トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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青い地球を守ってたら……ごめんなさい


第15話:菊花賞の激闘

 ついに迎えた菊花賞当日。テイオーと俺は最後の作戦会議をしていた。

 

「今回のレースは確実にテイオーはマークされることになるだろう。けど、ダービーを見てガッチリ固められることはないと思うから安心しろ」

 

「いやー良かったー。あの時本当に走りにくかったからなぁ……」

 

 ダービーの時のマークもやばかった。直接的にテイオーが走りにくいレースだったからな……けど、今回も一筋縄じゃいかない。

 

「変わりに今回は、テイオーの一挙一動全部観察されてると思った方がいい。仕掛けるタイミングとかコース取りとかな」

 

 テイオーは露骨に嫌そうな顔をしている。強者ゆえに周りからの強いマーク……さぞ走りにくいことだろう。

 

「正直作戦よりも本番でのアドリブ力が試されると思うが……テイオーなら行けると信じてる」

 

「あったり前じゃん!僕はサイキョーなんだから!」

 

 元々テイオーには天性のレースセンスがあった。それを今までは作戦で更に確実なものにしてきたに過ぎない。だから大丈夫なはずだ。

 

「最後に……怪我はするなよ」

 

 その言葉を聞くと、テイオーはバツの悪そうな顔をして笑いながら目を逸らした。

 

「タキオンが話しちゃったんだ」

 

「内容が内容だからな。いいか?今まで通りステップを使っていいのはラスト200mだけだ!長くても400m……それ以上は今のテイオーだと確実に怪我に繋がる!」

 

 言っても無駄だと言うことは分かってる。小さい頃からのテイオーの夢。無敵の三冠ウマ娘。その夢にあと一歩届くという時に、テイオーは止まらないだろう。

 

「分かってる。無理はしないようにするよ。ありがとうねトレーナー」

 

 

 僕、トレーナーに嘘ついちゃった。なんか分かるんだよね……今日のレースは今までみたいに簡単に行かないって。みんなが全力で僕に勝とうって強い気持ちを持ってるから。

 

(無敗の三冠ウマ娘まであと一歩……何より、僕の為に頑張ってくれたトレーナーたちのためにも勝ちたい)

 

 きっと、トレーナーはそんなこと望んでない。自分のために僕が傷つく何て嫌だと思う。でもね……僕は君のために勝ちたいって思っちゃったんだ。

 

 

「おやおや、その顔じゃあ説得は失敗したようだねえ」

 

「あぁ……本番でそんな事にならないことを祈るよ」

 

 観客席に戻るとタキオンは同情の視線を俺に向けていた。一応は彼女も説得を試みたんだけどな。

 

「そうならないように、私たちチームがテイオーしゃんのために頑張ったんじゃないですか!」

 

 デジタルも気合十分という感じでターフにいるウマ娘達を眺めていた。

 

「あんた大丈夫なの?」

 

 一緒に観戦に来てくれた東条さんにも心配される始末だ。

 

「まぁ……最悪の場合は全責任を負うつもりでいます」

 

 そうならないことを祈るばかりだが……とりあえず、パドックでの様子を見てからになるが……

 そんなことを考えてるとパドック入場の音楽が鳴り響いた。

 

『3枠5番ナイスネイチャ!菊花賞直前のレースたちの勝利を手に取り、菊花賞出走を果たしました。本日の調子も大変良さそうです!その期待から2番人気です!』

 

「やっべえな……」

 

 調子がいいのは勿論のこと、その身体の仕上がりが並大抵なものじゃない。おそらく、今日このレースのためにかなり綿密な調整をしてきたんだろう……

 

「ナイスネイチャか……前までは突飛つして目立つ戦績はなかったが、この夏と秋を通して一気に花びらいたな」

 

 後ろからルドルフが合流してきた。どうやら東条さんと一緒に観戦に来ていたらしい。

 

「ナイスネイチャもやばいっちゃやばいんだが……」

 

『4枠8番トウカイテイオー!ついにこの日がやって来ました。皐月賞、日本ダービーを勝利し。無敗で三冠への挑戦となります!果たして1着に輝くことが出来るのか!1番人気です!』

 

「テイオーだって負けてない」

 

