不意に胸を揉んでもシリアス顔すれば深読みされて許される説   作:バリ茶

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7話

 

 

 ──は?

 

 なんだ。

 誰だ、あの少女たちは。

 勇者墓地で強敵を倒されたタイガ様が、居住区で戦うエレナさんの加勢に向かわれたと聞いたから、魔物の群れの間を縫うようにして、全速力で現場に到着したら──意味不明な光景が待っていた。

 住民の方が避難され、無人となった家の中で、エレナさんがタイガ様に簡易的な回復魔法を施していたが、これはまだ分かる。

 おそらく連戦に次ぐ連戦で、タイガ様の疲弊は限界に達していたのだろうし、あの膝枕も、魔法を使いながら肉体を密着させることで、こちらの魔力も生命力に変換して注ぎ込むというやり方があるため、理にかなった回復方法だ。

 エレナさんだから、わかる。

 勇者パーティのメンバーが、彼を効率的な方法で回復させるのは、至極当然のことであるから。

 

 だが、あの二人の少女は、なんだ?

 なぜエレナさんと打ち解け、気安い態度でタイガ様のそばにいるんだ?

 意味が分からない。

 わたしがいない間に何があったというのだ。

 ともかくまずは殴ってでもあの二人をタイガ様から引き剝がして、この場所から叩き出して、早急にわたしが彼を回復させてあげないと。

 

 …………いや、ちょっと、待て。

 落ち着こう。

 冷静に。

 すぐに暴力を持ち出すのは、よくないことだ。

 神父様も、俯瞰して物事を見るようにと、仰っていたではないか。

 彼女たち二人は、確かにタイガ様と近すぎるし、あわよくば触れようとしているし、今すぐにも四肢を削ぎ落して祭壇の供物にしてやりたいくらいには、腸が煮えくり返る思いだが、まずは落ち着いて状況を判断しなくては。

 

 そうだ、あの砂袋を腰に携えた彼女ら二人はきっと、現地の協力者だ。

 玄関の横には、数刻前に使った形跡のある武器が置かれていたし、タイガ様が動けなくなったあとに、魔物の掃討を引き受けてくれたのだろう。

 味方になってくれたからこそ、エレナさんとも打ち解けている。

 あそこまでタイガ様に接近しているのは不本意だが、まずは協力してくれたお礼を言わなければ──

 

「……ったく、十代目め。のんきに眠りこけやがって。ほっぺつついてやる、うりうり」

 

 

 ────ッ。

 

 

「あの」

 

 ダメだ。

 神父様からのお教えを忘れるな。

 恩義ある人間に対して、仇で返してはいけない。

 暴力は最終手段であり、聖職者である以上は、理性をもって人と接しなければならない。

 落ち着け。

 冷静になれ、アイリスゲイド・ストレンジャー。

 あの少女の行動に、他意はない。

 もしかしたら、タイガ様ご本人が、そういった態度を許しているかもしれないのだ。

 自分で勝手に判断するな。合理的に、常識的に考えろ。

 

「あっ、アイリス。来てくれたのね」

 

 いつもの、勇者パーティのヒーラーの、普通のアイリスとして。

 大丈夫。

 ぜんぜん、だいじょうぶだ。

 

「はい、お待たせしました、エレナさん。そちらのお二人も、この度はご協力ありがとうございます。わたしは勇者パーティの回復担当のアイリスと申します。タイガ様が疲労困憊で移動もままならない状態だということは把握していますので、以降の回復はわたしにお任せください。というわけでそこ、失礼いたしますね。……あの、申し訳ありませんが場所を空けていただけますでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 再び目を覚ました時、目の前にアイリスがいたことで、俺は少々の不安が脳裏に過っていた。

 

 アイリスの回復魔法自体は一級品だ。

 術式無し、道具無しで、即座に行える回復魔法の効力の高さで言えば、聖都で最も優れているといっても過言ではない。

 だが、強力すぎるがゆえの欠点というものも、いくつか存在している。

 一つ目は行動不可になる点だ。

 回復魔法を受けている本人と、発動しているアイリス本人はその場から動けなくなるため、これは他のメンバーがカバーしてもらうことで補っている。

 

 もう一つは、回復()()()()()()()点である。

 体力、つまり生命力の回復とは、精力の増加ということでもある。

 言葉を選ばずに言うのなら、アイリスの回復魔法を受けた後は、元気過ぎてめちゃくちゃムラムラする状態になってしまう、ということだ。

 いつもは携帯している冷水で顔を洗ったり、気分を落ち着かせる鎮静薬を飲むことで対処しているわけだが、もともとパーティと行動する予定がなかった今この状況に至っては、それを一つも持っていない。

