トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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テイオーが出走したジャパンカップは結構バックグラウンドが複雑で表現に苦労しました……レース難しい。


第30話:ジャパンカップ

 今日はジャパンカップ当日。この1ヶ月、カイチョーとヘリオスから地獄のような特訓を受けた……

 

「いや、本当に地獄だったなぁ……」

 

 特訓の事を思い出すと、自然と遠い目で天井を見上げてた。

 前には、とんでもないデッドペースで走るヘリオス。後方からは、今まで感じたこともない威圧感を放つカイチョー。

 1回だけ、興味本位で後ろを振り向いた時、カイチョーの顔が見えた。普段のカイチョーの優しい顔からは考えられない恐ろしい顔をしてた……あの時はペースが凄い乱れてトレーナーに怒られたっけ。

 

「どうした?随分と遠い目をしてるけど。今は最後のミーティング中だぞ。こっちに集中してくれよテイオー」

 

「ごめんごめん。大丈夫、ちゃんと聞いてるよトレーナー」

 

「ならいいが……今年のジャパンカップは、例年のレースよりもハイレベルなレースになることが予想される。海外からも現役トップクラスのウマ娘が集まってる。それこそルドルフ級のウマ娘が集まってるんだ」

 

 そう、今日のレースにはカイチョーレベルの娘たちが集まってる。でも、緊張はしてない。特訓でその怖さを知ってるからかな……

 ううん……遂にここまで来たんだって嬉しいせいだろうな。

 

「海外と日本じゃレースメイクの仕方がかなり違ってくる。その中で如何に自分の走りが出来るかが重要になってくる」

 

「任せてよ!その為にカイチョーたちに特訓付き合って貰ったんだからさ」

 

「あぁ、そこはテイオーのことを信じてるよ。今のテイオーは周りに揺さぶられるようなことは無い」

 

 そう言ってから、トレーナーは一度口を閉じてから一息入れた。

 

「だが、それは相手も同じこと。ジャパンカップはそういうレベルのレースだからだ。想いだって、絶対にこのレースに勝つんだって強い想いで皆が挑んでる……

 だからこそ、最後に勝負を決めるのは今まで積み重ねてきたもの。フィジカルの強さが勝負を決めることになる。だから、テイオーは最後まで自分を信じて走りきれ!」

 

「うん!任せてよね!絶対にこのレース勝ってみせるよ!」

 

「あぁ……全力でぶつかってこい!」

 

 トレーナーはそう言って観客席に向かっていった。

 

 

 観客席に戻ると、タキオンとデジタルだけでなく、チームリギルのメンバーが勢揃いしていた。

 

「東条さん随分と大所帯で来たんですね」

 

「当たり前でしょ。出走するウマ娘は世界トップクラス。国内からの出走は、天皇賞秋で確かな力を見せたナイスネイチャ。あんたのところにトウカイテイオーよ?寧ろ来ない理由がないわよ」

 

 俺の戯言にそう返す東条さん。それに賛同するように、横に居たルドルフも頷いている。

 

「それより、随分と余裕そうじゃない?今回のレースはそう簡単に行かないと思うけど」

 

「どうせルドルフに全部聞いてますよね?名実ともにテイオーが日本の帝王としての走りを見せてくれますよ」

 

「全く……可愛げがないんだから」

 

 東条さんは肩透かしを食らったようにターフに視線を戻した。

 

「今のテイオー君の実力は確実に現役時代のシンボリルドルフ君の肩を並べる……いや、フィジカルだけで言えばそれ以上と言っても良いだろう!」

 

「そうです!テイオーさんは天皇賞が終わってから更に成長したんですから!」

 

 タキオンとデジタルが、2人で腰に手を当ててハーッハッハッハと高笑いをし始めた。

 デジタルもテイオーの成長を間近で見ていた1人。そのテイオーが今日、ジャパンカップと言う舞台で走ることに心踊ってる様子だ。

 

「正直言って自信はあります。ただ、今年のジャパンカップは例年び比べてレベルがかなり高いです。テイオーと競り合うウマ娘は確実に出てくるとは考えています」

 

 テイオーが国内トップクラスのウマ娘であるように、今回出走するウマ娘もその国の中でのテイオーのような存在だ。

 

「でも、今のテイオーの勝利への貪欲な気持ち。それが勝利に導くと思います」

 

 敗北を知っているからこその勝利への執着がある。それを初めて知ったテイオーの勝利への欲は未だかつて無いほど大きい。

 

 

『出走するウマ娘はゲートに入ってください』

 

 遂に始まるんだ。今までのレースとは比較的にならない程空気がピリピリしてるのが分かる。

 

「テイオー」

 

「ネイチャ……」

 

