A time in spring   作:戸口

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書き終わったと思った今でも、
最後に、やっぱり、そうだったらいいな、と思うことを、少しだけ書きます。

「A walk of another side」まで読み終わった後に、
読んで頂ければと思います。


From dream to dream

  …『ただ、会いに行けばよかった』。

  そうか。

  それだけで、きっと。

 

 

 

 

目を覚ます。

 

自分が今、どこにいるのか。

思わず、確認する。

 

 

ここは、家の、自分の部屋だ。

 

僕は、種子島にいる。

 

 

今、布団の上で目覚めて。

今日は、高校二年の、夏休みの初日の朝で。

 

夢の中の僕は、春の、東京にいて。

僕は、大人になっていて。

昔、あの子と共に遊んだ公園のベンチで。

大人になったあの子と、話していたと思う。

 

何を話していたのか、もう、覚えていないけれど。

夢の中の僕は、最後。

それだけのことを、ずっと、考えていたように思う。

 

未来のことを夢に見るなんて、今まで、無かったな。

 

 

…そういえば、昔。

夢は、別の世界にいる自分が見ている景色なんだ、って。

冗談交じりに、あの子に教えて貰ったな。

そんなわけないなと、思わず笑ってしまう。

 

窓の外の空は青く、遠くに背の高い入道雲がそびえ立って。

甲高い蝉の鳴き声だけが、部屋の中に響き渡る。

 

 

起き上がる。

母と、おはようを交わし。

朝食を食べ、シャワーを浴びて。

部活に行こうと制服を手に取るが、今日は休みだったと気づき。

Tシャツと短パンに切り替える。

 

 

夢の感触が、ずっと、残り続ける。

 

 

…もう、文通が途絶えて、随分と経つ。

今さらそんなこと、できるだろうか。

 

洗面台の鏡に映る自分の姿を、ひたすら眺めた。

 

階段を上がり、自室に入り、ドアを閉める。

机に、座って。

引き出しの中に未だ残っている、文通用の封筒と、便箋を取り出す。

 

 

 

…今さら。

今さら過ぎはしないか。

 

 

 

そう、考えながらも。

夢の寂しさが背後から、後ろ指を指すように、ずっと自分を見つめているようで。

 

 

  『大変、ご無沙汰しております。』

 

 

その一文を始めに、便箋の先頭から、堅苦しい挨拶を三行、書いてみた。

 

  …どうやって、会えばいいんだ。

  会ったとしても、彼女にどんな顔をして。

  どんな、何の話をすれば。

 

そんな悩みが頭の中を、ぐるぐると回り始める。

それでも、幻想のような寂しさだけが、自分の背中を押し続け。

僕の手は、ペンを置こうとはしなかった。

 

次の一文を書く前に、深呼吸をする。

 

 

 もし、貴方さえよければ、一度、会いませんか。

 

 

=====================

 

何度も何度も、書き直し。

その日の夜、ようやくその手紙は完成した。

丁寧に、封をする。

 

その手紙を手に、もうどうにでもなれ、という投げやりな気持ちと。

久しく忘れていた、明日に向かっていく気持ちが、彼の中に湧き上がった。

 

電気を消し、布団に入る。

 

出す宛の無いメールを、書くことも無く。

ただ、明日やるべきことが決まった、安心感に包まれる。

 

 

  会うとしても、どうやって。

  福岡辺りが、ちょうどいい中間地点にならないか。

  でも、女の子一人でそんな遠くまで。

  いっそ俺が、東京まで行けば。

  …東京の中学の友達に頼んで泊めてもらう、なんて無理だろうか。

 

 

そんな風に、頭の中でいつかの予定を立てながら。

彼は自然と、眠りに落ちた。




「A walk of another side」の冒頭を書いた時点で、
自分が、そうだったらいいのに、と考えていたことでした。

パラレルワールドなんて、最近の流行に乗ったみたいで嫌だなと思いましたが。
そういう世界があって欲しいと、願わざるを得ませんでした。

彼らが会うのかどうか。
会った後、上手く行くのかどうかは彼ら次第と思いますが。

どんな結果であれ、やっぱり、会えたらいいなと。
心から、思いました。
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