気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。 作:隣のAG/マヤノテイクオフ
私は見たいので書きました。
普段はお絵描きするくらいしかしてないので、拙い文章だったりしてもゆるして。
※6/27 19時 未保存分の文章を入れ忘れたのに気が付いたので足しました
※7/12 21時 ストーリー進行状況に合わせ冒頭微追記しました
デビュー ~ ジュニア
「つまんなーいっ!」
組んだ腕に顎を乗せ、ほほを膨らませた彼女は不機嫌そうにつぶやいた。
橙色に近い栗毛の長髪をツーサイドアップに纏めた小柄な少女。
それが私が担当して初のURA制覇、クラシック3冠を成し遂げた『変幻自在』の撃墜王、マヤノトップガンである。
「ぶーぶー」というマヤノのほほをツンツンとつついてやると空気を抜いて、私の手の感触を楽しむことに切り替えたのか、されるがままになっている。
耳も畳んですっかりリラックスモードだ。小動物のほほをむにむにしたくなるのは、このような愛らしさと癒しを感じるからかもしれない。
そこがマヤノの魅力のひとつなのだろう。我ながら長い付き合いになったものだ。
愛らしい少女の仮面の下には獰猛な野獣を飼っていたと、思い知ることになったのはクラシックの頃。最も忙しい一年間だったと言えるだろう。
フライトジャケットのような勝負服に輝く勲章という名の撃墜した証。
レースに出れば予測不能のノンストップガールに蹂躙されるとか、栗毛の悪魔とか色々と耳にした。
逃げ・先行・差し・追込、全ての戦法でG1勝利を成し遂げたのは後にも先にも彼女だけだろう。
撃墜王とも言われるようになったマヤノトップガン。
彼女だけのチーム・アンタレス。アンタレスは火星の敵、つまりはトゥインクルシリーズを輝く
クラシック・シニア関係なく実力を示した彼女は、新人トレーナーと共に伝説となった。
尻尾を脚に絡め、私に体重を預けるようにしたマヤノを撫でながら、今日もゆったりとした一日を過ごしている。
そんな彼女との出会い、それは数年前に遡る―――
◇◇◇◇◇
新米トレーナーとしてこの日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセンの門を叩いたのはつい先日のこと。
今年はトウカイテイオーや、かの有名な『メジロ家』メジロマックイーンを筆頭に有望株と噂されるウマ娘たちを目当てに、多くのトレーナーが選抜レースでスカウトをする為に集まっていた。
有名なところでは「リギル」や「シリウス」、最近勢いのある「スピカ」といった強豪チーム率いるトレーナーもいるようだ。
私は、他の先輩トレーナー達に習い、最初は最前列で選抜レースを眺めていた。
しかしながら、前の方でウマ娘のスカウトに情熱を燃やすトレーナー達の波に巻き込まれ、揉みくちゃにされたことに辟易してしまった私は、大人しく後ろの方で観戦することにした。
数あるレースでトップクラスのウマ娘が集まるG1レース、一握りのウマ娘しか得られない勝利に夢を見たい。そういったトレーナーは多い。
私もそうだ。それでもクラシック3冠、トリプルティアラのように人生、いやウマ娘生で1度きりの舞台はさらに特別な価値を感じるものだ。
私だっていつかはそんなウマ娘の手助けをできれば、と思っているトレーナーである。
しかしながら、専属にならず教官やチームのサブトレーナーとなり下積みを重ねる、といった経験の重要性を理解している。
いくらトレーナーの数がウマ娘に対して少なく足りていないとはいえ、無名の新人がいきなりスカウトできるのか、と言われるととても難しいのは確かである。
それこそ運命の相手といえるほど理想の出会いなんて、ほんの一握りといえる数で済むのだろうか。
本日の最も期待を寄せられるウマ娘、トウカイテイオー。皇帝を継いでクラシック3冠も夢じゃないと言われるウマ娘らしい。
彼女は選抜レースで圧倒的な強さをみせ、我こそはと彼女をスカウトする為に集まっているのを、私は遠巻きにみていた。
彼女は難なく一着で走り抜け、引く手数多でトレーナーを選べる立場の将来を期待されるウマ娘。
新人とはいえ私の目から見ても強いウマ娘であると思うほどだ。
ありえないと思うが、仮にスカウトできたとしても、新人の私には手に余るだろうことは容易に想像できる。
もう日を改めて戻ろう。そう思ったときだった。
