己を徹底的に痛めつけるのが大好きな超絶ドMウマ娘は周りから世界一の努力家と勘違いされている 作:座敷猫いおり
「21番テーブルにジャンボ人参ハンバーグと人参ご飯大盛り! 20辛カレーライス大盛りと
「もう定量で作らなくていい! 5人前ずつ作れ!」
「2000を超えるウマ娘達の胃袋を支えるこの中央の厨房が
はいっ! と壮年の女料理人である主任の飛ばす激に部下のコック達が額に汗を伝わせ気合を入れる。場面は打って変わってここは中央の大食堂。現在の時間は食い盛りのウマ娘達が腹の虫を鳴らす昼飯時で、忙しさはピークに達しており厨房はまさに戦場さながらの鉄火場である。
だがここは日本最高峰にして最大のウマ娘達の教育施設。従来ならたとえピーク時であっても創立から何十年も数多のウマ娘達の胃袋を支え続けて来たこの厨房の調理が
「21番テーブルヤサイニンニクマシマシ味噌ラーメンと人参炒飯大盛り! 麻婆豆腐激辛大盛りにジャンボピザ“ドラゴンズブレスチリ”*2トッピング追加ァ!」
「嘘だろまだ食うのか……!」
「オグリちゃんはいつものことだけどあの白毛の子もオグリちゃん並に食ってる……!?」
「というかずっと激辛ばっか食べてるけど大丈夫なのかあの子! キャロライナリーパーの
「ドラゴンズブレスチリは10倍だよ……滝みたいな汗掻いてたけどバクバク食べてた……」
「むしろそんなもん常備してるトレセンがおかしいな!?」
「喋ってないで調理に集中しな!」
次々と途切れることなくいつもの
慣れたが――オグリキャップのブラックホールのような食欲に
料理を作る手を休めることなく、ちらりと天を突くかのように皿が山積みになったテーブルを眺める。そこに居たのは学園にやって来た時と相も変わらず幸せそうに料理を食べるオグリキャップと、大量の汗を流してはいるが同じくらい幸せそうな
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普段、己を鍛えるというよりも痛めつけていると言っていいようなハードトレーニング以外では、感情をどこかへ置き忘れてしまったかのように無表情を崩さない
(そうか……こんな風に笑顔になれることが、ちゃんと彼女にもあるんだな)
しかもそれが自身と同じく沢山食べることが好き、という共通点であることが尚のことオグリキャップの心を気持ちよく弾ませる。ただ、どうにも味の好みは自身とは少し違うようで先程から彼女が注文している料理は
「あかん! もう我慢できへん!
「突然どうしたんだタマ」
「どうしたもこうしたもないわっ! お前らどんだけ食うねん!? いや、オグリはいつものことやけどもいつも以上に食っとるし! 皿! 皿の山! 皿で通天閣でも作る気なんか!? うちの家族親戚一同で
「落ち着いて聞いて欲しいタマ、ここは産婦人科じゃなくてトレセン学園だ」
「知っとるわ!!! しかも
「……
「舌痺れて呂律回ってないやないか!!! 水飲め水!」
取り急ぎタマモクロスから差し出されたコップを受け取り、ごくりごくりと一気に飲み干して体から熱を取り除くようにふぅ、と一息ついて、いつもの無表情に戻るとホワイトグリントは静かに言った。
「ありがとうございます……タマモクロスさん……でも、辛味の成分は水で洗い流されなくて……むしろ味覚を鋭利にしてしまうので、辛さを和らげようとする時はむしろ逆効果なんですよね……」
「知っとったんなら飲む前に言えや! 普段辛いもんなんてあんま食べんから知らんかったわそんな豆知識!!! ごめんな!?」
「私も知らなかったな。確かに、言われてみれば水を飲んでもあまり辛さが消えてない気がしていたがそういうわけなのか……その場合は何を飲むといいんだ?」
「牛乳などの乳製品、ですね」
「なるほど――ちょっとクリーク呼んでくる」
「待てや!? いくら
「いや、クリークならミルク入りの哺乳瓶とか常備してそうだから借りようと思っただけなんだが……タマ……」
「がああああああぁぁぁ!!!!!」
