トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】 作:Tmouris_
書きたいことは書けたと思います
あぁ、私が今日という日をどれだけ待ちわびていただろうか。クラシックGⅠという最高の舞台。ジャングルポケット君にダンツフレーム君、君達には期待しているよ。
「作戦は事前に決めた通りに先行で行こう。他のウマ娘たちのマークも怖いところだが、ジャングルポケットやダンツフレームにも注目が分散している」
「そこは臨機応変に対応するさ。安心したまえ、今日のためにどれだけのトレーニングとシミュレーションを重ねてきたか、君も知っているだろう?」
ここ最近の彼女たちの成長は著しい。データにどれだけの差が本番で生まれるかは想定できない。ならば、正面からぶつかり合おう。
「それもそうだな。今更出来ることもないか。観客席で応援させてもらうよ」
「見ていたまえ。今日がまだ終わりではないが、今持ちうる全てを出し切るさ」
トレーナー君が部屋を去った後は、脚のコンディションを重点に確認した。昨日も確認を済ませて、問題がないことは分かってはいる。なのに何故だろうか。ソワソワした気持ちがなくならない。作戦は完璧に考えた。コンディションも良い。不安要素など一つも残っていないはずなのだが……
そんな気持ちを振り払うように、私はレースに挑む。
「おい、タキオン」
「おやおや。ジャングルポケットくんじゃあないか」
「私もいるから!」
「今日のレースはぜってえ負けねえ!覚悟しろよ!」
「宣戦布告とは大層なことじゃないか。想いも力も全てレースで証明したまえ。私は逃げも隠れもしないのだから」
それだけ言って、私はゲートへと向かった。
データで確認するまでもない。触れる必要すらないだろう。今日のために、彼女たちがどれほどの情熱を注ぎ、その体を仕上げてきたかなど。聞くまでもない。君たちがどれほどの覚悟と想いで私に挑もうなどと。
そして、レースは幕を開けた。
レースは、序盤中盤と問題なく進んでいった。ポジション取りも完璧と言える。そして、ジャングルポケット君にダンツフレーム君。君たちの私を喰らわんとばかりの視線を感じるよ。
(だが……負けるつもりは毛頭ない!)
ゴールに向けてラストスパートをかけると、それを見越したように彼女たち二人も上がってくる。ジワジワと距離を詰めて来る……がそれでは追いつけない。
私は更にペースを上げる。完全に振り切った……そう思ったのに、彼女たちは突き放されるどころか更に距離を縮めてきている。
(あぁ、いったい君たちのどこにそんな力があったというんだい)
体は満身創痍のはずだ。スタミナだって消耗している。それなのに、想定以上のスピードで私に迫る君たちは……全く持って素晴らしい!
(心が昂るよ。もっと先へ少しでも速くと思わずにはいられない。未だ到達したことのない領域に!)
そう思った瞬間だった。左足に激痛が走った。いや、激痛を感じたという方が正しい。脚に異常はない。怪我をしているわけでも、トラブルが起こったわけでもないのに、左脚が痛いと感じる。
まるで鎖で引っ張られるかのような感覚がある。これ以上速く走らせないようにと。
(私の……邪魔をするな!)
だが、アグネスタキオンというウマ娘はその全てを振り払った。この世界にはこの世界の運命と理があるのだから。
【U=ma²】
彼女はウマ娘として、皐月賞を走った。本人が認知することもなく、この本気のレースに横やりを入れられることが不服で。ライバルたちと全身全霊の勝負がしたいという想いで。
アグネスタキオンはそのままスピードを更に伸ばして、後方の二人を引きはがし完勝して見せた。
「次の舞台は日本ダービーだ!楽しみにまっているよ」
勝利した喜びは勿論ある。自身の想像を超えたタイムを出したことにも満足している。だが、二人のライバルが確かに自分に迫っていることに興奮を隠しきれない。