トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】   作:Tmouris_

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えっほ。えっほ


第40話:証明

 テイオーのライブ準備は、想像以上にドタバタして、俺たちだけじゃ回らなくなっていた。

 

「本当に助かりましたよ。東条さんにルドルフ」

「いいのよ。うちの準備はほとんど終わってるから」

「私たちは、感謝祭のノウハウもある。企画はデジタル君の物で、修正もほとんど必要なかったからね」

 

 このままじゃ間に合わないと思って、東条さんに頼み込んだ。すると、二つ返事で了承してくれて、チームリギルのみんなが手伝ってくれている。

 

「何より、あんたがお願いをしてくるなんて珍しいもの」

「トレーナーと同意見だ」

 

 言われてみれば、リギルから独立して、東条さんに助けを求めることはほとんどなかったな。

 現場を見ながら、三人で話していると、機材を持ったテイオーが、俺たちの方に駆け寄ってきた。

 

「もう!何でボクのライブなのにこんなボクが頑張らないといけないのさ!」

 

 相当ご立腹なようで、テイオーがその場で地団駄を踏んでる。

 

「本当にすまん!猫の手でも借りたいぐらいなんだ。それが終わったらライブの練習に行っても大丈夫だから!」

 

 手を頭の前で合わせて、俺は頭を下げた。

 あんな啖呵を切っておいて恥ずかしすぎる!企画なんかはすぐに終わったし、宣伝、告知も問題なかった。けど、設営ばっかしは人手がいるんだ……

 

「これで、ボクのライブ失敗しましたなんて許さないからねぇ!」

 

 走りながら、テイオーはそう言い残していった。

 

「ありゃりゃ、これは失敗は許されませんな~」

「テイオーの華々しい再スタートのため、わたくしも精一杯協力します」

「ナイスネイチャにメジロマックイーン……君たちもありがとう」

 

 この二人は、テイオーの愚痴を聞いて、手伝いに来てくれた。ぜひ、自分たちも協力させてほしいとのことだった。

 

「お気になさらず~」

「わたくしも宝塚記念を終えて、時間がありましたから」

 

 二人は軽く会釈すると、作業に戻って行った。他にも、ちらほらテイオーの同級生が手伝ってくれている。

 ついでに、一般の男性二人組から、大量の飲み物の差し入れがあって、作業中の熱中症予防は万全だとかなんとか。

 

「テイオーは……良い仲間を持ったな」

「あぁ。競い合い支え合う。いい仲間だよ」

 

 ルドルフのテイオーを見る視線は、嬉しそうなのに……どこか羨ましそうだった。

 

 

 

 ファン感謝祭当日。控室で、ライブの最終打ち合わせをしていた。

 

「とりあえず、全体的な流れはこんな感じだけど、気になることはあるか?」

「大丈夫。そういえば、今日一日デジたんとタキオン見てないけど。二人は何してるの?」

「あ~二人にはちょっとした演出の準備をしてもらってる」

 

 このライブは、テイオーがまだ終わっていない証明をする舞台。そのために、二人には朝から動いてもらっている。

 

「まずは、俺から行かせてもらうよ」

 

 沈黙が流れた。俺の言葉の意味が分からなくて、テイオーがフリーズしてる。

 しかし、すぐに意識を取り戻して、てんぱりながら。

 

「待ってトレーナー!そんなのライブの予定にないよね?カイチョーとかには言ってあるの!?」

「言ってない言ってない。こんなん言ったら拒否られるに決まってるし」

 

 ルドルフは、聞いたら拒否しなきゃいけない。それは彼女個人がどう思うかは関係ない。トレセン学園の生徒会長として、判断を下さないといけないからだ。

 後ろから「ちょっと待ってよー!!」という、テイオーの声をスルーして、俺はステージに上がった。

 テイオーではなく、トレーナーがステージに上がって来たことに、観客も運営もざわついていた。

 

「トウカイテイオーのトレーナーの東海だ。今日はテイオーのファンに聞きたいことがある」

 

 瞬間……校舎の方から七色の閃光が走る。

 

