魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る   作:kadochika

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7.10.着装者の提案

 魔術炉区画からウィッシェルの外底へと飛び出し、異世界の鎧は海抜高度約二万メートルを飛行する。

 ウィッシェルの直径は約11キロメートル、鎧の推力ならば五秒で横断できる大きさだ。

 十二基あるという浮力発生装置は、別の部品が埋め込まれたような形状になっているので、すぐに判別できた。

 そこに向かって、ディゼムとアケウはそれぞれの鎧の限局核レーザー砲(ガンマ・ガン)を起動する。

 腕部装甲が変形して砲身となり、肩装甲の内部で小規模な核爆発を生成する準備が整った。

 しかし、それを黙って待つ魔王ではなかった。

 

『接近警報』

「うぉっ!」

 

 彼らを狙って放たれる多数の火線を、鎧たちはスラスターを噴かせて回避した。

 それはウィッシェルに配備されていたロボットや、飛行機械の群れからのものだった。

 魔王が、融合したウィッシェルのシステムを通じて操っているのだろう。

 更には生き残っていた悪魔たちも飛来して、ディゼムたちに向かって魔術を浴びせかける。

 遠ざかってそれを回避する彼らに、黒い鎧の中からプルイナが警告した。

 

『二人とも、注意してください。ウィッシェルはインヘリト王国まで、あと一時間ほどで到着します。

 この高度では、インヘリトはまだ水平線の向こうに隠れていますが』

「まずいどころじゃないな……!」

 

 魔眼でインヘリトが水平線の向こうに見えるのだろう、白い鎧の中でアケウがうめいた。

 彼らは群がる悪魔を回避しつつ、強引に限局核レーザー砲(ガンマ・ガン)の照射準備を行い、そして行使する。

 

「照射――」

 

 だが、不可視のガンマ線レーザー――着装者たちには、鎧による視界の補正で射線が見える――はウィッシェルに着弾する前に、見えない壁に阻まれた。

 ウィッシェル本体には、損傷を与えられていない。

 

「何だ……!?」

『魔術による障壁と推測します』

 

 プルイナがそう言うと、白い鎧の中でアケウが提案した。

 

「なら、あれを使うしかない……!!」

『作ったばかりで早速使うことになるか……まぁいいだろう』

 

 エクレルが、呆れたように言う。

 ()()とは即ち、鎧に内蔵された切り札のことだ。

 黒い鎧から、プルイナがアナウンスした。

 

『では、早速始めましょう。QGPコア解放、砲身展開』

 

 飛行機械による射撃、悪魔たちによる魔術の攻撃を回避しながら、黒い鎧と白い鎧の胸部装甲が変形する。

 内部のディゼムとアケウも、緊張を高めつつ身構えた。

 

『熱量・圧力充填、防熱膜展開』

 

 胸部から突出した砲身を除き、機体全体が耐熱ジェルに覆われる。

 

『発射準備完了。運動補正、照準固定』

『着装者に発射を任せる』

 

 タイミングを委譲され、ディゼムは共に戦う親友に呼びかけた。

 

「アケウ、三つ数えるぞ!」

「分かった――三!」

「二!」

「一!」

「今ッ――」

 

 黒い鎧と白い鎧の内部から、極超高温・極超高圧状態にあったクォーク・グルーオン・プラズマが投射された。

 (てん)()(かい)(びゃく)の光が天空に閃いて、魔王に奪われた空中都市へと殺到する。

 そして着弾、爆発。

 やはり大気が希薄な高度なので、その膨大なエネルギーのほとんど全ては、光と放射線に変わる。

 それは圧倒的なエネルギー量で魔術障壁を貫通し、巨大な気圧差に耐えるウィッシェルの外殻を、一瞬で溶融させる熱量が炸裂した。

 閃光が収まると、気化した金属や熱分解された機能性高分子が雲のようにウィッシェルを覆っているのが見える。

 そしてそれを突き抜けて突き進んでくる、半壊したウィッシェル。

 エクレルが白い鎧のセンサーで、危害状況を計測した。

 

『効果観測、ウィッシェルは構造体の約36%を損壊。悪魔の数も半減したが――』

「魔王はまだ生きてる!」

 

 エクレルが、白い鎧の中のアケウの視線を検出する。

 そこには熱で半壊したウィッシェル、そしてその断面が見えた。

 巨大な口で齧り取られたかのようだ。

 中央にある魔術炉が露出しており、そこには上半身を突き出した魔王の姿もある。

 しかし彼女はなおも、勝ち誇ったように笑っていた。

 

