、楯無が把握している一夏の行動や思考のパターンから一夏が自分から、それもこんな短時間にそうなる可能性は極めて低かった。
そこから考えるに…。
そして、事前に議題に上がっていたセシリアのとある可能性に思い至った楯無はセシリアと千冬の会話を笑みを崩さずに真剣に聞く。
話の内容としては一夏と秋二の模擬戦についてで、その模擬戦でセシリアが持ち込んでいる試作兵装を一夏が使用することと、その教導をセシリアが行いたいということだった。
…本来であれば楯無達を始めとしたIS学園側としてはセシリアの提案は決して悪い話ではなかった。
適正の差だけではなく、秋二のみ専用機を使用するという明らかに不公平で一夏に不利な今回の模擬戦。
その差を武装で補い、さらに教導をクラスメートでルームメイト、かつ主席のセシリアが行うというのなら周囲の理解や納得も得られやすいだろう。
ただ、この案には大きな問題があった。
それはこの提案を行ってきたのが目下警戒中である『企業』側の人間、セシリア・オルコットだったということである。
ただの『善意』でこの提案を行っているわけではない。
そう思った楯無はセシリアに対してストレートな質問を行った。
“一夏を利用するつもりなのか?”と…
この問いに対してセシリアは否定せず、さらには一夏からも同意を得ているとあっさりと言い放った。
―真っ白の見た目に反して中身はそうではないらしい
セシリアの態度に人のことは言えないが楯無はそんな感想を抱いた。
そしてセシリアと会話をしながら一夏の反応を伺えば若干の不快感を感じている様だが、それは「利用するつもりだ」と言ったセシリアに対してではなく楯無に対して感じているらしかった。
一体、どんなお茶会を行ったのか?
学園側として問わねばならなかった。
楯無はセシリア、一夏の両名に気付かれないように千冬に目配せを行い、千冬は小さく頷く。
そして一夏本人から事情を聞くために千冬は一夏に居残りを命じた。
その際も楯無はセシリアの様子を伺っていたのだが“何も後ろめたいことはない”と言わんばかりにあっさりとセシリアは一夏を置いて寮へと戻っていった。
そんなセシリアの姿に楯無は内心ホッとした。
ただ、気になったのは……
途中でセシリアが何度か振り返り一夏を心配そうに見ていたことだった。
普通に考えればセシリアが一夏が「何か余計なことを喋るのではないか?」と心配していると思うべきなのだろうが楯無は気付いてしまった。
あれは一夏の身を案じているのだということに。
(…山田先生の言っていたこともあながち間違いじゃなさそうね……)
会議の際、真耶はセシリアのことを分裂しているように感じたと言っていた。
―利用しようとしている相手を本気で心配する。
なるほど、『分裂』とは言い得て妙である。
そう納得しつつ、楯無は気を引き締めた。
セシリアがどちらであろうと、なんであろうと自分のやることは変わらないのだから……。
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「さて、オルコットがいろいろと説明していたが、織斑兄。お前の口からもう一度説明しろ」
「面倒かもしれないけど、言った、言わないがあると困るから一夏くん、お願いね♪」
会議室に入り、千冬、楯無、真耶の三人と対面する形で座った一夏に千冬と楯無がそう切り出した。
「…今回の模擬戦でセシリアが俺に武装をたい、たい「自分の話しやすい言葉で良いのよ?」貸してくれて、あとは当日までその使い方とか戦い方を教えてくれるそうです」
楯無に途中で言葉を挟まれ、一夏は自分の言葉に訂正しつつセシリアからの提案の内容を話す。
「分かった。次に…、オルコットと更識が話していたのを聞いていたと思うが、オルコットはお前を利用するつもりで、お前もそれに同意しているというのは本当か?」
「嘘だ」と言って欲しいと思いながらもそう質問した千冬に対して一夏は…、
「本当です」
そうあっさりと肯定した。
その一夏の言葉を聞いた千冬は頭を抱えたくなるがなんとか耐え、質問を続ける。
「…詳細を話せ」
「…詳細?やりとりについてですか?同意した理由ですか?質問は具体的にお願いします」
