魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る   作:kadochika

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6.2.地底の人湖

 商店街の路地を曲がった奥、やや目立たない店構えの定食屋。

 席の数は少ないながらも個室になっており、ファリーハはゼギの工房を借りる時、よくそこで食事を取っていた。

 店主から紹介された店で、彼女も気に入っている。

 だが、異性と二人きりで入るのは初めてだ。

 正確には、人を連れて入店すること自体が初めてだった。

 

(考えてみれば、わたくしという人間は会食を除けばここ数年、一人で食事を取ることが多いのでした……)

 

 それがどういった風の吹き回しか、異性の部下を連れて食事処に入るなどという真似をしている。

 注文の料理が届くまでの間、彼女は落ち着かず、店内を見回していた。

 特に変わったところはない。

 それを気遣ってか、対面に座ったアケウが口を開く。

 

「殿下、あのゼギさんの所ですが、いつから出入りされているのですか?」

「え、あっ……そ、そうですね……」

 

 (やま)しいところを突かれているわけでもないのにしどろもどろになる自身を恥じつつ、彼女は答えた。

 

「えぇと……七年前になりますね。ゼギの店は、実家の刃物の調達先になって長いので……

 わたくしが刃物を作ってみたいと言い出したのを聞いたお父様が、紹介してくださって……」

「それから、あそこの工房でナイフを?」

「そうです。材料を売って頂いて、内弟子のような扱いで、時折機材を借りています」

「差し出がましいのですが、お怪我などはされていませんか?」

「あぁ……最初のころは迂闊に切り粉に触って指を切ったりしましたね……

 今は問題ないと思いますが、油断は怪我に繋がりますし、気を付けたいところです」

 

 ファリーハはそこで、自身の緊張がほぐれてきたことに気づいた。

 そこで、口にする。

 

「あの……言いづらい時は言ってくださいね? わたくしも聞きたいのですが……

 ……アケウは何か、休みの日に自分の楽しみをすることはあるのですか?」

 

 すると彼は答えて、言う。

 

「そうですね、あまり大掛かりなことはしませんが……

 強いて言えば、料理ですね。今日買ったナイフも、早速試してみようかと」

「あっ、あの」

「はい?」

「そ……その、あなたの買ったナイフなのですが……」

 

 彼女は事情を話した。

 自分の作ったナイフで売り物になると判断されたものを、店主に頼んで店に並べてもらっていることを。

 言葉に詰まらないよう気を張りつつ、更に訊ねる。

 

「それがわたくしの作ったものだと、誰かから聞いたのですか……?」

「いえ、僕がこれを選んだのは、申し訳ないのですが……

 単純に柄の色が白い鎧に近かったからですね」

「あ…………」

 

 単なる、偶然。

 ファリーハは安堵のような落胆のような、複雑な心地に陥った。

 だが、アケウは続けて、

 

「でも、僕が殿下の御作を選んだのは、きっと偶然じゃありませんね。

 運命っていうものがあって、それがそういう仕掛けになっているのなら、嬉しいと感じます」

「そ、そうですね……わたくしも、その……」

 

 そこに、料理が到着する。

 

「お待ちどうさまです、海のコシャリと羊肉のダールライスです」

 

 二人の前に届いた皿は、魚介や香辛料の香りで食欲を刺激した。

 ファリーハは出かけていた言葉を引っ込めて、提案する。

 

「い、いただきましょうか」

「そうしましょう。いただきます」

「いただきます」

 

 二人はスプーンを手に取って、料理に手を付け始めた。

 ダールライスを口に含むと、香辛料の旨みと辛みが口の中に広がる。

 だがそれが何かの引き金になったか、彼女はふと、忘れていた重要な事を思い出してしまった。

 

(そういえば……会計はどうしましょう!?

 わたくしが払ってしまって大丈夫……!?)

