気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。   作:隣のAG/マヤノテイクオフ

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あけましておめでとうございます!!
クラシック期が終わりますが、本編とは違いIFルートなのでもう少し続きますよ

更新が遅くて申し訳ありません。
次かその次あたりで、悶々としていた方も思う存分感想に書いてもよくなると思います。
それまで我慢。


IF07 クラシックの終わり

 菊花賞の熱が冷めやらぬ冬。

 

 トウカイテイオーはクラシック無敗の4冠目への挑戦としてジャパンカップへ、マヤノトップガンはトリプルティアラに連なるティアラ路線のエリザベス女王杯へと挑んだ訳だが、驚くほどあっさりと勝ってしまった。

 

 こんなにあっさりと勝てるものなのだろうか?と自分の感覚を見つめ直す程には、トレーナーが最も実感のない勝利であった。

 それもそのはず、初担当2人のウマ娘が無敗記録を重ね、名立たるG1レースを勝利してしまう天才だ。最も凡人寄りの感性なのはトレーナーである。

 果たしてトレーナーとしての自分の実績と言えるのだろうか?と疑問に思っている。

 たまに言われる「担当に恵まれただけ、お飾りの実績」という話はその通りだなと感じている。

 嫌がらせ自体はたづなさんやリギル繋がりを警戒してか、減ってはいるが陰口はどうにもならない。

 

 マヤノは今年度最後のレースである。エリザベス女王杯は実質的に4つ目のティアラとも呼べる。

 つまり4つのティアラを1年で獲得し、夏の宝塚記念をも制した最強の女王が、いまだクラッシック期のウマ娘から誕生した訳だ。ウマ娘の歴史に名を刻むことになっただろう。

 

 ちなみに身に余る功績を手にしたせいで、新人トレーナーの給料以外の+αが増えた結果、ちょっと通帳を見るのが怖くなったり、突然生えてきた親戚からの電話も少し増えた。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

「おはようございます、マーチャンですよー」

 

 

 有マ記念はトウカイテイオーとマヤノトップガンのどちらも、ファン投票上位に入ったことで出走条件は満たしている。

 しかしながら、マヤノは事前に「気分が乗らないので出ないよ!」とチーム公式アカウント、インタビュー共に不参加表明をしている。

 トウカイテイオーはこのまま、皇帝を超えクラシック路線の前人未到である「クラシック期G1で年間無敗の5勝」を掲げて調整しているところだ。

 ライバル候補として有力視されていたナリタブライアンは、あくまでマヤノトップガンと対決したいと言っており辞退、来年の宝塚記念か有マ記念に出走予定があれば狙っているとのこと。

 来年度はついに、乙名史氏らの協力によって実現された、クライマックスシリーズの開幕ということで名のあるウマ娘たちのドリームレースが行われる。そちらで対決したいという話もあるかもしれない。今季最強とまで既に言われている、うちのトウカイテイオーとマヤノトップガンも是非にと呼ばれているので、有り得ない話ではないだろう。

 ドリームシリーズの枠もいくつか設けるという話もあるらしいので、真の最強決定戦と言えるとんでもないレースになるかもしれない。

 

「マーちゃんも適性があれば、出てみたかったなぁって」

 しかしそれは、叶わないユメなのだ。

 

 今日はトレーニング休みの日。トレーナーは以前から協力関係になっているアグネスタキオンの研究室へときていた。

 

 

 アグネスタキオンとマンハッタンカフェ。あまり良い噂はなかったが、耳にしたことはあった、意図的に走らず研究に没頭するウマ娘の話。

 あの皇帝、シンボリルドルフも評価する程に実力があるのだが、選抜レースに出ることはないウマ娘たちだ。

 アグネスタキオンは何やら怪しげな実験を繰り返していて、マンハッタンカフェは関わると不幸が起こるともっぱらの噂だ。

 もちろんいくつかは誇張された内容だが、半分くらいは実際にあったことであるらしい。

 少なくともマンハッタンカフェに関しては「お友達」や悪意ある幽霊によるもので、本人の意図しないものである。

「マーちゃんちょっぴり親近感ありますねー」

 トレーナーは足りない知識と経験を補うために、なりふり構っていられなかったのもあり、一度訪ねてみることにした。

 ちなみにマヤノがたまたま遭遇したアグネスデジタルを捕獲(もとい連行)して紹介して貰ったツテ、らしい。

 

