トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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RTTTは映画館で見ようと思います


第33話:有馬記念

 遂に今日は有馬記念当日。年に一度の大舞台。レース場は多くの観客で満たされて、他のG1レースとも一線を画すほどの賑わいを見せている。

 

「テイオー緊張はしてないか?」

 

「ふっふっふ。ボクは無敵のテイオー様だよ?緊張なんてしてるわけないじゃん!」

 

 ここ最近のテイオーの調子は絶好調。調子だけじゃない、身体も出来上がっており仕上がりも完璧だ。

 そして、天皇賞秋の敗北。ジャパンカップでの強敵とのレース経験。それによって、精神的にも大きな成長を見せた。

 

「けど、そう簡単にもいかなさだぞ。出走メンバーは流石のG1レース。実力を着実に伸ばしているメジロパーマー。ナイスネイチャも出走するし、イクノディクタスも侮れない」

 

「ぐぐぐ……ネイチャとパーマーには天皇賞秋で痛い目を見させられたもんね。今回は負けられないよ!」

 

 ナイスネイチャは素のフィジカルが以前よりも上がっている。それだけじゃない、ジャパンカップのテイオーを見て、揺さぶる技術、レースを動かす技術を今のテイオーに通じるレベルに鍛えているはずだ。

 そして、個人的に一番警戒しているのはライスシャワーだ。クラシックの3レースを通して着実に実力を伸ばし、3冠を取ると言われていたミホノブルボンをも下した。

 

「でも、2人にだけ気を取られるわけにはいかないよね。デジたんが偵察して、タキオンがデータを集めてくれた。ちゃんとレースを見て頑張るよ!」

 

「なら大丈夫だ!全力で走ってこい!」

 

「うん!」

 

 やる気満々のテイオーを後に、俺はみんながいる観客席に向かう。

 観客席にはタキオンとデジタルに加えて、ルドルフも同じ観客席に座っていた。

 

「今日は東条さんと一緒じゃないのか?」

 

「もちろん来ているよ。けど、私は君たちとテイオーのレースを個人的に見守りたくてね」

 

 なるほど、東条さんもチームとして有馬記念を見に来てはいるんだな。今回は癖の強いメンツも集まっているから情報収取もしたいだろうしな……

 

「そんなことよりも、テイオーの調子はどうだい?大きな勝利の後に燃え尽きてしまい、闘志が消えてしまうウマ娘も少なくはないが」

 

「テイオーがそんなタイプに見えますか?」

 

「っふ……それもそうだな」

 

 天皇賞秋での敗北。そして、ジャパンカップでの強敵たちとのレース。それがあって、今のテイオーは寧ろライバルたちと競い合うことに楽しさすら感じている。

 

「テイオー君は変わらず絶好調。ジャパンカップという大舞台でのレースで以前よりも大きく成長した!」

 

「怪我などの様子も見られませんでしたし。体の健康はデジたんとタキオンさんでしっかり調べましたから!」

 

 テイオーに引っ張られるように、タキオンとデジタルも成長が著しい。特にデジタルはメンタル的な面で大きく成長した。自身に以前より自信を持っているし、距離感の近いタキオンとテイオーと共に過ごすことで、ウマ娘に対する抵抗力も上がっている。たまに、昇天して溶けてるけど。

 そんな感じで、俺たちはみんなテイオーの勝利を疑っていなかった。テイオー自身も慢心なんてしていなかった。だからこそ今の状況が理解できなかった。

 

「テイオーが11着?」

 

 レース開始前の明るい雰囲気は一変し、空気が凍りついている。レース展開は絶望的だった。終始テイオーのスピードは伸びずにポジション取りもできなかった。

 

「タキオン!デジタル!急いでテイオーの控室に!俺も後を追うから!」

 

 俺の声で、唖然と電光掲示板を見ていたタキオンとデジタルは動き出した。

 レースではずっと後方を走っていたが、それでもレース自体は走り切っていた。その様子を見るに、骨折などの大きい怪我ではないとは思うが……やっぱり、序盤に接触があったのが問題だったか?

 

 

 スタート直前のピリピリとした空気感。そして、そこに流れるスタートを告げようとするアナウンス。

 スタートの合図と同時に体を動かした。タイミングは完璧……だったはずなのに。

 

(スタートでトモを滑らすなんて!)

 

 そのせいでスタートに出遅れてしまった。そして、若干の腰当たりの痛みを感じる。

 

(腰が少し痛いけど……この程度ならなの影響もなく走れる!)