 

 結果だけ記せば、支払いは給料が余っていると主張するアケウの顔を立てることとなった。

 

***

 

 150年ほど、前のことだ。

 地の底から、怪物の軍勢が現れた。

 怪物は、人々を輝く石ころに変えて食らっていった。

 対抗しようと戦った者たちも、次々と敗れ、同じ末路を辿った。

 悪夢のようなその報せを、当時の人類は魔術で遠くへと伝えていった。

 

「怪物だ! 怪物が人間を襲っている!」

「軍隊でも勝てない! 銃は効かない、魔術師も足りない!」

「逃げろ! 遠くへ逃げろ!」

 

 怪物たちは『()』と自称していたとされるが、人類は彼らを、神話から引用して悪魔と呼んだ。

 悪魔に太刀打ちできなかった人類は、目を疑うような勢いで、地上から駆逐されていった。

 逃げる他に生き延びる手段はなく、しかし逃げ場も限られていた。

 結果として生き延びることができたのは、本当に一握りの人々だった。

 地下へと領土を拡大する試みを応用し、一部の人間たちが小さな地下世界へと逃げ延びたアウソニアの人々。

 またある地域では、幻の種族アールヴの庇護下に入り、魔術による冬眠を続けることとなったガスターデンの人々。

 悪魔たちによって家畜化されながらも、命脈を保ったマフの人々。

 あるいは、霊峰に入り口のあった異空間へと逃れた、後のトラルタの人々。

 そして海へと船団を繰り出し、孤島に辿り着いたインヘリト王国。

 だがここに、それらとは全く異なる手段で、悪魔から逃れた人々がいた。

 それが、メイエだった。

 天然の洞窟が多く口を開けたその地には、悪魔から逃れた人々が、しかし他の行き場もなく集まっていた。

 

「エスコドゥス! この洞窟にも、悪魔の軍勢は近づいている!

 早く教えてくれ、確実に生き延びる方法というものを!」

 

 集まった避難民たちに問われて、年老いた魔術師・エスコドゥスは尋ね返した。

 

「人々はどのくらい集まった?」

「四万はいるが、これ以上は集まりそうにない」

「ならば、実行に移そう。悪魔の目を逃れる、一世一代の大魔術を」

「どのような魔術なんだ?」

「その名も、液化合一(テミクシス)。我らは悪魔の目を逃れ、悪魔が地上から去るまでの間、人間であることを止める……!」

「何だと……!?」

 

 そして、魔術が発動した。

 洞窟に仕掛けられていた多数の魔術紋様が起動して、避難民たちを液化し始める。

 

「……!?」「な――!?」「――っ!?!?」

 

 無数の人間が言葉を失い、ぱしゃり、ぱしゃりと液化して洞窟にこぼれ落ちる。

 人々は透明な液体になって、低い所へと流れて行った。

 それを見た、まだ人の形を保っている避難民たちが、老魔術師に問う。

 

「何だ!? 何をした、エスコ――」

 

 だが、彼らも次々と形状を失い、先に液化した人々の後を追う。

 エスコドゥスは、自らも人間の形状を失いながら、ひとりごちた。

 

「説明したところで、同意は得られまい。

 我らはこれより一時、完全に人間としての姿を失って、悪魔の目を(くら)ます。

 悪魔が地上からいなくなるまで、幾百幾千……いや、何万何億年であろうと、待つのだ。

 今は、それしかない――」

 

 そして彼自身もまた液体と化して、人間の川へと合流した。

 液化した人々は地底湖となって、メイエの地の底によどみ続けた。

 元々あった水と混ざり合うことも、蒸発することもなく、そこに彼らは150年の間、自らを(たた)え続けることとなる。

 

***

 

 悪魔は人間を、何によって探知しているか?

