トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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第14話:想い

 夏のトレーニングも終えて、あと1ヶ月で菊花賞本番。トレーナーは最近難しい顔をしながらパソコンとにらめっこしてる。

 

「やっほーテイオー」

 

「あっネイチャ。最近凄いじゃん!色んなレースに勝って、前よりすっごい早くなったんでしょ?」

 

 昼休み中にふとトレーナーのことを考えていたら、ネイチャが話しかけてきた。最近は菊花賞出走に向けて色々なレースに出てたらしいけど、そのレースに全部勝って菊花賞駒を進めたらしい。

 

「いや〜テイオーに私なんかのこと知られてるとは光栄ですなー」

 

 ネイチャはいつもみたいに軽く僕の言葉を受けていた。いつも、僕の褒め言葉を正面から聞いてくれないんだよね……

 その雰囲気というか態度がトレーナーに似ていてなんだか面白かった。

 

「ありゃ、私なんか変なこと言った?」

 

「なんか、ネイチャってうちのトレーナーに似てるなって思って」

 

 どうやら顔に出ていたっぽい。ふとトレーナーのこと思い出しただけだったんだけどな。

 

「うちのトレーナーさ、実力はあるんだよ?でも、自己肯定感が低いというか自信がないんだよね」

 

「テイオーのトレーナーだからもっと堂々としてると思ってた。って!それ私のこと間接的にディスって」

 

「でも!」

 

 自信もない。どこか頼りない雰囲気もある。いつもなにか出来ても誰かのおかげって言うし。

 

「トレーナーは誰よりも努力してる。それに向かって凄い一生懸命なんだよ」

 

 そんなトレーナーだからこそ僕も付いて来たのかもしれない。そんなトレーナーだからこそ僕はもっと頑張ろうって思える。

 

「そして、そういう人が凄いんだって僕は近くで見てきた……だから、菊花賞でネイチャを甘く見ることなんてないよ」

 

 去り際にネイチャの目を見て思った。僕もこのままだと不味いなって。

 

 

「おっじゃまっしまーす」

 

「ここは休憩所でも遊び場でもないんだけどねえ……」

 

 僕がタキオンの研究所に行くと、タキオンとデジたんが2人でお茶をしてるところだった。

 

「何これ紅茶?僕紅茶には詳しいんだよって……甘い!」

 

 何これ凄い甘いんだけど!甘いというか甘ったるいというか。

 

「急に訪れたと思ったら人の紅茶にまでケチつける気かい君は?」

 

「ごめんてタキオン。今日はちゃんと用事があって来たんだってば」

 

 僕は改めて席に付いて口を開いた。

 

「前にトレーナーとタキオンが僕の走り方じゃ脚が壊れちゃうって言ってたよね」

 

「たしかに言った。あの走りはスピードと加速力を強く得られる変わりに負担が大きすぎる。体の柔らかさを利用した君だけのゴリ押し技さ」

 

 何となく僕の言いたいことが理解できたのか、タキオンの表情は真剣そのものだった。

 

「でも、負担が大きいだけですぐにってわけじゃないんだよね」

 

 負担が大きいから脚が故障するのはわかる。けど、今まではその走りを通してたんだから直ぐにってことは無いんじゃないかな。

 

「どうだろうね……実際に検証出来ない以上なんとも言えない。けれどね、君の脚はデリケートだ。何がトリガーで故障してしまうか分からない。何よりも肉体が鍛えられて耐えられる負荷は増えただろうけど、それと同時に体にかける負荷も増えてるのを忘れちゃいけない」

 

 僕もそれは分かってる。分かってると言うか、何度も何度もトレーナーから説明されたんだけど……

 

「それでも、そうしないと勝てないって時は?」

 

「そうならないようにするためにトレーナー君が頑張ってる。そのために私とデジタル君も集められたわけだからね」

 

 この問いに関してはタキオンは即答した。けど、言葉の最後にだがと繋げる。

 

「最終的に判断するのは君だ。私個人としても、チームとしてもそれはオススメ出来ないけどね」

 

 どうしたらいいのかな……トレーナーたちのことを信用してない訳じゃない。でも、もしも相手が速かったら。

 

「タキオンとデジたんならどうする?自分のどうしても勝ちたいレース。勝ちを届けたいレースでそうなったら」

 

「私なら……走っちゃうかも」

 

 さっきまでそばで見てるだけだったデジたんが前に出てきた。

 

「トレーナーさんには勝手だけど恩を感じてるし……きっとトレーナーさんは悲しむと思うけど走っちゃうきがしましゅ……って!私なんかがそんな場面に立ち会うことがあるかも分からないですけど!」

 

 デジたんは縮こまって後ろに下がって行った。タキオンは少し考えてから口を開いた。

 

「私は故障しないために今まで時間を割いてきた。テイオー君のサポートもその一環のつもりだったんだけどね。それ以上に多くのものを得られたと思ってるよ。だからこそそんな状態じゃ走れない。そうならないように彼と全力を尽くすだろう」

 

 2人とも意見は違う。結局のところタキオンの言った通り、最後は僕の判断次第なんだ。

 

「まぁ、安心したまえ。菊花賞に向けて、私もデジタル君もトレーナー君も全力を尽くしている。君はレースに向けてトレーニングに集中するといいさ」

 

「うん……ありがとうねタキオン」

 

 タキオンにお礼を言って、僕はその場を立ち上がった。

 

「テイオーしゃんトレーニング頑張ってください!私は今日タキオンさんのサポートするので」

 

 デジたんが去り際に僕を応援してくれた。デジたんなりに僕のこと励ましてくれてるんだよね。

 

「2人ともありがとう……」

 

 お礼を言って扉を開けるが。僕は最後にそれと、と付け加えて。

 

「僕は勝ちを届けたいとは言ったけど、トレーナーとは一言も言ってないんだけどなぁ?」

 

 それを聞くと、2人はッハっとした顔をして僕を捕まえようとしてきたので、そのまま扉を閉じてトレーニングに向かった。僕も頑張るぞー!

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