トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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第29話:ジャパンカップに向けて

 天皇賞秋翌日。俺はミーティング前に考え事をしていた。

 もちろんテイオーのメンタル的調子のことだ。初めての敗北を知っての昨日今日。レース後のテイオーはいつも通りだったが、果たしてそれが空元気から来るものだったか。

 他にも考えることはある。テイオーに関しては次に挑戦すべきはジャパンカップだ。ジャパンカップは国内だけでなく国外からも強いウマ娘が参戦する。期間的に考えると、今からメンタル的に引きずられるのはマズイ。

 最後にタキオンとデジタルのデビュー戦だ。正直、こっちはあんまり心配していない。だって、あいつら俺が居なくても勝手に自分を鍛えて強くなっていくんだ。トレーナー泣かせなやつらだ。

 

「トレーナー君待たせたね」

 

「おまたせしました〜」

 

 そんなことを考えていると、タキオンとデジタルが部屋に入ってきた。

 各々が席に座るとノートパソコンを開いて、先日の記録やデータを管理し始めた。

 

「2人から見てテイオーはどんな感じだった?」

 

「テイオー君かい?私はいつも通りに見えたけどね。特に空元気のようにしてるような様子じゃなかったよ」

 

「いつも通り……だったんでしょうか。なにか違うような気がします」

 

 デジタルはこじんまりと手を挙げて意見を主張した。

 流石のデジタルの観察眼。並の人間じゃ分からない程の違いをデジタルは見分けるのか。

 

「やっぱり流石に落ち込んでるか……」

 

「あっいや。落ち込んでいたわけではないんですけど。なんていったらいいんでしょうか。とりあえず!違和感がありました!」

 

 違和感ねぇ……落ち込んでる様子はないか。それなら一体何に違和感を感じたんだ?無敗の3冠が敗れたこと?ライバルに負けたことを気にしているとか?

 

「トレーナー君。そんなに私たちが考えたって仕方がないじゃないか。当の本人に聞くのが1番効率的だよ」

 

「効率的なぁ」

 

 たしかに、直接聞いた方が答えは直ぐに得られる。けど、テイオーにとって触れてほしくない問題だと考えると……

 いや、変に考えたってしょうがない。聞いている感じ大きな問題ではなさそうだ。それが逆に意思疎通しないことによって大きな問題になるのは避けたい。

 

「よし、俺が直接聞くよ」

 

「おまたせ〜みんなもう集まってんじゃん」

 

 そう決意した直後、テイオーが部屋に入ってきた。決意はしたけどさ、こう間髪入れられずこれられると俺も頭が少し混乱するんだが。

 

「よっようテイオー調子はどうだ?」

 

 少しぎこちなくはなったが、とりあえず聞いてみるしかない。

 

「あぁ……心配してくれてありがとねトレーナー」

 

 何かを察したかのように、苦笑いしながらテイオーはそう答えた。どうやら、こちらの質問の意図はお見通しらしい。

 

「心配になるのは分かるよトレーナー。正直ネイチャに負けたのはすっっごく悔しかったし!でもね、次は負けないって落ち込むどころか燃えてるんだよね」

 

 なるほどな。これがデジタルの言ってた違和感の正体か。初めての敗北の悔しさを強さに変えたんだな。

 

「なら、ジャパンカップで勝つぞ。噂だとナイスネイチャも出走予定らしいからな。2400mっていう大舞台でリベンジとさせてもらおう」

 

「もちろんだよ。次は絶対に負けない」

 

 よし、テイオーはこれで問題ないな。敗北を経験してもその心は折れるどころか燃え上がってる。

 

「次にタキオンとデジタルのデビュー戦が決まった」

 

「つっついに私もウマ娘ちゃんたちと!」

 

 デジタルはウヒョーと喜んでいるが、タキオンは静かに笑いながら闘志をもやしていた。

 

「デジタルは今後の計画を考えて、ダート路線を最初は走っていこうと思う。芝も十分戦えると思うが、芝とダート2つで走りたいという本人の意思を汲んで、クラシック路線は走らない方向性で行く」

 

「ありがとうございます!私頑張っちゃいますよー!」

 

 最初はタキオンとデジタルのクラシック路線でのぶつかりを危惧したが、デジタルのプランだとクラシック路線は厳しいという結果になった。

 

「タキオンも皐月賞に向けてのスタートラインだ。大事なデビュー戦気合い入れてけ」

 

「っふっふっふ。私を誰だと思っているんだい?私は皐月賞に強い因縁を感じているが。私はダービーまで駆け抜けて見せるよ」

 

 タキオンもデジタルも準備万端。正直なところ、この2人に関してはデビュー戦には過剰戦力と言っても過言では無い。

 

「あっ!2人のこともいいけど、ボクのジャパンカップどうするのさ!?天皇賞じゃネイチャに完敗させられちゃったんだよ?」

 

「あぁ、それに関しては俺にも秘策があってだな。トレーニングのために2人のウマ娘を呼ばせてもらった」

 

 ガチャっと扉が開く音がした。

 

「イヤッフー!トレチン!テイオーちゃんよろよろー」

 

「っふ……テイオーのトレーニングのためなら少しは手を貸すよ」

 

「えっと……トレーナーこれはどういう」

 

 前回のレースで、ヘリオスたちのデッドペースによりペースを乱されて、ナイスネイチャの策略と圧によってスタミナを上手く削られた。テイオーにはどんな状態でも万全な走りをできるペースメイクとメンタルが必要だ。

 

「今日からテイオーにはこの2人と走ってもらう。もちろん、2人のトレーナーの方には許可は得ている」

「まず先頭をダイタクヘリオスが大逃げで走る。先行の位置でテイオーに走ってもらい。その後方からルドルフに今まで経験してきた、煽りや戦略の全てを仕掛けてもらう」

 

 ペースメイクを完璧にするために有用な人間はこの2人以上にいない。特に、レースを乱すことを得意とするナイスネイチャの策にハマっていたら勝てるものも勝てない。

 

「とっトレーナ〜……」

 

 涙目で俺の方を向いてくるテイオー。すまない。これもお前が強くなるためなんだ。

 

「かっかいちょ〜」

 

「頑張ろうなテイオー」

 

 ルドルフはニコりと満面の笑みでテイオーに応えて見せた。それを見てテイオーも諦めたのか大人しくトレーニングの準備を始めた。




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