己を徹底的に痛めつけるのが大好きな超絶ドMウマ娘は周りから世界一の努力家と勘違いされている   作:座敷猫いおり

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十八話『ホワイトグリントと動き出す世界』

 ハードトレーニングを一区切り終えた、その日――私は歓喜に打ち震えていた。

 

 もう二度と出会えないかも知れない、もう二度とあなたと体を合わせる事が出来ないかも知れない。そんな今生の別れを覚悟して、記憶という朧げで儚いあなたとのセピア色に薄れゆくかのような思い出を噛み締め生きてきた。

 

 でも――また、()()()に会えたっ! 

 

 おかえりなさい……私の至高の痛み(エクストリーム・ペイン)――!

 

 私はドMであるが故に大体の苦痛が大好物で美味しく頂けるけど、しかしその中でも趣味嗜好からなる好みというのも当然ある。

 

 一般人にもわかりやすく例えると、例えば車好きという人が居たとしてその人は快適に乗れる乗用車の運転が好きなのか、格好いいスポーツカーが好きなのか、それともF1みたいな超高速レースが好きかで話は全然変わって来るよね? 拷問器具好きってMな人がいたとして、ヨーロッパで生まれた鉄の処女(アイアン・メイデン)が好きな人もいれば古代ギリシアで生まれたファラリスの雄牛が好きな人も居るだろう。ちなみに私がやってみたい拷問は石抱き。

 

 一年と半年前。素敵なギザ歯を持つフリートさんに手を噛んで貰った結果、私の“魂”がヒィンヒィン求める究極の痛み(アルティメット・ペイン)は噛み傷だと言うことがわかった。しかしそれと対を成すかの様な私の“体”が最高の気持ちよさを感じる苦痛が存在する。それが至高の痛み(エクストリーム・ペイン)

 

 それを私が味えたのは幼い頃、たった一度きり。その正体はおそらく成長期に入り身長が急激に伸びる事によって引き起こされる“成長痛”だろう。でもただの成長痛じゃない……それに合わさる筋肉痛や身体疲労、精神的消耗エトセトラ――それら不確定要素が全て高次元に一ミリの狂いもなく噛み合った時初めて至高の痛み(エクストリーム・ペイン)は訪れる!

 

 この偶然と幸運が噛み合った痛みはどれだけ身体を苛め抜いても()()ができない。どれだけ頑張ってハードトレーニングに勤しんでも意図的に出会う事が不可能だから。痛みだけの度合いで言うなればもっと刺激的な苦痛は山程ある。だけどそれはひたすら味付けの濃い大味な料理の様な物であって、それはそれで美味しくはあるけれど、至高と名付けていい領域ではない。まさに繊細ささえ兼ね備えた幻の苦痛――それが至高の痛み(エクストリーム・ペイン)

 

 でも、奇跡は起きた。

 

 本格化に伴う身体の急成長、そしてトレセン学園でのハードトレーニングによって今、私の身体にあの時感じた痛みがまざまざと蘇り最上の痛気持ちよさが私を包み混んでくれている……! ドバドバと多幸感を感じる脳内物質が生成されていく音さえ聞こえてくる様だ……! 

 

 もはや運動場の近くに設置されていたベンチから身体が全く動かせない……否、動かしたくさえない感動。幸せだ。幸せすぎる……この気持ちはオグリさんやおじいちゃんと触れ合っている時の喜びと甲乙さえ付け難い領域に匹敵するだろう。ずっとこの気持ちよさを味わっていたいのに、気持ち良すぎて意識を保つ事さえ難しい。

 

 だけど同時に、張り裂けそうな悲しみが胸に渦巻いてもいた。私がこの痛みに出会えるのはこれが正真正銘、最後の機会だと理解してしまったから。

 

 この苦痛が発生する大前提のトリガーが成長痛というのなら、ウマ娘最後の成長期と呼ばれる本格化が終わってしまえば私にはもう“成長痛”を感じる機会が永遠に来ない。至高の痛み(エクストリーム・ペイン)とはなんと儚い存在なのだろう。まるで生涯に一度しか走れないメイクデビューやクラシックレースの様じゃないか……。