―ピシ…
口調こそ丁寧だが一夏が千冬を煽る様な言葉を発した瞬間、部屋の空気に一瞬亀裂が入る。
「うふふ、一夏くんの言う通りですよ、織斑先生?質問は具体的じゃないと一夏くんも困っちゃいますよ。じゃあ、一夏くん?セシリアちゃんが一夏くんに提案をする前のやりとりと、利用云々の詳しい内容と…。一夏くんが同意した理由を教えてもらってもいいかしら?」
(ッ!?すまん、更識)
しかし、間髪入れずに楯無がとりなし、千冬は心の中で楯無に謝罪する。
「…えっと、まず、セシリアとお茶会をしていて、そこで模擬戦の話になって、俺が職員室で秋二が専用機を貰えるって話を聞いたからそれも話して、そしたらセシリアが提案をしてくれました」
「うんうん」
(嘘は言っていないようだけど全部は話していないって感じね…)
一夏の言葉に頷きながらそんなことを考える楯無。
一夏の説明は続く。
「…次にセシリアの言う利用っていうのは、適正なりなんなりで、まぁ、俺が秋二に劣っているからセシリア、いや、レイレナードの武装で俺が模擬戦でそれなりの結果を出せば、レイレナードは良い宣伝になるってことで俺を利用したいって言われて…。それで、俺も戦力差を埋められるから俺にとっても悪い話じゃないので同意しました」
「うんうん、そっか」
すると話を聞いていた千冬が口を開いた。
「それなりの結果というのは具体的にどういうことだ?」
「…秋二の機体のシールドエネルギー?をまぁ、半分くらい削ることです」
―なるほど、現実的で確かに悪い話ではない
「分かったわ。あ、一夏くん?他にも質問があるんだけどいいかしら?」
「…どうぞ」
「うん。一夏くんの説明を聞いていて少し気になったんだけど…、
―利用するって言われて嫌な気持ちにならなかったかしら?」
生徒会長として心配で…、と言いながらそう質問してきた楯無に一夏はハッキリと答える。
「いえ、まったく」
「えぇっ!?」
「………」
「あら、そうなの?」
一夏の言葉に、真耶、千冬、楯無がそれぞれ反応を示す。
「別に変な話じゃないでしょう?セシリアとは今日が初対面で、セシリアになんの得もないのに提案してくる方がおかしいですから、むしろ納得しましたよ。それに…」
「それに?」
「…セシリアは利用するってことも含めて俺に全部説明してくれたんです。それで、俺にどうするかって聞いてくれたんです。
―俺に選択肢をくれたんです。
なんの説明もなかったり、選択肢がなかったり、事後報告で言われたりするよりずっとずっとマシですよ…」
「―っ」
一夏の独白の様な言葉に千冬が僅かに唇を噛む。
そんな千冬の姿をチラリと見た楯無は口を開く。
「…そっか、分かったわ。あと、念のために聞いておくけど契約書を交わしたりとか、一夏くんに報酬が支払われるみたいな話はあるかしら?」
「ないですよ…。そもそも織斑先生とか会ちょ「あら?名前で呼んでもいいのよ?」…会長から許可を貰ってないですし……」
若干疲れてきているように話す一夏に楯無は満足そうに頷く。
「うんうん、良い判断よ?流石に学園を通さないで金銭のやりとりとかがあるといろいろと問題があるからね?」
「はぁ…」
すると楯無は千冬、真耶の両名を見る。
「織斑先生と山田先生、他に何か一夏くんに質問はありますか?無いようでしたら一夏くんもいろいろあって疲れているようですし寮に戻ってもらっても良いと思っているのですが…」
「…私は大丈夫だ」
「あ、じゃあ私は一つだけ…」
楯無の問いに千冬は「無い」と答え、真耶が質問することとなった。
「では、山田先生どうぞ」
「あ、はい。あの~、一夏くん?全然関係ない質問なんだけど…、いいかな?」
「…いいですよ。何ですか?」
「あ、うん。あ、あのね?ちょっとデリケートな質問なんだけど…。一夏くん、オルコットさんの身体のこと、知ってる?」
「…手とか足が義肢かどうかってことですか?それなら知ってますよ」
一夏の言葉に楯無の目がピクリと一瞬動く。
「そ、そう?なら良いんだけど…。あの、もし、一夏くんが嫌じゃなかったら……」
真耶が最後まで言葉を発する前に一夏は口を開く。
「セシリアを助けてやれって言うんですよね?
