気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。 作:隣のAG/マヤノテイクオフ
模擬レース後から分岐√
ネタバレは野暮というものさ。くれぐれも内密にね。
気分次第で続く。
IF01 分岐点
おや?見知らぬ誰かさん
あぁ、どうしてキミはここに気がついてしまったんだい?
知らなければ良かったと、後悔するかもしれないよ?
物語は終わった。これはその続きではないのに
これは夢だ。夢をみている。
どんなに良いハッピーエンドとして描かれたとしても、それは存在しない未来だ
だってこれは、夢なのだから。
ふむ。せっかくなのだから、ちょっとした遊びをいれてみよう
面白いかどうかは、保証しかねるがね
【エラー:演算を停止】
【シミュレート:2080541967番Tの終了】
全てが終わってから、改めてくるといいさ
諦められず、閉じ込められたユメの片鱗が見せているのだろうか。
【入力値を変更。再試行を開始…失敗】
もしもがあったなら、ボクは。
【演算開始地点を変更】
あの日、マヤノの話に乗っていたら。
マヤノとボクは、違う関係だったのかもしれない。
【目標設定:無敗の3冠ウマ娘固定】
キミとだったら、運命だって越えていける。
仲間でライバル、2人じゃなくて3人で。
キミもボクも、無敗で3冠で。新しい伝説を、勝利のその先へ。
そんな未来もあったかもしれないって。
【分岐点:マヤノトップガンで再検索】
これは泡沫の夢。ありえざる平行世界の記録。可能性の片鱗。
始まりを告げるファンファーレが、鳴り響く。
ここはそのありえざる記録の観測点。
【エラー:不正アクセスを確認】
【行動予測にエラー発生…再演算開始】
いま改めて。キミとユメを翔けるよ。
きっと、今度はうまくいくから。
【因子継承を開始…】
【演算入力を開始】
【新しい行動分岐を確認】
【シナリオ:■■■繝輔ぃ繧、繝翫Ν繧コにエラー】
【繧キ繝翫Μ繧ェ?壹Γ繧、繧ッ繧「繝九Η繝シ繝医Λ繝?け繧偵Ο繝シ繝】
◇◇◇◇◇
本日は次のデビューへの足掛かりとなる選抜レースの日。
待ち望んでいた運命の日。観客席を見つめるウマ娘がひとり。
「みつけた」
トレーナーを見つめるウマの呟きは、空に解けていった。
あの人だ。
今日が運命の分岐路だったんだ。
これは何度目の夢だったっけ
トレーナーはウマ娘に夢を見る。模擬レースはスカウトには新人もベテランも関係ない、共に夢を叶える為の契約をする、出会いの場のひとつである。
新米トレーナーとして、この日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセンの門を叩いたのはつい先日のことだ。
本日の最も期待を寄せられるウマ娘、トウカイテイオー。皇帝を継いでクラシック3冠も夢じゃないと言われるウマ娘らしい。
彼女は選抜レースで圧倒的な強さをみせ、我こそはと彼女をスカウトする為に集まっているのを、私は遠巻きにみていた。
彼女は難なく一着で走り抜け、引く手数多でトレーナーを選べる立場の将来を期待されるウマ娘。
新人とはいえ、私の目から見ても強いウマ娘であると確かに感じる。
ありえないと思うが、仮にスカウトできたとしても、新人の私には手に余るだろうことは容易に想像できる。
しかし、トウカイテイオーは今日、誰のスカウトも受けることがなかったようだ。
スカウトの難しさを目の当たりにした私は、次レースで走るウマ娘のリストを確認することに決めた。
ひとつだけ、気になったのは、先ほど入着したウマ娘で、誰にも声をかけられていなかった子だ。
確か―――アストn…
「もう少し面白いレースかなーって思ったけどなぁ、ざんねん」
いつのまにか隣に立っていた少女の呟きが聞こえた。
顔を向けるとトレセン指定の制服を着た栗毛のウマ娘が、私の資料を横から覗き込んでいる。
小柄で橙色の栗毛ウマ娘。片側には黒いリボンで、長い髪をツーサイドアップにしており、尻尾のように揺れている。
今日の出走リストでも、既にデビュー済みリストでも見た覚えがないウマ娘だった。
いつの間にかいたウマ娘に混乱する私をよそに、じっとこちらを見つめ、この少女は私の周りを一周しながら何かを確認するように見定めているようだ。
やがて満足したのか、理解したとでも言うように頷いた。
