気分屋マヤノちゃんがクラシックを荒らす話。 作:隣のAG/マヤノテイクオフ
誤字報告も助かっています!見返すと誤字いっぱいであれ?となりますね…
低評価でも一言いただけると、いいなぁ…って
5つ目の冠、ジャパンカップ。
流れ星を打ち落とす、その為には全身全霊を。
秋シニア3冠のひとつ、G1ジャパンカップ。
菊花賞のインタビューで「次はねー、ジャパンカップ!」と元気よく答えたマヤノトップガンに会場は多いに沸いたが、トレーナーとしては疲労と怪我が心配なので素直に頷けない。
翌日の新聞では【マヤノトップガン、クラシック期に4冠目!ジャパンカップ制覇で皇帝超えの5冠か!?】と盛大に一面を飾った。これが面白くないのは各陣営のプライド高いトレーナー達だ。
トレーナー向けの寮もあまりいたくはないので、チームルームで寝泊りが増えてきた。
上から見下すようなベテラントレーナーによる説教とでも言うべき、持論を長時間語られたときは、かなり心理的にくるものがあったが、いつの間にか現れた謎の葦毛ウマ娘に助けられた。
やけにお嬢様口調が様になっていたので、実はメジロの関係者と言われても信じてしまいそうだった。
菊花賞の前にはジャパンカップの登録申請を出してしていたとはいえ、菊花賞から約一ヶ月のJC、さらに一ヶ月後は有マ記念。この強行スケジュールに臨むのは無謀である。
というのはシンボリルドルフという前例が証明していた。タイトなスケジュール、クラシック3冠直後の不調な状態で挑むことになった、シンボリルドルフの数少ない敗北レース。それがジャパンカップ。
しかしながら、それでも3着となり、合わせても2バ身と引き離されていないあたり、その強さは別格だろう。翌年のジャパンカップで忘れ物を取るように勝利している。
だがこのレースは海外のウマ娘が挑戦しにくるという、グローバルなレースである。迎え撃つ日本のウマ娘は【日本総大将】といわれるほどだ。特に海外、凱旋門賞で前年度ジャパンカップ覇者のエルコンドルパサーを下した凱旋門ウマ娘ブロワイエがわざわざ来日した翌年のジャパンカップ。
日本一のウマ娘を目標に掲げるスペシャルウィークが、見事勝利したレースは記憶に新しい。
…とここまでレースの度に過去のデータや映像を漁っては、頻繫にチームルームでマヤノと共に鑑賞会が開かれているのは最早恒例行事になっている。
最近では寛ぐマヤノが「膝枕!」とソファに座る私の脚に頭を乗せてくるので、ゆっくりと撫でることが多い。ついでとばかりにそっと耳を優しくマッサージすると、悩まし気な声を漏らすが、決してうまぴょい(意味深)ではない。しかし私の愛バはとても愛らしいと思う。
ジャパンカップに出てくるのは、スペシャルウィークとエルコンドルパサー。どちらもジャパンカップで勝利したシニアウマ娘だ。宝塚記念でさえ、マチカネフクキタルを相手にハナ差数センチのギリギリで勝利だったのだ。今度も簡単には勝てないだろう。
私がマヤノトップガンにできるのことは彼女を信じること。マヤノトップガンは私の輝く星なのだから。
その日、マヤノを膝に乗せたままの私は、疲れがたまっていたのかいつの間に眠っていた。
「トレーナーちゃん」
「今度はマヤのホントの全力、みせてあげるね」
完全に眠りに落ちるその前に、マヤノの声が聞こえた気がした。
◇◇◇◇◇
迎えたジャパンカップ当日。
東京レース場には日本国内外の強豪といえるウマ娘が集まっていた。
その中でも数少ないクラシック期のウマ娘である、マヤノトップガンは目立っていた。
「こんなチビは帰っておねんねしな」「クラシックとは冗談だろう?雑魚は大人しくしてな」といった挑発(おそらく)を意に返さず、マヤノは終始ニコニコしていたという。
不気味な奴だった。とトレーナーは後のインタビューで知ることになる。
