トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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第11話:クラシック最強の座日本ダービー

 ダービー当日。僕とトレーナーはレースの最終ミーティングをしてる。

 

「あーあ。よりにもよってダービーで大外かー」

 

 大外から走るとなるとコーナーが膨れて走りにくいし……走るの大変なんだよね。

 

「たしかに不利ではある……が俺はそこまで深刻に考えてない」

 

「トレーナーはもしも僕が負けたらって考えないわけ?」

 

「今日のレースでテイオーが負けることは無い」

 

 キッパリ言うなぁ……僕の事を信頼してくれるのはいいんだけどさ、ダービーはクラシック最強を決めるって言ってもいいレースなんだけど。

 

「2400mはテイオーにとって1番の適正距離だ。さすがにクラシック最高峰のレースというだけあって周りのレベルもかなり高い。だが、テイオーには及ばない。お前の末脚に追いつけるウマ娘はこのレースにはいない」

 

 トレーナーの過剰な自信に一瞬だけ不安になった。だけどその時、前にタキオンが言ってた事を思い出した。

 

『君のトレーナー以上に君のレースの事を考えてる者はいない』

 

 つまり、トレーナーは今日のレース、レース相手、僕の実力を全部加味した上でこれだけ自信を持ってるんだ。いつも僕の事になると自信満々だからなんとも言えないけど……

 

「僕はどうすればいい?どうすればレースに勝てるのトレーナー」

 

 トレーナーは僕を信じて僕の為に必死に頑張ってきてくれた。だから、僕もトレーナーを信じよう。

 

「作戦は至ってシンプルだ。終盤までは先行でポジション取りを意識して……最後の直線で大外から抜き去る。外側なら芝も抉れてない。テイオーの全力の末脚でダービーを掻っ攫う!」

 

 それは作戦と呼ぶにはあまりにも力技だった。そこに駆け引きも何も無い。ただただ実力でねじ伏せるってこと。普通なら滅茶苦茶なものだけど、何故か出来る気がした。

 

「うん!分かったよ!見ててねトレーナー!」

 

 

 俺はテイオーに見送られながら観客席に戻った。そこにはタキオンとデジタルだけでなく、東条さんとルドルフも一緒にいた。

 

「あんたよくこんな奴らのトレーナーやってられるわね……」

 

 東条さんは頭を抱えて、その姿を見てルドルフも苦笑いをしている。確かに2人が変わっているのは周知の事実。けど、そんなのでもうちの担当ウマ娘なんです!

 

「トレーナー君?何か凄く失礼な事を考えていないかい?」

「トレーナーさん?失礼な事考えてますよね?」

 

 まさか、こいつら心を読めるのか!

 その光景を見てルドルフは微笑んでいた。その反応にタキオンとデジタルはキョトンとしていた。

 

「いや、すまない。君たちの仲が良いのが微笑ましくてついね」

 

「ほら、あんたらお喋りはここまでよ」

 

 パドック入場音が響き渡り、俺たちの視線はパドックの方へと向けられた。

 1枠1番から順々にウマ娘達が入場してくる。しかし……いや、やはりと言うべきか。テイオーを超える程のウマ娘はいない。

 

『8枠20番はトウカイテイオー!前回の皐月賞では見事な勝利をおさめました!今回はどのようなレース展開を見せてくれるのか!1番人気です!』

 

 テイオーはパドックから俺たちを見つけたのかこっちに手を振っている。ルドルフもいるしすぐ気づいたか

 

「テイオーも変わったな……ところで、勝算はあるのかい?」

 

「あります。正直実力勝負でテイオーが今日負けることはない……そして、ルドルフも気付くさ。皇帝の座を狙われる立場にあることを」

 

 テイオーの才能とポテンシャルはルドルフと同等かそれ以上だ。そして、その実力は既に開花し始めている。

 

「帝王が皇帝を超える日は近いぞ」

 

「っふ……君も言うようになったじゃないか」

 

 そんな話をしているとパドック入場が終了し、ゲートインの準備が始まった。

 

 

「キタちゃん!早くしないとレース始まっちゃうよ!」

 

「テイオーさんのレース見逃しちゃう!」

 

 急いでこちらの方に走ってくる2人のウマ娘がいた。どうやらテイオーのレースを見に来てくれたらしいが……なんかこっち見てないか?

