その名前は───
「トレセン学園には幻のウマ娘がいる」
いつからか生まれたその噂は学園はおろかトレセン学園を知る一般人にすら届いていた。
噂は更に加速し様々な憶測が広がった。
曰く、トキノミノルではないか
曰く、夢半ばに折れたウマ娘の霊ではないか
曰く、強すぎるウマ娘が傲慢にならぬよう自戒させる為の方便ではないか
さまざまな声が飛び交うなか全てに共通する点が存在した。
「そのウマ娘はレースだけで見る事が出来る」
そんな都市伝説のような噂がまことしやかに流れている。
ある日の競馬場では……
『はやい!あまりにも速い!第3コーナーを回って完全に独走状態、後方との差が広がっていきます』
『かかっているかも知れませんね。 このままゴールまでスタミナが続くかが注目です』
8番のゼッケンを胸に逃げ脚を活かしてターフをかけるウマ娘は勝利を確信していた。
(後方との差は約6馬身、スタミナにはまた余裕がある。
致命的な失敗がなければこのままゴールまで行ける!)
微かに緩んだ口元。
その瞬間を待ち侘びたかのように背筋に寒気がはしる。
──やっぱりだ。
先程から『勝てる』と判断すると絶対に悪寒がする。
ほかのウマ娘達も薄気味悪さを感じるのか強ばった顔の娘が多い。
「(私がレースに緊張しているから? ううん、そんなハズはない。 だってこのままいけば……ッ!!?)」
そのウマ娘は驚きに目を見開いた。
前には誰もいなかったはずだ。
先頭は絶対に譲らなかったし横を追い抜く気配も感じ無かった。
だというのに、何故はるか先のゴールを既に駆け抜けたウマ娘が居るのか。
そしてレースが終わり、結局3着に6バ身差をつけて2着に終わったそのウマ娘は自分よりもはるか先に居たウマ娘探してレース場を掛けていた。
レース直後の疲れた身体にムチをうって、誰よりも速くゴールしたウマ娘を探したが誰も行方を知らないという。
ゴール付近にいたスタッフもそのウマ娘をよく覚えていないと言っていた。
あれだけ圧倒的な走りを見せ、誰よりも速くにゴールしたにも関わらず誰も覚えていないウマ娘。
掲示板には1着の欄が空欄で記され、2着との差は大差。
だというのに誰もそのウマ娘を知らなかったのだ。
私は誰に負けたのか。
そして誰と戦っていたのか分からないままその日は過ぎていった。
「あっちゃー、また忘れられてる……」
打ちひしがれ立ち尽くす後ろで呟かれたその声も耳に入らぬままに。
この日来ていた観客の誰もが口を揃えて口ずさんだ。
「速すぎるウマ娘は確かに居た」と──
主人公の関節は異常に柔らかく、蹄鉄が地面を踏みしめる音が響きません
加えて生来の影の薄さから認識されにくいという設定です
勝手に続き作っていいよ|o¬ω¬o)チラチラ