 悪魔が攻め寄せた際、それを知ることが強く求められた。

 最初はまず、視覚であるという認識があった。

 確かに下級悪魔ダフニアには単眼があり、行動を観察すれば、それで人間の動きを捉えていると理解された。

 だが、中級以上の悪魔においては眼球らしき器官が全く観察できない個体も多く、これが反証となった。

 ならば、悪魔が探知しているのは人間の帯びている魔力であろう、とする説が出た。

 これは有力視されたが、実証することはできなかった。

 どのような人間でも――新生児すら、人間ならば魔力を持っている。

 このため、“魔力を持たない人間を、悪魔は無視するか?”といった実験が成立しなかった。

 アールヴやネッキーといった、魔力を扱いながら悪魔の標的とならない異種族と協力して実証する機会があれば、何か分かったかも知れない。

 だが、結局のところそれは起こらないまま、人類は旧世界から駆逐されることとなった。

 魔術師エスコドゥスによる人間の液化・合集(がっしゅう)は、それを実証しようとする試みの一種だったと言える。

 人間を水に似た特殊な液体に変換し、悪魔に魔力を持つ人間だと悟られないようにしてしまう。

 果たして試みは成功し、メイエに誕生した地底湖に対し、悪魔は欠片ほどの興味も抱かなかった。

 このまま悠久の時をやり過ごして生きていくのかと、彼らが思い始めたその時、そこに、二人の旅人が訪れた。

 

「ここか」

 

 そこは、地上に生じた穴が地底湖へと繋がり、彼らが湖面を天に覗かせる唯一の箇所だった。

 旅人たちは真紅の鎧をまとっており、崖を軽々と降りて、湖面へと近づいてくる。

 そしてその湖畔に降り立つと、鎧はリボンのように解けて、その中の魔術師の姿が露になった。

 彼らは一人の悪魔と、一人の人間だった。

 悪魔は人間に近い背格好をしているが、角や肌の様子から、人間でないことは明白だ。

 悪魔は湖畔に屈んで手を伸ばし、湖水に浸す。

 すると、メイエの人々は液体になったまま、それらを感じ取ることができた。

 

(何だ……)(悪魔か……)(ついに見つかったのか……)

 

 悪魔に知られたのならば、液化して魔の手を逃れた彼らも、覚悟すべき時が来たのか。

 そう考えた人々へと、思念が届く。

 

(聞こえるか……俺の名はエリカレス。

 俺は“魔”だが、あなた方に危害を加える意思はない)

 

 メイエの人々は、それを聞いて思案した。

 個々の意思の境界が薄れつつあったので、もはや彼らのことはメイエ、と呼ぶべきか。

 

(悪魔だが、人間に危害を加えない……?)

(そうだ。鎧の機能で、あなたたちが魔力を帯びた湖だと分かった。

 人間たちの残した文献を漁り、人間たちが隠れるならばどこに向かうかと考えていたが、まさかこのような方法を、本当に実践するとはな)

 

 メイエは、考えた。考えたことはそのまま、悪魔・エリカレスに伝わるようだった。

 

(他に方法はなかった。あの時はあれが、最善だった)

 

 それはあるいは、メイエの水に溶け込み混ざったエスコドゥスの思惟の名残だったかも知れない。

 エリカレスは再び、メイエに対して思考を伝えた。

 

(気に病むことはない。我々は、地上に生き残った人類の社会同士を連絡させようと試みている。

 あなた方も、形を変えたりとはいえ、心を持った人類の一つの姿だ。

 連絡に参加する意思はないか?)

(……他にも生き残った人々が?)

(いる。地下や異空間に逃れたり、恐らくはアールヴの庇護を受けたりといった手段で、生き延びている)

(…………我々は、このように異形の姿になってしまった。

 彼らは我々を恐れたり、軽蔑したりしないだろうか?)

(直接出会う必要はない。魔術は使えるか?)

(む……このようにだろうか?)

 

 メイエはそこで、湖水に小さな渦を起こしてみた。

 それを見たのか、エリカレスが再び問う。

 

(魔術で紙に、文字を書くことは?)

