気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。 作:隣のAG/マヤノテイクオフ
だって、サトノダイヤモンドで書いて♡って言うから…
諦めたくないのです。この手が届くまで。
届くと、信じて。
“いつか”はきっと、どこまでも近くて遠い、あと少しなのだから。
「1番人気ながら惜しくも敗れたサトノダイヤモンド!皐月賞3着っ!」
流れ落ちる汗を拭い、私は電光掲示板を見上げた。
1着からの着差は3バ身程。
十分に勝ちを狙えるレースだっと思う。
中盤コーナーのロスが、スパートのタイミングが…等々、考えたらキリがない。
サトノの悲願、G1勝利。
優秀なウマ娘を世に送り出している程に、大きい家でありながら、未だになされたことはない“G1勝利”という結果。
G2・G3のレースでは数々の勝利を納めてきたが、惜しくもG1だけは勝てず、勝利の女神から見放されているのではないか、そう思ってしまうのも無理はない。
中央に入学できるウマ娘は一握りであって、そこからメイクデビュー、OP、G3、G2を勝ち上がれるウマ娘はごく僅か。
それだけで、サトノのウマ娘の優秀さはよくわかるだろう。
それでも“サトノのウマ娘はG1で勝てない”というジンクスがある。
それが世間に広まって信じられてしまう程に。
私が、私こそが終わらせる。そう努力して、力をつけて、それなのに。
また届かなかった。あと少しが遠かったと、打ちひしがれる姉のように思っている方々を見送った。
未だに私、サトノダイヤモンドはG1未勝利のウマ娘だった。
私もまた、届かなくて。
家を、想いを、使命を背負って、どうしようもなく“また届かなかった”という結果に、悔しくて、悔しくて。
私は声を上げて泣いた。
私はまた、届かない。
◇◇◇◇◇
思い起こすのは入学当初のこと。
キタちゃんは憧れのトウカイテイオーさんと同じチーム・スピカへ。
私はサトノ家の縁でサトノクラウンと共にチーム・カペラへ。
やっとのことで見つけた、運命を感じたトレーナーさん、その人には既に担当がいて。
せっかくのチーム所属のサブトレーナーなのに、歩み寄れずにいました。
運命を感じたあの人の隣には、栗毛の2房を楽し気に揺らすウマ娘があって。
とある昼下がり、マックイーンさんと共にベンチに座るある日。
憧れのウマ娘からの呼び出しともあれば、踊りだすほどに嬉しいはずなのに、気分は沈んだままでした。
「悩んでおられるそうですね」
そう告げたのは、憧れのウマ娘であるメジロマックイーンさんでした。
「…はい」
膝に乗せた両手に力が入った。
「私は、サトノさんを羨ましく思います」
「…ぇ?」
私は伏せていた顔を上げると、マックイーンさんは柔らかく微笑んだ。
「私は結局のところ、クラシックを満足に走れませんでしたから」
マックイーンさんは菊花賞まで、走ることもままなならない日々でした。
やっとのことで出走できた菊花賞から、ステイヤーとしてその実力を見せつけました。
天皇賞連覇の後は、ウマ娘にとって不治の病との闘いでした。
比べて私は病気やけがに悩まされず、ここまでこれたのです。
なのに、私は。充分に恵まれているのに、これ以上を望んでいる。
「だからといって、気に病む必要もありません」
メジロとして、悲願を背負い走り続けていたマックイーンさんだからこそ、
「焦らなくていいのです」
私の手をそっと持ち上げ、もう一方の手を重ねられた。
思っていたより、その手は小さく感じてしまうほど、私は大きくなっていたと実感する。
入学前はあんなにも大きな両手だと思っていたのに。
「まだ、あなただけの輝きを見つける時間なのでしょう」
「私より多くのチャンスが、あなたにあります」
それは、マックイーンさんがあの“メジロ”のウマ娘だったから言えることでした。
期待を、家を、悲願を背負い、ついに成し遂げた、天皇賞の盾という証。
どれほど重いものを背負っていたのでしょう。
サトノ家と同じように、いや、それ以上のものかもしれません。
今までは見ていることしかできなくて、やっと自分の番になった私は、マックイーンさんのようにできるのでしょうか。
「だから、もっとわがままであってもいいと思いますよ」
「テイオーだって、そうでしたから」
「テイオーさん、みたいに…?」
思い起こすのはあのウマ娘。天真爛漫なあの子のようなウマ娘を、“わがまま”であると言えるのかもしれません。
「…わがままになってもいいのでしょうか」
家や、立場、様々な重圧に縛られず、自由であり続けるあの子。
私やキタちゃんのように、憧れへ手を伸ばす訳でもなく、そうしたいから走ると言っていた。
その撃墜の星は勝負服へと―――
「…話を聞いてみれば、トレーナーさんとあまりコミュニケーションが取れてないと聞きましたわ」
「それは…」
トレーナーさんの傍にはいつもあの子がいる。
あの子のトレーナーであって、私はチームのサブトレーナーとしてのウマ娘であって、担当ではないのだ。
「普段はあれだけ金剛石のように揺るがないと言われていますのに、避けているように見えると」
「…そういう訳では」
思わず、私は顔を背けてしまう。
「ふとトレーナーさんを目で追ってしまう様子が心配だと、キタサンブラックさんも言っておりましたわ」
…うぅ、は、恥ずかしい。
キタちゃんにそう言われてしまうということは、かなり頻繫に見てしまう程だということでしょう。
「マヤノさんの担当をしていらっしゃる、サブトレーナーの方でしょう?」
マックイーンさんは、あの人について知っていたのでしょうか?