「残念だったな! 障壁を集中すればこれしきのことで!」

 

 大きな痛手は与えたが、しかし、ウィッシェルの高度は落ちていない。

 鎧たちは彼我の戦力差を分析し、着装者たちに伝えた。

 

『QGPコア、残量2.1%……残念ですが、次はこれほどの威力にはなりません』

『ウィッシェルは半分程度になったが、速度が上がった。推定質量、残り約2200億トン』

『ならば、最後の手を打ちます。二人とも、右一番スロットからカプセルを取り出してください』

 

 すると、それぞれの鎧の右わき腹の格納スロットが開いて、そこから筒状の物体が顔を出す。

 

「これか?」

 

 ディゼムとアケウがそれらを取り出して握ると、先端には宝玉のようなものが取り付けられていた。

 黒い鎧は赤、白い鎧のそれは緑だ。

 

『マイクロ魔術紋様析出』

 

 更に黒い鎧と白い鎧が、それぞれマイクロサイズの微細な魔術紋様でびっしりと全身を覆う。

 

『二人とも、相互の距離を開けろ。五百メートル程度だ』

「分かった」

 

 ディゼムとアケウが互いに離れると、更にプルイナが指示する。

 

『二人とも、カプセルのスイッチを押してください』

「おう」「こう?」

 

 彼らがその通りにすると、一瞬周囲に赤と緑の閃光が迸り、鎧の体積と質量が激増した。

 身長約200メートル、質量約50万トン。

 巨体を得た彼らは、しかし戸惑った。

 

「何だ、これ!?」

『アウソニアに出現した悪魔の、巨大化する魔術を再現しました。

 効果は限定的ですが、これである程度、魔王に対し質量面で対抗できると判断します。

 ガンマ・ガンなどの威力は変わらないので、この状態では使用を推奨しません』

 

 プルイナが黒い鎧の中でそう言うと、アケウが提案する。

 

「ディゼム! 僕が押しとどめるから、君が叩いて!」

「分かった!」

 

 応じて、ディゼムは黒い鎧と共に急上昇した。

 アケウは白い鎧と共にウィッシェルへと突進して取り付き、背中とふくらはぎ、肘のスラスターを全開にして軌道を妨げる。

 

「止まれぇッ!!」

 

 一時的に一万五千倍近い推力を得た白い鎧は、魔王と融合したウィッシェルの進行に拮抗した。

 魔術炉から上半身を突き出した魔王が、うめく。

 

「ぐ、小癪ッ……!!」

「落ちやがれぇッ!!」

 

 その間に、更に高度を上げていた黒い鎧が、高度三万メートルから急降下した。

 ディゼムは足先に魔力を込めて、ウィッシェルの残った部分へと極超音速の蹴りを叩き込む。

 魔術障壁を貫通し、爆撃じみた一撃が天空都市へと直撃した。

 残った円蓋を破砕し、巨大な都市の形状を維持するための支持構造に致命的な一撃が加わる。

 インパクトの瞬間に衝撃波を爆発させることで、黒い鎧は真下へと貫通することなく、衝撃エネルギーを都市構造全体へと伝えることができた。

 核やQGPカノンによって加えられた度重なる熱によって劣化していたウィッシェルは、残った部分に亀裂を生じ、バラバラと崩落していく。

 

「おっ、おのれぇッ!!」

 

 歯噛みする魔王。

 そこへ更に追撃を加えるべく動こうとした時、ディゼムたちは急速に、元の大きさへと戻ってしまった。

 

「あれ!?」

『我々の再現魔術ではこれが限界のようです』

「でも、効果は充分にあったね……!」

 

 一度ウィッシェルから離れて、二人は合流する。

 住民を失ったウィッシェルは完全に崩壊し、空中に残っているのは魔術炉と融合した魔王だけとなっていた。

 魔術炉から直接浮遊の魔術を生み出して、空中に浮いているのだろう。

 魔王の怒声が、魔力に乗って聞こえてくる。

 

「貴様らぁッ!」

 

 都市という膨大な質量を失い、大きな痛手を与えた――はずだったが。

 しかし魔王は、魔術炉と共に、今度は彼らのすぐ近くまで魔術で転移してきた。

 

「うぉッ!?」

 

 不意を突かれ、ディゼムとアケウは魔術炉から突出してきた黄金の髪束に絡め取られてしまう。

 それどころか、二人は鎧ごと、魔術炉の外壁の中へと、吸い込まれるように取り込まれてしまった。

 

「ヤベ――」「何が……!?」

 

 二人が思わず狼狽すると、鎧たちが答えた。

 