『やぁやぁ!みんなファン感謝祭を楽しんでいるかい?今のはほんの余興だよ』

 

 校内放送でタキオンの声が響く。「おい!放送室はどうなってる!」とエアグルーヴも、焦った様子で状況を確認している。

 

『今から、もっと素晴らしいものを披露してみせようじゃないか!場所は……生徒会室とライブ会場とかかがいいかな。デジタル君はどう思う?』

『ちょっと、タキオンしゃん!?私は放送を乗っ取るだけでいいって!』

 

 あ~デジタルもなんだかんだ生徒会に目を付けられてたから、その辺気にしてはいたのか。

 

『それでは、気にせずファン感謝祭を楽しんでくれたまえ!なに!危害が及ぶようなことはしないさ!待っているよ、生徒会諸君!』

 

 その言葉を最後に、校内放送は途切れた。エアグルーヴ率いる生徒会メンバーは、既に動き出しており。校内放送が終わって、ルドルフがメガホンを取り出した。

 

「すまない。生徒が少々浮かれてしまったらしい。私たち生徒会は、少々席を外すが気にせず続けてくれ」

 

 視線が痛い。トーンも軽いはずなのに、凄い重く聞こえる……事情は分かったけど、お前あとで覚えとけよって目をしてる。

 生徒会が会場を離れたのを確認して、もう一度俺は観客に問いかける。

 

「世間じゃ、テイオーは"終わった"なんて言われてる。メディアも好き放題に引退なんて口にする……」

 

 会場に沈黙が走る。ここにいるテイオーのファンみんなが、少なからず同じ不安を抱えているだろう。テイオーはもう復帰しないんじゃないか、諦めてしまうんじゃないかって。

 

「けど、テイオーは今も諦めず頑張ってる!テイオーが終わってなんかないって。今日のライブでそう思ってもらえると嬉しい。

 

 言うべきことは言った。あとは、お前次第だ。まだ、終わってないんだってお前とファンで証明してやれ。

 マイクをテイオーに渡して、ステージを下りた。

 

 

(トレーナーはずるいなぁ……)

 

 あんなこと言われたら、頑張らないわけにいかないじゃん。

 それでも、ステージの真ん中に立つと、ボクはみんなの顔が見れなかった。不安な顔で、諦めた顔してたらどうしようって。そう思うと、視線を上げられない。

 でも、聞き覚えのある声が、ボクに自然と前を向かせてくれた。

 

「テイオーさん!私待ってます!また、テイオーさんが走ってくれる日を!」

 

 それを皮切りに、観客のみんなが声を上げる。

 

「まだ負けてない!」

「これは勝ちの途中ですわ!」

「テイオーしゃーーーーん!」

 

 ボクを認めてくれる。応援してくれる。期待してくれる……まだ、みんなが待ってる。

 

「もう、しょうがないなぁ……みんなボクのこと大好きなんだからさぁ」

 

 声が震える。今にも泣いちゃいそう……それでも。まだ、ボクは終わってないんだって。みんなに伝えないと。

 

「みんな、見てて。ボクまだ頑張るから!」

 

 

 

 ライブは大成功に終わった。観客のみんながテイオーの復活を疑ってない。どこのだれかが、終わったなんて言ってても知るか。こんなにも、テイオーを信じてくれるファンがいるんだから。

 

「ライブ成功してよかった。生徒会としても、私個人としても嬉しいかぎりだよ」

「あはは……感謝祭を盛り上げられたならうれしい限りデス……」

 

 俺、タキオンとデジタルの三人は、ルドルフの前に正座で並んばせられた。

 喜んでくれたなら、その凍り付きそうな冷ややかな目は止めてほしいなぁ……

 

「盛り上げてくれた分、しっかりと反省と始末書を書いてもらうことにはなるがね……!」

 

「みんなしょうがないな~ボクも手伝うから、後始末はしっかりしないとね」

 

 ファン感謝祭終了後、タキオンが使った薬品の片付けや、汚した部屋の掃除を生徒会から言い渡された。その上、反省文に始末書まで書かされて、余韻に浸る暇もなかった……

 

 けど、俺たちは、この日を境に力強く一歩を踏み出した。

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