トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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デジたん可愛いけど解像度が低すぎる!


第32話:アグネス達の戦績

 テイオーの有馬記念への準備を進めつつ、俺はタキオンとデジタルのデビュ―からの戦績を振り返っていた。

 元々は、2人が自由にトゥインクルシリーズに出走できるように俺と契約をしたわけだが。ここまで一緒に色々とやってくると、見ているだけというのはさすがに自分の性格的にも難しかった。

 今でもテイオーをメインに見ているのは変わらないんだけど、トレーニングの内容を見たり。その内容にアドバイスをしたり。最低限2人に必要なサポートはしている。

 

「タキオンの戦績は全く問題ないんだよな。むしろ調子が良すぎるくらいだし」

 

 デビュー戦は問題なく1着。しかも、自走のレースでもジャングルポケットという強敵を前にレコードタイムで勝利。脚の方にも特に問題なくて、怪我の前兆も特にない。

 問題は……デジタルの方だよなぁ。デビュー戦は、初めての本格的なレースでウマ娘に囲まれたこともあって、デジタルの頭はオーバーヒート。パニックになって逃げと言ってもいいペースで走って、最終的に抜かれてしまい2着に終わった。

 

「すいません。トレーナーさん。お話よろしいでしょうか」

 

「あぁ、大丈夫だよ。どうしたデジタル」

 

 最近のデジタルは気丈に振舞ってはいるけど、明らかに元気がない。ジャパンカップの時なんかは楽しそうにしていたが、自分のことで悩んでいるようだった。

 

「その……レースプランのことなんですけど。やっぱりデジたんはダート路線を走った方がいいんじゃないかって思いまして」

 

 やっぱり、もみじSで8着だったことが結構ショックだったんだな。

 

「たしかに、芝のレースで結果はでなかったけど今諦めるのは時期尚早だと思うぞ」

 

「でも、デビュー戦で負けちゃったり、ダートレースもおぼつかないのに……」

 

 デジタルの戦績はここまで6戦3勝。そのうち1勝はG2レースだった。本人はレース戦績があまり良くないという認識らしい。

 

「デジタルにはレースやウマ娘とのレースに慣れてもらう為に出走回数が多い。出走回数が多ければ負けるリスクだってもちろんあるさ」

 

 正直、レースの勝ち負けにはあまりこだわっていなかった。デジタルの体はまだ出来上がっていないし、デジタルのレースとウマ娘に囲まれることに慣れるという目的が大きい。

 その中で、デジタルは3勝。しかも重賞にも勝ってる。十分すぎる戦績を残してるし、その中での成長は著しい。

 

「でも……タキオンさんやテイオーさんはもっと……」

 

 タキオンは未だに無敗で。レコードタイムをたたき出し、同期たちは一線を画す実力見せつけた。

 テイオーはつい最近の天皇賞秋までは無敗。そこまでにも様々なG1レースで勝利してきた。

 デジタルは2人を見て自分も勝ちたい。勝たなきゃいけないと思い始めたんだろう。形はどうであれ、デジタルが勝利というものに固執するようになったのは嬉しい。ただ、このままの固執の仕方は良くない。

 

「みんなは勝ってるのに自分は勝てない。惨めな思いをするのも分かる。じゃあ、それを隠す為に見栄を張るためにデジタルはレースで勝つのか?自分が何でレースに出走したいと思ったか忘れたのかデジタルは」

 

「私はウマ娘ちゃんたちが頑張って走っているのを間近で見たくて……」

 

「なら、そのために勝ちたいと頑張れ。他人のために頑張りたいというのも勿論悪いことじゃないけど、今のデジタルは2人に劣等感みたいなものを感じて焦っているんだろう」

 

 デジタルは俺の言葉を聞くと呆然としていた。そして、正気に戻ると焦ったような照れているように首を振っている。

 

「いやいやいや。私みたいなモブがお2人みたいな主人公ウマ娘に劣等感を抱くなんて恐れ多い!」

 

「さっき、タキオンやテイオーはもっと勝ってるって言いたかったんだろ?それは、惨めさを感じると同時に自分は2人より速くないから勝てないという劣等感。もっと自分も勝たないとという焦りだ」

 

「でも……実際に私はお2人みたいに凄いウマ娘ではないので……芝もダートも走りたいなんて言って。芝では惨敗、ダートレースでも安定してないです」

 

 デジタルはまだ、成長途中だ。身体だって完全に出来上がっていない。精神面でもまだ完全じゃない。そういったものはこれからの経験から培われるものだ。

 きっと、デジタルはそれを理解してる。けれど、それはタキオンも同じこと。だからこそ今まで以上に焦りを感じているのだろう。そのせいで、デジタルは自分がどれだけ凄いことをしているか理解できていない。

 

「そりゃ、デジタルは周りに比べて成長に時間がかかるからだろうな」

 

「そう……ですよね。私みたいに才能のないウマ娘は」

 

「違う違うそうじゃない!」

 

 俺の言葉を違う捉え方をして、デジタルの耳がペタンと垂れてしまっている。俺の言い方も良くなかったかな……

 

「デジタルが芝のトレーニングをしている時に芝レースに出走するウマ娘は何のトレーニングをしている?」

 

「えっと、芝レースのトレーニングですよね?」

 

「そうだ。じゃあ、デジタルが芝のトレーニングをしている時にダートレースに出走するウマ娘は何のトレーニングをしている?」

 

「ダートトレーニングですね……あっ!」

 

 ここまで聞いてデジタルも俺が言いたいことがなんとなく理解できたようだ。

 

「どちらもトレーニングしているデジタルに対して、相手はそれに特化したトレーニングをしている。そうなると、その分のトレーニング量の差ができる。その差を埋めるのは中々難しい」

 

「なら、やっぱりダート1本に絞ったほうがいいんじゃ……」

 

「デジタルがオールラウンダーになりたいって聞いたときから俺は覚悟していた。どちらも中途半端になってレースに勝てないんじゃないかって」

 

 芝とダート。走る距離が同じだとしても、トレーニングの内容には違いがある。走る感覚だって全然違ってくる。だからこそ、その2つを両立するのは難しい。

 

「でも、デジタルの才能は俺の想像を超えてたよ。ダートでは重賞レースで勝利して、芝は順位こそ低かったが、しっかりとレースになっていた。ダートに必要な能力を上手く芝で活かしたりできる高い適応力もある」

 

「うぅ……」

 

 俺がデジタルのことを褒めると、デジタルは顔を真っ赤にしながら顔を隠している。普段人から褒められることになれてないんだな。

 

「なら、必要になるのは基礎をしっかりと鍛えてレース経験を積むことだ。そうすれば確実にデジタルはオールラウンダーとして活躍できると思うよ。俺はデジタルの才能を信じてる。だから、デジタルは自分の可能性をもう少し信じてやってくれ」

 

「わかりました!デジたんやって見せます!」

 

「おうその意気だ!」

 

 デジタルにとっては今は辛い時期になるだろう。ダートと芝を走る以上安定した戦績を納めるのも厳しいときがあるだろうが、デジタルなら絶対に芝のG1レースでも勝利できる時が来る。

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