 テイオーのデータ提供とちょっとした対価の代わりに、未だメイクデビューすらしていない彼女達に協力すること。少しでもテイオーの問題を解決できるならと。

 その結果、データと進捗の共有ついでに、なにかと相談したり実験に付き合う関係が2年程続いているのだった。なお7色に輝く怪しい薬を飲んだりはしていない。

 しかし、彼女たちにも当然タイムリミットは存在する。

 担当なしで過ごせるのは今年が限界という話だった。ひとまずチーム・アンタレス所属という扱いで猶予時間を引き伸ばし、もし担当トレーナーが見つかったら引き止めないという仮所属だ。

 

「やぁやぁトレーナーくぅん、待っていたよ」

 

 持ってきたお茶請けはマンハッタンカフェに渡して、アグネスタキオンにはここ最近のデータをまとめたものを渡した。他に頼まれていた物はテーブルに。

 ついでにチーム・アンタレスプレミアムぱかプチ3点セット(限定品)を置いておく。

 マンハッタンカフェが「…ここなら大丈夫です」と示した場所だ。

「いい場所ですねー」

 ついでに後で投稿する用の写真を撮っておく。

 

「テイオー君のデータをみる限り、負荷の軽減に関してはうまくいったと言えるだろうねぇ」

 

 いつも通りであるなら砂糖多めの紅茶を少し舐めて、アグネスタキオンはデータを流し見て言った。

 

「次は有マ記念か、今回とりあえずは大丈夫だろうというのが、私の予測だねぇ」

 

 そのあたりは違和感に敏感なマヤノも同意見なので、ひとまず安心といったところか。

 

「…脚の脆さはウマ娘にとって致命的だ」

「他ならぬ私自身がそうなのだから。」

「おかげで模擬レースすら満足にできないからねぇ」

 

 自虐的な言いようだが、アグネスタキオンが走らない、いや走れない問題というのは、確かに致命的な問題だ。

 デビューしたところで、一度きりのクラシック路線のようなレースにいざ挑むときに限り、不調で出走できないなんてこともあるだろう。

 私はともかく、栄誉ある称号を手にしたいトレーナーにとってはたまらないだろう。

 ただ、その脚の脆さに関する噂は流れていない。謎の実験をしている癖ウマ娘として知れ渡っているからだ。

 

「正直、半信半疑なところはあったが、1年以内に折れるだろうという計算は出ていたさ」

「菊花賞前の不調に関しては不思議なことに、全くと言っていいほどよくわからないというのが結果さ」

 トウカイテイオーに関しては私より詳しいだろう、アグネスタキオンでもわからなかったことか。

「…私からみても、悪霊の類が悪さをしているようには感じられませんでした」

「私としては、もっと別の…ウマ娘の根幹に関わるモノかもしれないと思えるねぇ」

 

 ウマ娘の、根幹?

 

「キミも知っての通り、ウマ娘は魂に刻まれた名前を持って生まれるだろう?」

「ならば魂に刻まれた運命のようなものがあったとしよう」

 

「仮にだ、トウカイテイオーは菊花賞を走れない運命を持つとしたら、どうなると思う?」

 

 運命だとしたら。突然の故障、原因不明の体調不良が、そうあることが当然のように逃れられない現象が起こるとでも?

 それこそ、神のいたずらとでもいうように…?

 トウカイテイオーだけではない。チーム・スピカのサイレンススズカに関する話を聞いたが、いまなら違和感を感じる。

 

「思い当たる節はあるようだねぇ?お互いに」

 そうだとしたら、彼女には何が待ち受けているのだろうか。

「どのウマ娘にも当てはまる話さ。3女神なら知っているのかもしれないねぇ」

 

 直接聞くことが叶わないことだ。誰もその声を聴いた、姿をみたという話はないのだから。敬虔深いウマ娘やトレーナーがいた話はあるが、神託を受けたということは全くないらしい。

 

「しかしだ、キミ達がウマ娘の可能性を見せてくれた」

 

 私たちが?

 

「運命だとしても、変えられる可能性。私だけでは見つけられなかったモノさ」

 

 そこでアグネスタキオンが取り出したのは、チーム加入申請書。書かれた名前はアグネスタキオンとマンハッタンカフェのものだった。

 

「…タキオンさんが思いの外、ごねましたので」

 

 私は付き合わされただけで最初から決めていました、というマンハッタンカフェは素知らぬ顔でコーヒーを飲んでいる。

「カ~~フェ~~~?」

 アグネスタキオンからジト目が送られるも、全く見向きもされていなかった。

「お友達が見えずとも、存在を感じられるヒトは今までいせんでしたから」

 

