気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。   作:隣のAG/マヤノテイクオフ

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私はここまで続くとは思っていませんでした。
みなさんのコメとお気に入りで続いております。
空欄とIF本編のマーチャンについて、匂わせ以上のコメはNGです。ごめんなさい
エタらないようにできるだけがんばります。
えい、えい、むん!


IF05 掲げるユメを

システム:シミュレーションT□□□□番を停止

システム:分岐番号5□□68□番の検証開始

「…おや、またきてしまったのかい?」

「また秘密を知りたくなった、そんなところだろう?」

「空白に隠された真実があるんじゃないかとね」

「今、キミの求める答えを言ったらつまらないだろう」

「まして、ネタバレはナンセンス。そうだろう?」

「おっと、他人に教えるのもナシだ。少なくとも今は、まだ」

「まぁ、そうだな。これくらいならいいか」

 …

「世界は観測者がいるから存在が許されるものさ」

「たとえどんなに救いがないとしてもね」

「しかし君は見守るしかできない。干渉はNGなのさ」

「さて、おしゃべりはこれくらいにしておこう」

「次があるかは、わからないがね」

 また、ユメを見ている。

 

 

 また、いつかを繰り返している。

 

 

 本当にユメなのだろうか。痛みも、苦しみもあるこの時間が。

 

 

 これはボクが選ばなかった可能性。

 

 

 ルームメイトのマヤノと、知らない誰か。スピカよりも少ないチームメイト。

 

 

 リギルでもない。シリウスでもない。知らないトレーナー。

 

 

 一緒にユメを追いかけている。笑って、喧嘩して、競い合って。

 

 

 マックイーンと競い合って、いつかの対決を約束して。

 

 

 ボクは無敗の2冠ウマ娘だった。怪我で諦めたはずの3つ目の冠に、手を伸ばそうとしている。

 

 あれ、ネイチャが3冠ウマ娘だったっけ?

 マヤノが3冠ウマ娘だったっけ?

 それともボクがシルバーコレクターだったっけ?

 

 ありえたかもしれない、ユメの続きを。見られなかった景色を目指して、ボクは翔ける。

 

 

 何度だって。脚が折れても。何度目だったっけ。

 

 

 あとひとつ。あとひとつでカイチョーの背中はもうすぐ手が届く。

 

 

 届かなかったその背中に。運命を越え、今度は。

 

 

 ユメ、なのかな。ユメなら、覚めなければいいのに。

 

 

 やっと見つけた光なのに。

 

 

 でもボク(キミ)はもし、ユメを叶えたら―――

 

 

 このボクのユメは、終わってしまうのかな。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 クラッシック3冠の最終戦。G1、菊花賞。

 京都で行われる、クラシック路線を締めくくる3000mの長距離レース。

 

 最も強いウマ娘が勝つとされるこのレース、勝利することでトウカイテイオーはクラシック無敗の3冠ウマ娘になることができる。

 シンボリルドルフに続く、無敗の3冠はもう手の届くところにある。

 マヤノも「今のテイオーちゃんなら負けないよ」と断言するほどの仕上がりではあるが、トウカイテイオーは原因不明の不調に陥っていた。

 

 菊花賞が近づくにつれ、テイオーの不調は増すばかりだった。どんどん悪くなっていく症状に食欲が減り始めたのは、大きな問題だった。

 トレーナーとしては、このまま出走を考えるなら無理にでも栄養をとって体重を保って欲しいところだ。消費できるエネルギーがなくなってしまえばどうにもならない。苦しい選択である。

 今のところは、比較的に喉を通しやすいエネルギー飲料やプロテイン等で誤魔化せているが、トレーナーならこのまま悪化する可能性を考えて、出走を取りやめるべきだ。

 

「倒れるとわかっていても走るから」

 

 そう覚悟を持った表情で言われて、トレーナーは止められなかった。

 なんでも理解っちゃうという、マヤノもあまり良い表情ではなかった。

 

