トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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第35話:トレセン学園バレンタインステークス開催

 今日は2月14日。世間ではいわゆるバレンタインデーというイベント。男性陣からすれば心揺れる1日になる。

 ただし、トレセン学園に限っては例外になる。基本的には、ウマ娘とトレーナーの恋愛関係は推奨されていない。ここで重要なのは、推奨されていないだけであるということだ。そう、トレセン学園において、ウマ娘とトレーナーの恋愛関係は禁止されていないのだ。

 最初は俺も疑問に思った。学校でいう先生と生徒という関係ではないが、トレーナーとウマ娘はそれに近い関係だと思っていたからだ。だが、レースに出走していくウマ娘たちには、自分を速く走れるようにしてくれるトレーナーに惹かれるという本能があるらしい。

 

「やあ、おはようトレーナー君」

 

 そして、ウマ娘の肉体的、精神的成長度には大きく個人差があるからだ。ウマ娘は基本的には成人に近い状態で成長が一度ストップする。寿命は普通の人間と同じだが、老化のしかたにも大きく差が出ているそうだ。どういう理論でそういった現象が起きているのかはいまだに解明されていない。しかし、タキオン曰く、ウマソウルの走るという意思。ウマ娘の本能が走るための適性年齢で肉体の成長を止めているのではないかということだ。

 

「おはようルドルフ。君は意外とこういった催しが好きだな」

 

 目の前のウマ娘のシンボリルドルフも良い例だろう。彼女が大人びた姿になり、精神的にも成熟したのは高等部に入ってすぐの事だった。大人と遜色ない成長をしている。それゆえに、14歳以上のウマ娘との恋愛は成人を超えた男性に許されている。

 

「せっかくのイベントで皆が盛り上がっているんだ。そこに水を差すのも野暮と言うものだろう。実際に私もこういったイベントは嫌いではないよ」

 

 そういいながら、ルドルフはチョコが包まれた小包を俺に渡した。

 

「ありがたくいただくよ」

 

「それと、これはトレーナーとチームリギルからだ」

 

 もう一つもらったのは、普段なら絶対に目にすることがないであろう高級そうなチョコレート。さすがに学園最強と言われるメンバーが集まっているチーム……経済力も最強なんだな。

 

「君も今じゃトレセン学園で有名なトレーナーになった。トレセン学園では例年、誘拐や拉致といった行為に走るウマ娘も珍しくはない。生徒会も今日は1日監視で忙しくなる。出来る限り手を煩わせないでくれよ?」

 

 そういうと、ルドルフは生徒会室の方へと歩いていった。

 誘拐に拉致か……なんとなく、ウマ娘との恋愛関係が特別に許されている理由が分かった気がする……きっと、何人もの犠牲の上での決断なんだろう。南無三。

 

 その後、チームルームへと向かう最中にチョコレートや贈り物をもらっているトレーナーを見かけた。中には担当ウマ娘以外の娘からもらっているトレーナーもいる。有名なトレーナーだと、こういうこともあるんだな。

 俺なんか、俺を見るや否や、普通に笑顔で挨拶しつつ、みんなが距離をとっていく。噂によると、ウマ娘の中で、俺は別に嫌われてるというわけではないらしい。むしろ、テイオーたちが功績を挙げている分、有名にもなってるし、人気も結構あるらしい。だが、俺はそれを感じたことがほとんどない。

 

「おはよう」

 

「やぁ、おはようトレーナー君」

 

 チームルーム兼研究室に入ると、ソファーに座って紅茶を嗜むタキオンがいた。そして、机の上には異色を放つ謎の包み紙が複数個置いてあった。

 

「タキオン、そこにおいてある謎の物体はなんだ?」

 

「ふむ、私だってバレンタインデーというものぐらい知っている。私お手製の特別キャンディーだ。おっと! もちろん君の分は別で用意したから安心してくれたまえ」

 

 そう言って、タキオンが渡してきた袋の中を見ると、包み紙越しでも分かるほど、謎に輝くゲーミングキャンディーが入っていた。

 なるほど、俺が周りから避けられる理由が一つ解明された気がする。

 

「そこまで食欲をそそらないキャンディーを見たのは初めてだよ……」

 

 すると、後ろからダン! と扉を強く開ける音が聞こえた。振り向くとそこには頬を赤らめて、それはそれは幸せそうな顔をしているデジタルがタキオンお手製のキャンディーに釘付けだ。

 

「やぁデジタル君。そこに置いてあるものはテイオー君と君で食べてくれたまえよ」

 

「ウマ娘ちゃんたちの尊いバレンタインイベントを拝めた挙句に、たきおんしゃんお手製のお菓子!? あぁ……ここが天国だったのですね」

 

 なぜかデジタルがいないと思ったら、他人のバレンタインイベントを盗み見していたのか……そのまま、デジタルはタキオンの手作りお菓子を食べることが出来た喜びで、虹色に輝きながら昇天した。そして、また一つ俺が避けられている理由が解明された。

 

「それで? バレンタインに渡すのがこれか?」

 

 俺は虹色に輝きながら倒れているデジタルを指差す。

 

「やめてくれよ、倒れているのは私のせいではなくデジタル君自身の問題じゃないか」

 

「倒れてることを言ってんじゃねえよ!」

 

「安心したまえ。危険なものは一つも入れていないよ。むしろ、疲労回復などと言った実に健康的なものさ。光を放つのは副作用に過ぎない」

 

「危険じゃなきゃ何してもいいわけじゃないんだけどな……」

 

 でも、せっかく自分のために作ったものをないがしろにするわけには……ああダメだ! どうしても輝く自分が脳裏に浮かんでしまう! 