 

 こまった。

 とても、ムラムラする。

 本来であれば性欲の権化みたいな時期の年齢という、初期値から既に高い俺の性欲が、アイリスの魔法によって倍々に増えていったら、どうなるのか。

 それはもう、端的に言って地獄である。

 クールキャラなんぞ演じるんじゃなかったと、後悔ばかりが湧いてくる。

 

「あ、アイリス。ここにいた俺の仲間は、どこに行ったんだ?」

 

 ベッドから体を起こすと、看病するように傍らで座っていたアイリスが、窓の外を見ながら返事をする。

 

「エレナさんは外に出てすぐのところで、騎士団と情報共有をしています」

「もう二人、いなかったか」

「あ、旅人のお二人のことですね。ドネルケバブ様と、さやえんどう様」

 

 あの二人、偽名使うにしても、他にもう少し候補なかったのか。こっそり隠れて生活しないとなのに、印象に残りやすすぎるだろ、ドネルケバブ。

 

「先を急ぐとのことで、既に出立されました」

 

 やはりというか、二人の姿はなかった。

 アイリスからすれば他人同然で、事情を共有していないはずのエレナからしても、引き留める理由はない。

 一度目を覚ました時に、三人で何か話していた気がするが、困憊となにかしらの衝撃で二度寝した俺には、詳しい状況はわからない。

 とにかく、無事に逃げられたのならそれでいい──とは、思いつつも。

 

 ……結局、八代目はキっ、き、きッ……キス、してくれなかった。

 何だあの人、からかい上手の八代目じゃねえか。

 寝落ちした俺も悪いけど、なにかしら伝言を残して、あとでどこかで合流して……とか、いろいろあったんじゃないかなと、いろいろ考えてしまう立場なんだよ、こっちは。

 くそう、せっかくのチャンスが。

 アホみたいにムラムラしている現状では、あの提案をしてくれた先輩が、あまりにも魅力的に思えてしまう。

 ちゅー、したかった。

 あわよくばその先も考えていた。

 

 俺の目標のひとつに”おっぱいを揉む”というものがある──しかし、それは何も一度揉むことができれば満足して終わり、という話ではないのだ。

 こちとら性欲を持て余した大学生。

 いけるところまでいけるなら、そりゃもちろん、いけるとこまでいきたい。

 あわよくば二度、三度と繰り返したい。

 最終的には俺の世界へお持ち帰りしたいとすら考えている。

 

 しかし、それが不可能だからこそ、シリアス顔して相手に深読みさせることで、何か事情があると思わせつつおっぱいを揉んで、なんとなく許されたまま帰るという作戦をとったのだ。

 パーティメンバーは、あくまでパーティメンバー。

 アイリスもエレナもシャルティアも、この半年間しっかり俺と適切な距離を取って、共に行動していた。

 原因は俺のいきすぎたクールキャラにもあったのかもしれないが、ともかく、よくある異世界転移物語のように、俺のこと好き好き大好きヒロインは、残念ながらこの世界には存在しないのだ。

 八代目のアレもからかいだと判明した以上、やはり当初の作戦通り、シリアスに何か事情ありげに乳を揉むというやり方にシフトするしかない。

 俺にはもう、これしかないんだ。

 ムラムラして、もう止まらないのだ。

 

 

「……アイリス」

 

 

 隣にいる彼女の顔を見つめる。

 この少女が、どこまで事情を知っているかは知らないが、少なくとも彼女には”泣いている仲間を慰める”といったレベルの抱擁力は備わっている。

 加えて、俺のこともその庇護の対象になっていると見て、間違いはない。

 翔太郎の墓場で泣き散らした俺を見て、その日のうちに明るい雰囲気でご飯を作ってくれたことからも、決して嫌われているわけではないのだ。

 

「はい、どうされました、タイガ様?」

 

 かわいい。

 そして、シスターっぽい服の上からでも分かるほどに、胸の巨峰がクソデカい。

 

「……色が、見える」

「えっ」

「四天王の指輪を、装備したせいなのかは、わからない。ただ、お前の魂の色が、見える」

「魂の、色……あっ、た、タイガ様……?」

 

 揉める。

 仕方のない事情を匂わせる雰囲気さえあれば、アイリスのふざけたロリ巨乳おっぱいは、揉むことができる。

 始まったんだ、今この場で、俺の戦いが──!

 

 

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