今年度は黄金世代と名高いウマ娘がふたり。スペシャルウィークとエルコンドルパサーに期待がよせられていた。マヤノトップガンは伝説の新たな1ページとして、5冠目を手にするのかどうかに応援と批判が半々といったところ。
普段の穏やかな様子は鳴りを潜め、スペシャルウィークは強者の覇気を纏っているように見られる。そんな姿を本人へは悟らせず、マヤノトップガンはじっくりと見定めるように観察していた。
(なるほどね)
今日のスペシャルウィークは絶好調のようだ。まともに勝負するとまず、勝てないだろう。そうマヤノは
あの流れ星のような領域を、どう攻略するか。次に有マが控えているからとはいえ、手札を温存していて勝てるほど、黄金世代は弱くない。スペシャルウィークを抑えられるなら、同様にエルコンドルパサーも抑えられるという予感がある。
他の海外ウマ娘を一瞥しながら、マヤノはゲートへ向かう。
今日の相手はほとんどが初めての相手だ。映像越しでしかマヤノトップガンを理解できていないだろう。だからこそ、使える手札がマヤノにはある。
「マヤわかっちゃった」
マヤノトップガンは笑う。発進準備はオーケイ、テイクオフの瞬間を待つだけだ。今日も楽しい
『1番人気はスペシャルウィーク!日本一のウマ娘、かつての日本総大将が力を見せつけるか!?』
『流星のような末脚が、連勝に待ったをかけるのか!期待が寄せられます』
『チーム・スピカ注目のウマ娘ですね!5枠7番から出走です』
『続いて僅かな差で2番人気、マヤノトップガン!今年無敗の5勝、クラシックにして4冠ウマ娘、G1レース5つ目の冠を狙います!』
『変幻自在の撃墜王、その名の通り予測できない作戦に期待のウマ娘ですね』
『皇帝をも超える、前人未到の記録も期待されています』
『8枠14番の大外から出走です!』
『3番人気はエルコンドルパサー!』
『凱旋門は惜しくも敗れましたが――――』
トレーナーのためにマヤノトップガンは本気になれる。人気順等関係ない。今はトレーナーの一番なのだから。
始まりを告げるファンファーレが鳴り響く。
『ゲートイン完了しました。まもなく出走です!』
◇◇◇◇◇
『素晴らしいスタートです!』
『さぁ先頭争い、フラッシュデッカー、スカイトリガー前に行きます!』
スタートの勢いのまま、スペシャルウィークは中段で速度を抑えた。
エルコンドルパサーは前に、マヤノトップガンは後ろのようだ。
不自然なペースのウマ娘が外からこちらに寄ってくる。接触を回避するため少し下がって躱しながら、第1コーナーへと入る。
今度は前のウマ娘が不自然に垂れてきたので少し外へと膨らむように躱した。
(…?)
妨害にしては不自然な動きだが、スペシャルウィークは落ち着いて対処した。
『第2コーナーに入り、先頭ふたりから3、4バ身あけて、フューチャーガンマ、エルコンドルパサー続きます』
『凱旋門有力ウマ娘フォトンアース、5番手から前へと位置を上げて行きます!』
まただ。なにかから逃げるように不自然に加速したウマ娘がスペシャルウィークを抜いてから失速する。スペシャルウィークは走りづらさを感じていた。
まさか、マヤノトップガンが
『向こう正面に入りました!エルコンドルパサー現在3番手』
『中段につけましたスペシャルウィーク、ここにいます!』
『シンガリはマヤノトップガン!』
そろそろ直線も終わりコーナーに入る。2つのコーナーからスパート争いが始まるのだ。
(ここ!)
直線も終わりに差し掛かるところで、外に動き差し切り態勢に入る。
ここから第3コーナー、加速して位置を上げ、スパートに入る。ここからじゃないと間に合わない!
流星の輝きがスペシャルウィークの身に纏われる、そのときだった。
―――
声と共にスペシャルウィークの後方から、ターフは空の蒼へ塗り替わる。いつのまにか大空を飛んでいるかのようだ。
(これはまさか、領域!?)