『極めて魔術的、超自然的な現象が起きています。十分な解析ができません』

『だが、高密度の魔力を周囲に感じる。推測するに、魔術炉の中の筈だが』

「魔王と融合した魔術炉の中ってことは、奴の腹の中ってことか……!?」

 

 ディゼムが尋ねると、プルイナが再び答える。

 

『そうした解釈も可能かも知れません。

 現在、魔術的脅威が本機と白い鎧を侵食しています。

 魔術抵抗で防御していますが、メイエの加護のあった先代機ならともかく、今の本機では長く持たないかも知れません』

「クソ、俺の魔術抵抗はどうなってる!?」

『魔術的脅威は我々だけに作用しています。あなた方の魔術抵抗は、今のところ意味を成しません』

「プルイナたちをどうにかしてから、無防備になった所を食うってところか……!?

 このッ!」

 

 ディゼムは手に持っていたはずのレール・ライフルを撃つが、手応えがない。

 プルイナが補正しているが、それでも視界は暗黒で、周囲に何があるのかもわからない状況だ。

 

「プルイナ、諦めんな!」

『諦めてはいません。試行錯誤していますが、状況が不透明です。

 エクレルや保護セルとの超空間通信も繋がらない状態なので、トラルタに閉じ込められた時と状況が少し似ていますが――#$%』

 

 彼女の説明を聞いていると、そこにノイズが混じった。

 

「ん……!? プルイナ、どうした――」

 

 &’(。

 ディゼムの思考にも、意味の分からないノイ=~|;+*}混じ<#”|

 

 ⇔‰∋ы※¥^――――

 

***

 

 魔術によって、異なる世界から生きる物、あるいはそうでない物を呼び出すことができる。

 これを、同じ世界から呼び出す召喚と区別するため、異世界召喚と呼ぶ。

 異世界召喚が成立するためには、当然ながら二つ以上の世界が存在することが前提となる。

 また、異世界召喚という概念の対になる、異世界送還――即ち呼び出した相手を送り返す手段も存在した。

 これはまた同様に、元々この世界にあった存在を異世界に送ってしまうこともできる、ということを意味する。

 つまり、魔術によって別々の世界の間を往来することが可能なのだ。

 だが、これには莫大な資源を要する。

 資源の豊富な異世界へと攻め入って富を得た国が存在しないのは、そのような行為を実行しても大幅な赤字になることが分かっているからだ。

 それが原因で滅びた王朝も、過去の記録にはある。人間はコストの問題には勝てない。

 ならば、異世界へと行き来するというのは無意味な行為なのかといえば、そうではない。

 ごく少数を召喚するのならば、コストに見合うことがある。

 そこを突いたのが、インヘリト王国による救世主召喚事業であった。

 そしてまた、これは一つの可能性を示唆している。

 ごく少数の要員を送り込み、その要員が向かった先の世界で数を増やすことができれば、異世界への植民が可能となるのだ。

 問題は、そのような世界には既に、先行して植民を行った文明が成立している可能性が高いことだ。

 武力でそうした先文明を征服し、そしてまた次の世界へと異世界植民を行う。

 そうした生態を獲得した種――それが、悪魔種族だった。

 斥候を派遣して異世界の事情を確認した後は、魔王ただ一人がそこへ向かい、現地を征服する魔軍を生み出す装置となる。

 そしてそこから生まれた次世代の魔王が住民を資源として捕食し、それによって膨大な魔力を蓄え、また次の世界へと向かう。

 この繰り返しによって無数の異世界を征服し、勢力を拡大し続ける魔の種族。

 いつからそのような生態となったのかは、誰も知らない。

 しかしそれが、彼らの敵の正体だった。

 アケウは魔眼を通して、その歴史や経緯を垣間見ていた。

 

(ここは……魔王の体内なのか……

 いや、正確には、魔王と融合したウィッシェルの魔術炉の中……?)

 

 理由は分からないが、魔王の中の種族の記憶のようなものが、アケウの中に流れ込んできている。

 

(メイエの影響かな……見なくてもいいものまで見えてくる気がする……)

 

 また、やはり理由は不明だが、声が出せない。

 指先の一つも動かせない――正確な表現を期するなら、「動いているのかどうかも分からない」。

 女王ムアの時間魔術の作用でアケウが魔眼を得たように、魔王の魔力の波動によって先代の異世界の鎧が動作不能に陥ったように。

 あまりに強く濃密な魔力は、人体にも影響を及ぼすのかも知れない。

 

(どうしよう、エクレルの声も聞こえない……

 ディゼムたちはどうなってるんだ……?