「もう少し面白いレースかなーって思ったけど、ざんねーん」
いつのまにか隣に立っていた少女の呟きが聞こえた。
顔を向けるとトレセン指定の制服を着た栗毛のウマ娘が。
小柄で橙色(栗毛に分類されるらしい)のウマ娘。長い髪を少し結び、ツーサイドアップにしており尻尾のように揺れている。
生徒であることは確定だが、今日の出走リストでも、既にデビュー済みリストでも見た覚えがない。
恐らくはまだデビューしていないウマ娘だろう。
既に選抜レースに走っていたとしても私が覚えていなかったか、まだ走っていないのか、その判断はつけられない。
どんな走りをするのだろうか。
君は走らないの?とつい言葉がこぼれてしまった。
口元に人差し指を置き「うーん」と呟きながら少し考えるウマ娘。
数秒待てば「つまんないから」と答えが返ってきた。
調子が出ないからなのか、勝負にならないからか。
前者なら単純に気分の問題もしくは気性難と呼ばれる方の可能性があるが、後者であれば大した自信というべきである。
どちらにせよ、目の前にいるウマ娘はどう走るのだろうか。
どう走るのか見てみたい。トレーナーを本気で目指した自らの性質ゆえか、素直にそう思った。
「ん-?」
そこで初めて私のほうに興味が湧いたのか、じっとこちらを見つめ、この少女は私の周りを一周しながら何かを確認するようにする。
理解したとでも言うように頷いた。
「マヤのトレーナーになってくれない?」
まさかの逆スカウトに対して「え?」と気の抜けた返事しかできなかった。
無名どころか新人で、有名な家とも縁のない私が?彼女の琴線に触れる要素なんてあるのだろうか。
たっぷり悩んでから、せめて一度、選抜レースで君の走りを見てからでは駄目かと返した。
「いいよ!じゃあ次の選抜レースでは走るから、マヤのことしっかり見ててね!」
ユー・コピー?と確認を取ってから「また来週!じゃーねー!」と走り去っていく彼女――マヤノトップガンというらしい――をそのまま見送ってしまった。
不思議なことに、この時の私はまだ走る姿も脚質も知らないウマ娘に、運命に似た何かを感じていた。
余談だが、トウカイテイオーによるカイチョー布教の演説が、選抜レースが終わってから数時間続くことになったらしい。
◇◇◇◇◇
翌週の選抜レースは、トウカイテイオーのような超有望株といった評価を受けたレベルのウマ娘はいないらしいが、それでも未来のスター候補であるのは間違いない。
何より、先日出会ったマヤノトップガンが走るのだから、見逃すわけにはいかないのだ。
―――レース結果はマヤノトップガンが逃げで先頭を維持したまま終わった。
先頭を走るマヤノトップガンは、先行策で追いすがる他のウマ娘たちのスパートを含め、1/2バ身までの差を維持したままゴールしたのだ。
まるでスパートでどの程度加速するのかを理解したうえで、追いつきそうで追いつかない絶妙な速度を維持する逃げだった。
圧倒的ではないが、ギリギリ勝ちをもぎ取った。私にはそう見えるレースだった。
彼女をスカウトしようとするトレーナーは一定数いた。しかし気まぐれで急遽レースに出ないことも含め、気性難の評価も受けていると知れ渡っていたようでベテランの多くは渋っていたようだ。
「マヤの走り、どうだった?」
真っ直ぐにこちらにやってきたマヤノトップガンに凄かったと返す。
走り終えたばかりだが、まだ余力がありそうな様子を見るに中・長距離の適正があるのかもしれない。
君の走りをもっとみたい。叶うなら、最前列で。
…まだ新人だから、確固たる自信はないけれど、力になれるなら。私の全力を尽くしたい。
そう思うままに答えた。
「マヤにムチューになっちゃった?」
にぱーっと輝く笑顔をみせる彼女に、あぁと返す。
改めて君の担当にさせてくれないか、と聞くと待ってました!と言わんばかりに頷いた。
「マヤから目を離しちゃ、ダメだからね!ユー・コピー?」
マヤノトップガンが掴む勝利のその先へ、全力で支えていこう。この日そう心に決めた。
こうして新人トレーナーと栗毛のウマ娘、二人三脚の歩みが始まったのだ。
◇◇◇◇◇
マヤノトップガンは控えめに言って、天才である。
トレーニングを考える中、すぐさまその天性の感覚によって2、3回で理解してしまう様を見せられ、頭を悩ませることとなった。
さらには気まぐれで飽き性という点である。何度も同じトレーニングするのは「つまらない」と言う。今日はこれやりたいと言うのは可愛いほうだ。