―やりますよ、言われなくても」
「えっ!?う、うん。それならいいんだけど…」
「………」
「あら、男らしいわね。そういう男の子、私は好きよ?」
一夏の言葉に真耶は驚き、千冬は無言で一夏を見つめ、楯無は茶化すようにそう言った。
「…もういいですか?」
そんな楯無を若干睨む様に見たあと一夏はそう切り出す。
「そうね。山田先生、大丈夫ですか?」
「あ、はい。私は大丈夫です…」
「じゃあ、一夏くん。今日はありがとう。もう戻っていいわよ。お疲れ様♪」
「はい、じゃあ、失礼します」
そうして楯無に促され会議室から出て行こうとする一夏に千冬が声を掛けた。
「待て、織斑兄」
「…なんですか?」
声を掛けられた一夏は千冬の方に振り返る。
真耶が心配そうに二人の様子を見ていると千冬が口を開いた。
「…参考書が用意出来たそうだ。帰りに職員室に寄って受け取るように」
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「ふぅ…」
「…更識、どう思う?」
出ていく一夏の背中を見送ったあと、軽く息を吐く楯無に千冬が話しかける。
「…少なくとも一夏くんの言葉に嘘はないと思いました。ただ、全てを話している、というわけでもないでしょう」
「あの、それって何か隠し事があるということでしょうか?」
楯無の「全てを話しているわけでもない」という言葉に真耶が不安そうな声で聞く。
「そうですね…、上手くは言えませんが、やましいことを隠している、というよりは単純に言いたくないから言わないということかと……」
「?、どういうことですか?」
歯切れの悪い楯無の言葉に真耶が疑問の声を出す。
「なんといいますか、セシリアちゃんの提案に関しては一夏くんはそのまま話しているんだと思います。問題はセシリアちゃんがその提案を一夏くんにするまでの間についてです」
「え?、お茶会の最中の流れで、みたいな話じゃなかったですか?」
「要は更識が言いたいのはオルコットにとってメリットの少ない提案を織斑兄にした流れを話していない、ということだろう?」
「はい、そうなります」
「そうなんですか?確かに私も一夏くんの方がメリットが大きいかなと思いましたがオルコットさんも利益を得られますし、あまり不自然には感じませんでしたけど…」
「いえ、今回の話は明らかにセシリアちゃんにとってハイリスク、ローリターンです」
そうなのだ。
確かに、一夏が説明した通りにいけば宣伝効果としては大きい効果があるだろう。
ただ、それは上手くいった場合だ。
やる気になったとは言え、現時点で一夏の実力は未知数。
戦いに絶対はないとはいえ、あっさり敗北、ということもありえるのだ。
そうなればレイレナードに対して侮る声も上がるだろう。
さらに言えば学園内においてセシリアの立場も危うくなる。
GA社の動きを考えればレイレナードが世界に二人しかいない男性装者の一人である一夏を嵌めるためにセシリアが行動している可能性も考えられたが、セシリアの入学手続きが進められた時期を考えるとその線も薄かった。
(セシリア以外の諜報員が学園内に潜入しているのは確実なため何らかの指令をセシリアが受け取った可能性もあるが)
(それ以外にも一夏くんを篭絡するための方便、と考えるのは楽だけれどもそれは時期尚早ね…。それに今回の件、上手く立ち回ればこちらにも……)
そこまで楯無が考えていたところで真耶が口を開く。
「それじゃあ、もしかしたらオルコットさんは利益が目的じゃなくて、あくまで一夏くんのために善意で行動してくれている可能性もあるってことですか?だったら…」
「いえ、山田先生、その考えは早計です」
どこか嬉しそうに話す真耶の言葉を楯無はそうピシャリと遮った。
そして楯無は真耶に警告する。
「…確かに、山田先生の言うようにセシリアちゃんは今回は善意で味方してくれているかもしれません。ですが、彼女が企業所属な以上…」
―次も味方とは限らないでしょう?
楯無の声が重々しく会議室に響いた。
その後、数時間に渡り話し合いは行われ、今回の件をいくつかの条件付きで認めることになる。
この時の彼女達は知らなかった。
この決定が国家、企業、IS学園、それぞれの陣営に大きな衝撃を与えることになるということを……
以上になります。
決定までの話し合いも今後に各キャラの回想みたいな形で描写できたらなぁと考えています。
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