 ほら、2人の微笑ましい光景の尊みに耐えきれなくてデジタルが昇天してるよ。

 

「すいません!テイオーさんのトレーナーさんですか?」

 

「あぁ……そうだけど君は?」

 

「私はキタサンブラックっ言います!」

 

「私はサトノダイヤモンドです!」

 

 キタサンブラックにサトノダイヤモンド……あぁ、テイオーがオープンキャンパスの時にお世話したっていう2人だな。

 

「ダービーはテイオーさんの応援をしにレース場に行くって言ったら、この辺りにトレーナーさんがいると聞いていて」

 

 なるほど……それでもレース場は人も多いし何よりも広い。よく俺たちが見つけられたな。

 

「君たちなら近くに行けばすぐ分かるって、テイオーさんがおっしゃっていたので……うちにはデジたんって言うウマ娘がいるからすぐ分かると」

 

 サトノダイヤモンドの発言で合点がいった。テイオーからは2人は幼馴染で元気な2人組と聞いていた。デジたんが反応しないわけもない……テイオーもその辺毒されて来ているんだな……

 

「そうか、まだ小さいのにわざわざありがとう。ぜひ応援してやってくれ。きっとテイオーの力になるよ」

 

「はい!」

 

 キタサンブラックは元気に返事すると俺の横に座った。その横にサトノダイヤモンドも座ってルドルフと東条さんとも軽く挨拶を交わしてた。ルドルフと東条さんは威圧感のあるクールビューティなせいか、少しキタサンブラック達が緊張していてショックを受けてた。

 

『全てのウマ娘のゲートインが完了しました!晴れ晴れとした空の元、20人の優駿が集まりました。クラシック最強の座に君臨するのは誰なのか!2400m先のゴールを目指し……今スタートしました!』

 

 スタートは悪くない。問題はここからなんだよな。

 

「ふむ、やはりテイオーはマークされているな」

 

 ルドルフの言う通りテイオーは周りから完全にマークされている。みんながテイオーを警戒し、自由に走らせてはいけない存在だと認識しているんだ。

 

「ふっふっふ……ここまでは予想通りと言ったところだねトレーナー君」

 

 タキオンがどこか嬉しそうに誇らしげに笑っている。

 

「ほう……?それならここから先の展開も読めるかなアグネスタキオン」

 

「もちろんだとも!我々はこのレース為にレース場、対戦相手、トウカイテイオーというウマ娘本人を誰よりも検証、研究しているのだから!なぁトレーナー君」

 

 タキオンは自信満々に俺を指差した。データ収集をデジタルが、検証研究をタキオンがやってきた。俺はその雑用をしてたに過ぎないと思うが。

 

「もし、私たちの予想が唯一外れるとしたら……それは私たちにも予測出来ないほどの才能と実力の持ち主だろうねえ……」

 

「あぁ……予想ではテイオーは2〜3バ身差で1着を取るだろう。だが、テイオーは必ず予想を超えてくる」

 

「このレースの不確定要素は彼女本人という訳だ!いやー面白い!」

 

 タキオンはレースの雰囲気に呑まれているのか結構ハイな状態になっている。自分の研究、研究成果の為に燃えている部分が殆どだろうが……

 

 

(うわぁ……僕すっごいマークされてる)

 

 前後から凄いマークされてるのがピリピリと伝わって来た。トレーナーがポジション取りをしろって言ってたのはこういう事だったんだ。

 

(このマーク突破するのは大変だけど、必ず綻びが生じる場面が来る)

 

 レースのラスト。全員が勝利の為に動き始めるはず。その瞬間でこのマークは抜けられる……つまり、ラストの直線大外から抜けるんだよねぇ……もしかして、トレーナーここまで読んでたの?