びたーん、とタマモクロスは顔を朱色に染めながらさながら勇者に討伐された魔王のような断末魔をあげテーブルにゴチン、と音を立てながら勢いよく突っ伏す。そんな慌ただしい吉本新喜劇もかくや、という光景を眺めながら……ホワイトグリントは小さくだが確かに、笑っていた。
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なんや、確かにオグリ並の大食いだとか尋常ならざる辛いもの好きだとか、食べてるとき以外はほぼほぼ無表情だとか確かに
つい先日トレセン学園に入学したばかりのピチピチの新入生ホワイトグリント――彼女は入学する少し前からかなり話題になっているウマ娘だった。なにせ現状間違いなく日本で一番の知名度を誇るアイドルウマ娘
あのオグリキャップが目をかけているなんて、どれほどの素質を持ったウマ娘であることか。オグリキャップはその功績と人柄から多くの後輩達に慕われていて、本人も先輩らしく別け隔てなく後輩達の面倒を見る方ではあるものの、特定個人を推したり吹聴して歩いたりといったことなど今まで無いに等しかった。それだけにトレーナー陣や学園側の関係者は無論のこと一生徒だって気になるのは至極当然の流れで。
辺りを見回せば、ちらちらとこちらに目線を忍ばせ、他人の井戸端会議を盗み聞きしている者達がかなりの数ひしめいている。これだけ大声でコントを繰り広げたり二人大食い大会をやっていれば意識せずとも気になってしまうのは当然の結果ではあるので責められまいが。
それにオグリキャップのかけがえのないライバルであり親友の一人で、さらには同室でもあるタマモクロスは本人の口から話を聞くことも多かったから、ホワイトグリントというウマ娘はなおのこと興味深い対象だった。
(普段クールというか天然というか動じないというか……そんなオグリをああもやきもきさせとるウマ娘いうからどんなもんかと思っとったけど)
最近のオグリキャップといえばスマートフォンがピコンと着信を告げる度に食い入るように見つめては、彼女の返信と思わしき文面を見て笑顔になったり青くなったり考え込んだり何故か表情が曇ったり……気に入っている後輩の入学を楽しみにしている先輩というよりは、もはや我が子の入学を心待ちにしていた母親のような有様である。
「グリント、学園にはもう慣れたか?」
「いえ……まだ……」
「新入生の入学式終わったの昨日やぞ」
慣れるもクソもないやんけと普段の5割マシくらい天然ボケとニコニコの笑顔が加速している芦毛の親友にツッコミを入れる芦毛。
「そうだ、遅くなったが紹介しよう。彼女は有名だからすでに知ってると思うがタマモクロスだ。私のライバルで、親友なんだ」
「数十分遅いわ! 紹介が!!! 飯食う前のいただきますよりも先に済ますことやろそれ!?」
……いや、オグリに天然が入ってるのは間違いないけど半ばわざとやなこれ、とタマモクロスは分析する。
(ホンマにこの子のことが大好きなんやなぁ……ちょっと妬けるわ……)
ターフで魂と魂をぶつけ合いレースを通してお互いを理解し合った間柄の親友が、自分の知らないウマ娘にご執心というのは中々に面白くない部分もある。しかしそんな親友がそこまで大切にしたい相手なのであればいくらでも協力してあげたいし自分だって可愛がってあげたいという気持ちも勿論タマモクロスにはあった。
時折、何故かオグリキャップと
もう
その痛みを知るのはもっと仲良くなってからにすべきだろう。今は、食事以外では大体無表情で辛党の彼女が早くトレセン学園に馴染めるよう、この天然ボケで大好きな親友と共に面白おかしく触れ合ってやればいいのだ――。
まあ、ただ。
あとで揉んだろ――と密かに誓う
だが、タマモクロスは知らない。意外と普通と判断した彼女が普通とはあまりにも
「――ところでグリント、大切なことだからよく考えるべきだし、実際に今日の放課後あたりに見学して貰ってからとは思っているんだが……勿論私の
オグリキャップが、周囲の想像を遥かに超えて彼女に
