魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る   作:kadochika

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3.14.結合の解除

 限局核レーザー砲(ガンマ・ガン)が、照射された。

 変形した肩装甲の内部で生じた小規模な核爆発からガンマ線が抽出、収束され、不可視の致死光線となって平原を薙ぎ払う。

 直撃を受けた下級悪魔たちが、一瞬で黒い灰になり、崩れ去っていく。

 平原に生育していた草本も遠くまで灰になっており、その危険さを思い知らせた。

 悪魔たちが、動揺したらしき動きを見せる。

 

『敵戦力半減。あとは通常兵器で――』

 

 その時、通信が入った。

 ファリーハからだ。

 

『アケウ、ディゼム! ホウセが押されています! どちらか、援護に来られませんか!』

「ディゼム、こいつらは僕が――」

「お前が行け。あっちには姫様もいんだろが」

「――!!」

 

 アケウはわずかに逡巡したが、すぐに意を決したようだった。

 

「すぐに片付けて戻ってくる!」

 

 白い鎧はスラスターを噴かせ、レール・スナイパー・ライフルと予備弾倉を回収してアールヴィルへと最大速度で戻っていく。

 一部の悪魔が飛び上がり、空からそれを追おうとした。

 

「プルイナ、追加の武器ができるまであとどのくらいだ」

『十時間ほど』

「それなしでこいつら全部、片付けねえとな」

『試算では可能です』

「よし――」

 

 その時、閃光が走った。

 強烈な衝撃を受けて、黒い鎧が夜空に舞う。

 

「――!?」

 

 しかも一度だけではない。

 二度、三度と立て続けに影が走り、追撃を加えた。

 

「く、何だ!?」

 

 動揺するディゼム。

 高速の衝撃が、立て続けに鎧を打ちのめしている。

 

「な、何だ……!? 悪魔が……!?」

『マッハ1に近い高速移動です。悪魔が異様な速度で動いています』

 

 エクレルの分析を、プルイナが補足する。

 

『恐らく、魔術によって身体を強化していると思われます。

 アウソニア周辺で戦闘した悪魔たちと比べ、速度や強度が異様に高い』

「速すぎだろ! がッ!? クソッ!!」

 

 お手玉のように弾き飛ばされ続ける、黒い鎧。

 それに巻き込まれ、下級悪魔たちも轢かれ、千切れ飛んでいるようだった。

 

『空中に退避します』

 

 プルイナが黒い鎧のスタスターを噴かせ、離陸する。

 飛行可能な悪魔がそれに追いつき、足に組み付いた。

 それでも鎧の推力なら、問題なく上昇できる――はずだった。

 

「重てえ!?」

 

 あまりの重量に、黒い鎧は引きずり落とされていた。

 土煙が上がり、ディゼムは衝撃にうめく。

 

「クソ、何なんだこいつら――」

『魔術による重力の異常ではありません』

 

 黒い鎧が次の方策を講じる前に、悪魔たちが次々とそこへ覆いかぶさっていく。

 

『重量に異常。恐らく質量を増加させる魔術を使ってのしかかり、こちらを圧壊させる作戦のようです』

「エクス・バレット!」

 

 指先の多目的射出孔から発射される破砕弾。

 しかし、質量と同時に密度も増しているのか、悪魔たちの表皮はわずかに削れるに留まった。

 悪魔たちは(うずたか)い山となって、なおも黒い鎧を押し潰そうとする。

 

『効果小。質量差でエネルギーが減殺されています』

「なら、コンデン……なんたら!」

 

 今度は掌から圧縮(コンデンスト)焼夷弾(プラズマ)が発射され、鎧を押し包む悪魔たちの一部に着弾した。

 破裂した射出用カプセルから燃焼剤が飛散し、悪魔たちへと着火する。

 激しい閃光が、山になった悪魔たちの隙間から、夜空へと漏れ出す。

 

