トウカイテイオーと帝王を目指す 【完結】 作:Tmouris_
こちらもゆっくりながら更新していきますのでよろしくお願いします。
「よーす。ダービーのメンバーとデータまとめたから渡しに来たぞ〜」
タキオンの研究所の扉を開けると目の下にクマが出来たデジタルと、爆睡中のタキオンが出迎えた。
「えっと……これはどう言う状況?」
「あぁ……おはようございますトレーナーさん。タキオンさんはデータ分析のため先程まで徹夜しておりまして」
そう言いながらデジタルはメモリーと書類を渡してくれた。そして、そのままモニター?の方に視線を戻した。そこにはテイオーと思わしきウマ娘の姿が描かれていた。
「随分と上手いもんじゃないか。多才だとは思ってたけど、こういうことも出来るのか」
画面を見られたのに気付いて無かったデジタルは急いで画面を隠していた。
「すっすみましぇん!私なんかがテイオーちゃんの漫画を描くだなんておこがましい真似を!」
「いや、それは別にいいんだが……漫画なんて描いてたんだな」
デジタルはウマ娘が好きで好きでしょうがなくて、それが暴走して周りのトレーナーからは避けられていた。
「私の本業はヲタクでして……同人誌って言って漫画なんか描かせてもらってます」
なるほど、ウマ娘ヲタクのその一環で漫画も書いてるってことか。
「テイオーを題材に描いてるのか?」
「はい……皐月賞のテイオーさんがキラキラしてまして。普段はこういった王道物は描かないんですけどねえ」
モニターに映るのはダービーのトロフィーを掲げてる様子だった。つまり、これはテイオーがクラシックを走る物語なわけか。
「そう言えば、デジたんは何でウマ娘ヲタクなんて物になったんだ?自分自身もウマ娘なのに」
「う〜ん。小さい時に見たレースがキッカケではありますね。レースで走ったりライブで見たウマ娘ちゃんがキラキラしてて……とっても可愛くって」
なるほどな……自分自身がウマ娘なのは関係ないんだな。ウマ娘という存在じゃなくて、レースに全力で挑む彼女らに惹かれたんだ。
「そっか。それがデジたんのオリジンなんだな……そういうウマ娘になれるといいな」
「いやいやいや!私なんかレースに出るのもおこがましいのに……そんな」
デジたんは猛烈に恥ずかしがりがりすぎて丸くなっている。何を言っているんだかデジタルは。
「足は速いし見た目も可愛いんだから行けると思うけどなあ」
「はひ?私がかわっかわかわピュシュー」
ダメだ処理しきれずオーバーヒート起こしちまった。俺に言われたことがそこまで理解できないか?ウマ娘は全員がビジュアルがいい。それはデジたんも同じだと言うのに。
「さっきから騒がしいじゃないかトレーナー君……」
「悪い起こしちまったか?」
デジたんに渡されたデータと書類を持って、タキオンにメモ書きだけ置いていこうと思ったんだがな。
「いやいいさ……どちらにせよ作業があるみたいだからねえ」
タキオンはそう言いながら俺の手元から書類を取って目を通し始める。
「さすがはクラシック最高峰のレースだ。出走メンバーのレベルが高いねぇ……」
「厳しくなりそうか?」
タキオンは俺の疑問を鼻で笑った。
「私たちは最高のチームと言ったのは君だろう?最強の選手に最強のサポーター2人……そして、それを支えるために手段を問わない君。負ける要素なんてどこにもないじゃないか」
想像もしてない発言に俺は唖然としていた。まさかタキオンの口からそんな言葉が出るとは思っていなかったから。
「ふぅむ……少しらしくなかったね。私も随分と変わってしまったものだ」
たしかにタキオンは出会ったことから大きく変わった。デジたんと居ることも増えた気がしたし、感情的に動くこともある。なんというか、明るくなったと言うべきか。そして、何よりも……
「太くなったしな」
「ほう……?」
しまった!つい心の声が……相手はタキオンであれど思春期真っ最中の女子!体重の話はNGのはずだ!
「私はこれでも乙女なんだがねえ?そういうことを言うのはどうかと思うが……そうだ!ちょうどいい薬品がたしかあったはずだ。なーに心配しなくていい。実験はしていないが命に問題は無いはずだ」
やばいやばいやばい!タキオンの目に光が灯ってない!流石にもうだめか……と思ったがタキオンは再び席についてパソコンにデータ入力を始めた。
「怒ってないのか?」
「体重に関して言及されたのは気にはなるが……君の言っていることは事実だ。しかも、いい意味でね」
いい意味で?まぁ、たしかにタキオンは元々細すぎる節があったが……
「私が以前まで学園の問題児と言われていたのは知っているだろう?」
タキオンは元々は除籍処分になりかける程の問題児だったと言う。ルドルフから聞いた話だが、彼女のスピードは異常だそうだ。入学当初は周りを引き付けないほどの速さだったという。
「レースには参加しないし、それに加えてトレーニングもしないウマ娘……学園からしたら私は迷惑な存在だっただろう」
「それでルドルフにお前を紹介されたわけだからな」
「それに関しては生徒会長に今では感謝しかないね」
俺と組むまで許されていたのは彼女の実力あってこそだっただろう。と言っても、その実力を俺自身が目で見たことはないのだが。
「私は速い……いや、あまりにも速すぎたんだ。それ故に体がそのスピードに耐えられなかった。私は確信していたよ……このままでは私はスピードのその先にたどり着けないと」
レースやトレーニングの未参加。そして、研究数々はタキオン自身の調整のために仕方なかったわけか。研究に関しては個人の趣味もありそうだが。
「私は走るために様々なことを研究した。しかし、何かに執着するというのは恐ろしいものだね。食による体作りは基本だ。そんな簡単なことに目を向けていなかったんだ」
「つまり俺の弁当が偶然口に合ったのが良かったのか」
すると、タキオンは少し呆気に取られながらも会話を続けた。
(君はそういう人間だったね……私に持ってくる弁当の中身は栄養バランスがしっかりと考えられたものだったからこそ効果が分かったというのに)
「でも、それはキッカケに過ぎないさ。デジタル君や君と話す時間も増えて気づいたら心に余裕が出来ていた。それによって私の視野も広くなったのさ。テイオー君の足の負担の研究でも非常に良いデータも取れた」
お互いの利益ためにした契約だったけど、俺もタキオンも互いにそれ以外の情みたいなものも芽生えていた。
「ということは……」
「私のデビューも再来年……いや、来年辺りには準備ができるはずさ」
あの皇帝シンボリルドルフさえ賞賛するスピード力。その実力を拝める日も近いということか。
「私は必ずウマ娘の限界を超えてスピードのその先へたどり着いて」
「越えられるさタキオンならきっと」
「あぁ、そのためにもテイオー君には頑張って貰わないとねぇ」
テイオーの走るデータがタキオンの役に立つ……か。テイオーと俺の担当契約だったのが、もうチームとして固まっているんだな。
「俺はもう行くよ。明日の準備もあるからな」
「っふ……楽しんできたまえ」
タキオンは軽く手を振ると作業に戻った。明日はテイオーとお出かけの日だからな……担当と一緒に出かける手前適当な恰好で行く訳にもいかない。それに、個人的にテイオーには少しはマシに見て欲しいから。