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一口料理を頬張る度に、口の中を鋭利なメスで抉られているようなこの
トレセン学園の激辛料理、
いやぁ、メニュー表を見て驚愕したよ本当に。私の好きな超のつくほどの激辛料理とかあるかなぁ、でもここは料理屋さんじゃなくてエリートウマ娘の養成所だからなぁとさほど期待してなかった自分を殴ってやりたい。殴った。気持ちいい。
ずらりと2ページに渡って写真入りで特集されている激辛料理シリーズ……! しかも辛さも甘口中辛激辛
……いかんいかん食欲と
まあそれは置いておいて、はてさて皆様ごきげんよう。春風が踊り桜が舞い、つまるところすっかり春がやってきて道行く人もウマ娘もぽかぽか陽気に皆ご機嫌のこの季節。大好きで大恩人のオグリさんとその親友兼ライバルの
あの合格通知が届いてから指折り数えて待ちわびたこの瞬間。ついに
――え? 普通物語は入学した日から始まるものじゃないのかって? くっくっく……それが初日から
そんなことよりもオグリさんとタマモクロスさんだ。昨日は入学式やらクラス割りやら入学案内やら寮の振り分けで忙しく(ちなみに私はオグリさんタマモクロスさんと同じ栗東寮だったよ! 三女神様にマジ感謝)触れ合う時間がなかったけれど今日はこうしてわざわざランチをお誘いして貰うという至高の権利を拝領しているのだ。
オグリさんったらお昼が近づく度に『一緒にランチを食べないか?』『いい機会だから私の親友を紹介したいんだ』って感じで一分刻みくらいにチャットを送ってくれるものだから、私みたいな木っ端ウマ娘にさえ無限大の優しさで接してくれるオグリさんの御心を感じるだけでもうお腹と心がいっぱいになりそうだったよ……。
というわけで今現在ランチをご一緒させて貰っているわけなのだけど、オグリさんとは何度も触れ合っている間柄だからコミュ障の私でもそれなりに落ち着いていられるが、タマモクロスさんはそうはいかない……。
“白い稲妻”タマモクロス。オグリさんに並ぶ
彼女は一時期、オグリさんと死闘を繰り広げたあの伝説の有マ記念を
タマモクロスさんの復帰は大々的にメディアで報道されて、ファンは両手をあげて彼女の帰還を喜んだし何より彼女の一番のライバルであるオグリさんがむせび泣きながらタマモクロスさんを抱きしめ歓迎したという芦毛の美しい友情物語には日本どころか全世界が泣いた。私も泣いた。無表情のまま泣くという逆に器用なことをしながら涙が枯れるまで泣いた。
そんな凄いウマ娘とご飯を一緒にするというのは勿論天にも登るような栄誉であるし嬉しいのは間違いない。間違いないが……話かけづれぇ~~~~~。
ただでさえ私は自分から話題の振り方なんぞ1ハロンもわからないのに会話が良バ場のターフのように弾むわけもなく適当に相槌を打ったり黙々と美味しい料理を口に運ぶしかない無様さ。
なにせ今現在こうしてランチタイムに入ってから数十分ほど立っているが未だお互いの自己紹介すら済ませていない体たらくっぷりである。いや、オグリさんが「この子は新入生のホワイトグリントだよろしくしてやってほしいタマ」と一応の説明はしてくれたのだけれど私はぺこりと頭を下げるだけですませてしまった……痛恨の
タマモクロスさんに対して無礼すぎるし、彼女を紹介してくれたオグリさんに対しても無礼で
――と、そんなことを考えているとタマモクロスさんが立ち上がって、吠えた。
「あかん! もう我慢できへん! ツッコミどころが多すぎやろこの空間!」
「突然どうしたんだタマ」
「どうしたもこうしたもないわっ! お前らどんだけ食うねん!? いや、オグリはいつものことやけどもいつも以上に食っとるし! 皿! 皿の山! 皿で通天閣でも作る気なんか!? うちの家族親戚一同で寿司回るヤツ食べにいったってこんなに積み重らんわ! こんな大量の料理全部どこに消えてんねん!? 明らかにその妊婦さんみたいなぽっこりお腹以上に料理食べてるやん!? っていうか腹ぁ! なんやその二人してだらしない腹! 産婦人科かここは!」