「さすがにこれで焼かれりゃ、じっとしてられねえだろ!」

 

 ディゼムがそれを連射すると、炎は更に燃え広がった。

 悪魔たちはしばらく耐えていたが、3000度以上で激しく燃焼する焼夷剤の熱に晒され続けると、耐えきれなくなったのか離脱する者が出始めた。

 質量増加の魔術も解けたのか、黒い鎧にかかる重量が軽くなっていく。

 

『今です!』

「ぅおらぁぁぁぁッ!!」

 

 駆動系とスラスターに全エネルギーを集中し、黒い鎧は飛び上がった。

 折り重なっていた悪魔たちが、焼夷剤で燃えながら吹き飛ばされる。

 だがそれでも、まだまだ多数の悪魔が残っていた。

 プルイナが、状況を分析して言った。

 

『ごめんなさいディゼム。試算では可能と言いましたが、魔術で強化された悪魔は強力です。

 あなたも疲労しています。このままでは勝率は最大で3割ほどです』

「お前がいなきゃゼロだろうが。構わねえ、やるぞ」

 

 死ぬかもしれないとは、ファリーハから散々に念を押されたことだ。

 インヘリトから転移してくる前に、既に遺言状も書いている。

 

(本当に死んじまうとしたら、アケウたちには悪いが……!)

 

 ディゼムは半ば自棄になって、再び迫りくる悪魔たちに対して構えた。

 この得体の知れない連中に膝を屈し、黙って殺されるなど、到底認められることではない。

 

***

 

 うつ伏せで瓦礫に埋もれかけたホウセの上に、馬乗りになる悪魔。

 奪った真紅の槍を無造作に捨てて、彼女の頭から兜を引き剥がそうとする。

 

「ぐっ……!?」

 

 真紅の鎧ごしに、おぞましいほどの力が伝わってきた。

 このままでは彼女の首ごと、引きちぎられてしまうかもしれない。

 

「このっ――」

 

 痛みと同時、不快感が頂点に達する。

 

「私に……触るなぁッ!!」

 

 ホウセは激昂しつつも、うつ伏せだった自身の体を無理矢理に跳ね上げた。

 わずかに態勢を崩した悪魔の下から抜け出て、全身で横に転がりつつも姿勢を回復する。

 

「疾く、戻れ!」

 

 真紅の槍を手元に戻し、構える。

 余波の大きな攻撃魔術で範囲攻撃を試みたいところだったが、すぐ側に冬の館や宮殿のあるこの状況では使えない。

 その上、首筋がひどく痛んだ。

 

(今のは危なかった……!)

 

 異様な膂力と運動力を備え、ほとんど姿の見えない悪魔。

 これ以上、単独で対処するには厳しい相手だった。

 彼女は集まってきていたアールヴの兵士たちに告げた。

 

「ここは任せて、女王様と避難民を守って!」

「わ、わかった……!」「気をつけろよ!」

 

 彼らは武器を構えつつ、ためらいながらも後退してくれた。

 言っては悪いが、悪魔の攻撃を防げない者が加わっても、死者が出るだけだ。

 悪魔の気配を捕らえつつ、真紅の槍を構え直すと、

 

『ホウセ、聞こえますか』

「!」

 

 通信が入った。

 ファリーハの声だ。

 

『アケウが助けに来てくれるそうです。それまで、何とか耐えてください』

 

 ホウセの劣勢を、どこかから見ていたのだろう。

 ありがたいことだったが、気がかりもあった。

 

「ディゼムは? 一人で大丈夫なの……?」

『非情なようですが、東はアールヴたちも守っています。今は冬の館に近いこちらを優先します』

「……!」

 

 アケウがたどり着くまで、どれだけ時間がかかるか。

 そこに、再び飛びかかってくる気配。

 それに対して身構えると、横合いから閃光が走った。

 どごん、と鈍い爆音が響き、悪魔の気配が反対側へと吹き飛ばされるのがわかる。

 誰かの魔術か。

 何が起きたのか理解できないでいると、眼の前の暗闇から、白い鎧が現れた。

 弱い照明に照らされた宮殿の中で、彼女はそれを、一瞬幽霊かと誤認した。

 

