気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。   作:隣のAG/マヤノテイクオフ

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 筆者はアストンマーチャンを引いていません。
マーチャンに関する回答はしません。ごめんね
 なので本編に出るのは…いつでしょう?
この空白について、匂わせ以上の感想は控えて貰えると助かります


IF03 波乱のクラシック

 

 4月。いよいよクラシック期ウマ娘達がしのぎを削る一度きりの舞台。クラシック路線とティアラ路線が始まる。

 

 皇帝を超えるというユメの第一歩。クラシック路線のテイオーひとつめの冠、皐月賞。

 

 怪我をしない為の走法の改良は間に合ったが、ギリギリの勝利となった。

以前のテイオーならもう2、3バ身は引き離していたのかもしれない。

空へ掲げた一本指は、きっと観客席にいるであろうシンボリルドルフへと向けられているのだろう。

 宣戦布告した通りに、皇帝を超える。その意思表示を世間にも見せつけるようだった。

 

 余り時間の余裕はないが、このままならダービーには調整が間に合うだろう。そうなれば今回より余裕を持って2つ目の冠に挑めるだろう。

 あとは時の運次第だ。

 

 ケガ予防とは別にテイオーの抱えている課題もある。

 

 実は長距離に関してマヤノの方が得意であった。

 距離適性はある程度延ばすことができるとはいえ、去年のメジロマックイーンのような本物のステイヤーウマ娘が出てきた場合、菊花賞は難しいだろう。

 

 スタミナの問題は去年からも取り組んでいる。

 負荷も少ないプールや坂路を多くとり、戦術の調整はマヤノが様々なウマ娘の戦術を模倣して並走することで補っていた。

 有力なウマ娘が持つ“領域”というらしいモノをある程度再現できるらしい。マヤノトップガンに頼りきりだった。

「マーちゃんもマヤノちゃんのおかげで助かりますねー」

 

 

 マヤノはティアラ路線最初の冠、桜花賞だ。中長距離が得意であってマイルの短さはマヤノの試練だろう。

 桜花賞はマイルである為、ここが最大の関門である。

 逆にスプリンターであるマーチャンとの並走で調整している。

「これで苦手と言うと、スカーレットが泣いちゃいますよ?」

 しかし、 心配をよそにマヤノも無事勝利した。

 本当に苦手なのか?と疑問に思うほど、後方に控えたマヤノが見せたのは見事な差し切り勝利であった。

「ウオッカみたいな差し足でしたねー」との談。 

 マヤノもテイオーと同じように指を1本掲げ、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 チーム・アンタレスがクラシック路線とティアラ路線の初戦をどちらも勝利したことで、3冠最有力候補と話題になっている。

 同じチームからG1を勝利したウマ娘が同期デビューというのは中々見られない快挙である。

 なお、マスコットの知名度は徐々に上がっているらしい。

 しかし、これが序章に過ぎないとはトレーナーも含め予想していなかっただろう。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 5月、ダービーを目前に控えたある日。マヤノと共にNHKマイルカップの観戦デートにきていた。

 

 

 ティアラ路線でぶつかるかもしれない注目ウマ娘の偵察もあるが、今回は純粋に応援である。

 アストンマーチャンが走るのだから当然である。

 今回出走ウマ娘はさすがに、ダービーやオークスに続けて出るようなキツイローテでない限り当たらないと思われるが、秋華賞あたりなら十分あり得るだろう。

 

「もしくるとしたらあの子と、あの子かなー」とマヤノはライバル候補を吟味している。

 

 ティアラ路線ではマヤノトップガンがいたことで、勝つためにこちらを選んだなんてウマ娘もいるらしい。

 パドックの様子で気になるのは、番が終わったはずなのに、舞台袖で観客に手を振っているウマ娘だ。

 

 …と思ったら、気が付いたスタッフに連れていかれたようだ。

「マーチャンをよろしくお願いしますねー」

 連行されながらも、アピールを欠かさないのは流石というべきなのだろうか。

 

 NHKマイルカップは久々にレコードタイムが大きく塗り替えられる、見ごたえのあるレースとなった。

 