い、いかん……タマモクロスさんが怒っている……! 確かに今の私はアスリートにあるまじきどっぷりとお腹が肥えたウシ娘。しかしこんな辛くて痛くて苦しくて美味しい料理を前にしたら食べずにはいられないのが私なんですよ……! と言うべきだろうけど、実をいうと私はいわゆる
というか今、とっくに満腹で死ぬほど
だったらどうすればいい? 沢山食べればいいじゃん! というだけの理由で私は普段からフードファイターも顔負けに大量の食事を取っている。
苦しければ苦しいほど気持ちよさを感じる私にとって満腹中枢がこれ以上胃に物を送ってくんじゃねえ! と発する警戒信号すら
まあ流石にいくらでも限界を超えて食べられるとはいえガチで
だから私は特別食べることそのものが好きだ、というわけではない。勿論、美味しい食事に舌鼓を打って幸せな気分になれるのは間違いないし、こうしてオグリさんとタマモクロスさんと一緒に食事ができるなんて、コミュ障を拗らせている食事は
「落ち着いて聞いて欲しいタマ、ここは産婦人科じゃなくてトレセン学園だ」
「知っとるわ!!! しかも新入生グリント! 赤い! 食っとるもんが赤すぎるやろ! もう見た目が! 見た目から辛い! 空気が辛い! 辛党にも限度ってもんがあるわっ! 汗だくだくやん! ホンマ大丈夫なんか!?」
怒りつつもこんな私を心配してくれるなんて、タマモクロスさんもオグリさんと同じなんて優しいウマ娘……。大丈夫どころか今とっても口の中で剣山を噛み砕いているように痛くて食べたものが逆流しそうになるくらい苦しくて気持ちいいよ!
だから私はそれを伝える為に意を決して、言う。
「……
舌痺れてた。
それからしばらくテーブルに頭を打ち付けて
「――ところでグリント、大切なことだからよく考えるべきだし、実際に今日の放課後あたりに見学して貰ってからとは思っているんだが……勿論私の
と、笑顔を浮かべながらもどこか圧のある口調でオグリさんが告げる。私なんかをあのオグリさんのチームに!? そんなのむしろこっちが土下座をしてお願いしたいくらいだよぉ!
と、
正直、悩む。
オグリさんと一緒にいられることは、オグリさんと一緒に走れることは私にとって苦痛を感じて気持ちよくなるのと同じくらい幸せなことなのだけれども!
オグリさんと一緒にいたら、間違いなく
オグリさんには出会った日に私が痛ければ痛いほど快楽を感じるドM変態ウマ娘であることはカミングアウトしているし、そんな私を許してくれてはいるのだが、それはそれとして『ハードトレーニングをするのであればちゃんとしたトレーナーが見ているところでやるべきだ』とぐうの音がでない程の正論も頂いている。
いやまあ、そうだよねぇ……未熟なウマ娘が一人だけでキツイ練習やってたら、
あと単純にオグリさんはあまりにも優しすぎてさ……それこそ天使のように、聖母のように! 三女神様のように! 優しいから! そんな彼女に己を痛めつけているかのようなトレーニングに励む私自身を見せたくない気持ちがあるのも事実なわけで……。
私はウマ娘に生まれたのなら誰もが一度は夢を見て、そしてその夢の難しさに誰もが目を覚ますというクラシック三冠、もしくはトリプルティアラを
トリプルティアラウマ娘になりたい。例えそれがトリプルティアラという対象レースが設立されてから今まで
だってそれは、こんなへんてこで気味の悪い
私の大好きなおじいちゃん。今はどこかへ行ってしまったおじいちゃん。いつも死ぬほど辛くて厳しいトレーニングで私を笑顔にしてくれたおじいちゃん。
そんなトレーニングが終われば優しくて、そして神妙というか味わい深いというかなんだか不思議な表情をして私の頭を撫でてくれたおじいちゃん。
『グリントなら、できる』っておじいちゃんが言ってくれたから。おじいちゃんの夢は、私の夢だ。
だから……。
「放課後伺わせて貰います。それから、考えさせてください」