いったい誰の…?ちらりと振り返るスペシャルウィークに見えたのは、4機の戦闘機編隊。
マヤノトップガンが戦闘機編隊を引き連れて迫りくる。
今まで使っていなかった、使わなかっただけなのか、マヤノトップガン本来の領域が展開される。
マヤノトップガンを1番機として、生真面目な2番機、お調子者の3番機、あどけなさが残る4番機が続いていく。
マヤノトップガンの背後から別れた戦闘機たちは、己の隊長の道をこじ開ける為、
コーナーに入る前にスペシャルウィークの後ろにいたウマ娘達は、背後を取った戦闘機による攻撃を受けた。ミサイルや機銃を掃射したのち、横に躱して次の標的へと迫りくる。
戦闘機の標的となったウマ娘は例外なく、撃墜されたかのようにペースを崩し垂れていった。
スペシャルウィークも例外ではなく、その攻撃に晒され、流星の輝きは失われる。
前に走るウマ娘達もまとめてペースが崩れたようだ。
やがて役目を終えた戦闘機は華麗にターンを決めて、引き返していく。その際にチラリと見えたコックピットからは親指を立てて隊長に挨拶する様子が。
そして彼らは帰っていくとターフの緑を再び感じることができた。
それは夢と錯覚するには長い、一瞬の領域によって生み出された幻覚だった。
『第3コーナーでしかけるスペシャルウィーク!位置を上げていきます』
落とした筈の流れ星に再び光が灯る。予想外のプレッシャーと壁を躱すのに手間取っても、その加速力は圧倒的だ。
強いウマ娘との経験はシニアで走っている分、幾度となく経験している。領域の影響を受けただけでは、スペシャルウィークもエルコンドルパサーも止められはしない。
そろそろ加速を始めるであろうエルコンドルパサーを追い抜かして前へ行くため、ひとり、ふたりと外からの抜いて流星の輝きは増していく。
その後ろを追うマヤノトップガン。流星の残光を道標にしたマヤノトップガンはスペシャルウィークの背後に迫る。
流星をカタパルトにして、マヤノトップガンは飛び立つ。
『第4コーナーを曲がり直線に入りました!』
ここから直線だ。横並びになったエルコンドルパサーと、スペシャルウィークは先頭争いに入った。
「私が!世界最強!デェェェェスッ!」
負けじと加速するエルコンドルパサーとの競り合いになる。
『これから上り坂!エルコンドルパサーを僅かに抜いてスペシャルウィーク先頭!』
一気に駆け上がるスペシャルウィークとエルコンドルパサー。
『続いてマヤノトップガン!スペシャルウィークに追いすがります!』
背後を追うマヤノトップガンだが、もうすぐ坂は終わる。全身全霊をかけて走り抜けるだけだ。
『内からマヤノトップガンきた!内からのマヤノトップガン!』
直線もあと僅かというところで、マヤノトップガンはいつの間にか、エルコンドルパサーと入れ替わるようにスペシャルウィークの内へいた。
エルコンドルパサーは
僅かにスペシャルウィークは動揺してしまった。そこで再びマヤノトップガンのプレッシャーがくる。まるで戦闘機に載せられた光学兵器で薙ぎ払われたような感覚だった。
それでもスペシャルウィークは足を止めない。日本一のウマ娘となった意地があるのだ。
『先頭僅かにマヤノトップガンか!?』
『スペシャルか!マヤノトップガンか!』
『マヤノトップガンわずかに内か!?』
「マヤの勝ちだよ、スペシャルウィークさん」
ゴール板を走り抜ける瞬間に見たのは、ハナ差を先に抜け出したマヤノトップガンだった。
『勝者はマヤノトップガン!海外と日本総大将すら打ち負かし、クラシック5冠目を手にしました!』
『変幻自在の撃墜王が、流星を打ち落としました!』
『1着マヤノトップガンと2着スペシャルウィークはハナ差、2バ身あけて3着にはエルコンドルパサーとなりました!』
『他の追随を許さないマヤノトップガン!ウマ娘の新たな伝説の1ページがまた、作られました!』
マヤノトップガンは、新しい絶対になるのだろう。ファンサービスに投げキッスをするマヤノトップガンを見ながら、そうスペシャルウィークは思ってしまった。
次回で本編終了です。
遅くなった理由はライバルが浮かばなかった。これにつきます。
普段小説書こうと思わないからか、勝つか負けるか、ギリギリのちょうどいい相手に迷ったわけですね。
という訳で、もうちょっとだけお付き合いください。
設定まとめがあったら
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みたい
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みたくない
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表紙、描んだよぉーっ!
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