 インヘリトに向かった殿下たちのことも気になる……)

 

 だがそこまで考えた所で、恐ろしい眠気――だと思えた――が襲ってきた。

 思考が無理矢理かき消されるような、有無を言わさぬ激しい虚無の感覚。

 

(どうして――)

 

 彼の意識が消えようとしたその時、黒い鎧が、彼の手をしっかりと掴んだ。

 

***

 

 物質化寸前の濃密な魔力の渦巻く魔術炉の中で、ディゼムは這いつくばりながら、白い鎧の側へと辿り着いた。

 鎧越しに彼の手を握り、呼びかける。

 

「起きろ、アケウッ!!」

 

 その声に対して白い鎧から、着装者に代わってエクレルが答えた。

 

『魔眼を通して、強烈な魔力の影響を強く受けているようだ。

 いくら電気ショックを与えてもまともな反応が無い』

「クソ、さっさと出るぞ!」

 

 ディゼムは魔力を集中した拳を引き絞って、足元へと打ち放った。

 しかし、炉の内壁は柔軟で、魔拳の威力を完全に吸収してしまう。

 

「そんなら……!」

 

 腕部装甲から取り出したハード・カッター改を握り、足元へと突き立てる。

 だが今度は、内壁がそれを強烈な力で押し戻してくる。

 恐るべき速度で再生しているのだ。

 

「ざっけやがって……だったらこれだ!」

 

 ディゼムは辺縁(フロンティア)収奪(エクスプロイション)装甲(アーマー)を起動し、内壁を分解して吸収しようと試みた。

 吸収しきれない分は、掌から破砕弾として発射して消費する。

 数秒ほど試みた所で、プルイナが警告した。

 

『吸収量を上回る速度で再生されています。このまま続けても無意味です』

「なら、ガンマ・ガンだ……!」

 

 腕部装甲を変形させて、ディゼムは限局核レーザー砲を放つ。

 が、やはり効果が見られない。

 

『ガンマ線が濃密な魔力で減衰した上、内壁にエネルギーを吸収されています。

 魔王がウィッシェルの住民から奪い取った魔力は、それだけの量があるのでしょう』

「また面倒くせぇもん作りやがったなウィッシェル人……!

 なら、転移の魔術紋様でどうだ!」

『……駄目です、描画するそばから塗料が吸収されています』

「ぐ、くそ……!」 

 

 ディゼムがうめくと、エクレルが白い鎧から言った。

 

『資料にはこんな機能の説明は無かった。魔王に取り込まれたことで得た特性なのだろう』

「おいアケウ、起きろ!

 魔眼でなんか、弱点とかわかんねぇのか!」

 

 だが、親友は起きない。

 実は深刻な状態なのではないかという考えが脳裏をよぎった時、彼らのいる魔術炉の中に、魔王の声が反響してきた。

 

「少しやかましいぞ? 貴様らはそこで大人しく吸収されて行け。

 余が最後に残ったヒトどもの国を食い尽くす有様を見せつけられないのが残念だがな、はははは!」

 

 彼女が魔術炉に力を込めて、内部の鎧たちを更に分解しようとした、その時だった。

 

「ぶぐッ!?」

 

 魔王が融合していた魔術炉の炉壁の一部が弾け飛び、爆散する。

 

「な、何だとォッ!?」

 

 動揺するワーウヤードの視界に映ったのは、その手を握って白い鎧をぶら下げた、黒い鎧だった。

 その中で、ディゼムが勝ち誇る。

 

「残りの全エネルギーでぶち破ってやったぞ、気色の悪りぃぶよぶよをなッ!」

『ディゼム、注意してください。本機は動力源を全て使い切り、今は不完全な魔術炉にあなたの魔力を取り込むことで動いています。

 出力制御は本機が行いますが、コアの残量が十分だった時のような性能は発揮できないと心得てください』

「あぁ、安いもんだ!」

「今もってなお、余を侮るか!

