トウカイテイオーと帝王を目指す   作:しゃなたそ

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第12話:菊花賞に向けて

 ダービーが終わった翌週。俺たちは菊花賞に向けて対策を立てるために、タキオンの研究室に集合していた。

 

「よく集まってくれた諸君……それでは第1回菊花賞対策会議を行う」

 

「議題は菊花賞に向けてのトレーニングです」

 

 俺とデジたんの間に張り詰めた空気が漂う。2人で机に両肘を付き、某キャラのポーズを取っている。

 

「いや、それはいいんだけどさ……何で部屋を真っ暗にしてるわけ!?」

 

 テイオーが席を立ち上がり明かりを付けた。

 

「こういうのは雰囲気が大事なんだよテイオー」

 

「そうですテイオーさん!」

 

 せっかくデジたんとゲ〇ドウごっこしてたのに……まぁ、お遊びはこの辺にしておくか。タキオンは俺たちの茶番を見て愉快そうに笑っているが。

 

「冗談はさておき。菊花賞に向けてのテイオーのトレーニング方針を固めて行きたいと思う」

 

 テイオーも大人しく席に座り。俺たち3人はパソコンを起動した。

 

「まずはタキオン。ダービーでのデータ収集の報告を頼む」

 

「そうだねぇ……まず前提としてダービーと菊花賞では距離が違いすぎる。中距離から長距離に距離が伸びることで参加が困難なウマ娘もいるだろう。それを加味してダービーから菊花賞に出走するのは4、5人と言ったところだろう」

 

 ウマ娘には適正距離というものがある。マイル中距離は走れたが長距離は上手く走れないなんてウマ娘もいる……そうなると出走メンバーも大きく変わってくる。

 

「しかも、菊花賞までに夏を挟んでかなりの時間もある。クラシックの夏に才能を開花させるウマ娘も多いから、このデータは殆ど役に立たないだろうね」

 

「テイオーのスピードとパワーは1級品だ。スタミナも十分にあるが……長距離を走り切れるかが怪しい」

 

 ベストは2400m。長距離でも走るなら2500mの有馬記念ならなんとなるだろう。けど3000mともなると……

 

「あれれ〜?トレーナーもしかして僕が負けちゃうと思ってるの?いつもあんなに僕のこと褒めてくれるのに」

 

「いや……テイオーは勝ってくれるって信じてる。けど、厳しい勝負にはなるだろうな」

 

「ピエッピエッ」

 

 テイオーは顔を真っ赤にしてオーバーヒートを起こしてる。からかおうとするからだ。正面から褒められるってのは意外と照れくさいからな。

 

「お熱いですねおふたりさん……」

 

「そういうのは私たちがいない所でやってくれないかい?いくら甘党の私にも甘すぎて胸焼けしそうだ」

 

 デジタルとタキオンがやれやれと言った感じで停止中のテイオーを眺めている。

 

「デジタルとタキオンも出走すれば勝利待ったなしだと思うけどな。走りの才能自体はある。他人をこれだけ速くできるなら2人も必ず速くなれる」

 

「トーレーエーナーアー!?」

 

「いはい!痛いってテイオー!」

 

 テイオーに思いっきり頬を引っ張られて頬が真っ赤になってしまった。どうしてだ……なにか怒られるようなことしたか?

 

「ほら!2人も照れてないで早く色々考えることがあるんでしょー!」

 

 1度紅茶を飲んで落ち着こう。少々おふざけがすぎたな。

 

「とりあえず、当面のトレーニングはスタミナ強化のための遠泳と走り込みになる。単調なトレーニングが増えるが……大丈夫かテイオー」

 

「もちろん!ちゃんとトレーニング考えてよねトレーナー!」

 

 テイオーは俺のトレーニング案に意見を言うことは無くなった。去年はあれが嫌だこれが嫌だとかって結構あったんだけどな。信頼してくれるのは嬉しいが、それをたまに重圧に感じる時がある。

 

「次に俺とタキオンとデジタルの計画だが。メインはテイオーのトレーニングとデータ収集。次に菊花賞に出るであろう有力ウマ娘のレースデータとか集めることになるが問題ないか?」

 

「そうだねぇ……本格化するウマ娘たちのデータには非常に興味がある。私は異存なしだ」

 

「夏に青春を謳歌するウマ娘しゃん達を……アワワワワ」

 

 デジタルとタキオンも問題なしっと。大体話し合うべきことは話し合ったから、最後の問題か。

 

「菊花賞までの間はナイスネイチャをマークしようと思う。彼女の出走レースに関しては、デジタルとタキオンの2人で現地に赴いてデータ収集をして欲しい」

 

 俺の発言に場は静まり返った。テイオーに関しては口を開けてポカーンとしている。

 

「あくまで出走する予定というのを聞いただけだから、一定の期間まで情報を集めて。大丈夫と判断した場合はマークから外す予定だ」

 

「ちょちょっと待ってよトレーナー!なんでネイチャなの?たしかかにネイチャは速いかもしれないけど、ダービーにだって出てないし……ダービーを一緒に走った娘とか調べた方がいいんじゃない?」

 

 タキオンとデジタルの方を向くと無言で頷いていた。俺以外は全員同意見という訳か。

 

「たしかに、ネイチャは速くない。今の実力だったらテイオーの足元にも及ばないだろう……けど、それは今の話であって菊花賞にどうなる分からない」

 

「でも、それって他の娘も同じじゃん!なんでネイチャなの?」

 

 たしかに他の娘の変わらない。今速くなくても後々速くなる可能性をみんなが秘めている。

 

「ナイスネイチャのトレーナーとは昔っからの付き合いでな。菊花賞でテイオーと走ると宣戦布告を受けた。そして、そのチームに新しいメンバーも加わってると聞いた」

 

 テイオーと走り、そして勝利を掴むために着々と相手側は準備を進めている。

 

「自己肯定感の低いウマ娘だとナイスネイチャのことは聞いていた。そんな彼女が明確な目標を持ちトレーニングに励んでいる。何よりも彼女は誰よりも努力をするウマ娘だという……努力が出来るやつは強い。周りがマークしてないからこそしっかりマークをする必要がある」

 

 何よりあのトレーナーは出来ないことを出来るというタイプじゃない。何かしらのビジョンがあるからこその宣戦布告だろう。

 俺の話を聞いたタキオンとデジタルはうんうんと頷いている。かというテイオーは俺の事をジトーって見てくる。

 

「努力するものは強くなる。当然の理だねぇ……」

 

「そうです!誰よりも努力するって凄いことですからね」

 

 努力出来るウマ娘は強い。その点テイオーは凄い。その才能にうつつを抜かす事無く努力を惜しまない。本当に強いウマ娘だ。

 

「その通り……ってテイオー?」

 

 テイオーはジトーっと見てきたと思ったらため息をついてる。何かカンに触ったか?

 

「ナンデモナイヨー」

 

「とっとりあえず計画は以上だ。各々がやるべき事をやっていけば菊花賞を勝ってクラシック3冠も取れる。テイオーの夢はもうすぐそこまで来てる!みんなよろしく頼む!」

 

 こうして、俺たちは菊花賞。そして、無敗のクラシック3冠を目指して動き始めた。


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