気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。   作:隣のAG/マヤノテイクオフ

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 なぜか3人目、4人目の幻覚をみる方がいらっしゃいますが、存在しない事象にお答えはしかねます。
現状では透明文字に触れるコメは控えてもらえると助かります
 本作は基本ハッピーエンドの予定ですが、予定は変更される場合があります。


IF■■/06 ユメの3冠ウマ娘

アーカイブ:IFエンディングNo.■■

 

 迎えた菊花賞。無理に無理を重ねたトウカイテイオーだが、トレーナーは出走を止めることはなかった。

 絶不調のトウカイテイオーに走りきる体力はない、そう言えるだろうとわかっていながら送り出してしまった。

 

 文字通りの命懸け、なけなしの全てを燃やし尽くすように走るトウカイテイオーは見事に勝利し、無敗の3冠ウマ娘となるユメを叶えた。

 雁字搦めの宿命という、魂に刻まれた鎖を力任せに引きちぎり、限界すら超えてみせた。

 

 ボロボロの身体に鞭を打ち、無茶をした代償は大きかった。

 

 皇帝に続く帝王、その偉業に誰もが歓喜した矢先のことだったが、ゴールしたテイオーが倒れ込んだそのレースは、“沈黙の日曜日”に続く大きな悲劇として人々の記憶に刻まれることになる。

 

 次世代のスターウマ娘トウカイテイオー。その才能あるウマ娘の喪失はURAの大きな痛手であった。

 

 意識不明となったトウカイテイオーは未だ目覚めず、そのウマ娘の担当トレーナーは強くバッシングを受け、悪意ある人々が好機とばかりに便乗した結果、大炎上の騒ぎとなった。

 その若手のトレーナーは責任を取り辞職に追い込まれたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テイオーは無敗の3冠というユメと引き換えに、二度と走れなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生死の境をさまよい、ついにテイオーが目覚めたときには全てが終わっていたのだ。

 偶然にも見舞いに来ていたメジロマックイーンによって、全ての話を聞いた。

 トレーナーが辞職したことで、チームは解体となりマヤノトップガンは学園から姿を消したらしい。

 残ったのはユメを叶えたが、無気力に日々を過ごすトウカイテイオーだけがおいていかれてしまった。

 辛いリハビリを終えても、二度と走ることはできないでしょうと告げられたが、やっぱりという納得だけだった。

 命すら使い潰す走りで、今生きている方が奇跡だったと思っていた。

 

 形式上はスピカへ移籍となっていたが、トレーニングを見ることもせずどこか遠くを見ていることが増えた。

 確かにあったユメも、情熱も失ったトウカイテイオーは、かつての快活さも笑顔も無くし、無気力なウマ娘そのものであった。

 もう使えないチームルームに置かれた物達は、大切なものを中心にできるだけテイオーの部屋に移された。

 

 病と闘いながらも復帰したマックイーンや、ナイスネイチャらは最後まで気にかけていた。

 テイオーの背に憧れてここにきたというウマ娘、キタサンブラックと言ったっけ。

 スピカに入り活躍する姿を見ても何も感じられなかった。

 トゥインクルシリーズの後に控えるドリームシリーズへの出走を薦められることもあったが、テイオーが再び立ち上がることはなかった。

 

 トウカイテイオーは二度とターフを踏むことはなく、見ることもないだろう。

 マックイーンとの決着も、シンボリルドルフへの挑戦も、二度と叶うことはない。

 

 

 

 

 

 ユメのレースは、ユメでしか有り得ない。

 

 全てを懸けたことに後悔はないのだから。

 

 

 今日も帰らぬ人たちの残した品々に囲まれ、ひとり部屋で空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

システム:トレーナーの死亡を確認しました

 

 

 

 

 

 ボクも連れていってくれたらよかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、今回は駄目だったよ。

 

 あんなに願ったユメなのに。

 

 燃えるような思いは失って。

 

 残ったのは消えかけのろうそくだけ。

 

 だから、キミはボクになっちゃダメだよ。

 

 このユメも、もうすぐ終わる。

 

 もしやりなおせたら、もっとうまくやれるのかな。

 

システム:対象の再起不能を確認

システム:シミュレーションを終了します

「会いたいよ、トレーナーちゃん」

 かすかな願いは海に溶けていった。

 

システム:因子継承を開始します

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 救われないユメを見た気がする。

 

 

 