先輩トレーナーに頭を下げ、一般的なトレーニングはどういったものなのかを一通り実践してはいるが、それでもあの手この手で別のトレーニング方法を考えては、モチベーションを保つため頭を悩ませることとなった。
逃げ・先行・差し・追込、脚質に捕らわれない彼女のスタイルは今までの常識を覆すものだったというのもあった。
ほとんどのウマ娘が持つ脚質が、逃げ先行の前寄り・先行差しの中間寄り・差し追込の後方寄りと、例外を除いて大きく3パターンに分けられるのだが、マヤノトップガンはどれでもできてしまうのだ。
ビデオで見せた過去のG1ウマ娘の動きをほとんど再現して見せたり、観戦していると「ここで右に動けば」とか「もう少しで開けるからそこでバーッと」とか一目で勝負所を見抜いてみせるのであった。
ここまできたら、好きに走ってもらうのが一番良いのではないか。
そう思い平日は基礎的なトレーニングだけではなく、先輩トレーナーに頭を下げに行き、並走トレーニングを組むことが増えた。増えたと言っても月数回だが。
マヤノと同期でデビューするウマ娘がいないらしい先輩チームを優先しているが、せっかく先輩ウマ娘と直接並走することができるのだから、これを生かさない手はない。
様々な戦術をその一端だけでも触れることができれば、そのままマヤノの手札が増えるということなのだから。
休日には「お出かけしよ!」とごねるマヤノとデートという名目で週末はレース場へ行くことにもなった。
というのはいくらアスリートであったとしてもウマ娘は多感な時期の少女であるのは変わらない。
トレーナーとしてこの距離感は適切なのだろうかと不安になる。なるがトレーナーならばウマ娘第一だ。
気分転換にもなるし戦術を学ぶいい機会でもあるだろう。そう思い諦め、いや開き直ることになった。
そんなこんなで行われた6月前半のメイクデビュー戦、逃げで余裕を持った1着をとったのだった。
これからは比較的条件が緩い年末のホープフル、クラシックの3冠出走条件を満たすスケジュールを考えておこう。実際にマヤノトップガンが3冠やティアラ路線を走りたいと思うかはわからないけれど。
なお、マヤノは「面白くないもん!」と今年の年末に決めたレース以外のGⅡ、GⅢは出走を拒否した。
ウマ娘本人のコンディションは重要だ。好調か不調かで大きくパフォーマンスに差が出ることは過去のデータで示されている。来年を見越してゆっくりいこう。そう決めたのだった。
◇◇◇◇◇
時は年末、ジュニア最初の大舞台であるG1ホープフルステークス。ここからクラシック路線を控えたウマ娘による中山で行われるレース、これから活躍するであろうウマ娘たちを見出すには絶好の機会だろう。
今後走るような機会があってもなくても、中山の芝で走る感覚は前もって知っておくべきだ。
そう思い一週間以上前から現地でのトレーニングにシフトすることにした。
これから有マ記念も控えているとなると、開催まで期間があるのに熱気を幻視するほどには、会場周辺が賑わっていた。
実は同室らしいトウカイテイオーからは「ここからムテキのテイオーさまの、サイキョー伝説が始まるのだ!」と何度も聞かされているとか。
「マヤはテイオーちゃんがどのくらい仕上がったか気になるの」
レースに絶対はない。ないが本気を出したら勝てる。そう断言するようにマヤノは言う。
だから、勝ち切ることは考えない、と彼女はいう。今後の障害足りえるか、ライバルになりうるか、マヤノトップガンの才能とトウカイテイオーの才能、現状どちらが上なのか。最前線で見極めたいらしい。
それはマヤノが既にホープフルのレコードタイムを出せるレベルで逃げ切ることができる、という立場から言えることであった。
いくらレースに絶対はないと言っても、【逃げ】でそれができるというのは紛れもなく強みなのだ。
「テイオーちゃんはマヤを楽しませてくれるかな?」
マヤノトップガンは不敵な笑みを浮かべて思いをはせる。
◇◇◇◇◇
年末の中山レース場、G1ホープフルステークス。それはジュニア最後に輝く一番星を決めるレースだ。クラシックと違い出場条件は比較的緩く、ジュニア期のウマ娘であるという条件を考えると、クラシック3冠と同じように一度きりの挑戦となる。
「よう、新人!お前さんが担当のマヤノトップガンはどうよ?」