 呼びかけられて振り向くと、ネイチャがボクに握手を求めるように手を差し出してた。ボクはその手をグッと握り返した。

 

「今回もテイオーに勝つよ」

 

「ボクだって負けないよ。でも、敵はネイチャだけじゃないから」

 

 ネイチャにリベンジしたいって気持ちはもちろんあるけど、ネイチャに目を取られてレースに負けたら元も子もない……

 ってトレーナーの受け売りなんだけどね。ボクもレースに勝ちたいから、意識はしっかりと切り替えて行くよ。

 

『全てのウマ娘がゲートに入りました』

 

『芝2400m晴。バ場状態重。世界の強豪が集うジャパンカップ。その頂きを手にするのはどのウマ娘か。今……スタートしました!』

 

 

 スタートしてしばらく、俺たちは戦慄した。

 海外のトップクラスのウマ娘が集まる以上、情報収集は欠かしてない。レースの映像やデータ。そこから特徴や実力を割り出していた。この作業はデジタルとタキオンと俺の3人で行った。

 今回はヨーロッパから主に強豪が集まってきた。そのレース環境での培われたフィジカルと作戦。それを踏まえた上で、俺たちは有利なレースになると考えていた。

 

「正直想像以上だな」

 

「例年に比べてレベルが高いことは想像していたけどねぇ。今のテイオー君なら問題ないと思っていたよ」

 

「海外レースは直接見る機会は俺にはまだなかった……と言ったら言い訳になるか。改めて海外ウマ娘の実力の高さには驚かされるよ」

 

 レースは時計だけでは決まらないと言う言葉がある。全くもってその通りだ。

 海外と日本じゃレース環境が全く違う。それ故に戦略も必要な力も変わってくる。長い期間をかけて日本のレースに慣れているなら話は別だが、今日出走しているウマ娘はそういう訳では無い。

 圧倒的な実力とレースセンスに適応力。流石はトップクラスのウマ娘ではある。

 

「テイオーが海外でこのメンバーでレースをしたら正直危ない勝負になるだろうな。けど、ここは日本だ。テイオーが有利な状況で、入念な準備をしていない相手に負けるわけが無い」

 

「でもでも!日本からはネイチャさんが出走していますよ!?天皇賞のこともありますし……」

 

 たしかにナイスネイチャの存在は危険だ。実力はテイオーに匹敵する。

 だが、先日の天皇賞のレースや今までの事を踏まえると、彼女がテイオーをマークしているのが分かる。それ故にこのレースは勝てない。1人に絞ったマーク。その作戦は有効ではある。

 

「それは出走メンバーで突出した数名がいる場合。スタートからの展開を見れば、ここにいる全てのウマ娘がマークするに値するメンバーだ。テイオーが突出した実力者でない以上、テイオーばかりをマークすると痛い目を見るだろう」

 

 恐らくレースが動くのは終盤になる。現状テイオーのポジションは悪くない。完全にラストスパートの競り合いが勝負を決める。

 

 

 レースが中々動かない……このピリピリしたレースで、つい前に出たくなっちゃう。でも、トレーナーが最後に脚を溜めろって言ってた。だから、ボクが今やるべきことは、脚を溜めてポジションを確保すること。

 

『レースは2000mを通過!レース展開がじわじわと進んできた!全ウマ娘が!ゴールに向けて着実に準備を進めている!』

 

(あと400m……ラスト200mで一気に抜く!)

 

 ボクは今先頭集団の中にいる。後方からみんながグングンと伸びて来るのがわかる。でも、それじゃ遅い。ラスト200mのスパートで後方も突き放す!

 

『レースが動く!動く!300mを通過!後方からグングンと上がっていくウマ娘たち!そして、200mを通過……おぉっと!トウカイテイオーが外から飛び出した!』

 

 ボクが一気に前に出たと思った。けど、そんなに甘くはないよね!

 

『トウカイテイオーにナチュラリズムが並んだ!激しいデッドヒート!』

 

『I won't lose to you. I'm the one who wins』

 

「なんて言ってるか分かんないけどさぁ!ボクは負けないよ!」

 

『残り100m!トウカイテイオーか!ナチュラリズムか!譲らない!2人は横一線!』

 

(負けない!絶対に負けるもんか!)

 

【究極テイオーステップ】

 

『残り50mでトウカイテイオーが前に出た!トウカイテイオーだ!トウカイテイオー!今1着でゴールイン!』

 

 ゴールできた……1着?勝った……ボク勝てたんだ。トレーナー……ボクは勝ったよ。

 ボクはトレーナーの方を向いてガッツポーズをした。

 

『トウカイテイオーこの勝利にはガッツポーズだ!日本の帝王が!ジャパンカップを制したぁぁぁあ!』

 

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