トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】 作:Tmouris_
「トレーナーさんそれ取ってください」
「あいよ」
私はトレーナーさんの部屋で原稿を仕上げてるところ……じゃないですよ!なんで私がトレーナーさんと2人きりでこんなことしてるんですかぁぁぁあああ!
遡るは数日前の研究室での出来事だった。
「最近なんかタキオンとトレーナー距離感近くない?」
テイオーさんが正月明けにそんなことを言い始めた。嫉妬するテイオーさんもとおと……ではなく、言われて見ればタキオンさんとトレーナーさんの距離感が近い気がする。
「2人の距離が近いというかタキオンさんが近い気もしますが……」
年末年始の間、私とテイオーさんは実家に帰省してた。けど、話によると、タキオンさんとトレーナーさんは帰省せずに学園に残っていたらしい……
「む〜なんかムカムカする!なんで僕がタキオンにムカムカしなきゃいけないのさ!」
テイオーさんも御立腹のご様子。
「ふっふっふ。これはデジたんの出番ですね!テイオーさんこのデジたんにお任せ下さい!」
幸運なことに私はタキオンさんとは同室。しかも、トレーナーさんとも軽い会話も出来る関係です!
「本当に!?それじゃあお願いしてもいい?デジたん」
「もちろんですとも!」
何よりも、ウマ娘ちゃんとイチャイチャするという深い業を背負ってるトレーナーさんの調査は必須事項です!
というわけで、その日の晩にさっそくタキオンさんに確認することにした。
「タキオンさんお話があります」
「おやおや。改まってどうしたんだい?」
いざ話かけたのはいい。でも、どうやって聞き出せばいいのか……遠回しの言い方で誘導するように?否!
「わたくしアグネスデジタル。ウマ娘ちゃんを騙すような非道な真似はできません……故に直球にお聞きします!年末年始にトレーナーさんと何があったんですか!」
「ふぅむ……『特別』変わったことは何もなかったがね……」
平然とタキオンさんはそう言った。口調やトーンは平然としていた。そう……それだけは。
「思い出して顔が緩んで尻尾をブンブンしてるのに信じられません!」
それ以外のところが全ておかしかった。明らかに浮かれてるのが分かる。
「なーに。いつも通り私のお世話をしてもらっただけさ。ご飯作って貰ったり食べさせて……おっと、やはり何もなかったがね」
この人食べさせて貰ってっていいかけてましたよね……タキオンさんも手遅れ……完全にフラグ立っちゃってますって!もうまともなのは私しかいないの……
「なるほど……2人で一緒にいる時間が増えて好感度爆上がりと」
「好感度?それは恋愛的話をしているのかい?トレーナーくんはトレーナーくんで私のお世話係なのだよ?当然のことをしているだけでそこに恋愛的要素は無い」
トレーナーさんの代わりなんていなくて、一緒にいるのは当たり前と……
「そんなに言うならデジタルくんもトレーナーくんの部屋で一緒にいればいいじゃないか!」
どうやら私の顔から不満が漏れ出てたみたいで、タキオンさんがそう言い放った。
「どうしてそうなるんですか……」
「君にもきっと改めて見えるものがあるはずさ」
っと言うわけで、原稿を仕上げる手伝いをお願いして今に至ります。まぁ、トレーナーさんに漫画を描く技術なんてないので、これは口実に過ぎないのですが。
「トレーナーさん。さっきから私の作業をじっと見ていますけど……暇じゃないですか?」
さっきからトレーナーさんに頼むのと言えば、あれとってこれとってと言うだけ。それ以外の時は私の手元をじーっと見てる。
「いや〜まさかデジたん先生のお手伝いをすることになるとは思ってなくてな……今後もこういうことがあるかもしれないから、少しでも作業を覚えれればいいと思ってな」
トゥクン……トゥクンじゃないですよ!私はそんじょそこらの恋愛クソザコウマ娘ちゃんたちとは違うんです!
「トレーナーさんのことだから、時間使って本格的な補助出来るレベルになってそうで怖いんですけど……」
知識を詰め込んでひたすら絵を描く練習とかしてそうなんですよね……次一緒に描く時とか線の引き方とかベタ塗りとかそういうのできるようになってそう……ん?次に?
「デジタルもテイオーと同じで、俺の担当であることには変わらないよ。だから、デジタルのやりたいことを支えられるなら出来ることはやるつもりだ」
ぐふぅ……ウマ娘ちゃん以外で心に衝撃が走るなんて。まぁでも?テイオーさんほどじゃないですけど、私もちゃんとトレーナーさんに面倒見てもらってますし?補助してくれると言うなら次もお願いしようかな……
「あっちょっとここからの作業はお手伝いしてもらえることがないので……うーん。これ貸しますので好きなものを描いて見てください」
お絵描き用の道具一式とノートを渡した。そこからは無言の作業だった。集中していたせいで無言になってしまったんですが……その間、トレーナーさんも何かを一生懸命描いてる様子だった。
数時間して私の作業はやっと終わった。なんでだろう、普通に誰かに見られながらの作業って緊張するのに……今日は自然体というか、すごい気楽だった。
「トレーナーさんこちらの作業終わりましたー」
「あ〜俺ももう少しで終わるところだ」
っは……そういえば作業に集中するがあまりに本来の目的を忘れてた。タキオンさんは改めて見えるものがあるって言ってた。今日あった事を思い出そう。
トレーナーさんは優しかったし、寄り添いながら私をしっかりと支えてくれた。居心地も……悪くなかった。
「よし!できたぞ」
私がそんなことを考えていると、トレーナーさんの絵が完成したご様子。
「流石にデジタルみたいに上手くは描けなかったけどな」
そう言って渡してきたノートには私が描かれていた。フリフリのスカートに色んな色を使ってカラフルなデザインの服。そして、笑顔でピースをしてる私。
「トレーナーさん。これって」
「あ〜……絵を描くのって難しいんだな。体の構造とか分かんないし、色とかも塗るのって難しいし」
違う。私が聞きたかったのはそういうことじゃないんです。私はここに描かれるのは私じゃないと思っていたから。
「テイオーさんを描くと思ってました」
ここに誰かを描くとしたらテイオーさんだと思ってた。けど、そこに描かれているのは私だった。
「あ〜それも考えたんだけどな。ほら、デジタルはいつも誰かを推して、それを絵にしたり漫画にしてるだろ?でも、デジタルの事を推して描くのってまだ誰もいなそうだったから」
私はまだデビューもしてないただのウマ娘……話題性もないから私のことを推してくれる人なんて居ない。そんな私を……トレーナーさんは。
「私を推してるんですか?」
「当たり前だろ?自分の担当を推さないやつがどこにいる」
そうですよね……あくまでトレーナーとして、担当ウマ娘のことを応援してる的な意味で……
「それにビジュアル的にも良いしな……絡みやすい性格してるし」
私は道具を片付けて、トレーナーさんの方を見ずに質問をした。とってもズルい質問。
「テイオーさんと同じくらい推せますか?」
「そりぁ今はそうだな。付き合いも短くないし。その時になったら全力でサポートするつもりだ」
私はそれを聞いて、立ち上がってそのまま帰ることにした。
「おっ?もう帰るのか?」
「はい……今日はお手伝いありがとうございました」
トレーナーさんと顔を合わせずに走って寮に向かった。誰にも顔を見られないように全力で走った。だって……こんな真っ赤で緩んだ顔を誰にも見せられないから……
(あぁ……恋愛クソザコウマ娘ちゃんたち……バカにしてすいませんでした。私もまた恋愛クソザコウマ娘でした)
後日、テイオーさんには何もなかったと伝えました……