(やってみよう……)

 

 エリカレスが荷物から紙を取り出し、湖面に触れさせたのが分かると、メイエは魔術を行使した。

 五万人分の魔力が宿っているメイエにとって、細かい魔術は簡単ではなかったが、慣れるのは早かった。

 

(我ら、ここにあり)

 

 そう書いて、署名を結ぶ。

 エリカレスは紙を湖面から取り上げて――メイエの意思か、紙は濡れていなかった――、彼らに礼を言った。

 

(ありがとう、メイエ。これからは期間は少し開くが、我々は今後もこうして訪れる。

 次は、他の地域の人々と書簡を交換して欲しい。

 また、何か気になることが起きたら教えても欲しい)

(……いいだろう。どこか、寂しさが紛れたように思えて、我々は嬉しい)

(それと、彼女は弟子のホウセ。人間だ)

 

 彼がそう告げると、もう一つの感覚がメイエに触れてきて、こちらは人間だと分かる。

 

(よろしくね、メイエ!)

(よろしく、ホウセ)

 

 そのようにして彼らは出会い、別れた。

 それがエリカレスとの最後の別れだとは、メイエにも分からなかったが。

 その後、メイエを訪ねる者はホウセだけになってしまった。

 メイエは彼女に慰めの言葉をかけ、共に合一しないかと誘った。

 だが彼女はそれを拒み、旅を続けると告げた。

 メイエは一抹の寂しさを感じつつも、彼女を介して他の地域と書簡の交換を続けた。

 そうして、十年ほどが経った頃。

 

***

 

 ホウセは半年ぶりに、メイエを訪れた。

 いつもは地上の森を歩いて悪魔から隠れながらだったが、今回は鹵獲した隠れ身の衣を使っている。

 また、熱電・色覚迷彩を使用して透明になった白い鎧をまとったアケウを連れて来ていた。

 トラルタでも行った、先行偵察のようなものだ。

 彼女たちは今回は、ファリーハなどの乗った保護セルを置ける場所があるかどうか検証する目的で来ていた。

 二人は大地にぽっかりと口を開けた穴を降下して、その底に広がる地底湖へと近づいて行った。

 白い鎧から、エクレルが通信を介して分析する。

 

『大気成分問題なし。アケウ、魔眼で何か見えるか?』

「湖面がぼんやりと光っているように見える。魔力かな。

 ただの水じゃなさそうだ」

 

 白い鎧の中のアケウがそう述べると、エクレルは信じがたいといった様子でホウセに問う。

 

『本当にあれが、人間が合体してできた湖だというのか、ホウセ』

「あたしも当時のことは知らないから、本人たちがそう言ってるのを受け入れてるだけだよ」

『魔術のことならば、もう何が起きても驚くまいとは思っていたが……

 これだけの体積になるとしたら、一体何人の人間が融合していることか。

 人数は聞いていないのか?』

「あたしは訊いたことなかった。まぁ、実際に聞いてもらうのが早いと思うよ。

 こっちに岸があるから」

 

 彼女は高度を下げて、普段からメイエに接している岸辺に降り立った。

 ホウセは普段、ここに立って彼らとのやり取りをしている。

 アケウが白い鎧と共に降下すると、スラスターの推力で湖面が波を立てた。

 

「あ、これまずいかな!?」

「大丈夫だと思うよ、あんまりうるさくなければ」

「分かった……!」

 

 彼もスラスターの推力を切って、足場になっている岸辺に着地する。

 その音が縦穴に反響するが、すぐに消える。

 

「…………」

 

 メイエに再び、沈黙が訪れた。

 それを破って、ホウセが言う。

 

「今から、メイエと話すよ。音は聞こえないと思うけど」

 

 彼女は真紅の鎧を着たまましゃがみ込んで、湖水に触れる。

 すると、いつも通りに思念が流れ込んできた。

 

(こんにちは、ホウセ。また来てくれたのか)

 

 メイエの“声”だ。

 彼女も念じて、メイエに返事をする。

 

(こんにちは、メイエ。調子はどう?)