 迎えた菊花賞当日。テイオーの調子の悪さは回復せず、ピークを迎えていた。

 

 

 ひたすら現所維持のためだけの最低限のトレーニング。テイオーの様子が急変するかもしれないと思うと気も休まらず、細心の注意を払い精神をすり減らす日々だ。

 そうなるとマヤノのトレーニングに付き添うなんてほとんどできない。本人は「秘密の特訓するから楽しみにしててね!」と言っていたが、正直申し訳ない。

 

 体重や筋肉量のパフォーマンスに関しては、なんとか維持できたことが奇跡のようで、アップで身体を温めるほどの体力は殆どない。

 なけなしの体力でぶっつけ本番に挑むのが精一杯のところだ。ゴールする前に倒れ込むことすらあり得るだろう。

 もしもに備えての医療スタッフもあらかじめ人員を回してもらった。

 

 あとはもう、トレーナーにできることは無事を祈るだけだ。

 パドックでいつも通りのパフォーマンスをみせたテイオーが、絶不調だとわかっていながら送り出したのだ。

 

「テイオーちゃんは大丈夫。」

 

 マヤノだけが、どれほど悪い状態なのか理解っている。

 それでも勝算が、追い続けた“無敗3冠”というユメを叶えるだろうと信じるのがトレーナーだろう。

「きっと、勝つから」

 マヤノは確信を持って言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は、きっと。

 

 

 

 

 

 ここではマヤノトップガンだけが理解している、枝分かれする数多の可能性の先。

 

 それはトウカイテイオーがたどり着く可能性のひとつ。

 

 あなたたちはきっと、その可能性に触れたことがあるだろう。

 

 夢のような世界の中で。

 

 知ってしまったら触れてはならない。

 

 マヤノトップガンだけは理解っている。

 

 

 勝利の、運命の、その先へ。キミとなら。

 

 

 魂に宿した願いも、想いも。その背に乗せてウマ娘は走る。

 

 

 そのために奇跡だって起こせるのがウマ娘なのだから。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 もしかしたら、出走したことでトウカイテイオーの選手生命に関わる可能性があるだろう。

今更トレーナー自身の評価がどう転ぶかは気にしていないが、テイオーに万が一があればこれ幸いにとトレーナーを責任を取らせる、なんてこともあり得る。

とのことで生徒会が動いていることをトレーナーは知らない。

 

 それでも走ると決めたのはトウカイテイオー自身だ。

 

 脚が重い。

 

 控室に戻った途端にで寄りかかるように座り込んだテイオー。

 そこに入ってきたのはシンボリルドルフだった。

 

「久しぶりだなテイオー」

「…カイチョー」

 

 マヤノかトレーナーくらいしかこないと思っていたから油断していた。

 よりにもよって、憧れの相手に今見られたくはなかったので顔を逸らしてしまった。

 

「やはり、体調は良くなっていないな?」

「止めに、きたの?」

「いや、止めても出るだろう?」

 

 こうして二人きりで話すのはいつ振りだろう。

 

「私だって、あの時テイオーと同じ状況になったとしても、走るだろう」

「まぁ、その結果がその後のジャパンカップなのだが…情けない話さ」

 

「…カイチョーはさ、全て捨てることでユメが叶うなら、捨てる方を選ぶ?」

 

「…」

 

 それはユメ。いつかの未来かもしれない。違うボクなら選んだだろう結末。

 そんなこともあったような気がするという、かすかに残る記憶の残肖。

 

「ひとりだったら、選ぶかもしれないな」

「リギルがなくて、トレーナーがいなくて、誰もかれもが信用できない敵、そういう状況だったらね」

「でも、選ばなかったから良いチームメイトに、トレーナーに、そしてテイオーに出会えた」

「私はそれを否定したくないんだ。テイオー」

 

「それにだ。あの日のファンだった君がここまできたのを見れて嬉しいんだ」

「だから、無事に帰ってくること。いいな?テイオー」

 

「ボクは…うん、大丈夫」

「答えはもう出ていたとわかったから。ありがとうカイチョー」

 

 言いかけた言葉を飲み込んで、意識を切り替える。もうすぐ時間だ。

 

「いってくるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テイオーの背中を見送ってからシンボリルドルフは呟く。

 

「あの日のファンのひとりだった君がここまでくるとはね」

 