 

 全身を包み込む気持ちよさで意識が薄れゆく中、私はもう二度と感じられないであろうこの痛みを脳に、心に、全てに刻みつける様に慈しんだ。勿体ない、でも大丈夫。経験上この痛みは一眠りしても今日一日くらいはまだ持続する。まだ味わえる。まだ触れ合える。目が覚めたら、また会おうね。大好き、愛してる。私の苦痛――。

 

 

 

「……? ああ、申し訳ない。かなり身体に疲労が溜まっていたようだから、勝手ながらマッサージをさせて貰ったんだ。同意も無しに身体を触るのは不躾がすぎたかな」

 

 

 

 だけど目が覚めたら、至高の痛み(エクストリーム・ペイン)はただの普通に気持ちいいだけの痛みとなっていた。

 

 許せない。

 

 絶対に許さない……! 奈瀬文乃は私から二度と味わえない至高の苦痛を奪ったんだ! 無関係のウマ娘が筋肉痛と苦痛で寝込んでいる時に勝手にマッサージをして身体を癒してしまうなんてそれでも栄えある中央のトレーナーなのかあなたはっ!!! めっちゃ優しいトレーナーだなクソッ!!!! 

 

 さすがのドMな私だってただの筋肉痛であればここまでは怒ら……怒ら……怒らないってこともないけども! 奈瀬文乃は善意でやってくれたってのもわかるから! 訴えたり社会やトレセン学園から物理的に消してやるってこともしないけど!

 

 許さねぇ! 奈瀬文乃ォ!!! 魂魄百万回生まれ変わっても! 例えウマ娘じゃないよくわかんない四足歩行の生物に生まれ変わっても! 絶対に許さないんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

 ■■■

 

 

 無表情ながら烈火の様な怒りを燃やすホワイトグリントの前で、奈瀬文乃がオグリキャップに羽交い締めされ、セイウンスカイとキングヘイローに脇腹や足をくすぐられるという悪逆非道の尋問を受け、見かねたタマモクロスと哲夜トレーナーに止められた――同日。

 

 とある新聞社の編集部にて、黒眼鏡を身につける男はわなわなと全身を歓喜に震わせていた。

 

「来た……ついに現れたんや! オグリキャップの夢を! 熱を! 受け継げるウマ娘が!」

 

「落鉄が頭に直撃しても微動だにせず笑顔でレースを続けられる鋼の様な精神性……不良バ場と不運が重なってもコースレコードを叩き出す強さ……これがメイクデビューのジュニア級ウマ娘なんてとても到底信じられない……」

 

「顔が……顔が良い……」

 

「オグリキャップとタマモクロスの一押しウマ娘、間違いなく本物ですね! なんでこんな子が今まで話題にならなかったのか不思議で仕方ないですよ。しかも白毛で」

 

 テーブルの上に並べられたいくつもの写真を眺めながら、ああだこうだと情熱に溢れる熱弁を振るうのは主にスポーツ部門を担当する編集者や記者達だ。

 

「部数、久しぶりに大幅に伸びるな。これは」

 

 国民的エンターテインメントと呼ばれて久しい競バというスポーツではあるが、しかしその人気に近年陰りを感じていたのは他でもない情報を生業とする彼らである。現代は新聞だけでなく紙媒体自体の売上が大幅に減っている厳しい冬の時代。けれどオグリキャップブームに日本中が燃えていたあの頃は、そんな不況などお構いなしにスポーツ紙や新聞にオグリキャップが一面を飾れば飛ぶように売れた。もはや新聞を刷っているというより金を刷っている気分になれる程だった。

 

 競バのヒーローはメディア業界にとってもヒーローだったのである。しかし彼女が引退してから、その売上も大きく右肩下がり。偉大な大スターが日本に巻き起こしたブームと引退は、酸いも甘いも各業界に齎したと言える。

 

「売上はそりゃ大事や! でもボクらの本懐は発行部数や売上を伸ばすことやないはずやろ! 日本の皆にこんな凄いことがあったぞって! こんな凄い奴がおるんやぞって! 夢を紙面に乗せて届ける事や!」