 3冠の最後のレース。そして、テイオーにとっては長距離の3000mという1番の関門。今まで以上にハードなトレーニングと綿密な調整を行ってきた。タキオンとデジタルが死ぬ気で頑張ってくれたおかげなんだが……

 

「これは驚いたわね……」

 

 あの東条さんもルドルフもテイオーの仕上がりを見て驚いていた。そんな2人を見てタキオンは自慢げに笑っている。

 

「今回のレース展開は予想出来ているのか?アグネスタキオン」

 

 前回のレース同様にある程度の予想は立てている。しかし、今回は夏を挟んで未確定要素が多い……

 

「そうだねぇ……第3コーナーで仕掛けて、ラストの直線で周りを引き剥がし単独ゴール。それが私たちの描いているレースプランさ」

 

 あくまで最善でレースが進んだ時の予想。他のウマ娘が俺たちの予想通りの能力という前提だ。それ通りに進むとも思ってない。

 

「流石に今回はそんなに上手く行かないのではないか?」

 

「テッテイオーちゃんなら勝ってくれます!」

 

 ルドルフの質問に対しての回答に俺は驚いた。回答内容というか、それを発した人物に驚いたんだ。

 

「その通りだともデジタル君」

 

 あのデジタルがウマ娘……それもシンボリルドルフに反論するとは。俺も正直驚いた。

 

「たしかに、周りのウマ娘も成長している。我々の予想を上回ることもあるだろう。しかし、テイオー君が1着でゴールすることは揺るがない」

 

 デジタルに並んで、タキオンもルドルフに向かって高らかにそう宣言した。

 2人の言う通り……このレースで一番最初にゴールを通過するのはテイオーだ。

 

 

「テイオー」

 

 パドック入場も終わって、ゲートの準備中にネイチャが話しかけて来た。

 

「ん?どうしたのさネイチャ」

 

「私は今日のレースでテイオーに勝つために頑張ってきた。だから、全力でぶつかる」

 

 ネイチャから熱い視線をぶつけられる。いや、ネイチャだけじゃない。周りの娘達からも見られてる。

 

「うん!全力で走って……僕が1着でゴールしてみせる」

 

 それを聞いてネイチャは満足したのか、少し笑っててゲートに向かおうとした。けど、ちょっとしてからこっちを振り向いた。

 

「そうだ、いいレースにしようね」

 

「うん!」

 

『まもなくレースがスタートします。出走するウマ娘はゲートに入ってください』

 

 こうして僕にとっての大事なレースが幕を開いた。

 

 

『全てのウマ娘がゲートインしました!菊花賞3000m!菊の勲章をその手に収めるのはどのウマ娘か!3000m先のゴールを目指して……今スタートしました!』

 

 スタートは問題なし。周りからも特別囲まれそうな様子は無い。

 

「さぁ……このまま何事もなく進んでくれよ……」

 

 各々がポジションを取り、ある程度レースが形になって来た時に違和感を感じた。

 

「ナイスネイチャのポジション少しおかしくないか?」

 

 先行の位置についてテイオーをマークしてるのは分かる……だけど、そのポジション取りに少しだけ違和感を感じていたが。第2コーナーを超えた辺りで違和感の正体に気がついた。

 

「明らかに外側を走ってる……まさかテイオーにわざと自分の存在を見せつけてるのか!」

 

 

(あぁ……ネイチャの圧を感じるなぁ!物理的に!)

 

 スタート早々から僕をマークしてたのは分かった。でも、レースの展開を確認するために後方確認すると、絶対にネイチャがいるんだから!

 レース展開を見る感じ、全体的に固まって動いてる。こうなると早い段階でレースが動き始めるってタキオンも言ってた。

 

(仕掛けるなら残り1000m付近になるだろうなぁ……でも、ステップを使っていいのは残り200m。そこまでは何とかくらいつかなきゃ!)

