「 ゴ ガ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! 」
異形のゴア・マガラが吠えた。
盾越しでも鼓膜を破られそうな音だ。
「しゃあっ」
僕はゴア・マガラめがけて
チャージアックスを変形させ、剣で奴の左前脚を斬りつける。
「ガアッ!」
噛みつきをかわし、もういちど翔蟲を飛ばして今度は背後に回り込んだ。
弱点の尻尾に向けて一撃。力を溜めてもう一撃。
蓄えられたエネルギーをビンに装填し、素早く盾を強化する。
ゴア・マガラは大きく前にジャンプし、反転して僕に向き直った。
四足に加えて発達した
この世の生物とは思えない姿に、思わず圧倒されそうになってしまう。
怖気づくんじゃない。
ミノトさんを助けるんだ。
「ゴオオオオッ!」
ゴア・マガラが突進してきた。
剣と盾を合体させて受け止める。
そのまま武器を斧に変形させ、こちらを振り返るゴア・マガラの頭に高出力属性解放斬りを――
ガキン!
「なにっ」
しまった、金色の翼脚で受けられた。
教官の手記に書いてあった通り、とんでもなく堅い。
そして振り返るゴア・マガラの口からは紫の光が溢れ出していて――
「あっ」
と思った瞬間にはもう、ブレスの直撃を受けて吹き飛ばされていた。
翔蟲で受け身を取ったが、みるみる視界が赤く染まり、体の奥からなにかがこみ上げてくるような感覚を覚える。
これはなんだ?
どす黒くて、熱い――
怒りだ。
目の前にいる、このバケモノに対する怒りだ。
ウイルスが僕の中に潜んでいた獣を呼び覚ます。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺殺す殺す殺す殺す殺すす殺殺す殺す殺す殺す殺すす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――
回復薬を飲むのも忘れ、闇雲に突進して剣で斬りつけた。
こんな戦い方は危険だ。
でも、狂竜ウイルスは敵を切り刻むことでしか克服できない。
なにより、湧き上がってくるこの怒りを抑えることができない!!
ドスッ!
翼膜を斬り裂いた。
ほとんど手ごたえがない。
もっと肉のあるところを斬りたい。
グチャグチャにしてやりたい。
ゴッ!
尻尾を叩きつけられた。
構うものか。
倍にして斬り返してやる。
ガッ!
剣が翼脚に弾かれる。
知ったことか。
何度でもやってやる。
何度も、何度も、何度も――。
ドゴオッ!!
「ぐっ!?」
一瞬、なにをされたのかわからなかった。
翼脚で地面に押さえつけられているのだとわかった瞬間、ゴア・マガラの牙が僕の左肩に食い込んだ。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
とっさに右手でクナイをゴア・マガラの頭部に突き刺したが、びくともしない。
肩の骨が砕ける。
血が噴き出す。
死ぬ。
このままでは――。
(な……んっ……だあっ……?)
その声は、僕の頭の中から聞こえた。
ウイルスと激痛で、自分がどうにかなってしまったのかと思った。
だけど、確かに聞こえる。
ミノトさんの唄が。
“勇まし狩人”。
カムラの里に古くから伝わる破魔の唄だ。
「グウゥ……?」
ゴア・マガラが噛みつきを止め、首をもたげて周囲を見回しはじめた。
まさか、コイツにも聞こえているのか!?
「オオ……オオオオオ!!」
間違いない。
共鳴している。
ミノトさんの心が、ゴア・マガラに流れ込んでいる。
「 オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! ! 」
異形の竜が哭いている。
そうか。
お前は、ずっとひとりだったものな。
近づくものはみんなウイルスで死んでしまうから、心が通う相手なんて、いなかったんだよな。
「 ゴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! ! 」
ミノトさんを呼んでいるんだな。
でも、そうはいかない。
お前は僕が殺す。
悔しいだろうが仕方がないんだ。
「むうっ!」
体を押さえつけていた翼脚の力が緩んだ瞬間、右手で翔蟲を放って拘束から脱出。
もう感覚が無い左肩にありったけの鉄蟲糸を巻き付けて、もう一匹の翔蟲を天空に放つ。
「気炎万丈!」
右手には既に斧に変形させたチャージアックスが握られている。
それを力任せに振り下ろして、ゴア・マガラの前脚を叩き潰す。
「ガアアッ!?」
ゴア・マガラが金色の翼脚を横に薙ぎ払った。
直撃すれば胴体が真っ二つになっていただろう。
だが、僕の体は翔蟲に引き上げられ、そのはるか上を跳んでいる。
武器内臓ビンに蓄えられたエネルギーを全て解放。
落下の勢いそのままに、超高出力属性解放斬りをゴア・マガラの頭部に叩き込む――
鉄蟲糸技、“アックスホッパー”。
「 う お お お お お お お お お お お お ! ! ! 」
ベギャッ!!
バチバチバチバチ!!!!
2本の角がへし折れ、頭蓋骨が粉砕された。
同時に、武器から流し込まれたエネルギーが体内で炸裂し、あらゆる臓器をズタズタに破壊する。
「グ…………………ゴガッ……」
断末魔の代わりに、口から血と内臓の破片を吐き出し――異形の竜ゴア・マガラは力尽きた。