「マヤのトレーナーになってくれない?」
とびきりの笑顔で、名前も知らぬウマ娘は言った。
「そうだ!後でひとり連れてくるから!」
逃げないでね!と言い残し嵐のように走り去ってしまった。
どこで待ち合わせるのか、このまま待つべきなのかわからぬまま呆然と見送ってしまった。
「あの人はマーチャンが見えているのでしょうか」
ただひとり、自分の姿をはっきりと見ているトレーナーらしき人。
他の人と同じように忘れてしまうのか、様子を見てみようと決めた。
◇◇◇◇◇
「この人がトレーナー?ふぅん」
不満気が表情を隠す気もないウマ娘、トウカイテイオーの言葉に棘を感じるが、新人トレーナーである私に返せる言葉はない。
模擬レースの後、仕方なく観客席でしばらく待っていると、マヤノトップガンというらしいウマ娘によって連れてこられたが、トウカイテイオーだった。
「ボク、スピカに入るつもりだったけど」
「でもね、テイオーちゃん。この人が一番テイオーちゃんの夢に近づけると思うの」
「根拠は」
「マヤの勘!」
「マヤノの勘は侮れないからなぁ、うーん」
「ふたりだけのチームというのも悪くないかもーって」
すっかり置いてけぼりで話が進んでしまうところだが、私はスカウト以前に初対面なのだ。
いったん日を改めてもらえないか伝えたら、「じゃあ来週!ここにきてね!」ということで解散になった。
そのあと、あるウマ娘と私は出会った。
「あなたはマーチャンをみえていますか?」
これがどこか消えてしまいそうな、不思議なウマ娘との出会いだった。
◇◇◇◇◇
「マーチャンを写すレンズに、なって貰えますか?」
何故か人の記憶に残らない彼女、アストンマーチャン。
誰かの記憶に残る手伝いのため、彼女にできることはないだろうか。
後日、契約することとなったマヤノトップガンとトウカイテイオー。
そして、アストンマーチャンを加えた3人のウマ娘。
チーム申請が無事通り、新人トレーナーが率いるチーム・アンタレスがこの日誕生したのだった。
すぐにチームルームはたづなさんによって手配され、使えるようになったのでマヤノトップガンとトウカイテイオーの方針を確認することにした。
ただ、アストンマーチャンの名前にはまるで聞き覚えのないかのように、首を傾げる姿が気になった
部屋に何を置くかで盛り上がるウマ娘達、放っておいたらこの二人に部屋が改造されるのも時間の問題だろう。
トウカイテイオーは会長みたいなサイキョームテキのウマ娘になる。というのが目標らしい。
会長というとやはりシンボリルドルフだろう。どこか面影を感じるが、実は親戚という可能性もありそうである。
マヤノトップガンは面白そうだから!と答えたので、目標の固まっているトウカイテイオーとは対照的だった。
「でも、マヤもせっかくだし、最強ってやつ?撃ち落としてみようかな」
「むー、マヤノには負けないもんね!クラシック3冠は渡さないぞ」
マヤノトップガンとトウカイテイオーは得意な距離適性が被っているらしい。
同期でそうなると、チーム内で3冠の奪い合いという例も確かにあるようだ。
「大丈夫だよテイオーちゃん。マヤはせっかくだし、ティアラ路線で最強になるから」
3冠ウマ娘と3冠ウマ娘、もしなれたら最強のチームだと思わない?まるでそうなる未来が見えているかのように、どこか確信めいた言い方のマヤノトップガン。
「いいね!面白そう。ボクは負けないけど、マヤノも負けないでね」
笑いあう二人のウマ娘。私はその夢のような話に、どこか運命めいた確信を感じた気がしていた。
ここが、運命の分岐点。
「チームならもうひとり、必要だよね?大丈夫だったの?」
それなら大丈夫だと返したが、トウカイテイオーは「ふぅん」と返して特に興味はないようだ。
マヤノトップガンだけは全て
ここから紡がれるのは本来の物語ではない異聞録。
気分屋なマヤノちゃんだけがクラシックを荒らす話ではなく、
そしてアストンマーチャンもまた、スプリンターとして蹄跡を残していくことになる。
帝王は皇帝を超える。新たな女帝は歴史を塗り替える。
波乱の一年間を駆け抜ける、気分屋マヤノちゃんたちがクラシックを荒らす話。
これはその、始まりの1ページ。
「アストンマーチャンかぁ、面白そうなウマ娘だよね!」
本編で頑張ったので、レース描写は全カットでお送りいたします。
マーチャンはここにいますよ?