最前列でマヤノを見届けるべく観客席で待っていると、トウカイテイオー所属のチームであるスピカトレーナーがやってきた。無敗の帝王伝説に期待を寄せる人も少なくないが、所属チームを率いる彼こそ最たる例だろう。
先輩とはいえ、トレーニングのアドバイスを請うた以外で話をするのは久々なので、お久しぶりですと挨拶で返した。
「ウチのテイオーも負けていないが、ありゃ仕上がっているな。一度トモを触らせて欲しいくらいだ」
ちょっとチャラそうな男性がウマ娘の足を撫でまわす光景は流石に犯罪臭がするので、きちんといくら先輩でもダメですよと言っておく。
「しかしまぁ、テイオーの話からは、今期はまだデビューしないんじゃねーかって聞いていたのだけどな」
その話は初耳だった。「そりゃ、お前さんがトレセンにくる前の話だからな」と前置きして話を聞かせてもらった。
なんでも、そろそろ本格化を迎えるが、選抜レースは未参加でトレーニングで見かけることも少なく、適性もよくわからない気性難のウマ娘である。ただその走りから才能は垣間見えるが、チームの方針を考えると手に余るだろう。
というのが一部のトレーナー共通の認識だったとか。
おまけに同室のテイオーがデビューを決めた時期にも、「まだわからないかな」と答えていたらしい。
「トレーナーの先輩としてならアドバイスも少しはできるから、今後もよろしくな」
期待の新人じゃねーかって応援しているんだぜ?と良い先輩からのありがたいお言葉と、テイオーがいるから良きライバル候補としてな。とついでの一言をもらった。
◇◇◇◇◇
結果的に、最有力ウマ娘と注目された一番人気、トウカイテイオーは見事一着を勝ち取り、“皇帝”シンボリルドルフを継ぐ“帝王”としての第一歩を踏み出すことになった。
今回はメイクデビュー同様に逃げの戦術だった。マヤノトップガンは序盤はハナを切り最終コーナー手前まで先頭を維持したが、追い上げ仕掛けてくるウマ娘たちをそのまま見送った。
傍目からは逃げウマ娘がそのまま垂れてきたようにも見えるだろうが、マヤノはその末脚を全く見せないまま5着に入着した。
マヤノは確かにスパートをしっかりかけていたようにも見えただろう。しかし、ハナを譲ったマヤノはそのまま、トウカイテイオーたちの背をじっと観察し、見定めているようにも感じられたのは、彼女のトレーナーだからだろうか。
「…ふーん、マヤわかっちゃった」
その呟きはレースの音にかき消され、誰にも届くことはなかった。
レースも終わった帰り道、マヤノは「決めたの」と口を開いた。
「クラシック3冠、マヤが全部、取りにいこうかなって」
彼女は同室であるトウカイテイオーの夢を打ち砕く。そう言っているのだろうか。
「テイオーちゃんの夢だってわかってるの」
でもね、と続ける彼女の瞳は冷たく感じた。
「テイオーちゃんじゃ足りないから、マヤが貰ってトレーナーちゃんにプレゼントしようかなって」
傲慢にも見える無情な宣言をマヤノトップガンは下した。
しかし私はトレーナーだ。マヤノトップガンの走りに魅せられたのだから全力でサポートする。
よろしくねトレーナーちゃん?ユー・コピー?と言われたらアイ・コピーと答える。
私の愛バは強い、と世に刻み付けることになる意味は、勝つことが誰かの夢をへし折ると真に理解する意味はまだ、そのときはわかっていなかった。
―――せいぜいマヤを楽しませてね。テイオーちゃん。
今度のクラシックディスタンスは、間違いなく荒れる。
だって
ここのマヤノのステータスはジュニア期で平均Eが並ぶメンバーの中で、平均Cという圧倒的ステで蹂躙できる。という設定で考えています。
イママデホンキダサナイナンテワケワカンナイヨー!
クラシック期の流れは決めてありますが、完結させられるかわかりませんから期待しないで…
無敗の3冠はマヤに撃墜されます(確定)
設定まとめがあったら
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みたい
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みたくない
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表紙、描んだよぉーっ!
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無回答