 

(いや……今はレースに集中しなきゃ)

 

 ポジション取りは上手くいった。周りはきっと僕が動くのを警戒してるはず。だけど、僕はラストスパートのポジション取りさえ出来ていればいいから僕から動くことは無いよ。

 案の定レースは終盤まで動かなかった。けど、最終カーブに入るところで1人の娘が痺れを切らしてペースを上げた。それを見た周りの娘たちもペースを上げていく。

 

(これで完全に僕からマークが外れた!)

 

 最終コーナーを抜けよとした時、観客席から僕を見るトレーナーたちが見えた。キタちゃんたちと仲が良さそうに一緒に応援してる。

 

(トレーナーが見るのは僕なんだから……その視線を向けなきゃいけなくしてあげるよ!)

 

「トウカイテイオー行っちゃうよぉ!」

 

【究極のテイオーステップ】

 

 つい声に出ちゃったけど、大きな声を出したおかげで気が引き締まった気がする。ラスト直線で全員抜いちゃうからね!

 

 

「テイオーが仕掛けた!」

 

 テイオーはグングンとスピードを上げていき、1人また1人と追い抜いていく。

 

「頑張れテイオー!」

 

「「頑張って!テイオーさん!」」

 

 俺たちはテイオーを全力で応援した。その結果は……

 

『トウカイテイオー!トウカイテイオーだ!トウカイテイオーが今1着でゴール!会場からは盛大な拍手が送られています!』

 

 俺とタキオンは圧巻していた。もしかしたらという想像はしていた。しかし、本当にやり遂げるとは思わなかったからだ。

 

「2着と6バ身差でのゴールか……」

 

「しかも、まだ少しだけスピードの伸びに余裕があったねぇ……」

 

 俺たちは2〜3バ身。良くても4バ身差で勝負が決まると思っていたが……まさか6バ身も差をつけるとは。

 さて、感傷に浸るのもいいが、テイオーのところに行かないとな。おっと、その前に。

 

「デジタル今日は悪いな。1番全力でテイオーを応援したかっただろうに」

 

「ひっひえ……私はテイオーしゃんの1着が見れただけで」

 

 デジタルにはテイオーの走りを良く観察するように頼んでおいた。今までで1番のスピードが出ると予想されたこのレース。どんなイレギュラーが起こるか分からなかったからな……結局1着でテイオーがゴールした喜びで昇でる。

 

「とりあえず、怪我とかはしてないとぉぉぉ!テイオーしゃんが手を振ってくれて……」

 

 あっ気絶した。とりあえず、デジタルのことはタキオンにでも任せるとして俺はテイオーの所に行こう。その間際に東条さんとルドルフに軽く挨拶をしたが、その時のルドルフのテイオーを見る目は敵を見る目をしていた。

 

 

 僕がレースを終えて待機室に戻ろうとしたら、その途中でトレーナーが僕のことを待ってた。

 

「いえーい!トレーナー見てた?僕勝ったよ!」

 

「あぁ!よくやったテイオー。本当に流石だよ」

 

 そう言ってトレーナーは僕の頭を撫でてくれた。でも、その手は少しだけ震えてた気がした。でも、トレーナーがとっても喜んで笑っているのを見て気のせいだと思った。

 

「えへへ〜。ライブもしっかり僕を見てよね!全力で踊るからさ」

 

「もちろんだ。特等席で盛り上げるよ」

 

 そのあとのライブは何事もなく無事に終わった。デジたんとかキタちゃんが凄いテンションでサイリューム振ってたけど……とりあえず、これで2冠達成。最後の1冠の菊花賞も頑張るぞー!

 

 

 

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