マルゼンスキーが休日にトレーナー君とドライブするだけの小説です。

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マルゼンの休日

 とある場所の海岸沿いを走る車の中で、トレーナーは観光雑誌を読んでいた。タッちゃんは故障のため整備会社に出張中である。レンタカーであるため、運転手は少し不満そうであるが、やる気は下がっていないようだった。運転手は勿論マルゼンスキーである。

 最近運転が上達し、乗っても良いと思えるようになったので、ドライブがてら観光へと乗り出したのだった。

 観光と言っても、どこかのお嬢様みたいに遠出はしない。観光というより、ドライブと表現したほうが正しいだろう。

 

 日はまだ高く、夏の日差しもそこまで強くない。今日の最高気温は35度、だいぶ高い。

 トレーナーは冷房を強くする。心地よい風が車内を廻る。

 

「少し喉乾いたな。近くにコンビニがあるけど、寄ってくか?」

 

「じゃあ寄りましょっか。私も飲み物買いたいし」

 

  

「何飲む?俺はコーラでも飲もうかな。」

 

「そうね、私は無難に緑茶にしようかしら。」

 そう言ってレジに向かうマルゼンスキー。

 

 「ああ、俺が払うよ。運転してもらってるしな。」

マルゼンスキーが足を止め、こちらを振り返る。その顔には少し意地悪そうな笑みを浮かべている。

 

「じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。」

 

 

 

 車にもどって、また走り出す。オープンカーではないため風を感じることはないが、景色が過ぎ去っていく様子は心地よい。手元の雑誌を開いて運転手との会話に花を咲かせる。

 

「この間のイタリアンだけど、味はどうだった?俺は良くも悪くも普通に感じたんだよな。」

 

「あら、奇遇ね。私も同じく。なんというか…こう…これと言ったらこんな味だったなって感じの、良くもなく悪くもない味だったわね。」

 

「じゃあ次はどこでディナーを取ろうか」

 

「和食がいいわね。最近洋食が多いからたまには…ね?」

 

「じゃあそうしよっか。明後日辺りの夜は大丈夫かな。俺も久々に和食なんて食べるなぁ。今日の朝はフレンチトーストだし、洋食続きだったから。」

 

「栄養管理もしないとね?付け合わせにはなにか食べたのかしら。」

 

「彩りよくしたかったからミニトマトを添えたくらいかな。」

 

「野菜を摂ろうとするのはいいことよ。今日の晩は私がご馳走するわ。トレーナー君は一人暮らしなんだから栄養バランスが偏りそう。」

 

「そこまで偏ってないと思うんだけどなぁ…」

 

 そんな話をしながら走っていると、木製の小屋があった。入口にはソフトクリームの置物がおいてある。看板にはタピオカの文字もある。

 

「お、なんか良さげなアイス屋があるな。寄ってくか?」

 

「寄りたいのは山々なんだけど…ほら、アイスって…ね?」

 

「……ああ、なるほどな。じゃあシェアするか」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 

 アイス屋のドアを開ける。店内から涼しい風が吹いてくる。ベルの音が鳴り響き、奥から店員がやってくる。

 

「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」

 

 隣で少し震えている彼女に薄手のパーカーを渡しながら尋ねる。

「なあマルゼン、何にする?」

 

「そうねぇ、やっぱりバニラ?でも、期間限定も気になるわよね?少し迷っちゃうわ。」

 

「……バニラソフトクリームと期間限定の抹茶&小倉を一つずつお願いします」

 

「と…トレーナーくん!?」

 

「かしこまりました。もう少々お待ち下さい」

 

 

 トレンディなワンピースに薄手のパーカーを羽織った彼女は少し困惑した表情をしていた。

 

「トレーナーくん?なんで2つ頼んだの?」

 

「なんでって、食べたいんだろ?食べたいものを食べるのは悪いことじゃない。」

 

「でも私そんなに食べられないわよ?」

 

「食えなかったら俺が食べるさ。アイス好きだしな」

 

 

 車に戻ってソフトクリームを食べながらドライブは続く。エアコンは程々にし、窓を開けるようにした。トレーナーは少し暑いだろうが、運転手は丁度いいみたいだった 

 

 

 彼女は現役を引退し今は当時のトレーナーと生活をしている。同棲を始めて2年ほど経つが、現役当時から続いている関係は衰えるどころか更に燃え上がっている。現にトレーナーは運転手にアイスを食べさせている。

 トレーナーは今はチームを引っ張るベテラントレーナーではあるが、一人ではやれることに限りがある。そのために彼女がいるのだ。レースで結果を残したウマ娘は当時の担当トレーナーが率いるチームのコーチとして勤務することができ、コーチとしての活躍が認められた場合、理事長室に名前が刻まれる。

 そんな生活を送っているため、周りからは仕事でいっぱいいっぱいの生活を送っているように思われているが、当の本人たちは全くそんなことはなく私生活を謳歌している。

 この間も寝起きが悪いトレーナーを起こすために、朝からクラブで流れるような曲を流し踊っていたのである。

 

 

「なあ、ここから10キロくらいのところに砂浜があるみたいだぞ」

 

「あら、いいわね。水着もあるし、行きましょっか」

 

「俺のあったっけ?」

 

「あそこに葉っぱがあるでしょ?」

 

「いや、それでいいとおもったの?」

 

 

 着いた頃には日も傾き、青かった海は赤く染められている。波の音とカモメの鳴き声だけが聞こえる。

 

「私一度やってみたかったんことがあるのだけれど、やってみていいかしら」

 

「かまわないけど、なにをやるんだ?」

 

「見ていればわかるわよ」

 そういうとグッときて♪Chuな彼女は砂浜を駆け出した。

 

「捕まえて御覧なさーい!」

 

 紺の海パンに白パーカーを羽織ったトレーナーはやれやれといったような雰囲気を出すと、現役のウマ娘に負けず劣らずの速度を出して走り出した。

 

「いきなり本気で走るのね!だけれど、私に追いつけるかしら!」

 

 うふふーあははーと聞こえるような光景はなく真剣勝負の追いかけっこが始まった瞬間だった。


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