(変わりない。今日はもう一人いるようだね)

(うん。紹介するから、ちょっと待っててね)

 

 ホウセは湖面から手を離して立ち上がり、アケウに呼びかけた。

 

「アケウ、手で湖水に触ってみて。エクレルも。

 異世界の鎧がメイエと通じ合えるのか分からないけど」

「わかった」

 

 右手の籠手を外し、アケウが素手を露にすると、白い鎧はしゃがみ込んだ。

 ホウセ同様に右手を湖水に浸すと、アケウが驚くのが分かる。

 

「……!!」

「どう?」

 

 彼は湖水から手を離して、所感を口にした。

 

「今、メイエと挨拶をした……すごいな。

 何だかここには、ものすごい数の人たちが溶け込んでるみたいに感じる」

『当機は何ともない。アケウの脳の活動の変化は計測できるが、やはり魔力とやらを扱えないと、この湖と意思疎通をするのは難しそうだな』

 

 エクレルがそう言うと、ホウセは腰に下げた袋から、書簡を取り出した。

 インヘリト国王の名義で書かれており、内容はメイエに対する質問状と、インヘリトから要請したい内容をまとめたものだ。

 そしてそれを湖水に沈めると、メイエの湖面に波紋が広がる。

 ホウセには自身の手を通して、メイエが書簡の内容を読み取っているのが分かる。

 

(む……残念だが、我々にできることは多くない。

 魔力こそ五万人分を持つが、この身を以てどこかに移動することはできないだろう。

 悪魔と戦うことについても、出来ることなら避けたいと思っている)

「あなたたち、元に戻りたくはない? 人間の姿にさ」

 

 提案する彼女に、メイエは少し迷ったように間を置いて、返答した。

 

(…………そう希望する意思も、我々の中には残っているが)

「転移のネットワークで各国の魔術師を集めて、そういう研究をしようっていう動きもあるんだって。

 あなたたちも色々知ってるから、参加できればいい知恵が浮かぶかも?」

(それは魅力的な考えだ……)

「じゃあとりあえず、返事を書いてね」

 

 ホウセはそう言うと、湖水に沈めた書簡を引き上げた。

 植物紙であるはずの書簡は、濡れて変形するといったこともなく、乾いたままだ。

 それを見てか、アケウが言う。

 

「本当に、ただの水じゃないんだね」

「あたしも詳しいことは分からないけど」

 

 そう答えて、ホウセが白紙の書簡を湖水に沈めると、そこにひとりでに文字が書かれていく。

 数分もすると返信の書簡は完成し、ホウセがそれを引き上げる。

 アウソニアの理事会長宛、アールヴィルの女王ムア宛、トラルタの書記官長エシア宛、そしてインヘリトの国王宛だ。

 白い鎧から、エクレルが尋ねる。

 

『空を飛んでいるとかいう、ウィッシェルの分はいいのか?』

 

 ホウセは書簡を折りたたみつつ、答えた。

 

「……受け取ってもらえたこと、無いからさ。

 次はあなたたちがいるから、ちょっと反応も違うかも知れないけど……

 それより、保護セルを置く場所、やっぱりなさそうじゃない?」

 

 彼女は周囲を見渡して、所感を口にする。

 エクレルが答えて、

 

『保護セルは水に浮く。湖水に浮かべてもいいかどうか聞いてみてくれ』

「変なもの垂れ流さなきゃ大丈夫だと思うけど……まぁ聞いてみるね」

 

 彼女たちはメイエに了解を取り付けた後、しばらく周辺の地形を探索した。

 予定では、このあと再び、今度はディゼムとファリーハも伴って訪れ、正式にメイエとインヘリトの間の関係を、相互に確認することとなっている。

 その時、エクレルが白い鎧から警報を発した。

 

『そこまでだ、お前たち。ドローンが遠方に下級悪魔の群れを捉えた。

 撤収する』

「分かった」「了解! じゃあまたね、メイエ!」

 

 二人は再び透明になって空中に上昇していった。

 その姿を目撃した者はいなかったはずだが、その後、ここにたどり着いた下級悪魔が一人、足を滑らせて湖水に落ちた。

 下級悪魔の力では、この縦穴めいた地形を登ることもできまい。

 万が一助けを呼ばれて、他の悪魔がここへやってきても厄介だ。

 メイエは湖水の比重を高めて下級悪魔を底に沈め、分解してしまった。

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