メジロの方なら調べていてもおかしくはないでしょうが…。
「…はい」
「ダイヤさんが目を付けるだけはありますね」
「…ぇ?」
「チーム所属でなければ、メジロにお招きしていたかもしれませんね」
それは―――
「困りますっ!!」
あの人は、私にとって…
…私にとって?
勢いよく立ち上がってまで答えたものの、続く言葉が見つからず止まってしまった。
「あら?どうして困るのです?」
どうして?どうしてだろう。
「…」
「あぁ、これは重症ですのね」
「マヤノさんが既に担当だから、それで期待を裏切られた気分になって、尻込みしてしまった」
「本当になぜかわかっていないのですか?」
あぁ、耳を塞いでしまいたい。
続く決定的な言葉を聞いてしまうのは、きっと…
ため息をついたマックイーンさんは、呆れ気味に言葉を吐いた。
「その人に運命を、感じたのでしょう?」
その言葉はすんなりと通ってしまった。
…あぁ、つながってしまった。
なぜ、あんなにも意識してしまうのか。
なぜ、マヤノトップガンが羨ましく感じるのか。
なぜ、私だけの担当ではないと、思ってしまったのか。
なぜ、この人とならどこまでも、そう思ってしまったのか。
「必要なら、あらゆる手で家にお招きしたいと思うくらいなのですよね?」
「なぜ、何もしなかったのですか?」
どうしてでしょう。
普段の私はきっと、あらゆる手を尽くすはずだったのに。
ライバルがいたら、諦める?否。
仮にキタちゃんの担当だとしても、私は逆スカウトに動くでしょう。
『ダイヤなら直ぐに契約書叩きつけると思った』
そうクラウンも言っていたのが不思議に思っていたのに。
「どうやら、まずはトレーナーさんから対策を講じる必要があるようですね」
それはそれは、とても良い笑顔でした。
「…よろしく、お願いしますぅ」
この後とことん話し合った結果、気がつけば夜になっていました。
◇◇◇◇◇
数日後、私のありのままのの思いを、トレーナーさんに告げました。
「…ふーん、やっとその気になったんだ」
そう言ったマヤノトップガンさんは、私が何も言う前にどこかへ行ってしまいましたが。
私は正式にサブトレーナーさんの担当ウマ娘となりました。
それからは、あっという間のような日々でした。
半年ほど経って挑んだ菊花賞に勝利し、“サトノのジンクス”は終わりを迎えたのです。
クラウンも最近調子が良いようですし、私はキタちゃんとの約束に備えています。
いずれは凱旋門へと挑みたい、そう思います。
「“我がまま”であれ、かぁ」
自分らしく、そして貪欲に。我儘であれ。それは誰に聞いた言葉だっただろうか。
私は、この人とならきっと。
とても、とても不本意ですが、マヤノさんの協力も非常に有意義なものです。
ですが、トレーナーさんは譲れません。
何れサトノ家にも必要な人材ですので、手放すわけにはいかないのです。
「ご覚悟を。トレーナーさん」
このサトノダイヤモンド、名前のように金剛石のごとく強固な意志で、たとえ自由に飛び立つ翼を持つウマ娘が相手だろうと。
―――絶対に、逃しませんよ
私は、どこまでも輝く為に貴方が必要なのですから。
・サトノダイヤモンド主な戦績
天皇賞春、キタサンブラックに勝利。
宝塚記念、勝利。
翌年、凱旋門賞へと挑むことに…
彼女と競ういあうように栗毛のウマ娘の姿もあったとか。
この世界戦では、他チームトレーナーとは関わりがなく、最初からカペラ一本道です。
これ以上特に思いつかなくなったのでここで終わりです。
評価や感想をポチってもらえたら嬉しいです。
王様戦隊キングオージャー凄い面白いので、みなさん見よう!
それではまたいつか。