「いまのテイオーちゃんの仕上がりをできるだけ保てれば、なんとかなるかも」

 

 トレーニングを終えたマヤノはテイオーを支えて楽な姿勢を取らせる。

 幸いにして、今のところは不調によって、身体機能が大きく弱っている訳ではなく、検査でも原因不明と匙を投げられた。

 

「本当にダメなら止めるから、トレーナーちゃんは信じて」

 

 …私はトレーナー失格かもしれない。

 ウマ娘の体調が悪いを理解していながら、レース出走を止めないと決めてしまったのだから。

 それでもできる限りのサポートをする。資料を漁り、寝る間を惜しんで。

 菊花賞のすぐ後にはマヤノの出走する秋華賞もある。

 

 トレーナーは信じて送り出す。それしかできないのだから。

 

「マーちゃんは、テイオーさんの気持ちもわかります」

「ウマ娘は、無茶でも走るしかないのです」

「きっと、みんなの記憶に残るでしょう」

「マーちゃんは少し、少しだけ羨ましいです」

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 もうすぐ菊花賞が迫るある日、トウカイテイオーは軽度のトレーニングを終えて部屋に戻るところだった。

 

(参ったなぁ…トレーナーの前ではなんとかいつも通り振る舞えたと思うけど)

 

(マヤノは続けようとしたら凄い顔で睨んできたし、やっぱりバレているよねぇ。)

 

 トレーナーには見えないようにうまく位置取りを考えている辺りも含めて、確信的だ。この後トレーナーに伝わるのも時間の問題だろう。

 距離的にも近いチームルームで休息を取るべきだった。逃げるように帰ることを優先したからか、意識も少し危うい。

 

(今日はちょっとマズいかも)

 

 それでもゆっくりと歩を進め、もうすぐ寮につくところまできた。

 

「―――ぁ、ぉーぃ……ぉー」

 

 早く帰って寝よう。マヤノもすぐ来るだろうけど、他のウマ娘に見つかるのもあまり良くない。壁にもたれかかったテイオーは、気合いを入れ直して歩きだそうとした。

 

(あ、マズ…)

 

 ふらりと、踏み出そうとした身体は言うことを聞かず、テイオーはゆっくりと地面が迫りくるのを感じていた。

 

「テイオー!?」

 

 危ないところを誰かに抱き留められた。この特徴的なもふもふツインテールといえば…

 

「…ネイチャ」

 

 よりにもよってあまり見つかりたくない相手のひとりだった。

 

「ありがとうネイチャ、助かった」

「大丈夫なの?テイオー。菊花賞までもうすぐなのに体調悪そうだよ?」

「大丈夫。ちょっとフラついただけ」

 

 できるだけいつも通り、笑顔を浮かべて答える。

 

「テイオー、大丈夫な顔色には見えないよ」

「ネイチャはライバルなんだから、ライバルが減るなーって喜んでもいいのに」

「冗談じゃなかったらいくらアタシでも怒るよ?」

 

 そうじゃないからネイチャなんだよね。

 

「…ネイチャはいいオンナってやつなんだろうなぁ」

 

 ネイチャの肩を借りながら、寮に歩き始める。盛大なため息と共に。なぜだろう。

 

「………この天然王子様系ウマ娘め」

 

 ぼそりと呟かれた言葉は聞こえなかった。

 

「止めても菊花賞、出るんでしょ?」

「うん」

「…負けるかもしれないとしても?」

「ボクは負けないから」

「不調のテイオーに負けるほど、みんな弱くはないよ」

「わかってる」

 

 はぁぁ、と二度目のため息。

 

「ボクは地べた這ってでも出るから」

「そこまできたらテイオーのトレーナーさんが大丈夫じゃないでしょ」

「許可はとったもん」

「うわぁ、トレーナーさんがかわいそう。さすがのネイチャさんもドン引きですわ」

 