 

 レースは中盤で1500mの折り返し。後ろの娘たちも少しずつ前に詰めてきてる。想像以上にみんな固まってる。1回飲まれたら前に出てそうにないや。

 

 

『おぉっと!レースは残り1100m!ここでリオナタール仕掛けた!』

 

「おいおいまじかよ」

 

 想像しうる中で1番最悪のタイミングだ。早い展開になるとは思っていたが……

 

「どうかしたの?」

 

 俺の反応に東条さんが疑問を示した。一応テイオーは長距離レースへの出走はしたことが無い。それ故にテイオーの長距離適正が長くないことをみんな知らない。

 

「テイオーの適正距離は中距離寄りで長距離適正も低くは無いですが……正直不利です。スパート距離が長くない以上早めの勝負はテイオーにとってはデメリットしかないんです」

 

 有馬記念のような2500mならまだしも3000じゃあ長すぎる。状況としては最悪だ。

 

「だが、この状況くらい想定していたんじゃないか?勝算はないのか?」

 

 ルドルフが少し心配そうに聞いてきた。

 

「勝算はあります……けど、あくまで周りの娘達が俺たちの予想どおりの実力だった場合です。それを上回られたら……」

 

「おやおやおや?トレーナー君らしくないじゃないか」

 

 俺の言葉が最後まで言われることもなく、途中でタキオンに遮られた。

 

「テイオー君は最強のウマ娘なんだろう?それに、君の言う天才の私やデジタル君も共に考えた。ならば敗北を疑うことは無いだろう」

 

 そうだ……俺は何を考えているんだ。テイオーは負けない。そのためにテイオーは頑張って来たし、タキオンやデジタルも協力してくれたじゃないか。

 

「何よりも私とデジタル君はテイオー君の勝利を確信している。そうだろうデジタル君」

 

「はい……勝つと思います」

 

 自信満々なタキオンに対して、どこか不安げというか悲しい顔をしているデジタル。反応は違えど勝利を確信している。なら、俺に出来るのはテイオーを応援することだけだ。

 

 

 残り900m……このペースならまだ何とか付いていける。そう思ってた。なのに!

 

(なんでもうすぐ後ろにネイチャがいるのさ!)

 

 まだ僕のことを抜かす様子はないけど……でもこのままじゃまずい。とは言っても今はまだ動けないし……

 そして、残り2500mのところでネイチャが僕のすぐ真横に並んできた。

 

(もうこんなところまで!突き放さないと!)

 

 僕はペースを上げた……つもりだった。それなのにネイチャと距離を離せない!

 

(このままじゃ……勝てない!)

 

 想像以上に伸びない自分のペースと、ネイチャの追走。その追い込まれた状況だから……ううん、僕の夢のため。頑張ってきたトレーナーのためにも!

 

(トレーナーにはダメって言われたけど残り500mなら!)

 

「動けぇぇぇぇ!」

 

 加速……できた!これならまだいける!

 

『おぉっと!トウカイテイオーが来た!トウカイテイオー一気に加速していく!後方のナイスネイチャも必死に食らいつく!おぉっと!このままトウカイテイオーが先頭まで駆け抜ける!』

 

 トレーナー……僕勝つよ!そのために必死に頑張ってる……だからさ、そんなに悲しそうな顔しないでよ。

 

 

「テイオーお前!」

 

 タキオンとデジタルがさっき言ってたのはこういう事か!このままじゃテイオーの足が!そう思っていたが……テイオーと目が合った。その目は確かに俺に向けられて、レースに勝つという強い想いを感じられた。

 

(テイオーはここまでして本気で勝ちに行こうとしている。だったら俺にできることは)

 

「頑張れテイオー!負けるなぁぁぁぁ!」

 

 

(聞こえてるよトレーナー!ありがとう)

 

「負けるもんかぁぁぁ!」

 

『トウカイテイオーがリオナタールに……並ば……ない!そのまま先頭に躍り出た!トウカイテイオーだ!トウカイテオーが今一着でゴォォォル!』

 

 やった……勝ったよ。観客席のトレーナーたちに視線を向けると、トレーナーとデジタンは泣いてた。もぉ……そんなに泣いて喜ばなくてもいいのに。

 

「テイオーさすがだね。私なんかじゃ相手になりませんわ~」

 

「ううん、僕は相手がネイチャだったから……みんなだったからここまで頑張ったんだよ」

 

 そうだ、全力で走った。限界を超えて走った気がする。疲れのせいか足の感覚もわからないや。

 

「ちょっとテイオー足が!」

 

 ネイチャが僕の足を見て叫んだ。足を見て見ると、僕が意図しないのにガクガクと足が震えていた。やばいなと思った次の瞬間には視界がブラックアウトしていった。

 

 

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