 

「ええい! ままよ!」

 

 俺は覚悟を決めてキャンディーを口に放り込んだ。控えめな甘さでくどさを感じない。異常な程に甘党なタキオンが作ったのかこれを。

 

「うまいな……」

 

 普通に美味しかった。しかも、目を開けた時に俺は輝いていなかった。

 

「当たり前だろう? それは君のために作ったものだ。特別な効果は何もないただのキャンディーだからね」

 

 そう言って、タキオンは頬を少しだけ赤く染めながらパソコンの方に体を逸らした。普段見ないタキオンの反応に不意打ちながら少しだけドキっとした。

 

「デジタル君も気絶している振りをしてないで早く起きたらどうだい? 私が柄にもないことをしたんだ。君も早くするといい」

 

「ひょえ! なんでバレたんですか!?」

 

 どうやら本当に目覚めていたようで、デジタルはガバっと体を起こした。そして、恥ずかしそうに後ろに腕を組みながら俺の前まで歩いてきた。

 

「これいつもお世話になってるお礼です! お口に合うかは分からないですけど……」

 

 デジタルから受け取った小包の中にはマカロンが入っていた。流石はデジタル、菓子作りのレベルも高いのか……

 

「ありがとう。美味しくいただくよ」

 

 普段、マカロンというお菓子を食べる機会があまりないからハッキリとは言えないが、普通に売りに出せるのでは? と思うレベルで美味しかった。上品な味わいで、こちらも俺の好みの味になっていた。

 

「マカロンって家で作れたりするんだな。なんか高級というかそういうイメージがあったよ」

 

「こう見えてもデジタル君はお嬢様だからねぇ……そういったものを口にする機会も多かっただろう。彼女が器用と言うのもあるだろうがね」

 

 そうか、タキオンもデジタルも、なんならテイオーも全員お嬢様か……こうして、毎日接していると忘れるな。いや、忘れる主な原因は彼女らにあるとは思うんだが。

 

「いやいや、デジたんなんかタキオンさんやテイオーさんに比べたら!」

「みんなおっはよー! 少し遅くなっちゃったよ。ごめんごめん」

 

 デジタルが話すのと同時に扉が勢いよく開いて、テイオーが飛び込んできた。

 

「いや~昨日の間にしっかり準備したんだけどさ、ここに来るまでに色んな子からお菓子もらってて遅くなっちゃったよ」

 

 そう言うテイオーの手提げの中には大量のお菓子が積まれていた。なんなら今にも溢れんばかりの量だ。しかもこれって始業前だろ? 帰りまでには手荷物がお菓子でパンパンだろうな。

 

「はい! これトレーナーの分だよ! 本当は一番に渡したかったんだけどね」

 

 ピンクのリボンで綺麗に結びつけられた青い小箱。可愛らしさの中に大人らしさを少し感じる包装だ。

 

「綺麗だな。開けてもいいか?」

 

「うん…みんなの前でちょっと恥ずかしいけど」

 

 テイオーは少し俯きながら、頬を少し赤らめながらポリポリと指を動かしている。その仕草からは可愛らしさというか、なんだか惹かれる大人の魅力的なものを感じた。

 テイオーも初めて会った時こそ子供らしい見た目をしていた……しかし、クラシック辺りからの成長が著しく、シニアに入るころにはすっかり大きくなっていた。

 

「テイオーこれって」

 

 箱の中にはいくつかの型のチョコレートが入っていて。その中心にはハートのチョコレートが置かれていた。

 おいおい、相手はテイオーだぞ。たしかに、最近は大分大人らしくなって魅力を感じないと言えばウソにはなるが。

 

「そそっそれはマヤがそうした方がいいって言ってたんだもん!!」

 

 あぁ、テイオーはテイオーだったか安心した。その反応は子供らしく、どこかホンワカした気持ちになった。

 

「なんだよその顔は! ふん!」

 

 テイオーはむくれながらタキオンお手製のキャンディーを口に放り入れた。まぁ、案の定虹色に輝き出したわけだけど。

 

「なんで、タキオンお前も輝いてんだよ!」

 

「だから言っただろう? これには疲労回復の作用などがあると。少々私も疲れていてね。糖分補給にちょうどよかったのさ」

 

「それにしてもだな!」

 

 ん……? 何かがおかしい。タキオンが自ら作ったものを口にして輝いているのも珍しいんだが。それ以上に違和感を感じる。

 

「何か明るすぎないか?」

 

 3人も輝いていれば、部屋が明るくなるのは至極当然のことなんだけど、3人の輝きかたから考えると部屋が明かる過ぎる。

 そんなことを考えていると、ノック音が聞こえる。

 

「生徒会だ。チーム棟の部屋から異常な光を目撃したという報告がいくつも入っている。トレーナー君どういうことか説明……」

 

 扉を開けながら、部屋に入ったルドルフは俺たちを見て硬直していた。いや……俺たちというか俺を見ている……まさか! 

 

「タキオンお前ええええ!」

 

「ふむふむ。遅延性にすることで今まで以上の発光反応ありと」

 

「忙しいから面倒事は起こさないように言ったはずだが……?」

 

 頭を鷲掴みにされて、強引にルドルフと顔を合わせられる。だが、ルドルフの顔には怒りではなく笑顔があった。まぁ……目はこれっぽっちも笑っていなかったが。

 

 




気分が上がってキャラ崩壊がががが
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