とだけ、私ははっきりと告げた。その言葉に「えっ……」と一言漏らして私でもはっきりとわかるくらいにしゅん、とウマ耳も表情も落ち込むオグリさん。心が死ぬほど痛い。この痛みは気持ちよくない。とっても死にたい。
「い……いやいや、オグリ。トレーナーの話なんて今はまだ早すぎるやろ。グリントも即答できへんて。そりゃトレーナーが付くのは早いに越したことあらへんけどまだ入学二日目やで?」
そんなオグリさんに見かねたのかタマモクロスさんがすかさずフォローに入ってくれる。本当になんっっって優しい人達なのだろう。芦毛ウマ娘は天使しかいないのか。
「それはそうだが……」
「大体、オグリのトレーナーさんはそりゃええ腕しとるしサブトレーナーも豊富な立派なチームやけど、だからってグリントとウマが合う*4かはわからんやん? ちゃんとグリントとトレーナーさんと話おうて、それから決めた方がええやろ。な?」
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かくして、幸せと悲しみが混ざった昼食が終わり、どことなーく重くなった私の足取りを気にも止めることなく時間は進む。午後の授業もつつがなく終わったところで私は一度
トレセン学園には中等部ならここ、高等部ならここってシャワーとか個人のロッカーとか洗濯機とか快適な備品完備の豪華な更衣室があって本来ならそこで着替えてトレーニング場に向かうのだがまだ荷物を移してないのだ。なにせまだ体育の授業すら受けてない入学二日目だから。決して初日の
がちゃりと部屋の扉をあけると、私より先に帰っていた同室のウマ娘がいた。私は授業が終わってから真っ先に教室を出たはずなのだがいつの間に先に帰っていたのだろう。
「おかえり」
「……ただいま、です」
トレセン学園に入学するにあたってコミュ障な私の最大の
流石に通学でトレーニングの時間が減るのは困るし、学園の近場のアパートだとかマンションを借りるという手段も当然頭をよぎったが、普段私一人で実家のエンゲル係数を跳ね上げ蹄鉄だとか運動靴だとか消耗品で家計を圧迫していた身の上では口が裂けても言えなかった。私の家はかなり裕福な方だけど、これ以上金銭面で家族に苦労をかけてしまうのはちょっとさ……。
希望としては一人部屋がよかったのだが原則として寮生活は二人部屋の共同生活がデフォルト。明確な理由がなければ一人部屋の一人暮らしは認めて貰えない。他人とのコミュニケーションが苦手って理由じゃ駄目なんだってさ……コミュニケーションが当り前のように取れる奴らいつもそうだ! コミュ障をなんだと思ってるんだ……!
まあそんなわけで同居人と反りが合わなければ最悪こっそりどこか近場でテント生活でもしようかと考えていたのだけれど、
同居人の名はハッピーミークさん。私と同じ珍しい白毛のウマ娘である。ちなみに同じ新入生。
……毛色で部屋選んでない? トレセン学園の偉い人。まあ私としてはとても助かったのだから感謝しかないけれど。
「……」
「……」
彼女は基本、口数が少ない。先程のように部屋に帰ればおかえりと言ってくれたり、必要なことは喋ってくれるのだがこうして何もない時はぼーっと虚空を見つめていたりしていて、静かに過ごすのが好みのウマ娘らしい。
なにせ、昨日一日ミークさんとは一言二言自己紹介したくらいでほぼ会話をしなかったにも関わらず、彼女は何も気にしていないようだった。助かる。マジ助かる。彼女が同室で本当によかった……珍しい白毛同士というシンパシーもあるし、お互いゆーーーーーーーーっくり分かり合っていこうね、ミークさん。学園生活は長いんだからさ。
「……ミークさん、ありがとう」
「……よくわかんないけど、ぶい」
ゆっくり腕を胸元でクロスさせ、ダブルピースをしながらミークさんは答えた。
かわいすぎかこの白毛?
――さて、着替えも済んだところでそろそろ行こう。
偉大なオグリさんの偉大なトレーナーさん。
オグリさんの後を追うようにカサマツから
ネタバレ
この作品の北原穣トレーナーは元ネタの一人と言われているアンカツの愛称でお馴染みなあのトップジョッキー成分多め。