 

「「「はい!」」」

 

 彼らは燃えていた。オグリキャップの引退から、ファンの夢を乗せて走れるウマ娘が居なかったわけでもない。熱くなれるウマ娘が居なかったわけでもない。けれどオグリキャップが生み出して、未だ燻り続ける夢と熱を受け継げるウマ娘は――居なかった。

 

 だがそれがついに現れた。きっと彼女ならば、白毛のウマ娘ホワイトグリントならば――記者魂が燃える。まるでオグリキャップがターフに居たあの頃の様に。

 

「見出しは『オグリキャップを受け継ぐ者“白雪姫”ホワイトグリント』! 一面トップや! WEBにも大特集を組む! 文句は誰にも言わさへん! ボクは編集長やからな!」

 

 藤井泉助(ふじいせんすけ)。かつて日本の記者の中で最も熱心にオグリキャップの背中を追い、記事を書き、オグリキャップをダービーに――と大規模な署名活動まで行った男はその能力と熱意を買われ、今や編集長の地位に付いている。

 

「あっそれとな。これから先うちの会社でのホワイトグリントの取材はボクが全部請け負う事にするからよろしくな!」

 

「はぁ!?」

 

「ずっ、ずるいですよ先輩!」

 

「ボクは編集長の前に記者や! 取材せんでどうすんねん!」

 

「藤井さんクソ忙しいのに何言ってるんですか!? そんな時間ないでしょ!?」

 

「横暴すぎます! 鬼! 悪魔! 英語の先生! バイリンガル!」

 

「マルチリンガルや! 競バパートII国までの言語全部話せるわ!」

 

「俺だってグリントちゃんの取材したいです!」

 

「若手にもチャンスを! 編集長!」

 

「不満があるならボクから編集長の椅子を奪い取るんやな!」

 

「上等じゃねえかこの鬼畜黒眼鏡! ウマ娘ちゃんを追いかけすぎていい歳なのにいまだ独身!」

 

「お前今の御時世でそういうホンマのこと言うたらあかんやろ……」

 

 

 ■■■

 

 

 ペンではなく拳で戦いそうになっている記者達の大騒ぎが巻き起こった、後日。

 

「入場者数10万1138人……?」

 

 日本中央競バ会(URA)本拠地の一室にて、身なりの雰囲気だけで責任ある立場だという事が察せそうな熟年の男性は、思わず我が耳を疑った。

 

「はい、10万1138人です。間違いないか、と再三確認を取りましたが、事実です」

 

「……一つ聞くが、去年の日本ダービーの入場者は?」

 

「8万2974人」

 

「そうか。そうか……」

 

 去年のダービーより2万人近くも多いのか。メインレースがGⅢ朝日チャレンジカップの阪神レース場が。熟年の男性は目を伏せる。

 

 次々とデジタル化していく世の中に適応する為にも、日本競バは早くからネット配信などデジタル方面の環境作りにも力を入れて整えた。その結果、想定していた事とはいえレース場へ直接見に行くよりも手軽に映像で競バを楽しむ、というファンが大幅に増えつつあり全体の入場者数が減少傾向にある今、昨年の日本ダービーを超える入場者を呼んだ芦毛の怪物と白いウマ娘には驚愕と感謝の念を抱かざるを得ない。

 

 まあそんな世の中で数年前のオグリキャップのラストランでは彼女の最後の走りを見届けよう、と17万7779人が中山レース場に集まったのだからオグリキャップに関してはもう色んな意味で達観するしかないが。

 

「これからはオグリキャップに毎レース事注目するウマ娘を聞かねばならないな……冗談だが」

 

「改めて、恐ろしいですねオグリキャップの影響力というのは。無論ありがたいという意味で」

 

「それで、今彼女の状況はどうなっている? 落鉄がぶつかったと聞いたが、無事なんだな?」

 

「念の為精密検査を受けましたが、切り傷以外に異常はなく、直にトレーニングも再開すると。次走も阪神を予定していると聞いていますが――」

 