 後悔するがよいぞ……!」

 

 魔王は彼を嘲笑するが、破損した彼女の魔術炉が復元しようとうごめき始めた時、それは起こった。

 ずるり、と――大気が希薄なために音が立つことはないが――、巨大な魔術炉が魔王から分離・脱落したのだ。

 

「何だと!?」

 

 魔王は頭髪を幾束も伸ばして魔術炉に突き刺し、それを引き戻そうとするが、再び融合することは適わないようだった。

 

「なぜだ……!」

 

 黒い鎧の中で、プルイナがディゼムへと説明した。

 

『実は先程、三度目の魔術的ウイルスを作成し、魔術炉に感染させていました。

 先ほどまでは発症していなかったのですが、大規模な再生復元を行おうとしたために、症状が進行したようです』

『失敗したかと思って、黙っていたがな』

 

 白い鎧からエクレルが補足すると、その中からアケウが、うめくように口にした。

 

「魔王はあの大きな魔術炉の中で、魔力を増幅できなくなった……」

「目が覚めたか?」

「うん、ありがとう」

 

 ディゼムが気遣うと、彼は白い鎧のスラスターを噴かせて黒い鎧から少し離れた。

 

「全体の魔力はともかく、一度に放てる魔術の威力は下がってるはずだ。

 少しは、対抗できるはず」

 

 魔王は再度の融合を諦めたのか、放棄された魔術炉が海へと落下していく。

 ディゼムはその様子を見ながら、通信を介してアケウに提案した。

 

「俺が囮になって、お前が鎧の残りの全エネルギーで決める――ってのでどうだ」

「やってみよう……!」

 

 アケウも了承する。

 

「おのれ、面妖な技を……!」

「なら、行くぜッ!」

 

 忌々し気に吐き捨てる魔王に対し、ディゼムは黒い鎧と共に突撃した。

 レール・ライフルを連射しながら――残弾となる物質は払底しかけていた――、右腕のアダマント・タロンズを展開して振りかぶる。

 

「舐めるなよ、ヒトがッ!!」

 

 しかし魔王は魔術で転移し、黒い鎧の背後を取って組み付く。

 

「ぐぁ!?」

 

 漆黒の兜を後ろから引っ掴む彼女の右手に、虹色の魔力が集中していく。

 

「抵抗するか! ならばもっと苦しむがいい!!」

「こ、このクソアマァッ……!!」

 

 ディゼムとプルイナは、それぞれの魔術抵抗で魔王による魔石化に抗堪していた。

 ディゼム一人では、即座に魔石になっていただろう。

 彼は集中を維持しつつ、通信に向かって叫んだ。

 

「アケウ!! 俺ごと撃てッ!!!」

「――ッ」

 

 そこに、QGPカノンの照射体勢に移行していた白い鎧が、照準を向ける。

 

「させぬわ!」

 

 魔王はディゼムの魔石化に固執することなく転移して、白い鎧の背後を取った。

 そして黄金の髪束でアケウを鎧ごと串刺しにしようとするが、そこに下方から超音速で飛来した純白の盾――アダマント・シールドが、回転しながら魔王に迫った。

 ディゼムが仕掛ける前に分離して、独自の機動を取らせていたのだ。

 

「当たるかッ!」

 

 これも転移で回避する、魔王。

 だが、そこまでだった。

 

「そこだ!!」

 

 白い鎧がトリガー信号を送ると、白い鎧の胸部の砲身からクォーク・グルーオン・プラズマが放射された。

 魔眼で捉えた転移出現の予兆に向かって放たれた、必中の一撃だ。

 魔王は転移を終えた直後、その莫大な――先ほどウィッシェルに向かって放った威力の1/50程度だが――光熱に飲み込まれる。

 

「何だと――」

 

 だが、彼女はそれに、耐えた。

 

「く、味な真似を……!」

 

 しかも、それだけではない。

 光輝を放つ黄金の装束が、全身を覆う鎧へと変化している。

 

「だが威力は先ほどには遠く及ばんようだな。それが限界と見た!」

 

 黄金の鎧をまとった魔王は、背中から金色の炎を噴射して突撃してきた。

 

「うぉ!?」

「ぐぅッ!?」

 

 高速で放たれた打撃を受けて、黒い鎧と白い鎧が破損し、吹き飛ばされる。

 

『QGPコア、全て喪失。現在本機と白い鎧は、着装者の魔力を搭載魔術炉で燃焼させることで動作しています』

『人間の魔力量では、ウィッシェルの五百万人を吸収した魔王には遠く及ばん。

 言っては何だが、これは厳しいぞ』

 

 プルイナとエクレルが、それぞれの着装者に向かって状況を説明する。

 魔王の攻撃は激しく、高速打撃と魔術を交えた空中機動によって二人は完全に翻弄されていた。

 新たな鎧も破損が重なり、機能が低下していく。

 ディゼムが鎧の中で、プルイナに提案した。

 

「プルイナ、考えてることが、あるんだけどな」

『どうぞ』

「……俺が魔石になりゃあ、少しはお前の力になれそうか?」

 

 それは彼女にとっては、許容しがたい言葉だった。

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