「ホウセ、大丈夫かい?」

「あ、アケウ……そうか、透明になれるんだっけ」

『あぁ、あとは任せろ』

 

 そういえばフンババと戦っていた時も、彼らは鎧を透明にして見えない射撃を回避していた。

 エクレルが、外部スピーカーで説明を続けた。

 

『あの悪魔の光学迷彩だが、可視波長外の電磁波や音響探査には効果がない。こちらが優位だ。

 あとは任せて、アールヴと避難民たちを守ってくれ』

「う、うん」

 

 残念ながら、彼女も足手まといになるようだった。

 ホウセは周囲に他の悪魔が潜んでいないかどうか気を配りつつ、冬の館の方へと下がった。

 

『熱電・色覚迷彩、最大レベル』

 

 彼女の後退を確認すると、エクレルは再び、白い鎧の迷彩を起動した。

 装甲の表面で光を回折させ、あらゆる方向から透明になる技術。

 悪魔の使っている魔術のそれとは違い、全ての波長の電磁波の回折が可能だ。

 また、マイクロ波レーダーと音響定位で、彼女たちは暗がりの中の悪魔の、位置と姿を確認していた。

 つまり、白い鎧は悪魔からは見えず、逆に一方的に位置を捕捉できることになる。

 だが、それでは不十分だった。

 自分たちより劣る迷彩とはいえ、無効化しておくに越したことはない。

 

『アケウ、まずは見やすくするぞ』

「ああ!」

 

 白い鎧は透明になったまま、悪魔ヒュメノに向かって右手を構える。

 

「キル・マーカー、行使!」

 

 鎧の指先の多目的射出孔から、ペイント弾が連続発射された。

 直径3ミリメートル程度のそれは、悪魔に当たって弾け、粉状の塗料を撒き散らす。

 

「む!」

 

 ピンクと黄の蛍光塗料で着色されて、悪魔が姿を表した。

 

『組み付け!』

 

 エクレルの合図で、白い鎧がスラスターを噴かせて突進する。

 透明なまま、一足飛びに瓦礫を超えて、悪魔ヒュメノに肉薄――

 そして蹴りを見舞うと、悪魔は大きく吹き飛んだ。

 吹き飛ぶ悪魔に追い打ちをかけるように、白い鎧はレール・スナイパー・ライフルを連射した。

 電磁誘導で極超音速に加速された弾体の放つ轟音が、夜のアールヴィルにこだまする。

 塗料まみれになった悪魔に弾体が命中するが、これは体から伸びたヒレ状の器官を射抜くにとどまった。

 ヒュメノはその威力を察し取ったか、遮蔽物に隠れて距離を取ろうとする。

 アケウはすかさず、その後を追った。

 透明になったままなので、傍からその姿を見ることはできなかったが。

 一方の悪魔は、ダメージにうなっていた。

 

「ぐうぅ……!」

 

 呪文を唱え、悪魔は魔術を行使する。

 

「風よ、(そそ)げ」

 

 魔術の作用で、体表から塗料が洗い落とされた。

 アケウは構わず、スラスターで空中に浮きあがり、レール・スナイパー・ライフルの照準を付ける。

 

(防御ごと砕く――!!)

 

 だがその前に悪魔が動き、白い鎧に向かって素早く呪文を唱えた。

 ヒュメノには白い鎧は視認できていないはずだったが、しかし。

 

「鎧よ、(ほど)けよ!」

「っ!?」

『!?』

 

 魔術によって、アケウどころか、エクレルにすら意外な事態が起きた。

 白い鎧の装甲や関節部分の結合が、解除されたのだ。

 アケウの身体から白い鎧が剥がれ落ち、彼は墜落した。

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