「……阪神の各種スタッフの増員及び仮設スタンド設置の手配を急がせろ。それとレース前の蹄鉄のチェックの強化実施もだ。それでも落鉄は完全に防げるわけでもないが――ウマ娘が健全かつ安全に走れるように、そして彼女達を応援する日本競バファン達が適切に過ごせるように尽力を成すのは我々日本中央競バ会(URA)の責務。負担が増えると思うが、君には働いて貰うぞ。期待している」

 

「直ちに」

 

「ああ、それとだな。これは、機会があったらでいいんだが……」

 

 突然歯切れの悪い物言いをする熟年の男の気持ちを察する様に、その期待を一心に受ける男は目を光らせて、言った。

 

「色紙はすでに用意しております。私も欲しいので」

 

 

 ■■■

 

 

 そんな日本中央競バ会(ウマ娘ちゃん好き)の段取りが進められる、同日のネットで。

 

579:名無しのウマ娘ちゃん好き

想像の100倍やばかったホワイトグリント

 

581:名無しのウマ娘ちゃん好き

まじで綺麗だったな あんな綺麗な子ゴールドシチー以来見たことないぞ

 

582:名無しのウマ娘ちゃん好き

蹄鉄頭に直撃しても笑顔で走るとか精神性おかしいよあのウマ娘!

 

584:名無しのウマ娘ちゃん好き

オグタマが推すだけある

 

585:名無しのウマ娘ちゃん好き

>>582

有マ記念でディクタストライカが顔面血に染めて走ってた時も思ったんだけど、流血なんてそれがどうしたって構わず走るウマ娘って本当に格好いいよ…レースに全部懸けてるってのが伝わってくるっていうか…

そりゃ怪我しないのが一番だけどさ

 

587:名無しのウマ娘ちゃん好き

あのド根性と末脚は間違いなくオグリキャップを継ぐウマ娘

 

589:名無しのウマ娘ちゃん好き

オグリキャップが帰ってきたってガチで思っちゃったあのフォーム

 

590:名無しのウマ娘ちゃん好き

俺の近所に住んでる小さなウマ娘ちゃんもオグリごっこして走ってたことあったけどさ

あれってとてもじゃないけどまともに走れねえんだよな

 

592:名無しのウマ娘ちゃん好き

>>590

おまわりさんこいつです

 

594:名無しのウマ娘ちゃん好き

スピードださなきゃ簡単にコケるしスピード出しても簡単にコケるからな

俺も真似して両足骨折したことある

 

596:名無しのウマ娘ちゃん好き

>俺も真似して両足骨折したことある

 

598:名無しのウマ娘ちゃん好き

芝生やしてる場合じゃねえよ!?

 

600:名無しのウマ娘ちゃん好き

picture//3546546…

雨に触られ泥に塗れ血に濡れる姿がふつくしい……

 

601:名無しのウマ娘ちゃん好き

宗教画とかそっち系の絵画みたいだ…

 

603:名無しのウマ娘ちゃん好き

普通なら痛々しくてみてられないんだろうけどめちゃくちゃ楽しそうな笑顔だからずっと見てられる…

 

604:名無しのウマ娘ちゃん好き

なんでこんな状況で笑えんだこの子やばすぎる

 

606:名無しのウマ娘ちゃん好き

極限状態に追い込まれるのが好きなマゾヒスト説

 

607:名無しのウマ娘ちゃん好き

>>606

ぶっ■すぞ

 

608:名無しのウマ娘ちゃん好き

>>606

いくらなんでも全身全霊でレースを走ったウマ娘ちゃんに失礼すぎる

 

609:名無しのウマ娘ちゃん好き

>>606

名誉毀損で通報して欲しいならそう言え

 

611:名無しのウマ娘ちゃん好き

まあトップアスリートなんてみんな求道者みたいなもんだから多少はマゾよ

 

613:名無しのウマ娘ちゃん好き

この世の全アスリートに謝れてめぇ

 

615:名無しのウマ娘ちゃん好き

落ち着け落ち着け

それはそうとウイニングライブ見たかったぜ…

 

617:名無しのウマ娘ちゃん好き

怪我したんだから仕方ねえわ残念だけど

 