 

 レースには影響のない程度の痛み。けれど、スタートのミスと腰の痛みに気を取られ過ぎた。

 

「うわぁ!」

 

 スタートの混雑した中で隣にいたウマ娘の娘と接触してしまった。普段なら接触をたとえしたとしても、うまく受け流すんだけど……

 腰に気を取られていたせいで、接触を上手く流せなかったこと。そして、既に腰を痛めていた事。その二つが重なって、腰をひねってしまった。

 体勢を立て直した時には、既にボクは列の後方にいた。

 

(流石にマズイ!まだ、レースは序盤。今ならまだ取返しがつくはず!)

 

 そう思って、ボクは前に出ようと足に力を入れた。そして、一気に前に追いつく!はずだった。

 

(ッツ!腰にうまく力が入らない!)

 

 そのまま、ボクは後方を走り続けた。どれだけ前に行こうとして、どれだけ足を動かそうとしても体は動いてくれなかった。そんなこのレースは、とても長いようで一瞬で終わってしまった。

 

 

「テイオー!大丈夫か!」

 

 俺がテイオーの控室に入った時には、既にタキオンとデジタルによって応急処置が始まっていた。

 

「あはは、トレーナー。やらかしちゃった」

 

 テイオーは処置を受けながら、笑いながら俺にそう言った。しかし、その笑い声はいつものように力強いものではなくか弱いものだった。

 

「ふむ……腰の筋肉を恐らく痛めているね。大きな怪我ではないが、しっかりと病院で診察を受けた方がいいね。トレーニングプランも一から練り直しだね」

 

「テイオーしゃん!テイオーしゃーん!」

 

「大丈夫だからそんなに泣かないでデジたん。心配してくれてありがとう」

 

 テイオーの応急処置も終わり、一段落というところで扉をノックする音が聞こえた。扉を開けるとそこには、さっきのレースでテイオーと接触してしまったウマ娘が立っていた。

 

「さっきはごめんなさい!私の所為で怪我までさせてしまったようで!」

 

「何を言っているんだい?あの程度の接触、レースの中では十分起こりえる現象だ。それに対応できなかったのは、スタートミスで気をレースから離してしまったテイオー君にも非がある」

 

 タキオンが相手の言葉に対して間髪入れずにそう言った。事実、大人数で同じコースを走るという性質上、接触は仕方ないと言ってもいい。しかも、今回はテイオーの不注意で起きたと部分もある。

 

「だから、気にしないでくれたまえ。ほら、デジタル君。私たちも帰り支度をしなくてはいけないだろう?」

 

 普段のタキオンからはあり得ない発現。帰り支度をする?あのタキオンが?俺がいないと碌に食事も取らず、普段から準備片付けは俺とデジタルに押し付けてるあのタキオンが?

 驚いていると、タキオンが俺の横まで来た。

 

「あとは任せたよトレーナー君」

 

 俺にそう言った。そして、訪れてきたウマ娘を帰らせて、デジタルを連れて部屋を後にしようとしている。

 

「タキオンお前、意外といい奴だな」

 

「君たちに私も充てられてしまったのだよ」

 

 俺とテイオー以外が退出して、部屋には二人きり。

 

「トレーナーごめんね。調子も体のコンディションも最高に仕上げてくれたのにさ。ボクミスしちゃった」

 

 テイオーは酷く落ち込んでいた。例えレースで敗北しても悔しがることはあった。レースで失敗して落ち込んでいることもあった。しかし、ここまで落ち込んでいたことがあっただろうか。

 そんな、テイオーを見て俺はどうしていいか分からなかった。落ち込んでいる理由は分かる。けど、それをどうやって伝えていいか頭で分からなかった。しかし、体は勝手に動いていた。

 

「トットレーナー!?」

 

 俺はテイオーを体を抱きしめた。そして、頭を胸に寄せた。

 

「レースに絶対はない。レース中のトラブルはいつ起こるか分からない。環境だってどうにかなるか分からない」

 

 テイオーも例外ではない。トラブルに細心の注意を払って、リスクを軽減をすることはできる。しかし、完璧に防ぐことはできない。環境の問題なんて自分たちにはコントロールできない。雨が降るときは雨が降るし、晴れるときは晴れる。

 だが、皆がそういった状況の中で対策し、自分のその時々の全力を出して走ってる。

 

「テイオーは自分の全力を出せなかった。それでも、その条件下で確かに本気で最後まで走ったんだ。負けたんだから落ち込むなとは言わない。けど、自分のミスで負けたことを悔しがって、そんな条件で最後まで諦めず走ったことを誇りに思え」

 

「うっ……うわああああ!負けちゃった!悔しいよトレーナー!」

 

 そうだ、落ち込まずに悔しがれ。初めての掲示板外の順位。調子も体も絶好調。それでも、トラブルからの自分のミスで自分の全力を出せなかったという経験。それを力に変えるんだ。




みんなが絶対の走りをするために、ありとあらゆる対策をとって全力で走る。それが勝負。
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