 ジト目が向けられるけど、取ったものは仕方ないもん。そこまでいく前にマヤノに止められると思うけど。

 むしろ原因不明の調子の悪さ以外、大きい怪我をした訳じゃないし、死んでも出てやる!というウマ娘は一定数いるはずだ。

 それだけクラシック3冠という舞台は大きいものじゃないかな。

 

「ボクは、負けないよ」

「…テイオー」

「サイキョームテキのテイオーサマだからね」

 

 はぁぁぁぁ、と3度目のため息。呆れたと言いたげだけど、最初よりいい顔になった。

 

「テイオーが無茶苦茶なのは今更ですもんねぇ」

「よくわかってるじゃんネイチャ」

「じゃ、テイオーにはしっかり休んでもらわないね」

 

 ライバルなのに、部屋まで付き添ってくれるお人好しウマ娘。

 ネイチャは寮長とか似合いそうだなぁ。

 

「ありがと。ネイチャ」

「手加減なんてしないからね」

 

 じゃぁねと帰るネイチャを見送り、扉を閉じたボクは、そのままベッド倒れ込む。

 もう、限界だった。

 

 そして泥のようにボクは眠った。

 

 

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「…そうか、テイオーが」

 

 部屋には3人のウマ娘。

 

「ここ最近、体調不良での欠席が増えているようです」

「もうすぐ菊花賞、となれば皇帝サマも心配か」

「…会長はあまり、過度な肩入れする訳にもいかないからと見守るだけに徹している」

「なんだ?距離感を図り損ねたお父さんか?」

「…はぁ。言ってやるなブライアン」

 

 グサりと刺さる物言いに図星だからか、窓の外を見るその姿は、哀愁漂うお父さん(ションボリルドルフ)とでも言うべきか。

 皇帝の威厳はどこへやら、心配性のお父さんが物陰から見守っているようにしか見えない。

 

「そんなに心配なら直接訪ねればいいだろう。姉貴ならそうする」

「それができれば苦労しない」

「ヘタレだな」

「う”っ」

 

 きゅうしょに あたった

 

「…会長にも思うところはあるのだろう」

「次の女帝候補とは頻繫に会っているだろうに」

「…それは、その。様子見ついでに取引をだな」

「会長」

 

 口が滑ったとばかりに明後日の方を向くルドルフに、エアグルーヴの視線が鋭くなる。

 

「いやなに、大したことはしてない。ちょっとマナーの悪い記者をけん制する意見を貰っただけさ」

「ほう、なかなか勘の鋭いヤツだと思っていたが」

 

 やけに早く的確な対策を講じるなと思ってはいたが、そういうことかとエアグルーヴは理解した。

 ナリタブライアンは面白そうなヤツが、おもしれーヤツに昇格したようだ。テイオーより満たされる相手かもしれないと目をつけられたか。

 

「そういえば会長、今年度のスプリンター部門、年度代表バ候補のウマ娘ですが―――」

 

 

 「アストンマーチャン、だったか?」

 

 そういえば中央にそんな名前のウマ娘は、いた気がする

 

 

 

 

 

 そっと部屋を後にするウマ娘がひとり。扉が動いたことに気づかせず去っていった。

 

 

 

 …ちょっとお話するだけでも、テイオーちゃんは喜ぶと思うけどなぁ。

 

 ヘタレな会長さん。




「みなさんこんにちは。こんばんは?」
 配信コメント:キター
「マーチャンネルのお時間です」
 配信コメント:たのしみ
「トウカイテイオーちゃんは菊花賞で3冠に挑むです」
 配信コメント:今年はテイオーできまりだな
「無敗の3冠、シンボリルドルフに挑みます」
 配信コメント:勝ってくれ~
「気合い十分です」
 配信コメント:現地で応援するぞー!
「アストンマーチャンでした」
 配信コメント:もう一ヶ月もないのか
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