618:名無しのウマ娘ちゃん好き

俺も次は絶対にレース場に見に行く

行かなかった事本当に後悔してる

 

619:名無しのウマ娘ちゃん好き

入場者10万人って阪神レース場の新記録らしいな

 

620:名無しのウマ娘ちゃん好き

鮨詰め状態で身動き取れなかったぜ

 

621:名無しのウマ娘ちゃん好き

予約席今から全部埋まってるってどういうことだよ(困惑)

 

 

623:名無しのウマ娘ちゃん好き

ウイニングライブは特等席で見なきゃな 今こそマニーを使う時だ!

 

624:名無しのウマ娘ちゃん好き

俺はマニーないから自由席しか…そもそもあるのかな自由席…

 

626:名無しのウマ娘ちゃん好き

席取れなかったら配信で我慢するしかないね

 

627:名無しのウマ娘ちゃん好き

誰も次走でグリントちゃんが勝つの疑ってなくて笑う

 

629:名無しのウマ娘ちゃん好き

あれは物が違う

 

630:名無しのウマ娘ちゃん好き

少なくともあの子が2勝3勝クラスで負けるとはとても思えん

 

632:名無しのウマ娘ちゃん好き

久しぶりに見たオグリギャル達がみんな泣いてた…

 

633:名無しのウマ娘ちゃん好き

そら泣きもするだろ色んな意味で

 

635:名無しのウマ娘ちゃん好き

レースを見て泣くのはオグリギャルだけの特権じゃないんだぜ!(思い出し泣きしながら)

 

636:名無しのウマ娘ちゃん好き

俺の姉ちゃんもオグリギャルだったけどレース場から帰って来たら目がガンギマリで怖かった

 

637:名無しのウマ娘ちゃん好き

私もいわゆるオグリギャルでさ

あのレースを最後に引退を考えてたけど撤回するわ

見つけた…私の新しい推し…生き甲斐…

 

638:名無しのウマ娘ちゃん好き

このスレって女の人いたんだ…

 

639:名無しのウマ娘ちゃん好き

ウマ娘ファンって男より女の方がなんかこう…ドロドロしてるよな…視線が…

ただの偏見だけど…

 

 

 

 ■■■

 

 

「あの……大丈夫ですか? 何かお顔が優れないようですけど……」

 

 白いウマ娘のメイクデビューから数日後。揺れる電車の中で、1人のウマ娘が暗い表情で俯く女性に話しかけていた。

 

「ん? ああ、心配してくれてありがとう。少し、やらかしてしまってね……君と同じ、1人のウマ娘の心を誤解で傷つけてしまったんだ」

 

「そうなんですか……」

 

「許して貰おうにも取り付く島もなくて……どうすれば和解できるのか見当もつかないよ……」

 

「……できます!」

 

「えっ?」

 

「悪いことをしたって自覚がちゃんとあって、誠心誠意謝りたいって気持ちがあって、仲直りしたいって気持ちがあるならきっとできます! あなたとそのウマ娘さんの間に何があったのかなんて部外者の私にはわかりませんし、立ち入る権利も何かを言う権利も無いかも知れませんが! それでも俯いて落ち込んでたって何も変わりません! 前を向いて! 進みましょう! 1センチでも! 1歩でも! その先に仲直りできる未来があるはずです!」

 

「……ふふ、ありがとう。君は優しいんだね。僕は奈瀬文乃、君は?」

 

「はい! 私はスペシャルウィーク! 前を向いて! 進んで! そしていつか――日本一になるウマ娘です!」

 

 

 

 世に突如として現れた1人の白いウマ娘、ホワイトグリント。

 

 何かが始まるかも知れない予感がある。

 

 何かが動きだすかも知れない予兆がある。

 

 そんな思いを胸に抱く人々が増えつつあった。オグリキャップが残していった燃え尽きる事のない種火が再び燃え盛ろうとしていた、そんな光輝く新たな時代の始まり。

 

 後に、その時代にターフを駆けたウマ娘達はこう呼ばれる事になる。

 

 黄金世代、と。




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