 しかしながら、レコードを塗り替えたレースにしては控えめな歓声だったように思える。

 

 普段はにこやかに笑うマヤノが、険しい顔で見つめていたのが、不安に思えるほど印象的だった。

 勝利したのはアストンマーチャンである。レコードを大きく塗り替える快挙を成し遂げたのだが、ほとんど話題にならなった。

 まるで世界そのものが彼女を異物とでも言うように。

 私もまた、彼女をいつか見失ってしまうのだろうか。

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 続く東京優駿。またの名を日本ダービー。

 

 運のいいウマ娘が勝つらしいこのレース、トウカイテイオーは1枠1番での出走となった。

 調整も終わり、万全の体制となった彼女を並みのウマ娘に止められるはずもなく、空へ掲げられたピースサインによってその強さを示した。

 

 トウカイテイオーにとって唯一の不満はマヤノトップガンだ。

 

 並走で何度も苦汁をなめることになったのは、同期でもマヤノだけである。

 今までの模擬レースはいくら走法を根本的に調整中だったとはいえ、手加減されたマヤノトップガンに圧倒的に負け越しており、同じチームで路線が違うことをこれ程嬉しく思ったことはない。

 

「クラシック期当時のカイチョーとどちらが強いんだろう?」

 

 ふとそうこぼしたテイオーの言葉に、答えを返せなかった。トレーナー自身もそう思ったことは1度や2度じゃない。

 

 そんなマヤノトップガンのティアラ2戦目、オークス。

 

 マヤノトップガンの圧勝だった。

 

 もとより中・長距離が得意なのだ。本調子のトウカイテイオーと同等のウマ娘が、全てを薙ぎ倒しにくるのはたまったものではないだろう。

 今までが手加減だったとでも言うかのように、追込で最後方につけてから、スパートで7バ身差をつけて勝利した。

 

 クラシックはトウカイテイオー、ティアラはマヤノトップガン。どちらも無敗で2冠を手にしたウマ娘に世間の盛り上がりとは裏腹に、同期ウマ娘を抱えたトレーナー達はお通夜ムードである。

 G1勝利を目指して路線を変えたら、逃げた先のG1でラスボスが控えてました。という感じだ。

 無敗の3冠ウマ娘が1年で二人も出るかもしれないと、迷惑な記者もくるのはいただけない。

 

 しかしながら、チーム・アンタレスを率いるトレーナーはいまだ新人。

 そんな世間の評価を気にしている余裕は全くないのであった。

 

 取材やら宣伝やら、の話はお世話になっているリギルとたづなさん経由で、ほとんどシャットアウトしてもらえた。

 

 トウカイテイオーとマヤノトップガンはグッズ販売の方も人気が高まっているらしく、宝塚記念の投票による出走の可否は問題ないくらいに、票が集まっているらしい。

 テイオーは次が菊花賞であり、長距離レースとなることで調整に万全を期す為、見送ったがマヤノが出走を発表した。

 マヤノの走る理由は勝ち負けより面白そうかどうか。シニア期のウマ娘相手のレースだが、「楽しそうな相手だから出る!」と言われては断れなかった。

 

 チームの知名度ついでに、マスコット人形も商品化にこぎつけ、小さめながら販売されるようになった。

 喜ばしいことに、チームの知名度が高まって量産版マーチャンぱかプチ(小)も売れているらしい。

 マーチャンの認知自体はあまり広まりがよろしくない。

 勝利したのに見知らぬウマ娘の勝利と思われているのだろうか。

   ◇◇◇◇◇

「マーちゃんだけでは商品化は無理でしたので、トレーナーさんのおかげで助かってますよ」

「なので、マーちゃんができることはマーちゃんがします」

「マーちゃんを、しっかり映してくださいね?」

 クラシックで数少ないシニアウマ娘と競える舞台、マイルレースG1、安田記念。

 テイオーもマヤノも出るわけではないが、応援にくるのはよくあることだ。

 ビデオカメラをしっかり回し、トレーナーも準備万端である。

 最終コーナーからよく見えるベストな位置取りを確保できた。

 