 …そうだった。一度だけ白いウマ娘の幻を見た。そう言ったときに素質があるのだと言われていたのだ。『お友達』も積極的に目覚めさせるような刺激はしない、らしいがたまに白い後ろ姿だけは見えることがある、ような気がする。定かではないが。

 

「よろしく頼むよ?トレーナーくん」

「…今後もできる限り、協力は惜しみませんので」

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「さて、トレーナー君にはできない話をしようか」

 

 

 

 

 

「…結論から言いましょう、あなたはもう、走るべきではありません」

 

「知名度が上がったとはいえ、記憶に残りにくいという現象は、科学的にアプローチするには限界があるからねぇ」

 

 …わかっています。

 

「次どうなるかもわからないというのにかい?」

 

 それでも、走らなければならないのです。

 信じたくはないですが、それが運命なのかもしれません。

 

「ふぅん?わかりきっていたかようにいうねぇ」

 

 流れ落ちる水を止めることは、私にはできませんので。

 

「…あなたは―――」

 

 

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「彼女、不思議なウマ娘、としか表現できないのが悔しいところかねぇ」

 

 紅茶のお代わりを注ぎながら、顔を上げずにアグネスタキオンは呟く。

 

「お友達ですら、見えにくいと言っているのは異常なことです」

 

 マンハッタンカフェは彼女について纏めたノートをぱらぱらと捲る。

 『お友達』はお手上げとでも言うように手をひらひらとさせたのをみて、ため息を吐く。

 

「機器の計測では時より不自然に測定不能になる、興味深い現象ではあるけどねぇ」

 

 どの計測機器であっても、僅かの間だけ全てがエラーを吐くのだ。その後は何事もなかったように元に戻る。

 一度だけなら偶然だろう。しかし、何度も起こりえるものなのか?答えは否だ。

 

「この世界に嫌われてる、というにはいささか過剰な気がしないかい?」

 

「…彼女は、突然現れたとしか言えない存在、そうお友達が言っていました」

 

 そう、ある日突然現れたウマ娘。それはあのトレーナーがきた頃だった。

 

「誰もが口を揃えて、そんなウマ娘がいたかと疑問に思う。異常としか言えないさ」

 

「まず忘れないであろう、たづなさんや会長ですらだ」

 

「デジタル君から話が聞こえてもおかしくないが、それもなかった」

 

 しかし、彼女は確かに存在する。学生証も、彼女の部屋も。

 

「使いたくはなかったが、実家のつてで調べても痕跡すらなかったという話さ」

 

「それは…」

 

「果たしてキミは、どこから来たのだろうねぇ」

 

「もしかして、未来あるいは過去、別の世界や平行世界、そう呼ばれるところからきたとでも言うのかねえ」

 

 わからなくないこそ知りたいと感じてしまう、アグネスタキオンは生粋の研究者だった。

 

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

「今週はクリスマス!みんなでパーティしよ!」

 

 

「せっかく年度代表ウマ娘になったし、盛大にいこうよ」

 

「定番はチキンですかねー」

 

 有マ記念目前で行われた抽選会、そこで年度代表ウマ娘に当然のように選ばれたふたり。クラシックの中長距離路線からトウカイテイオー、マイル含めたティアラ路線で結果を残したマヤノトップガンのどちらも、今季無敗のウマ娘だ。当然とも言えるだろう。

 そして、来年度末に開催が決まったクライマックスシリーズについても正式に発表された。

 

 今をときめく二人と名だたるウマ娘たちがしのぎを削る、最強を決めるレース。

 思ったよりも世間が好意的であって良かったと思う。

 

 トレーナーは大切な担当ウマ娘と共に、クリスマスパーティの準備に街へ繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、トウカイテイオーは有マ記念を制し、無敗の6冠ウマ娘となった。

 

 

 

 トウカイテイオーは運命の先へ辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

 チーム・アンタレス、もう一つのお話はここで終わらない。

 

 しかし運命の足音は、彼女へと着実に迫っていた。

 

 覚悟はできていますか?




「マーちゃんです」
『…?』
「みえていますか?」
『放送事故か?』
「きこえていますか?」
『嘘だろ?そこにいるじゃないか』
「私の次走を発表しますね」
『は?人形しか写ってないが??』
「高松宮記念です」
『可愛いマスコットウマ娘人形ちゃんですね』
「楽しみにしてくださいね」
『幻覚ニキはウマ娘がみた過ぎてみえないもの見えているな?』
「マーちゃんでした」
『いつものマスコット映像放送でしょ?』

『このマスコットちゃんのモチーフウマ娘ちゃんて誰だっけ?』

『たのしみだなぁ、高松宮記念』
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