 まだクラシック期のウマ娘に過ぎない自分の、ある日のインタビュー。

 私みたいに凄いウマ娘になる。そう言ったウマ娘の小さなファン。懐かしいものだ。

 人の顔を忘れない私ではなくても、印象深いファンになるのは間違いない。

 いまやあの日の言葉が実現まであと一歩というところだ。だからこそ。

 

「君の絶対を見せてくれ、テイオー」

 

 君だけの絶対を。ウマ娘の可能性を。

 たとえ無敗の3冠でなかったとしても、私はこう思うだろう。

 

 今はただ、無事を祈っている。

 

 

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

絶不調のトウカイテイオーはその疲れからか、スタートを出遅れ後方から追う形のレースとなった。

 適正が中距離のトウカイテイオーにとって未知の距離であるが、結果的に体力の温存に繋がり良かったかもしれない。

 

 最終コーナーも間近に迫っていても、速度に乗り切れないテイオーは次第に焦り始めていた。

 続々と後ろのウマ娘たちが追い抜いていくのを眺めるだけ。

 遠くなる背中はそのまま、ユメが遠ざかっていくようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――また、諦めるの?

 

 

 嫌だ。

 

 

 ―――全てを捨てて掴んでみせる?

 

 それも嫌だ。

 

 

 

 ボクは欲張りだから。

 

 マヤノも、トレーナーも、勝つため手段を考えてくれた。協力してくれた。

 

 今度こそ、ボクは。ユメを掴むんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉座のようなテイオーの領域が広がる。

 マントを翻して青い稲妻を纏い加速する。

 勝利の為の飛ぶ走り(テイオーステップ)ではない、新しいカタチ。

 そこをどけ。ボクが通る。

 横に振るった腕に合わせて研ぎ澄まされたプレッシャーの広がりに、前のウマ娘が僅かに横にズレる。

 

 いままでは雲に手を伸ばすように、届かない背中を追うしかできなかった。

 でも、今は違う。

 

 模倣の稲妻を振り払い、見据えるのはたったひとつの勝利への道(ウイニングロード)

 その身は絶不調ながら、溢れる不屈の炎は翼へと姿を変える。

 

 地平線を越えて、その先まで。どこまでも翔けていく。

 

 トウカイテイオーは今、3冠ウマ娘へのユメを翔ける。

 

 

 

 今にも意識が飛びそうだとか、ひどく脚が重いとか、そんなことは知ったことか!

 

 

 

 ボクが、サイキョーのウマ娘なんだ!

 

 

 

 

 自身の不調すらねじ伏せてトウカイテイオーは殻を破る。

 

 なりふり構わない破滅の走りではなく、既に限界のパフォーマンスをギリギリで留まり巧く走るという奇跡の走りだった。

 

 

 

 

 やはり天才というものはいるものだ。悔しいが。

 

 最後に抜き去られたナイスネイチャは、そこに眩しいほどの輝きを見た。

 

「…キラキラ、してるなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 無敗の3冠ウマ娘となったトウカイテイオー。

 

 既に限界だった彼女はゴールしてから、3本指を観客にみせるまではなんとか耐えたが、すぐ眠るように気を失った。

 

 絶不調ながら奇跡の走りを見せたトウカイテイオーの姿に、世間は大きく賑わった。

 

 そのすぐ後の秋華賞のマヤノは蹂躙といえるだろう。

 全員が失速し、墜落していくかのように見える圧倒的なレースだった。

 無敗の3冠ウマ娘に続いて、無敗のトリプルティアラウマ娘の誕生だ。

 二人の世代最強は、奇しくも同じチームから生まれた大波乱の年となる。

 

 

 菊花賞を過ぎてからは、テイオーは噓のように回復し、続くジャパンカップへの調整を始めていた。

 

 

 皇帝を超える帝王、その歩みは止まらない。

 

 

「すごいなぁテイオーさん!私もいつか、あんな風になるんだ!」




「みなさんこんにちは。こんばんは?」
 配信コメント:お、きたきた
「マーチャンネルのお時間です」
 配信コメント:たすかる
「トウカイテイオーちゃんの次走はジャパンカップです」
 配信コメント:3冠ウマ娘のジンクス破ってくれ~
「皇帝さんを超えるとやる気たっぷりです」
 配信コメント:無敗3冠ですらすげぇのによ
「もし勝利したらウマ娘初の偉業らしいです」
 配信コメント:私もテイオーさんみたいになりたいです!
「アストンマーチャンでした」
 配信コメント:ありがとうマスコットちゃん
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