 

 徐々に話題になっているらしいウマ娘も出走ということで、期待十分のレースだ。

 前年の勝者も出るらしく、期待の新人とどちらが勝つかで盛り上がっているらしい。

 マヤノも真剣な顔つきだった。

 

 

 熾烈な先頭争いを制し、そのウマ娘はスパートで後続を突き放していく。

 

 1バ身、2バ身…と差をつけていき、5バ身の圧勝だった。

 

 前年の覇者さえも置き去りにしたウマ娘に湧き上がる歓声。

 レースレコードさえ更新し、今まで目立っていないウマ娘が見せた、鮮烈な輝きに拍手喝采だった。

「どきどきしました?わくわくしました?」

 

 ファンサービスをするウマ娘の姿に、なぜか嫌な予感がした。

 

 

 

 ゆらり、歩き出した身体が傾く。

 

「あれ…?」

 

 倒れるその姿がスローモーションのように感じられた。

 

 アストンマーチャンが崩れ落ちていく。

 

 マヤノ!と反射的に呼んだ声に「アイ・コピーッ!!」とすぐさま動き出した彼女を見送り、すぐさま救急搬送の為の連絡を始めた。

 動揺する思考とは裏腹に、身体はよどみなく動く。自分で動かしていないかのように。

 

 

 倒れる彼女を寸前で受け止めたマヤノトップガン。

「マーチャン!」

 マーチャンの顔色はあまりよくない。レース前に不調は見られなかったが…?

 

 すぐさま歓声は悲鳴に変わった。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 その後介抱したウマ娘に付き添う形で病院へ。

 

 

 幸いにも、レース後の疲労によるものだけなのか、念の為その日の検査入院程度で済んだようでなによりだった。

「マーチャンは病院があまり好きではありません」

 そう言って窓の外を眺める彼女は、どこか達観しているようだった。

 レコードで走り抜けたウマ娘だが、自分のことより私が持っていたビデオカメラの心配をする不思議なウマ娘だった。

「私のレンズさんにちゃんと写してもらえないと、困りますから」

 そうだ、一着なのにお祝いを忘れていた。おめでとうと共に、あまり無理はしないようにと伝える。

「ありがとう、ございます」

 

 後で聞いた話だが、レースの“領域”は負荷の大きいウマ娘もいるらしい。

 思いを力に変え、限界を超えるというそのチカラは、多くのスターウマ娘に発現しているという。

 しかし、“領域”の形はウマ娘の数だけ。景色が見えたりプレッシャーを強めたりと様々だ。

 

 ただ、全てを出し尽くすようなものもあるらしい。

 彼女もそういう類ではないか、という話だ。

 

 そう思うとどこか危ういものを感じてしまう。

 

 マヤノトップガンとトウカイテイオーの“領域”は、大丈夫なものだろうか?

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 運命を変え、乗り越えるための“領域”。

 

 

 

 ウマ娘の待つ運命を打ち破ること。それは限界を超えることで引き起こされる。

 

 

 

 相応の出力には、それだけ支払うものは大きい。

 

 

 

 ただし、多大な負荷は身体を蝕む、言わば力の前借りである。

 

 

 

 ウマ娘の選手生命は短い。

 

 

 

 たとえ長く走れないとしても。

 

 

 

 その輝きを強められるのならば。

 

 

 

 ユメを、叶えられるならばと。

 

 

 

 その先へと手を伸ばすことを、どうして止められよう。

 

 

 

 誰よりも、本人が一番わかっていて、走り続けるしかないのだから。

もしも、変えるための運命も、想いも、願いも足りないとして、そのために代償が必要だったなら

足りないモノを補う代償はどこから支払われるのだろうか?

想い?絆?記憶?それとも―――

 勝利の、その先を目指して。ウマ娘は走り続ける。

 

 




「はい、アストンマーチャンです」

「みんなのマスコットのマーちゃんですよー」

「ぱかプチもいっぱいです」

「マヤノちゃんもテイオーちゃん人形も一緒ですよ」
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